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プロローグ[私こそがバイオレット・スカーレット]
閑話[スカーレット公爵の過ち。]
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私の名前はオズウェル・スカーレット、由緒正しい公爵家の長を務めている。正妃であるカトリーナとは親同士が決めた(つまり先代公爵が)政略結婚だった。…42歳の今も娘──バイオレットの事だ──との希薄な関係に悩む何処にでも居る父親だ……あ、待ってくれ。そんなあからさまに残念そうな呆れたような眼で見ないでくれ…ッ!?
けれど忙しさにかまけて長女との時間を関係構築が取れなかった。
「…私を父とは思わない、か。……私はそんなに酷い男か、レイン?」
「はい、有り体に言って最低最悪の犬畜生にも劣る屑男です」
銀色の肩までのおかっぱ頭、切れ長の青紫色の瞳、身長は187㎝と高身長の痩身麗躯な21歳の男が表情乏しくもきっぱりハッキリと仕える主人をディスった。
「公爵としては優れていても家庭での“公爵様”は最低です。…奥方様に関心が持てなくてもお嬢様にはもう少し目を配るべきでしたね」
「お前・・・、ッ、ここぞとばかりに……ッ!?」
「事実でしょう」
シレッと答える公爵の激昂にも堪えた様子がない侍従は涼しい顔で断言した。
……。
…事実だ、事実だが──認めたくない。
自分より遥かに年下の侍従に言われると何だか癪だからだ。
「…既に手遅れですね、あのお嬢様の態度は。」
「…ッ!?ど、どうすればいい……ッ!?」
「どうにもなりませんよ。お嬢様は既に諦めているご様子ですしーー何よりも未だお嬢様を突き落とした庶子を庇うあなた様の姿。それが決め手でしょうね…お嬢様はもう平民になる腹積もりのようですからね」
焦燥と後悔に滲んだ情けない男が自分に必死に縋りついて来る憐れな男が広大な穀倉地帯を含む農耕が盛んなスカーレット公爵領を統べる雄──には到底思えない。
それほど憐れで愚かで情けない姿だ…。
「……そうは言ってもな」
「だってもかかしも御座いませんッ!!もう〝手遅れ〟だとそう申し上げているのです…ッ!!」
バンッ!!
と執務机の決済待ちの重要書類の山の上にレインが追加で置かれたのは何れも庶子が分不相応にも公爵家令嬢を池に突き落とし殺害しようとした当時の記録結晶と数々の証言、庭師の目撃情報、庶子の高笑いや聞くに耐えない暴言や罵詈雑言の数々……。
どれもオズウェルは知らなかった愛娘の本性…畏れ多くも“王太子妃になるのは自分だ、だからお姉様は私の踏み台でしかない”等と…不敬罪に問われても否定出来ない不遜な発言。
…庶子ではどう足掻いても不可だと何度も言い含めた筈なのに──アンリはどうやら聞いていなかったらしい。…或いは聞いてても右から左へと受け流したのだろう。
ほぼ平民と変わらない男爵家令嬢の血を引いている…不可能である。
オズウェルもまたアンリの教育係は男爵家令嬢止まりの教育係しか雇っていない上未だ二人の部屋は屋敷こそ本邸だが与えた部屋は客室だ。
「……ああ、どうすればいいんだ!」
「…ダメだ、この馬鹿主人!!」
※愚鈍な公爵が悪い。仕事が優秀イコール善き父とはならない…オズウェルは正に世に代表される“ダメ父親”の一人であったのだ。
……これが物語なら“完”で終わって良いのだが、残念な事にこれは〝現実〟である。
オズウェルがどれほど自分の不義理を嘆いても今尚庶子は増長しているし、男爵令嬢の娘であるのに公爵家の令嬢を陰に日にと小馬鹿にして嘲笑っている。
…社交界に等連れて行った事もないのに何処で貴族子息(全て伯爵位以下)達と知り合いカフェや公園で騒げるのか?
調べれば酒場で偶然知り合った貴族子息とワイン片手に垂れ懸かった…と!
何を……何をしているのか。
アンリは──母ロレッタには似ても似つかない人間になっていた…。
“パン屋・ルルー”に居た時はこうではなかったのだ、それが母と共に公爵家本邸に客室だが、招かれてから可笑しくなったのだ。
ごく普通のパン屋の娘としてなら夢を見ても誰に咎められる事もなかった、が…。
何も持たない少女が公爵家の庶子として招かれた──そこから全てが狂い出した。
……。
……違うな、私が悪いのだ。カトリーナを苦手にするばかりでバイオレットの周囲をちゃんと見なかったから。
…この期に及んでも己の事ばかりなダメ父親貴族未満父親以下のダメダメ父オズウェルである。
…一言もバイオレット本人に対する謝罪の言葉が出ないのだ、父親以下とナレーションに罵られても文句は言えない。
けれど忙しさにかまけて長女との時間を関係構築が取れなかった。
「…私を父とは思わない、か。……私はそんなに酷い男か、レイン?」
「はい、有り体に言って最低最悪の犬畜生にも劣る屑男です」
銀色の肩までのおかっぱ頭、切れ長の青紫色の瞳、身長は187㎝と高身長の痩身麗躯な21歳の男が表情乏しくもきっぱりハッキリと仕える主人をディスった。
「公爵としては優れていても家庭での“公爵様”は最低です。…奥方様に関心が持てなくてもお嬢様にはもう少し目を配るべきでしたね」
「お前・・・、ッ、ここぞとばかりに……ッ!?」
「事実でしょう」
シレッと答える公爵の激昂にも堪えた様子がない侍従は涼しい顔で断言した。
……。
…事実だ、事実だが──認めたくない。
自分より遥かに年下の侍従に言われると何だか癪だからだ。
「…既に手遅れですね、あのお嬢様の態度は。」
「…ッ!?ど、どうすればいい……ッ!?」
「どうにもなりませんよ。お嬢様は既に諦めているご様子ですしーー何よりも未だお嬢様を突き落とした庶子を庇うあなた様の姿。それが決め手でしょうね…お嬢様はもう平民になる腹積もりのようですからね」
焦燥と後悔に滲んだ情けない男が自分に必死に縋りついて来る憐れな男が広大な穀倉地帯を含む農耕が盛んなスカーレット公爵領を統べる雄──には到底思えない。
それほど憐れで愚かで情けない姿だ…。
「……そうは言ってもな」
「だってもかかしも御座いませんッ!!もう〝手遅れ〟だとそう申し上げているのです…ッ!!」
バンッ!!
と執務机の決済待ちの重要書類の山の上にレインが追加で置かれたのは何れも庶子が分不相応にも公爵家令嬢を池に突き落とし殺害しようとした当時の記録結晶と数々の証言、庭師の目撃情報、庶子の高笑いや聞くに耐えない暴言や罵詈雑言の数々……。
どれもオズウェルは知らなかった愛娘の本性…畏れ多くも“王太子妃になるのは自分だ、だからお姉様は私の踏み台でしかない”等と…不敬罪に問われても否定出来ない不遜な発言。
…庶子ではどう足掻いても不可だと何度も言い含めた筈なのに──アンリはどうやら聞いていなかったらしい。…或いは聞いてても右から左へと受け流したのだろう。
ほぼ平民と変わらない男爵家令嬢の血を引いている…不可能である。
オズウェルもまたアンリの教育係は男爵家令嬢止まりの教育係しか雇っていない上未だ二人の部屋は屋敷こそ本邸だが与えた部屋は客室だ。
「……ああ、どうすればいいんだ!」
「…ダメだ、この馬鹿主人!!」
※愚鈍な公爵が悪い。仕事が優秀イコール善き父とはならない…オズウェルは正に世に代表される“ダメ父親”の一人であったのだ。
……これが物語なら“完”で終わって良いのだが、残念な事にこれは〝現実〟である。
オズウェルがどれほど自分の不義理を嘆いても今尚庶子は増長しているし、男爵令嬢の娘であるのに公爵家の令嬢を陰に日にと小馬鹿にして嘲笑っている。
…社交界に等連れて行った事もないのに何処で貴族子息(全て伯爵位以下)達と知り合いカフェや公園で騒げるのか?
調べれば酒場で偶然知り合った貴族子息とワイン片手に垂れ懸かった…と!
何を……何をしているのか。
アンリは──母ロレッタには似ても似つかない人間になっていた…。
“パン屋・ルルー”に居た時はこうではなかったのだ、それが母と共に公爵家本邸に客室だが、招かれてから可笑しくなったのだ。
ごく普通のパン屋の娘としてなら夢を見ても誰に咎められる事もなかった、が…。
何も持たない少女が公爵家の庶子として招かれた──そこから全てが狂い出した。
……。
……違うな、私が悪いのだ。カトリーナを苦手にするばかりでバイオレットの周囲をちゃんと見なかったから。
…この期に及んでも己の事ばかりなダメ父親貴族未満父親以下のダメダメ父オズウェルである。
…一言もバイオレット本人に対する謝罪の言葉が出ないのだ、父親以下とナレーションに罵られても文句は言えない。
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