294 / 372
本編
猫じゃらす
しおりを挟む
シターン!シターン!と尻尾を打つ音が聞こえます。
「そーれそれそれ♪」
そんな音に愛おしそうに目尻を下げる三巳がいます。
そしてその手には猫じゃらしが握られていました。
「んなぁー……」
「ぐるなー……」
「……」
そしてそしてそんな三巳の前には伏せた状態で瞳孔を細くする子猫獣人達がいました。
子猫獣人達は思い思い唸ったり、無言だったり、苛立ち気に尻尾を叩いたりしています。しかしその目は一心に猫じゃらしを見ていました。
「そーれ♪」
三巳が猫じゃらしを大きく振れば子猫達は一斉に飛び掛かりました。我先にという勢いで飛び掛かり、「俺んだ!俺んだ!」と言わんばかりに奪い合いが勃発しています。
本人達は真面目に闘争本能剥き出しにしていますが、それを見る三巳は完全に子猫の戯れを見るものでした。
(癒されるー♪)
元々ささくれだった思いは有りませんが癒された気分になっています。
そんな三巳ですがチラリと視線を遠くにやって冷や汗を掻きます。
その視線の先。麦畑で仕事をしている大人の猫獣人達が作業中にも関わらず、爪を剥き出しにして三巳達を、いえ猫じゃらしを凝視していたのです。
(流石猫をじゃらす天才の草なんだよ)
後で大人達とも猫じゃらそうと密かに計画しつつ、今は子猫達の相手です。
油断をすると猫じゃらしの穂の部分だけ千切れて持って行かれるので、絶妙なタイミングで手を離すのです。
「ふにゃー!」
「ふしゃー!」
宙に浮いた猫じゃらしを2人の子猫獣人が奪い合います。熾烈な空中戦です。
シターン!シターン!
しかしそれに加わらない強かな子猫獣人もいました。目は真っ直ぐ三巳の手を見ています。
「うにゅ!それ!」
その目の言わんとしている事を察知して、三巳は予備の猫じゃらしをパッと素早く取ってシュビッ!と素早く振りました。
「ぐるにゃー!」
子猫獣人は直ぐにそれに飛び掛かりますが、猫じゃらしが真上に逃げてしまいました。それを更に飛び上がって捕まえに行きます。
「あっ!」
「あー!」
三巳の手を離れた猫じゃらしを奪い合っていた子猫獣人達は、その様子に気付いて声を上げました。そして地に落ちた猫じゃらしにはもう目もくれずに新たな猫じゃらしに突進して行きます。
「うにゅ!元気が合ってとっても花丸!」
今度は二刀流で相手をしだした三巳に、子猫獣人達は満足行くまで遊んで貰えたのでした。
子猫獣人達が遊び疲れてお昼寝タイムに入った頃、今度は大人の猫獣人達が仕事を終えてゾロゾロと三巳の元へ集まって来ました。
「俺達も良いかにゃー」
子猫獣人達と違い一筋縄ではいかない歴戦の空気を醸し出す猫獣人達です。
「いーともー♪」
それに三巳は受けて立つとニッパリ笑みを深くして構えます。気分は二刀流の剣豪です。足を踏み締め、腕は前後に広げて構え、相手の出方を伺います。
「っ!」
猫獣人の1人が声にならない気合と共に地を蹴りました。
瞬間肉薄して来た猫獣人を、三巳は体を捻り、猫じゃらしでいなしました。直ぐに猫じゃらしに目が行く猫獣人に足払いを掛け、体勢を崩した背を踏み台に、他の猫獣人へと向かいます。
「あーそーぼー!」
しなやかな猫獣人達は三巳が全力遊びするに不足は無いと、とっても良い笑顔です。
対する猫獣人達も瞳孔を獲物を狙う目に変えて煌めかせました。
「しゃー!」
1人が鋭く伸ばした爪を猫じゃらしに突き立てる様に伸ばせば三巳は横にターンをして躱します。
「に゛っ……!」
1人が跳び上がり真上から両手を突き出して襲いくれば三巳は後方へ跳んで回転します。
「ぐるるぅっ!」
1人がその隙を突いて跳び掛かれば三巳は回転を生かしてモフモフ尻尾で顔を叩き落とします。
「にゃっはっはー!甘い!甘々なんだよ!」
軽やかなステップで挑発をする三巳です。人族とでは違う躍動的な動きに心躍っています。
先程からご満悦に揺れる尻尾は、しかし猫じゃらし並みに猫獣人達の気を引いてしまいました。
「ごくり……。何ていう蠱惑的な尻尾にゃ……」
「ああ……。僕たちを誘っているにゃ……」
「ふえ?ど、どしたんみんな。こあい目になってるんだよ!?」
三巳は背筋に、いえ尻尾に寒気を感じ、ブワリと毛を膨らませ逆立てます。その様子すら猫獣人達の気を引くとも知らずに。
すっかりハンターモードに移行した猫獣人達によって、三巳はこの日、ついに三刀流を会得したのでした。
「三巳別に剣の修行してないんだよ!?」
この日、噂を聞き付け集まった猫獣人達の良き遊び相手となった三巳の悲鳴が聞こえたとか聞こえなかったとか。
「そーれそれそれ♪」
そんな音に愛おしそうに目尻を下げる三巳がいます。
そしてその手には猫じゃらしが握られていました。
「んなぁー……」
「ぐるなー……」
「……」
そしてそしてそんな三巳の前には伏せた状態で瞳孔を細くする子猫獣人達がいました。
子猫獣人達は思い思い唸ったり、無言だったり、苛立ち気に尻尾を叩いたりしています。しかしその目は一心に猫じゃらしを見ていました。
「そーれ♪」
三巳が猫じゃらしを大きく振れば子猫達は一斉に飛び掛かりました。我先にという勢いで飛び掛かり、「俺んだ!俺んだ!」と言わんばかりに奪い合いが勃発しています。
本人達は真面目に闘争本能剥き出しにしていますが、それを見る三巳は完全に子猫の戯れを見るものでした。
(癒されるー♪)
元々ささくれだった思いは有りませんが癒された気分になっています。
そんな三巳ですがチラリと視線を遠くにやって冷や汗を掻きます。
その視線の先。麦畑で仕事をしている大人の猫獣人達が作業中にも関わらず、爪を剥き出しにして三巳達を、いえ猫じゃらしを凝視していたのです。
(流石猫をじゃらす天才の草なんだよ)
後で大人達とも猫じゃらそうと密かに計画しつつ、今は子猫達の相手です。
油断をすると猫じゃらしの穂の部分だけ千切れて持って行かれるので、絶妙なタイミングで手を離すのです。
「ふにゃー!」
「ふしゃー!」
宙に浮いた猫じゃらしを2人の子猫獣人が奪い合います。熾烈な空中戦です。
シターン!シターン!
しかしそれに加わらない強かな子猫獣人もいました。目は真っ直ぐ三巳の手を見ています。
「うにゅ!それ!」
その目の言わんとしている事を察知して、三巳は予備の猫じゃらしをパッと素早く取ってシュビッ!と素早く振りました。
「ぐるにゃー!」
子猫獣人は直ぐにそれに飛び掛かりますが、猫じゃらしが真上に逃げてしまいました。それを更に飛び上がって捕まえに行きます。
「あっ!」
「あー!」
三巳の手を離れた猫じゃらしを奪い合っていた子猫獣人達は、その様子に気付いて声を上げました。そして地に落ちた猫じゃらしにはもう目もくれずに新たな猫じゃらしに突進して行きます。
「うにゅ!元気が合ってとっても花丸!」
今度は二刀流で相手をしだした三巳に、子猫獣人達は満足行くまで遊んで貰えたのでした。
子猫獣人達が遊び疲れてお昼寝タイムに入った頃、今度は大人の猫獣人達が仕事を終えてゾロゾロと三巳の元へ集まって来ました。
「俺達も良いかにゃー」
子猫獣人達と違い一筋縄ではいかない歴戦の空気を醸し出す猫獣人達です。
「いーともー♪」
それに三巳は受けて立つとニッパリ笑みを深くして構えます。気分は二刀流の剣豪です。足を踏み締め、腕は前後に広げて構え、相手の出方を伺います。
「っ!」
猫獣人の1人が声にならない気合と共に地を蹴りました。
瞬間肉薄して来た猫獣人を、三巳は体を捻り、猫じゃらしでいなしました。直ぐに猫じゃらしに目が行く猫獣人に足払いを掛け、体勢を崩した背を踏み台に、他の猫獣人へと向かいます。
「あーそーぼー!」
しなやかな猫獣人達は三巳が全力遊びするに不足は無いと、とっても良い笑顔です。
対する猫獣人達も瞳孔を獲物を狙う目に変えて煌めかせました。
「しゃー!」
1人が鋭く伸ばした爪を猫じゃらしに突き立てる様に伸ばせば三巳は横にターンをして躱します。
「に゛っ……!」
1人が跳び上がり真上から両手を突き出して襲いくれば三巳は後方へ跳んで回転します。
「ぐるるぅっ!」
1人がその隙を突いて跳び掛かれば三巳は回転を生かしてモフモフ尻尾で顔を叩き落とします。
「にゃっはっはー!甘い!甘々なんだよ!」
軽やかなステップで挑発をする三巳です。人族とでは違う躍動的な動きに心躍っています。
先程からご満悦に揺れる尻尾は、しかし猫じゃらし並みに猫獣人達の気を引いてしまいました。
「ごくり……。何ていう蠱惑的な尻尾にゃ……」
「ああ……。僕たちを誘っているにゃ……」
「ふえ?ど、どしたんみんな。こあい目になってるんだよ!?」
三巳は背筋に、いえ尻尾に寒気を感じ、ブワリと毛を膨らませ逆立てます。その様子すら猫獣人達の気を引くとも知らずに。
すっかりハンターモードに移行した猫獣人達によって、三巳はこの日、ついに三刀流を会得したのでした。
「三巳別に剣の修行してないんだよ!?」
この日、噂を聞き付け集まった猫獣人達の良き遊び相手となった三巳の悲鳴が聞こえたとか聞こえなかったとか。
10
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!
黒崎隼人
ファンタジー
皇太子カイルから「政治的理由」で離婚を宣告され、辺境へ追放された悪役令嬢レイナ。しかし彼女は、前世の農業知識と、偶然出会った神獣フェンリルの力を得て、荒れ地を豊かな楽園へと変えていく。
そんな彼女の元に現れたのは、離婚したはずの元夫。「離婚は君を守るためだった」と告白し、復縁を迫るカイルだが、レイナの答えは「ノー」。
「離婚したからこそ、本当の幸せが見つかった」
これは、悪女のレッテルを貼られた令嬢が、自らの手で未来を切り拓き、元夫と「夫婦ではない」最高のパートナーシップを築く、成り上がりと新しい絆の物語。
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
犬の散歩中に異世界召喚されました
おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。
何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。
カミサマの許可はもらいました。
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
幸福なる侯爵夫人のお話
重田いの
ファンタジー
とある侯爵家に嫁いだ伯爵令嬢。
初夜の場で、夫は「きみを愛することはない」というけれど。
最終的にすべてを手にした侯爵夫人のお話。
あるいは、負い目のある伯爵令嬢をお飾りの妻にして愛人とイチャイチャ過ごそうと思ったらとんでもないハズレくじを引いちゃった侯爵のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる