獣神娘と山の民

蒼穹月

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本編

遊園地にあって欲しいもの

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 海中散策を終えて兎と合流した三巳達が、元の姿で丘に戻っています。
 鯉人魚を堪能しつつも海中を隈なく探した三巳は、けれども山の民を見つける事は出来ませんでした。

 「うにゅ。遊園地は広いからな。逸れたら探すの大変なんだよ」

 最終手段は天井を突き破るですが、それではダンジョンが可哀想なのでなるべくしたくはありません。

 (館内放送って有りかな?迷子のお知らせ出来たら便利なんだよ)

 日本人の子供だった頃は迷子のお知らせにお世話になっていました。考えるより行動する子だった三巳はしょっちゅう親と逸れていたのです。
 とはいえここはダンジョンです。三巳の認識では遊園地になっていますがあくまでもダンジョンです。勿論館内放送なんてありません。

 「うーぬ。迷子センター見つけるのが先か、他のチーム見つけるのが先か」
 「迷子センターって何さ」
 「さあ?僕にもわからないけど、多分迷子がいるんじゃないかな?」
 「え?迷子集めてどうすんの。こわぁ」

 三巳の呟きも兎の長い耳には良く聞こえていました。ロダと小声で話してドン引きしています。

 (他のチームは迷子じゃないからどのみちいないと思うけど)

 ロダは思いましたが口にはしませんでした。本気で悩んでいる三巳に無粋な真似は出来ません。

 「それであと何処行くんだ?」

 気持ちを切り替えた三巳は兎を見ます。
 兎は鼻をヒクンとひくつらせて見上げます。そして片耳を前脚でクシクシ掻いてからその脚で方向を示しました。

 「この先に砂漠の国がある。そこの魔女神王様に会うのさ」
 「魔女人?」

 初めて聞く名称にロダが目を瞬かせ、三巳も何か違うと胡乱な目を返します。

 「魔神の女版さ。ティーポットに正しい手順で紅茶を淹れると現れるんだ」
 「へえ、世界には色んなひとが居るんだね」

 世界の広さに感動するロダです。
 その横で三巳がやっぱり何か違うと思っています。

 「それで兎は正しく淹れられるの?」
 「まさか!宰相様に面会を申し込んで会わせて貰うのさ。おいそれと魔女神王様呼び出せないだろ」

 そもそも王様を知らないロダは言わんとしている事がわかりません。だってお姫様なリリは今やロダの妻ですからね。

 「その呼び出した宰相の願いを3つ、魔女神王は聞くのか?」

 一縷の望みを賭けて三巳が固唾を呑んで尋ねると、兎はキョトンとします。

 「良く知ってるね。でも魔女神王様はもう願いを叶えてあるんだ。その一つが砂漠の国を治める事なのさ」

 既に終わった、いえ現在進行形で叶え続けてる話でした。

 「アラジンもアリババも居ないのか……」

 ガックリ項垂れる三巳を他所に兎はピョン!と大きく跳ねて前へ進みます。

 「ほらほら!ウチの女王様は気が短いんだから、急ぐよ!」

 言われて漸く三巳も早く山の民を見つけなきゃと思いました。頷き瞬く間に本性の狼に戻ると、

 『三巳の背に乗ってけば速い』

 とショートカットを提案します。
 それを見た兎は耳をピン!と真っ直ぐ真上に立てて固まってしまいました。だって大きな大きな狼の神に高みから覗かれたら堪ったものじゃありません。
 動かなくなった兎をロダが抱き上げると、一足飛びに三巳の背に乗ります。

 「走りながら途中で見つかると良いけど」
 『うぬ。まあ、もしかしたらロウ村長とレオが残りと合流してるかもしれないしな。焦らず。でも急いで行くんだよ』

 という訳で脱兎も驚く速さであっという間に砂漠の国に到着です。
 三巳はロダと兎を降ろすと砂壁で周囲を囲って人型になります。未だに変身と着替えが両立出来ないので、壁の中で着替えるのです。
 砂壁の中の三巳は一旦置いといて、ロダは白目を剥いた兎を揺さぶり正気に戻しました。

 「んは!?あれ?砂漠の国?ワープ?」

 混乱する兎を撫でて宥めている間に三巳も着替えが終わります。

 「お待たせなんだよ。そいじゃ行こー♪」
 「はっ!そうだった。早くお知らせしないと」

 我に返った兎はピョンッと跳んで砂のお城へ向かいました。三巳達も一応ついて行きますが、

 「また中には入れないかもね」
 「うにゅ。砂漠のお城は忍び込むのに空飛ぶ絨毯が欲しい」
 「ええ?絨毯なのに飛ぶの?」
 「憧れの乗り物。空飛ぶ箒に次いで乗ってみたいんだよ」
 「……もしかしてだけど、それって物語の話だったりする?」
 「んにゅ?ロダには聞かせた事無かったか?」
 「僕が小さい頃に聞かせて貰ったのは、桃太郎とか金太郎とかだった」

 言われて三巳は上を向いて思い出そうと思考を巡らせます。そしてロダ世代は男の子には日本の童話を、女の子には海外の童話を聞かせていたかもと思い至ります。

 「そいじゃ他のチームを探しつつ、お城目指しつつ、お話するな」

 ピョンピョン先を行く兎の後をついて歩き、周囲を観察しながら三巳は砂漠が舞台の物語を話せるだけ話しました。
 お気に入りはアラジンなのでお話も熱が入っています。

 「楽しいお話だね」

 お話を聞き終わったロダもすっかり空飛ぶ絨毯に乗りたくなりました。ついつい露店を見つけては絨毯が動かないか確認しちゃいます。

 「残念だけど売ってはないみたい」
 「うにゅぅ。遊園地ならアトラクションが欲しかったんだよ」

 とっても残念ですが、もう目的地に着きました。目の前にはアラブの宮殿がドンとした迫力で建っています。

 「やあ宰相様は忙しいかい?」
 「宰相様はいつも忙しくしてるよ。でも兎の女王様の事なら最優先で会ってくれるのさ」
 「それは毎度ありがたい事で。じゃあ通して貰うよ」
 「どうぞどうぞ」

 兎はアラブの門番にお礼を言ってピョンピョン中へと入って行きました。

 「三巳とロダは入って良い?」

 三巳はお行儀良くアラブの門番の前で確認します。
 アラブの門番はジッと三巳を見て、そしてニッコリ笑いました。

 「兎のお友達なら大歓迎さ。我等が女王様は魔女神様だからね。誰が来たって対応出来る」
 「おお!それは頼もしいんだよっ。三巳も見習わなきゃだけど……」

 最後の方は尻窄みになる三巳です。だって怖いのは嫌なんです。
 兎にも角にも憧れのアラブの宮殿にいざ「お邪魔します」です。
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