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プロローグ:転生ヒロイン、ランスフォード男爵家の人々
パン屋の娘「メイア」と男爵令嬢の「メイア」
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…そんな男爵家にパン屋の娘「メイア」が引き取られたのは僅か半年前。
……流石に転生幼女とは言え、6歳にパン屋を経営できる訳がない。
母親のマイアは家族や兄弟から大事にされていた…だから、すぐ助けに来れるよう、兄弟の誰かしらは実家であるパン屋の側に引っ越し見守っていた。
パン屋の店主であるお爺ちゃんは高齢だ、とても一人では回らない。
そこに幼女の私が居てどうにかなる訳もない。
幸いにして叔父夫婦が近くに住んでいた為そのままパン屋『パンの耳』は今も尚営業している。
…そこに時々メイアの焼いたパンも並ぶ。
…だから、父親であるランスフォード男爵の申し入れを──“養女”として迎え入れられることに同意した。
父と祖父の間に蟠りはない。寧ろ、共に頑固な娘に苦笑いして今でも共に酒を酌み交わす仲である。
『私はパン屋の娘。パン屋の娘は貴族とは結婚出来ないわ』
『いや…俺は半分平民みたいなものだぞ?そもそも男爵家は──』
『あー、聞こえない聞こえない!』
『マイア…』
『ち、ちょっと…っ!?』
…この後めちゃくちゃ抱いた、とは父の言。
そもそもがシルフィール義母さんとランドルフ父さん、それからマイア母さんは顔見知りで幼馴染みだ。
狭い世界の友人関係。
…口癖が“貴族は貴族と結婚するべし”で、ランドルフ父さんに惹かれながらもシルフィール義母さんを気にして一歩を踏み出そうとはしなかった…まあ、対するランドルフ父さんはこの辺では珍しく金髪碧眼で小さな頃から美少年であった。
何処の王子様か…って、私も写真を見せられる度に思ったものだ。
優しげな目元、スッと通った鼻梁、甘い顔立ち、甘いテノール、いつも楽しみを見出だすような眼…それはそれは端正な美丈夫は性格は温厚だしレディファーストを怠らない紳士━━とくれば、ね?
田舎の娘達が放っておく筈がない。
そらモテるわ。
けど、『意中の女性がいるから』といつもデートの誘いを断って…て、聞いたけれど。
…6・7年前にようやっと父さんの“想い”に答えた時には父さんはシルフィール義母さんとの間に三人もの子を設けていた。…本当、頑固な母さんだわ、あんだけ好き好き(写真に)アピールしてたクセに。(本懐を遂げた後も頑なに男爵家には行かない!と豪語していた)
パン屋の娘である事に固執して、宙ぶらりんな関係…世間では“愛人”と呼ぶけど━━あれは間違いなく“事実婚”だろう。
…だって母さん、とても幸せそうに嬉しそうに笑うもの。
「……」
「…お嬢様?」
「ううん、何でもないご飯食べるね」
「お嬢様…」
察しの良いアンはそれ以上は何も言わずてきぱきとテーブルに食事を配膳した。
もくもくと湯気を立てる美味しそうなビーフシチューの香り…、そこに今朝焼いたバターロールパンと瑞々しい彩り野菜のサラダ、スペアリブ、緑茶、デザートの朝摘みリンゴは丸ごと1個氷水の中にプカプカ浮いている…きっとアンが頃合いを見て切ってくれるのだろう。
「さ、お嬢様。」
「ありがとう。…頂きます」
両手を合わせて食前の挨拶を済ませる。
流石は日本の乙女ゲームの世界。
しれっと緑茶が出てくる。
…まあ、他にも異世界の筈なのに、現実世界にもある動植物や物があったりするのだが……まあ、それはまた後程に。
鼻腔を擽る悩ましい誘惑にお腹は“ぐぅ~~”と早くも白旗を振っている…。
!!!
「うまあ~~~♪♪」
「…ふふ、よう御座いました」
こそっとアンが小声で呟いた安堵の言葉も耳に入らない。
美味しいものを前にして他の事など些事に過ぎない。
食いっぱぐれる事だけはないように、空腹は敵だ。
私は今日も彼の好敵手との勝負?に勝つのだ!……勝負って何だろう?
…………。
食後のティー…、リンゴの皮を捨てずにポットに入れてカップに注がれたアップルティーは仄かに甘くリンゴのいい香りが漂っていい感じ。
「…ふぅ。まったり~」
「ふふ、そうですね。ブリオッシュもどうぞ。」
「うん、美味しい~♡」
…こうしているとお嬢様とメイドのやり取りに見えるから不思議だ。
“小林祭”だったら、誰か──それこそメイドだとか執事だとかに傅かれて生活する事はなかっただろうし、実際にあったとしたらば何とも面映ゆく居心地は良くない事だ…まあ、前世は平民──いち庶民で、結婚するまではOLだった祭にしてみれば。
自分の事は自分でしろ、と教育されてきた為このような自分の姿を前世の両親が、見たらば──ぎょっとする事請け合いだ。
平民の“メイア”、「男爵令嬢」のメイア。
どちらでも彼女の根は変わらないのだ。
天真爛漫で物怖じしない、「ちょっと」おバカで算術と勉強が苦手な等身大の“女の子”。
笑って怒って泣いて…。
ボイス付き、可愛らしい愛らしい顔の女の子だ。
そんな主人公だから全キャラクリアまで飽きずにプレイ出来た。
ミニキャラの育成はコミカルだし、そんなに難しくはない。
日常の中の小休止には打ってつけのゲームだった…。
……流石に転生幼女とは言え、6歳にパン屋を経営できる訳がない。
母親のマイアは家族や兄弟から大事にされていた…だから、すぐ助けに来れるよう、兄弟の誰かしらは実家であるパン屋の側に引っ越し見守っていた。
パン屋の店主であるお爺ちゃんは高齢だ、とても一人では回らない。
そこに幼女の私が居てどうにかなる訳もない。
幸いにして叔父夫婦が近くに住んでいた為そのままパン屋『パンの耳』は今も尚営業している。
…そこに時々メイアの焼いたパンも並ぶ。
…だから、父親であるランスフォード男爵の申し入れを──“養女”として迎え入れられることに同意した。
父と祖父の間に蟠りはない。寧ろ、共に頑固な娘に苦笑いして今でも共に酒を酌み交わす仲である。
『私はパン屋の娘。パン屋の娘は貴族とは結婚出来ないわ』
『いや…俺は半分平民みたいなものだぞ?そもそも男爵家は──』
『あー、聞こえない聞こえない!』
『マイア…』
『ち、ちょっと…っ!?』
…この後めちゃくちゃ抱いた、とは父の言。
そもそもがシルフィール義母さんとランドルフ父さん、それからマイア母さんは顔見知りで幼馴染みだ。
狭い世界の友人関係。
…口癖が“貴族は貴族と結婚するべし”で、ランドルフ父さんに惹かれながらもシルフィール義母さんを気にして一歩を踏み出そうとはしなかった…まあ、対するランドルフ父さんはこの辺では珍しく金髪碧眼で小さな頃から美少年であった。
何処の王子様か…って、私も写真を見せられる度に思ったものだ。
優しげな目元、スッと通った鼻梁、甘い顔立ち、甘いテノール、いつも楽しみを見出だすような眼…それはそれは端正な美丈夫は性格は温厚だしレディファーストを怠らない紳士━━とくれば、ね?
田舎の娘達が放っておく筈がない。
そらモテるわ。
けど、『意中の女性がいるから』といつもデートの誘いを断って…て、聞いたけれど。
…6・7年前にようやっと父さんの“想い”に答えた時には父さんはシルフィール義母さんとの間に三人もの子を設けていた。…本当、頑固な母さんだわ、あんだけ好き好き(写真に)アピールしてたクセに。(本懐を遂げた後も頑なに男爵家には行かない!と豪語していた)
パン屋の娘である事に固執して、宙ぶらりんな関係…世間では“愛人”と呼ぶけど━━あれは間違いなく“事実婚”だろう。
…だって母さん、とても幸せそうに嬉しそうに笑うもの。
「……」
「…お嬢様?」
「ううん、何でもないご飯食べるね」
「お嬢様…」
察しの良いアンはそれ以上は何も言わずてきぱきとテーブルに食事を配膳した。
もくもくと湯気を立てる美味しそうなビーフシチューの香り…、そこに今朝焼いたバターロールパンと瑞々しい彩り野菜のサラダ、スペアリブ、緑茶、デザートの朝摘みリンゴは丸ごと1個氷水の中にプカプカ浮いている…きっとアンが頃合いを見て切ってくれるのだろう。
「さ、お嬢様。」
「ありがとう。…頂きます」
両手を合わせて食前の挨拶を済ませる。
流石は日本の乙女ゲームの世界。
しれっと緑茶が出てくる。
…まあ、他にも異世界の筈なのに、現実世界にもある動植物や物があったりするのだが……まあ、それはまた後程に。
鼻腔を擽る悩ましい誘惑にお腹は“ぐぅ~~”と早くも白旗を振っている…。
!!!
「うまあ~~~♪♪」
「…ふふ、よう御座いました」
こそっとアンが小声で呟いた安堵の言葉も耳に入らない。
美味しいものを前にして他の事など些事に過ぎない。
食いっぱぐれる事だけはないように、空腹は敵だ。
私は今日も彼の好敵手との勝負?に勝つのだ!……勝負って何だろう?
…………。
食後のティー…、リンゴの皮を捨てずにポットに入れてカップに注がれたアップルティーは仄かに甘くリンゴのいい香りが漂っていい感じ。
「…ふぅ。まったり~」
「ふふ、そうですね。ブリオッシュもどうぞ。」
「うん、美味しい~♡」
…こうしているとお嬢様とメイドのやり取りに見えるから不思議だ。
“小林祭”だったら、誰か──それこそメイドだとか執事だとかに傅かれて生活する事はなかっただろうし、実際にあったとしたらば何とも面映ゆく居心地は良くない事だ…まあ、前世は平民──いち庶民で、結婚するまではOLだった祭にしてみれば。
自分の事は自分でしろ、と教育されてきた為このような自分の姿を前世の両親が、見たらば──ぎょっとする事請け合いだ。
平民の“メイア”、「男爵令嬢」のメイア。
どちらでも彼女の根は変わらないのだ。
天真爛漫で物怖じしない、「ちょっと」おバカで算術と勉強が苦手な等身大の“女の子”。
笑って怒って泣いて…。
ボイス付き、可愛らしい愛らしい顔の女の子だ。
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