獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

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 三巳達は今、海辺の綺麗な街並みを歩きながらウィンドウショッピングをしています。

 「ここは海の雑貨屋さん。海岸で拾った物で作ってるんだよ」
 「とてもキラキラしていて綺麗だねぇ」

 美女母やクロが気になるお店を見つけては中へと入って行きます。
 今はクロが気になった雑貨屋さんにいます。
 店の入り口には沢山のアクセサリーが飾ってあり、太陽光を反射して色とりどりに輝いています。その中へ入ればこれまたキラキラした物が見栄え良く飾られていました。

 「これは何で出来ているのだろう。色があるのに透明だよ」
 「うにゅ?そいえば何だろな。ガラスは有っても街じゃ貴重品ってオーウェンギルド長が教えてくれたんだよ」

 地球の様な大量生産はこの世界の工場ではまだ出来ません。破片が海を流れてきてもそれはごく少量でしょう。
 三巳は改めて不思議に思い、首を傾げました。

 「これは玻璃貝の破片だ」

 代わりに教えてくれるのはレオです。
 グランにいる間は三巳がレオと離れたがらないので一緒にいてくれています。

 「玻璃貝とは珍しいねぇ」

 クロがその透明感に納得します。
 けれども殆ど山から出ない三巳は知らない名前でした。

 「玻璃貝ってどんな貝なんだよ?」
 「明るい昼間が長く、熱い地域の限りなく透明度の高い海にのみ生息している貝だな。全身を透明にする事によって外敵から身を隠していると言われている」
 「へー!凄い!見つけたい!」

 レオの説明に三巳がキラキラした目で尻尾を振ります。

 「それじゃあ海で遊ぶ時は貝探しをしてみようか」

 すかさずクロが提案すれば三巳の視線はクロに移ります。

 「ほんと!?やったー!いっぱい探すんだよ♪」
 「ふふふ。取れたら持って帰って玻璃貝のランプを作ってみよう」

 クロはそうと決めればと手に持つ玻璃貝製のお皿を良く観察しました。継ぎ接ぎ部分をどうしているのか見ているのです。

 「ふむ。なれば参考用に買っていくかの」

 クロの為ならば何も惜しまないのが美女母です。
 壁に飾られているアクセサリーからクロに合う物を見繕い買ってきます。そしてそれはクロの黒い三角お耳に着けられたのです。
 クロは耳に着けられたリングを触り、そしてそこから垂れる丸い球体に触れました。

 「愛しいひと」
 「うむ。クロによう似合うておる」

 突然のプレゼントにクロは破顔し喜びを露わにします。
 耳をピピクと揺らせば耳に着けられた球からチリリンという涼やかな音色が聞こえてきます。

 「ありがとう。とても嬉しい。帰ったら頑張って作るから愛しいひとも着けてくれるかい?」
 「勿論だとも。とても楽しみだ」

 またもや始まったイチャイチャです。
 しかし今の三巳は止めません。

 「良いなーアレ。三巳もレオに何かプレゼントしたいんだよ」

 何故なら今はレオが側にいるからです。
 隣でレオの裾を握って見上げてくる三巳に、レオは虚を衝かれました。

 「俺にか」

 少し前にバレンタインチョコを貰ったばかりで寧ろ自分こそ何かを返したい所です。
 レオはふむと考え店内を見ました。そして美女母が見ていた壁を見ます。そこに掛けられたイヤリングやピアス達を。

 (いや。恋人でもないのにそれはねぇな)

 レオにとって耳に着ける飾りは愛の象徴に見えました。直前の美女母を見ていたから余計かもしれません。

 「まだ見たい店はあるだろ。ゆっくり見て回ろうぜ」
 「んにゅ?にゅーん。そだな。母ちゃんと違うの探すんだよ」

 という事で次を目指して出発です。
 脳内マップを開きながら指差し向かう場所はジュース屋さんです。
 春とはいえ南国の暑い日差しは相変わらず体力を使います。喉も渇くので行きつけのお店でココナツジュースを2つ買いました。

 「結構量があるから半分こして飲もー。母ちゃんは父ちゃんとな。レオは三巳とで良ーか?」
 「ああ構わないぜ」

 レオは簡単に了承します。きっと前に来た時と同様に殆どを三巳に飲ませてあげる気でしょう。

 「この先に良い感じの木陰があるんだよ」

 日差しを避けるのに散々お世話になった木です。
 ココナツジュースを持って向かえばそこには前回無かった物がありました。

 「およ?椅子がある……」
 「去年毎日の様にそこで伸びてる毛溜まりがいたからな。住人も涼みに来る様になったって話だ」

 人が集まれば増える物もあるでしょう。椅子はその一つに過ぎません。
 三巳は去年の伸び伸びな自分を思い出してホッペをポッと赤くしました。

 (皆気にしてくれてたのかな?)

 チラリと周囲を見れば和やかに涼んでいる人達が何人もいました。
 そして三巳と目が合うと気軽に手を振ってくれます。
 三巳もそれに手を振り返し、空いている椅子に座りました。

 「折角だから座って飲もう」
 「そうだね三巳」

 三巳の隣にクロが座り、その更に隣に美女母が座ります。
 4人掛けの椅子はあと1人分空いています。丁度三巳を挟んでクロとは反対側です。

 「レオも座るんだよ」

 三巳がポシポシと椅子を叩いて催促します。
 木に背を預けようと思っていたレオでしたが、ここでそれをすると三巳の尻尾がシオシオと垂れそうだと推測ができます。なので大人しく隣に座ってくれました。
 隣にレオが座ってくれて嬉しい三巳はニコーッと笑みを深めます。

 「最初にどーぞ♪」

 そしてレオに先にココナツジュースを渡しました。

 「そりゃどーも」

 レオは軽く片方の口端を上げて笑みを作って受け取ります。そしてひと口飲み、三巳に返しました。

 「ありがとな」
 「うにゅ?もっと飲んで良いんだよ」

 直ぐに返されたココナツジュースを三巳はレオに押し付ける様に突き出します。

 「今はそんなに渇いてねえから三巳が飲みな。それに俺はいつでも飲みに来れるし、な」

 レオに頭を撫でられ三巳は耳をピクピク動かします。

 「にゅ。それじゃ遠慮なく」

 本当に遠慮をしない三巳は美味しそうに残ったココナツジュースをゴクゴク飲んでご満悦になるのでした。

 「まるで兄妹のようじゃの」
 「そうだねぇ」

 そしてそれを横目で見ていた両親は苦笑を漏らすのでした。
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