獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

山の巡回⑤回想

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 「でなー、最後に霧の谷に行ったんだ」

 夜。寝室では魔法の灯りに照らされて、一枚の布団に包まっ身を寄せ合う三巳とリリがお話しています。

 「ふわ~タウろん可愛い~。会ってみたいな~。撫で撫でしたいな~」

 お話に出てくるモフモフ達に、リリは終始ほっぺを抑えて悶えています。

 「うんうん。リリが爬虫類苦手じゃ無くて良かった」

 話の過程でサラマンダーのサラちゃんも紹介済みです。
 とは言えサプライズはサプライズしてこそなので敢えて語っていない事もあります。ネルビーの事と光る鍾乳洞の事です。特にネルビーの件はより慎重に伝えたいと思っています。
 そうとは知らないリリは景色やモンスター達を可愛く思い描きながら熱心に聞き入っています。

 「ふふふ。苦手な女の子多いけどね。
 あのキョロんとした目が可愛いと思うの」
 「そうなんだよー。なかなかわかってくれる子いなくてなー」

 クスクス忍笑いをしながら「わかるわかる」と女子トークを繰り広げています。

 「それで霧の谷はどんな所なの?」
 「その名の通り年中霧に覆われてる場所でなー。それと言うのも霧は結界の役目があって」
 「結界?ならそこにはヌシがいるのかしら」

 エリアによってはボス級のモンスターが縄張りを持っていたりします。
 リリはとっても強くて大きいモンスターの姿を想像して、眉を八の字に下げます。

 「うんにゃ。ヌシはいない……いやある意味ヌシか」
 「?」

 否定仕掛けて考え直す三巳が、うーんと顎に手を当てます。
 リリは話が見えなくて首を傾げて続きを待っています。

 「妖精が住んでるんだよ」

 三巳は腕枕に顔を寝かしてリリを仰ぎ見るように言いました。
 リリはそれを聞いて口をポカンと開けて驚きます。リリの脳内では瞬く間に様々な妖精達が楽しそうに通り過ぎて行きました。

 「妖精!」

 一拍置いて叫びます。思いの外大きな声が出たので慌てて両手で口を塞ぎました。
 塞いだ口からは未だに消化しきれない思いがモゴモゴ漏れ出ます。
 ほっぺを紅潮させて興奮するリリに、三巳はにゅふふーと楽しそうに笑みを作ります。

 (どこの世界でも女の子は妖精さんが好きなんだなー)

 布団の中で嬉しそうに尻尾が揺れて、布団がもごもご動いています。

 「そう。妖精。
 妖精達が身を守る為に張った結界が霧なんだ。
 三巳は良く甘いもの持って遊びに行ってるけどなー」
 「はわ~、妖精が甘いもの好きって本当なのね~」
 「ふひひひっ、そう思うだろ?でも中には辛いもの好きもいて中々面白い」

 リリは辛いもの好きのキリリとした小さな妖精を想像して、「可愛い!」と悶えました。

 「でな、今回もオヤツ持って霧の中に入って行った訳だ。
 霧の中は妖精達が侵入者を隠れて見ててな、この人なら大丈夫と思ったら妖精達の世界に招待してくれるのさ。
 招待されると辺りの霧が晴れていって、色とりどりの草花や木々がわっと視界に広がるんだよ。キラキラ輝くシャボン玉がフワフワ浮いててそれはもう幻想的だぞー」
 「はわ~」

 三巳のお話を聞いて、童話に出てくる景色を思い出したリリは憧憬の眼差しでトロンとさせています。
 その様子を満足気に見つめてウンウン頷く三巳が、その続きを語ります。



 ~妖精界の回想~

 「やっほーい。久し振りー♪みんな元気にしてたかー?」

 三巳が尻尾をフリフリして挨拶したら、彼方此方から小ちゃな妖精たちがわって飛んできたんだ。
 それでな周りをグルグル、グルグル羽をパタパタさせて探るように飛んでるの見て、ぷひって噴き出しちゃったんだ。
 だってお目当てがわかってたからな。
 んで、じゃじゃーんってお菓子の山を取り出したらな、大歓声で押し寄せて来たんだよ。流石に三巳も潰れるかと思ったー。
 え?どこにお菓子の山を持っていたかって?ふふふー、それは秘密です。
 なーんてな。三己の尻尾凄ーく大きいだろ?そこに割と何でも隠せるんだ。凄いだろー。
 でな、あっという間にお菓子の山が妖精達のお腹の中に消えてった訳だけど。そしたらな、満足した妖精達がパァーって光って元気に踊りだしたんだ。

 『おーかしお菓子♪美味しいお菓子♪』
 『あーまい甘い♪甘~いお菓子』
 『僕は辛~いお菓子が好きー♪』
 『あたちは酸っぱいお菓子が好きー♪』
 『しょっぱいお煎餅はパリンパリン音楽が奏でて好きー♪』
 『僕達みーんなお菓子好き♪』

 お菓子を称える歌を踊りながらパタパタ、クルクル。踊りながら飛び回る妖精達と一緒に三巳も尻尾ダンスでクルクル回って遊んだんだよ。

 『三巳ー♪いつも美味しいお菓子ありがとう♪』
 『今日は何しに来たの?♪』
 『来たのー?♪』
 「久し振りに巡回してるんだよー」
 『巡回ー♪』
 『久し振りー♪』

 きゃらきゃら笑いながら相槌を打つ妖精達はキラキラして可愛いぞ。
 三巳が最近変わった事が無いか聞けば、みんな楽しそうに顔を合わせて相談してくれた。

 『緑の妖精何かあったけー?』
 『う~ん何も思いつかないな~。ピンクの妖精何かあったけー?』
 『近所の小花から妖精が生まれたよう』
 「おお、それは吉報だな。誕生おめでとう」
 『ありがとー♪伝えとくー♪黄色の妖精他に何かあったけー?』
 『かれーってなぁに?気になる気になる~♪』
 『あー!それって前に山の外で人間が話してたやつだー!』
 「山の外?それって結界の外って事か?」
 『うん♪まだ雪が解け始めた頃かな?』
 『こわ~い人間がリリって子を探してたんだよ♪』
 「リリ……!」

 っとこの辺りはリリには聞かせない方がいいかな。今は来なくなったとは言え、怖がっちゃいそうだしなー。
 話に聞けば怖い人間は迷いの森に入った振りだけで自分の国に帰ったそうだ。迷いの森っていえば三巳の山を囲む山を更に囲むように存在する森の事だろう。三巳達は篩いの森って呼んでるけど。
 
 ん?ああ、ゴメンゴメン。にゃはー、回想に耽っちゃってたなー。
 で続きだけど、新しく生まれた子が何人かいるって話以外は食べ物の話か面白い話しか出なかったから、サラちゃんの事を伝えてまた改めて生まれたての妖精達に挨拶しに行くって約束して帰って来たのさ。

 ~回想終わり~



 「妖精達は遊ぶのも大好きだから谷には面白い遊び場がいっぱいあるから、次は遊びに行くつもりだ」
 「い~いなぁ~。私も妖精さんとおしゃべりしたいなぁ~」

 うっとりしながら夢心地に耽るリリを見て、三巳はリリなら妖精達にも受け入れられそうかな?とサプライズ企画に検討の余地を与えましたとさ。
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