悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちぁみ

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6章

目覚め

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案内された場所は、緑が生い茂り、美しい青い空が広がっていた。

その空間の真ん中に1人の金髪の少年が体を丸めて眠っていた。

「彼がシアンです」

「はい」

そう返事を返すと、フッと女神は消えた。

俺は静かに少年に近づいた。

「初めまして、シアン・シュドレー」

そう声をかけたが、少年は起きる気配が全くなかった。

「そのまま聞いてくれ。今日はお前を褒めに来たんだ。俺さ、勝手にお前に親近感感じてたんだ。だって俺とお前似てるって言ってくる奴もいたし。でも、自分でも少しだけそう思ってた。俺の話になるけど、俺の父親はすげぇ支配欲の強い人で、俺の全てを管理してきてた。それが怖くて仕方なくて、でも父親に逆らえなくて、その内感覚が麻痺してった。自分はおかしくない、自分は辛くない、自分は痛みを感じない、そうやって思い込んで自分の気持ちを封じていった。そしたら不思議とさ、父親の望むとおりに生きられたし、なんとかなってた。でも、そんなの錯覚だって教えてくれた奴がいたんだ。そんなのは支配のまま流されてて、自分の人生を生きてるとは言わないんだって気づいた。そして、やっと今、少しだけ自分を受け入れられて、自分の気持ちを引き出すことが出来てる。俺は誰かに言われてやっと気づけたのにさ、お前は自分で殻を破ったんだな。お前はまるで俺とは違ったんだ。すごいよ。シアン・シュドレー、お前の最期は実に見事なものだった」

「俺は実質何もしていないも同然だ。俺には…もっとやりたいことがあった」

少年は、静かに目を開けてそう言った。

「それはなんだ?」

「旅に出たかった。あの鳥のように。諸国を巡り、その国の文化を知り、料理を食べ、風景を楽しみ、大地を自分の足で歩き回り、空気を目一杯吸いたかった」

「それで?」

「そして、出来ることなら各地の花や草木を研究し、薬剤師を目指してみたかった!」

少年は起き上がって、キラキラとした目で俺に語ってみせた。

「出来るよ」

「…出来るわけがない。もう無理だ」

少年は打って変わって暗い表情になり、また寝転がった。

「どうしてだ?あの時はあんなに自分の力でやってのけたのに」

「……あの時とは違う。もう何もできない」

「そんなことはない。まだ、道はある。やりたいことが沢山あるんだろ?俺にも沢山やりたいことがある。分かるよ、俺たちは臆病者だ。未知の世界は怖いし、誰かに指図された道以外は進めない。でも、それでも…俺も進むから。お前も行かないか?この世界は愛ばかりで溢れている訳では無いと俺たちは誰よりも知っている。けれど、お前が自分で進んだ先に見る世界は、きっと絶望だけで満ちてはいない」

「……無責任で自分勝手な言葉だ」

「だって、悪役ってそんなもんだろ」

「あぁ…そうだったかもしれない」

少年は眉を寄せて笑って、俺が差し出した手をそっと握った。










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