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本編
オーウェンギルド長に会ってみよう
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「と、いう訳でさっきの地震は三巳の暴走が原因なんだよ。お騒がせてしてごめんなさい。謝りに来るのも遅れてごめんなさい」
今三巳は噴水広場で謝罪会見の真っ最中です。
揺れる毛並みは艶やかで、ふんわりと風に靡いています。けれども対照的に三巳の顔色は若干の疲れが見て取れます。
それもその筈。リリとハンナにこれ幸いと散々弄り回されたからです。
お陰でまるで御伽の国のお茶会に出てきそうな可愛らしい装いは、居合わせた面々の心にキュンと響きました。
「全然大丈夫だよ!大した震度じゃなかったし!」
『抑えていたのは感じていたからな』
「むしろ可愛らしい姿を見せてくれてありがとう!」
謝罪会見は一変。可愛いを愛でる会になりました。
三巳の舞台裏ではリリとハンナがやり切った良い笑顔で喜びを分かち合っていました。
「でも神様でも怖いものってあるんだな」
「何が怖かったのかは知らないけど、次は俺達も助けに行くから安心しなよ」
暴走の原因はリリに危険が迫っている事ですが、ギルドの人達同様、街の人達に教えて怖がらせるものではないです。相談の上詳細は伏せる事になりました。
それでも女の子の怖いものを掘り下げて聞く無粋な人はいません。
「ありがとー。みんな大好きなんだよ」
三巳は優しい人達に囲まれて、はち切れんばかりに尻尾をバッサバッサと振りまくります。
両手もブンブン振って喜ぶものだから、あまりの可愛さにリリが悶えました。
「ああ。三巳可愛いっ」
「そうですね。三巳様の愛らしさは世界遺産級です」
ハンナも瞳をキラリと輝かせて全力で同意を示しました。
謝罪会見という名の三巳を愛でる会は早々にお開きになりました。
人々が其々の職場に戻った所でロダとネルビーと合流です。これからヴァーンギルド長と呼ばれた人に会いに行く予定です。
「でもヴァーンギルド長さんって会った事ないよね」
「ギルド自体ある事知らなかったしな。でもさっき感じた匂いと気配はわかるんだよ」
「複数いたんでしょ?どの気配かわかるの?」
「わからん!だから強そうな気配の方から行ってみよー、やってみよー」
何とも生き当たりばったりです。けれどもギルドを探してそこからアポイントを取ってとするよりは格段に早いでしょう。
「今のギルド長の名前、ヴァーンさんって言うのね」
「ええ、ヴァーン・オーウェンという名で最強ランクの冒険者です。この国を取り戻すのに力を尽くしてくださいました」
「あら、それじゃあオーウェンがファミリーネームなのね」
知らない間柄の人なので三己達はオーウェンギルド長と呼ぶ事にしました。
ハンナは熱の籠った目でオーウェンギルド長を語ります。ハンナもオーウェンギルド長に助けて貰った様です。その時のオーウェンギルド長はそれはもう正義のヒーローに見えていた事でしょう。
珍しく乙女な姿を見せるハンナに、三巳達は格好良い壮年男性を思い浮かべました。そしてその想像図を頼りに気配を探して動き出そうとした矢先、気配は向こうからやって来ました。
「よお、獣神の。地味にやらかしたな」
気配の主は片眉上げて開口一番皮肉気に言ってきました。これで態度までドスを聞かせていたなら三巳はきっと尻尾を丸めて悲し気に耳を垂らしていた事でしょう。けれども言葉とは裏腹に面白がっていたので、三巳は別の所でしょげました。
「じ、じみ……」
三巳的には地震を起こしてしまって恐縮の至りなのに、余りにも大した事無い風な言い分に、安心すれば良いのか悲しめば良いのか、微妙な顔になります。
「お気を落とさないでください。確かにあの程度の地震は日常茶飯事です。けれどもそれと三巳様がお気になさる事とは別問題ですよ。我々はその気持ちがとても嬉しかったです」
「はんな~」
すかさずハンナにフォローをされた三巳は、その優しさに涙がちょちょ切れそうです。
「そこの坊主は中々のやり手だな。ウチに欲しいぜ」
「え?え?僕?」
誰だかわからない人に褒められたロダは嬉しそうに照れますが、本当に自分の事かと周りをキョロキョロ確認します。勿論この場に男の子はロダだけしかいません。確認する迄もありません。
『おれは?おれは?』
一緒に頑張ったネルビーも褒めて欲しそうに飛び跳ねその男性の足に前脚をたたしっ、たたしっと乗せました。
「おお?珍しいな。犬の守護獣か」
『そうだぞ!おれ、リリの守護獣だぞ!褒めろ!』
「そんなに吠えんな。俺には何言ってるかさっぱりだ」
『きゃいん!?リファラのみんなはおれの言葉わかるんじゃないのか!?』
けれどもどうやらネルビーの言葉がわかるのはあくまでリファラの民だけだった様です。
ギルドは全国に分布する独立組織です。つまりはリファラの民ではありません。強いて言うならギルドの民でしょう。例え母国で活躍をしていたとしても、その行動はギルドのルールで縛られています。
説明されたネルビーは三巳と一緒にしょげてしまいました。
「それで、貴方は?」
リリは三巳とネルビーをよしよし慰めながら誰だかわからない人に尋ねました。
尋ねられた男性は片眉上げてキョトンとします。
「ん?俺を探してただろ」
今度はリリがキョトンとする中、ハンナが二人の間に立ちました。そして男性に手を向けます。
「姫様。この方がオーウェンギルド長殿です」
唯一その為人を知っていたハンナに紹介されて、気配で何となくわかっていた三巳以外が「ええ!?」とビックリしました。
何故なら目の前で腰に手を当て立つ男性は、どう見ても凡そ想像図とは違っていたからです。
今三巳は噴水広場で謝罪会見の真っ最中です。
揺れる毛並みは艶やかで、ふんわりと風に靡いています。けれども対照的に三巳の顔色は若干の疲れが見て取れます。
それもその筈。リリとハンナにこれ幸いと散々弄り回されたからです。
お陰でまるで御伽の国のお茶会に出てきそうな可愛らしい装いは、居合わせた面々の心にキュンと響きました。
「全然大丈夫だよ!大した震度じゃなかったし!」
『抑えていたのは感じていたからな』
「むしろ可愛らしい姿を見せてくれてありがとう!」
謝罪会見は一変。可愛いを愛でる会になりました。
三巳の舞台裏ではリリとハンナがやり切った良い笑顔で喜びを分かち合っていました。
「でも神様でも怖いものってあるんだな」
「何が怖かったのかは知らないけど、次は俺達も助けに行くから安心しなよ」
暴走の原因はリリに危険が迫っている事ですが、ギルドの人達同様、街の人達に教えて怖がらせるものではないです。相談の上詳細は伏せる事になりました。
それでも女の子の怖いものを掘り下げて聞く無粋な人はいません。
「ありがとー。みんな大好きなんだよ」
三巳は優しい人達に囲まれて、はち切れんばかりに尻尾をバッサバッサと振りまくります。
両手もブンブン振って喜ぶものだから、あまりの可愛さにリリが悶えました。
「ああ。三巳可愛いっ」
「そうですね。三巳様の愛らしさは世界遺産級です」
ハンナも瞳をキラリと輝かせて全力で同意を示しました。
謝罪会見という名の三巳を愛でる会は早々にお開きになりました。
人々が其々の職場に戻った所でロダとネルビーと合流です。これからヴァーンギルド長と呼ばれた人に会いに行く予定です。
「でもヴァーンギルド長さんって会った事ないよね」
「ギルド自体ある事知らなかったしな。でもさっき感じた匂いと気配はわかるんだよ」
「複数いたんでしょ?どの気配かわかるの?」
「わからん!だから強そうな気配の方から行ってみよー、やってみよー」
何とも生き当たりばったりです。けれどもギルドを探してそこからアポイントを取ってとするよりは格段に早いでしょう。
「今のギルド長の名前、ヴァーンさんって言うのね」
「ええ、ヴァーン・オーウェンという名で最強ランクの冒険者です。この国を取り戻すのに力を尽くしてくださいました」
「あら、それじゃあオーウェンがファミリーネームなのね」
知らない間柄の人なので三己達はオーウェンギルド長と呼ぶ事にしました。
ハンナは熱の籠った目でオーウェンギルド長を語ります。ハンナもオーウェンギルド長に助けて貰った様です。その時のオーウェンギルド長はそれはもう正義のヒーローに見えていた事でしょう。
珍しく乙女な姿を見せるハンナに、三巳達は格好良い壮年男性を思い浮かべました。そしてその想像図を頼りに気配を探して動き出そうとした矢先、気配は向こうからやって来ました。
「よお、獣神の。地味にやらかしたな」
気配の主は片眉上げて開口一番皮肉気に言ってきました。これで態度までドスを聞かせていたなら三巳はきっと尻尾を丸めて悲し気に耳を垂らしていた事でしょう。けれども言葉とは裏腹に面白がっていたので、三巳は別の所でしょげました。
「じ、じみ……」
三巳的には地震を起こしてしまって恐縮の至りなのに、余りにも大した事無い風な言い分に、安心すれば良いのか悲しめば良いのか、微妙な顔になります。
「お気を落とさないでください。確かにあの程度の地震は日常茶飯事です。けれどもそれと三巳様がお気になさる事とは別問題ですよ。我々はその気持ちがとても嬉しかったです」
「はんな~」
すかさずハンナにフォローをされた三巳は、その優しさに涙がちょちょ切れそうです。
「そこの坊主は中々のやり手だな。ウチに欲しいぜ」
「え?え?僕?」
誰だかわからない人に褒められたロダは嬉しそうに照れますが、本当に自分の事かと周りをキョロキョロ確認します。勿論この場に男の子はロダだけしかいません。確認する迄もありません。
『おれは?おれは?』
一緒に頑張ったネルビーも褒めて欲しそうに飛び跳ねその男性の足に前脚をたたしっ、たたしっと乗せました。
「おお?珍しいな。犬の守護獣か」
『そうだぞ!おれ、リリの守護獣だぞ!褒めろ!』
「そんなに吠えんな。俺には何言ってるかさっぱりだ」
『きゃいん!?リファラのみんなはおれの言葉わかるんじゃないのか!?』
けれどもどうやらネルビーの言葉がわかるのはあくまでリファラの民だけだった様です。
ギルドは全国に分布する独立組織です。つまりはリファラの民ではありません。強いて言うならギルドの民でしょう。例え母国で活躍をしていたとしても、その行動はギルドのルールで縛られています。
説明されたネルビーは三巳と一緒にしょげてしまいました。
「それで、貴方は?」
リリは三巳とネルビーをよしよし慰めながら誰だかわからない人に尋ねました。
尋ねられた男性は片眉上げてキョトンとします。
「ん?俺を探してただろ」
今度はリリがキョトンとする中、ハンナが二人の間に立ちました。そして男性に手を向けます。
「姫様。この方がオーウェンギルド長殿です」
唯一その為人を知っていたハンナに紹介されて、気配で何となくわかっていた三巳以外が「ええ!?」とビックリしました。
何故なら目の前で腰に手を当て立つ男性は、どう見ても凡そ想像図とは違っていたからです。
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