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プロローグ[鳥籠の少女と自殺願望]
通算100回目の自殺が失敗に終わった件について。
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「…チッ!!」
暗くじめじめとしたホークナイト男爵家の地下深くにある“独房”。
そこには不手腐れ硬い床の上に胡座を掻くご令嬢──否、ホークナイト男爵の庶子“ミリアム・ホークナイト”の10歳の幼女が居た。
ミリアムの母は公式には描かれていなかったがオラトスク王国先代王の娘…、つまりは第四王女を母に持つミリアム。
知らなかったとは言えそんな王女…、“パン屋の娘”を手籠めにして授かったのがミリアムだ。
因みに第四王女は枯れ専。パン屋の店主68歳との間には3人の子宝を授かっていたが…ホークナイト男爵に“手籠め”にされた時は丁度王都では建国記念祭の真っ只中だった。
当然忙しく働いていた旦那に代わり家内を切り盛りしていた第四王女──マリアンナを酔った勢いに犯したのが祭りを見に来ていたアラスト・ホークナイト…彼には相応しい妻子も居たと言うのに。
…過ちがバレ男爵家には莫大な慰謝料と課税が申し渡された。
ミリアムには穢れた男の血が流れている。
一つの幸せな家庭を壊した破落戸の血だ。
その事を知った日──いや、母が亡くなる寸前までの怨嗟の声がミリアムの耳に今も尚媚びりついて離れない。
『あの破落戸の所為で私も貴女も幸せになれないのよ。…けどね、ミリアム…貴女に罪はないわ、私は貴女を憎んだことはない。本当よ。愛しているわ、私のかわいい子』
そう言って柔らかな笑顔と共に息を引き取ったのがミリアム6歳のあの日の事だ。
前世の記憶がまるでテレビのチャンネルを切り替えるように“ミリアム”となってしまった『私』を嘲笑うように──…。
「…ッ、──かはっ!」
魔法で出した氷の刃を喉に突いて通算101回目の“自殺”を図る。
もう少し…もう少しでこの無為な時間を終わらせる──
「──はっ!?」
ガバッ!!
飛び上がるように上体を起こしたミリアムは絶望に顔を歪ませた。
「…どうしてよッ!?」
異世界転生か…大いに結構。だが、それは自分じゃないからだ。
自分ではない誰か──凡そ“物語”の中の人だから。
受け入れられるの。認められるのよ。
また死ねなかった…その事に後悔と怨嗟が滲む。
滲んだ視界に不快な男の低い声が差し挟まれる。
「…それは此方の話だッ!!何故お前は自殺をしようとする…!?」
「私の母を強姦した男に囚われているぐらいなら死んだ方がマシだって言ってんだよッ!!」
「…ッ!?他人の気も知らないで…ッ!!」
「分からないわよ!!王女であった母を犯した男の言うことなんか…ッ!!」
バシンッ!!
口の中が切れて鉄の味が広がる。
それでもミリアムは吼えた。
「私の事は放っておいてよ!!強姦魔ッ!!!」
「なん、」
ボロボロと溢れる涙は決して親に叱られたから泣くのではない。
理不尽な現実に絶望し苦悩するミリアムと“私”の慟哭に由るモノだ。
…乙女ゲーム『鳥籠乙女』主人公にはこんな事実は設定資料集にも載っていなかった。“単なる”ホークナイト男爵の庶子なのだ、と。
ミリアム・ホークナイトは明るく元気いっぱいな女の子。母の死後男爵家へと引き取られて王立学園入学後様々な美形と交流してダンジョンを廻って恋愛を楽しむゲーム…。
そう、決してこんな“重い”設定はなかった。
「…放っておいて…放っておいてよ!!私の事を邪魔だって思うなら。今すぐに…!!」
「ミリアム…ッ!!」
医務室を飛び出すミリアムを男爵の縋るような、悲しげな怒声が遠ざかる小さな背に虚しく響いた。
「…違う。違うんだ…ミリアム…お前はーー俺は、俺の大事な娘なんだよ。…どうして……お前は王女に騙されているって何時気付いてくれる?どうすれば伝わるんだ…。ミリアム…ミリアム…ッ!!」
……。
譫言のようにその場に崩折れる父の背を擦るのは己の役割だ。
「…父上。ミリアムはーー仕方ありません。彼女は最もその毒牙に懸かっている。第四王女──毒婦マリアンナはその素行不良によって市井に下るしかなかった毒婦でしたから。あの女が最も得意とした魔法が【魅了】なのですよ、仕方ありませんよ。…いつか、いつか分かってくれるまで根気強くミリアムにあの女が掛けた魅了魔法を解くのです。勿論その時に毒婦が行った悪行の数々も。きちんと説明するのです…彼女は大事な僕の妹であり父上の大事な娘、なのですから。ね、お父様?」
「…っ、ぁ…ああ。そうだ、そうだな…イェルク。」
…ホークナイト男爵領は三つの村と森が領地であり、森は山と一帯となっておりそこは回復薬の原料となる薬草の群生地であり食料となる魔物の棲み家でもある。
どういう事かミリアムはあの女──マリアンナに洗脳されている。
そんな事実はなかった。
自他共に認める愛妻家であり医術師アラスト・ホークナイトにとってはとても腸が煮え繰り返る思いだ。
第四王女──否、“元”第四王女、今は故人のマリアンナ。彼女が“枯れ専”だった記憶も過去もない。
…真実は身持ちの悪い彼女は王位継承権を失い王都より追放の処置を施された後は何処かの山奥で遺体となって発見された。
…彼女の遺体を検死したのはアラストだ。それは間違いない。全裸で膣も肛門も口内も…何処もかしこも男の精液に塗れていた。所々暴行と殺傷傷、キスマーク…。山奥の洞窟、際奥で事切れていたマリアンナ。
どうやら過去関係を持った男達によって輪姦されたらしく、捕らえた彼等を尋問して得た情報は王家にとっても巻き込まれたホークナイト男爵にとっても耳の痛い事実であった。
アラストは事ある毎にマリアンナのアプローチを受けていた。
王女と男爵家嫡男では決して一緒になる筈などないと言うのに。
──ただ、“美男子だったから”と言う理由で好きだ愛しているだのと付き纏われていた。
どうも彼女は思い込みが激しく全ての美形は己に傅くべし、と言って憚れない王女とは名ばかりの傲慢な女だった…。
彼女の所為で幾つもの縁談が駄目になった、王家はその慰謝料の払いや賠償金の支払いで既に火の車だ。
幸いな事にマリアンナはそこまで頭の回る女ではなかったので辛うじて国庫に手を付ける…なんて事はなかった。不幸中の幸いだ。
…だけど、ミリアムはマリアンナの娘であることは変わらない。その相手はアラストでない事は確かだ。鑑定士の鑑定でそれは公的にも自他共に公開されている。
…マリアンナの遺体の側には無垢な赤子がいた。──それが“ミリアム”だ。
なんと驚くことにミリアムは胎児であった頃からマリアンナによって洗脳を施されていた事が判明した。
幸い?にしてホークナイト男爵領は薬草と医術に秀でた地。ここならミリアムの“治療”も出来る筈だ。
心身の衰弱と精神疾患、加えて魅了魔法の解呪。それは一筋縄では行かない。
まだ全体の9割も解いてない。それほど厄介な女だった…、治療が終わるまでその身は一応王家の血筋。王家がどう扱うのかはまだ未定なのだ。
「…ミリアムの治療を続けよう。イェルク、バーバラ手伝ってくれ」
「ええ、任せて。お義父様」
「勿論力になりますよ、父上。」
金髪碧眼の40歳半ばの美丈夫…アラスト・ホークナイト男爵とその子嫡男のイェルク・ホークナイト(19)とその妻バーバラ(19)の決意に満ちた瞳が後押しをする。
…男爵領の領主館はそのまま回復薬の生産・製造・販売の窓口であり、男爵一家の家であり研究施設である。
…地下深くにあるのは地下牢──ではなく精神疾患の患者が多く入院しているエリア。
ミリアムが“暗い”と感じたのは母たるマリアンナの魅了の魔法の影響で周囲がミリアム自身の“思い込み”が原因だ。
…本当に養女とするのか否かは彼女が王立学園に入学する16歳までに精神に回復が見られれば…と王家とは今尚検討中である。
…ミリアムの本当の父親?そんなの──マリアンナが虜にした男の内の誰か…、だ。
暗くじめじめとしたホークナイト男爵家の地下深くにある“独房”。
そこには不手腐れ硬い床の上に胡座を掻くご令嬢──否、ホークナイト男爵の庶子“ミリアム・ホークナイト”の10歳の幼女が居た。
ミリアムの母は公式には描かれていなかったがオラトスク王国先代王の娘…、つまりは第四王女を母に持つミリアム。
知らなかったとは言えそんな王女…、“パン屋の娘”を手籠めにして授かったのがミリアムだ。
因みに第四王女は枯れ専。パン屋の店主68歳との間には3人の子宝を授かっていたが…ホークナイト男爵に“手籠め”にされた時は丁度王都では建国記念祭の真っ只中だった。
当然忙しく働いていた旦那に代わり家内を切り盛りしていた第四王女──マリアンナを酔った勢いに犯したのが祭りを見に来ていたアラスト・ホークナイト…彼には相応しい妻子も居たと言うのに。
…過ちがバレ男爵家には莫大な慰謝料と課税が申し渡された。
ミリアムには穢れた男の血が流れている。
一つの幸せな家庭を壊した破落戸の血だ。
その事を知った日──いや、母が亡くなる寸前までの怨嗟の声がミリアムの耳に今も尚媚びりついて離れない。
『あの破落戸の所為で私も貴女も幸せになれないのよ。…けどね、ミリアム…貴女に罪はないわ、私は貴女を憎んだことはない。本当よ。愛しているわ、私のかわいい子』
そう言って柔らかな笑顔と共に息を引き取ったのがミリアム6歳のあの日の事だ。
前世の記憶がまるでテレビのチャンネルを切り替えるように“ミリアム”となってしまった『私』を嘲笑うように──…。
「…ッ、──かはっ!」
魔法で出した氷の刃を喉に突いて通算101回目の“自殺”を図る。
もう少し…もう少しでこの無為な時間を終わらせる──
「──はっ!?」
ガバッ!!
飛び上がるように上体を起こしたミリアムは絶望に顔を歪ませた。
「…どうしてよッ!?」
異世界転生か…大いに結構。だが、それは自分じゃないからだ。
自分ではない誰か──凡そ“物語”の中の人だから。
受け入れられるの。認められるのよ。
また死ねなかった…その事に後悔と怨嗟が滲む。
滲んだ視界に不快な男の低い声が差し挟まれる。
「…それは此方の話だッ!!何故お前は自殺をしようとする…!?」
「私の母を強姦した男に囚われているぐらいなら死んだ方がマシだって言ってんだよッ!!」
「…ッ!?他人の気も知らないで…ッ!!」
「分からないわよ!!王女であった母を犯した男の言うことなんか…ッ!!」
バシンッ!!
口の中が切れて鉄の味が広がる。
それでもミリアムは吼えた。
「私の事は放っておいてよ!!強姦魔ッ!!!」
「なん、」
ボロボロと溢れる涙は決して親に叱られたから泣くのではない。
理不尽な現実に絶望し苦悩するミリアムと“私”の慟哭に由るモノだ。
…乙女ゲーム『鳥籠乙女』主人公にはこんな事実は設定資料集にも載っていなかった。“単なる”ホークナイト男爵の庶子なのだ、と。
ミリアム・ホークナイトは明るく元気いっぱいな女の子。母の死後男爵家へと引き取られて王立学園入学後様々な美形と交流してダンジョンを廻って恋愛を楽しむゲーム…。
そう、決してこんな“重い”設定はなかった。
「…放っておいて…放っておいてよ!!私の事を邪魔だって思うなら。今すぐに…!!」
「ミリアム…ッ!!」
医務室を飛び出すミリアムを男爵の縋るような、悲しげな怒声が遠ざかる小さな背に虚しく響いた。
「…違う。違うんだ…ミリアム…お前はーー俺は、俺の大事な娘なんだよ。…どうして……お前は王女に騙されているって何時気付いてくれる?どうすれば伝わるんだ…。ミリアム…ミリアム…ッ!!」
……。
譫言のようにその場に崩折れる父の背を擦るのは己の役割だ。
「…父上。ミリアムはーー仕方ありません。彼女は最もその毒牙に懸かっている。第四王女──毒婦マリアンナはその素行不良によって市井に下るしかなかった毒婦でしたから。あの女が最も得意とした魔法が【魅了】なのですよ、仕方ありませんよ。…いつか、いつか分かってくれるまで根気強くミリアムにあの女が掛けた魅了魔法を解くのです。勿論その時に毒婦が行った悪行の数々も。きちんと説明するのです…彼女は大事な僕の妹であり父上の大事な娘、なのですから。ね、お父様?」
「…っ、ぁ…ああ。そうだ、そうだな…イェルク。」
…ホークナイト男爵領は三つの村と森が領地であり、森は山と一帯となっておりそこは回復薬の原料となる薬草の群生地であり食料となる魔物の棲み家でもある。
どういう事かミリアムはあの女──マリアンナに洗脳されている。
そんな事実はなかった。
自他共に認める愛妻家であり医術師アラスト・ホークナイトにとってはとても腸が煮え繰り返る思いだ。
第四王女──否、“元”第四王女、今は故人のマリアンナ。彼女が“枯れ専”だった記憶も過去もない。
…真実は身持ちの悪い彼女は王位継承権を失い王都より追放の処置を施された後は何処かの山奥で遺体となって発見された。
…彼女の遺体を検死したのはアラストだ。それは間違いない。全裸で膣も肛門も口内も…何処もかしこも男の精液に塗れていた。所々暴行と殺傷傷、キスマーク…。山奥の洞窟、際奥で事切れていたマリアンナ。
どうやら過去関係を持った男達によって輪姦されたらしく、捕らえた彼等を尋問して得た情報は王家にとっても巻き込まれたホークナイト男爵にとっても耳の痛い事実であった。
アラストは事ある毎にマリアンナのアプローチを受けていた。
王女と男爵家嫡男では決して一緒になる筈などないと言うのに。
──ただ、“美男子だったから”と言う理由で好きだ愛しているだのと付き纏われていた。
どうも彼女は思い込みが激しく全ての美形は己に傅くべし、と言って憚れない王女とは名ばかりの傲慢な女だった…。
彼女の所為で幾つもの縁談が駄目になった、王家はその慰謝料の払いや賠償金の支払いで既に火の車だ。
幸いな事にマリアンナはそこまで頭の回る女ではなかったので辛うじて国庫に手を付ける…なんて事はなかった。不幸中の幸いだ。
…だけど、ミリアムはマリアンナの娘であることは変わらない。その相手はアラストでない事は確かだ。鑑定士の鑑定でそれは公的にも自他共に公開されている。
…マリアンナの遺体の側には無垢な赤子がいた。──それが“ミリアム”だ。
なんと驚くことにミリアムは胎児であった頃からマリアンナによって洗脳を施されていた事が判明した。
幸い?にしてホークナイト男爵領は薬草と医術に秀でた地。ここならミリアムの“治療”も出来る筈だ。
心身の衰弱と精神疾患、加えて魅了魔法の解呪。それは一筋縄では行かない。
まだ全体の9割も解いてない。それほど厄介な女だった…、治療が終わるまでその身は一応王家の血筋。王家がどう扱うのかはまだ未定なのだ。
「…ミリアムの治療を続けよう。イェルク、バーバラ手伝ってくれ」
「ええ、任せて。お義父様」
「勿論力になりますよ、父上。」
金髪碧眼の40歳半ばの美丈夫…アラスト・ホークナイト男爵とその子嫡男のイェルク・ホークナイト(19)とその妻バーバラ(19)の決意に満ちた瞳が後押しをする。
…男爵領の領主館はそのまま回復薬の生産・製造・販売の窓口であり、男爵一家の家であり研究施設である。
…地下深くにあるのは地下牢──ではなく精神疾患の患者が多く入院しているエリア。
ミリアムが“暗い”と感じたのは母たるマリアンナの魅了の魔法の影響で周囲がミリアム自身の“思い込み”が原因だ。
…本当に養女とするのか否かは彼女が王立学園に入学する16歳までに精神に回復が見られれば…と王家とは今尚検討中である。
…ミリアムの本当の父親?そんなの──マリアンナが虜にした男の内の誰か…、だ。
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