恋愛相談から始まる恋物語

菜の花

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印象付け作戦

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「京都弁は男の子の憧れじゃない!? ならその方言で告白した方が、成功率は上がると思うんだよ!」

「それは京都出身の子だけが使える特権なんだよ。都会育ちのエセ京都弁なんて、無意味だと思うぞ」

「ならどの方言なら相手の心を掴めるかな?」

「まず方言から離れようか? そこに拘ってたら一生先に進まない」

「ええ~? いい作戦だと思ったのに~」

俺達は今、学校の帰り道にあるファストフード店に来ている。

あの後何回も断ったが、それでも全く折れずに俺にお願いをしてくる四月に、俺が折れた感じだ。

「そもそもさ、俺って恋愛経験ないんだけど? アドバイス出来る事ないと思うよ?」

そう、俺は生まれてこの方恋人がいた事がない。

欲しいとは思うが、そこまでは欲がないな。

恋愛って疲れそうだし。

「ノンノンノン! 逆に恋愛をした事がなくて、恋人がいた事もない如月くんだからこそ、頼めるんだよ!」

「逆にの意味が分からないけど、とりあえず聞くだけ聞こうか」

「如月くんは、恋愛をした事もなくて恋人がいた事もないじゃん?」

「事実なんだけど言い方にトゲを感じるから、恋愛経験が無いっていう風にしてくれ」

別に好きで独り身になっている訳じゃねーし。

俺だって彼女は欲しいと思っているからな。

「細かいなー。とりあえず、如月くんは恋愛経験が無いから、変な先入観とかなくて、物事を客観的に見れるでしょ?」

「ん~まあ、そうなるのか?」

「そうだよ! 現に、私の京都弁告白大作戦も指摘してくれたし!」

「あれは恋愛経験の有無に関わらず、みんなおかしいと思うから、俺だけじゃないからな」

「え、そうなの!? 友達からそう聞いたんだけどな~」

「ようわからんが、とりあえずそいつは当てにしない方がいいな」
 
「えー。んじゃあ、どんなのがいいの?」 

「それじゃあ聞くが、四月はその先輩とはどこまで行ったんだ?」

「行く? 私、先輩とどこかに行ったことないよ?」

「・・・・・・。言い方を変える。先輩とはどんな事をしてきた?」

「どんな事って?」

「例えば、デートに行ったとか、絡みはあるのかって事だ」

「あ! それならあるよ! 私、先輩に挨拶した事あるもん!」

「それは恋愛においてはノーカンだ。となると、相手は四月の事を認知すらしていないだろうな。あのまま告白すれば、意味のわからない京都弁で告白してきた変わった奴だと認識されてただろう」

「ええ? うそぉ・・・」

「だからまず、最初にやる事はその相手との接触だ」

「い、色仕掛けって事・・・?」

「何でそっちの方になるかな・・・」

「うぅぅ・・・」

本当に、四月は恋愛に関してポンコツだった。

こんなんじゃ、恋人なんか作れそうにないだろう・・・。

「色仕掛けじゃなくて、相手の印象に残るように絡むって事。まず相手に、四月 七という存在を認識させる事」

「なるほどなるほど」

鞄からメモ帳らしき物を手に取り、律儀に書いているこの四月。

本当に先が思いやられるな。

その後も、俺と四月との作戦会議は続くのだった。

 




 


「ねぇ、本当にやるつもりなの?」

「当たり前だ。むしろこれくらい出来なくてどうする」

「いきなりこれはハードル高くない?」

「ほぼ絡みゼロのくせに、告白しようとしたバカが何を言ってる」

「今、バカって言った!? バカって言う方がバカだもん!」

「静かにしろ。そろそろ休憩時だぞ。よく見てタイミング伺え」

「う、うん・・・」

俺と四月は、今とある作戦を実行しようとしている。

その名も、


《積極的にさりげなく話しかけよう大作戦!》


ちなみに、このネーミングセンスは四月クオリティーな?

積極的なのかさりげないのか、どっちなのか知らないけど、とりあえず分かるのは、頭悪い作戦名だって事だ。

作戦名だけじゃ何が何だか分からないだろうから、少し説明しよう。

四月の憧れている先輩は、野球部に所属している。

んで、その部活動の最中には休憩時間が存在している。

その休憩時間になると、野球部の大体の生徒はこの給水場を訪れる。

そして、ここに先輩がやってきたら話しかける。

『いつも部活動、お疲れ様です!』

っと、まあこういった具合にだ。

いきなり仲良くなろうとしなくていい。

まずは些細な事だ、本当に些細な事でいい。

印象付けから始めよう。

例の先輩に、四月 七という存在を認識させる。

話はそこからだ。

印象もないのに、いくら策を講じても、暖簾に腕押しだ。

「そろそろだぞ。準備は良いか? 四月?」

「うぅぅ・・・。緊張してきた・・・」

「京都弁で告ろうとしていたやつとは思えないな・・・」

緊張のせいか、隣で足をガタガタ震えさせている四月。

この調子で本当に大丈夫かよ・・・。

そんな事を考えていると、遠くの方から野球部らしきユニホームを着た連中がこちらに向かってやってきた。

「四月、来たぞ。チャンスを逃すなよ?」

「う、うん・・・!」

俺と四月は、先輩の姿を見逃さない様に視線に集中させた。

次から次へと人がこの給水場にやってくるが、肝心の先輩の姿はどこにも見当たらない。

「おい、今日ってもしかしてその先輩休みか?」

「そんな事はないはずだよ? 今日体育の授業の時いたもん」

「そうか。あ、お前授業中に怒られてたのそれ見てたからか?」

授業中、いきなり四月が黄色い声上げて、先生に説教されてたんだよな。

「ち、違うよ!? 先輩の走ってる姿がカッコいいとかそんなので興奮とかしてた訳じゃないから! 全然ないから!」

「自白したな、お前」

「はっ・・・」

隣で顔を真っ赤にして頬を膨らませている四月バカはほっといて、再度先輩を確認するが、やはり見当たらない。

「なぁ、もしかして部活は休んでるんじゃないか?」

「そこまでは把握してないけど、でもいないもんね~」

「また明日にでも日を改めるか?」

俺は四月に向かってそう言った。

だが、肝心の四月には、俺の言葉は届いていないらしい。

何やら一点を見つめて動かなくなったぞ。

ん? もしかして?

俺はゆっくりと、四月の見ている方に視線を向けた。

そこには、四月の意中の先輩がいた。

なるほど、ヒーローは少し遅れての登場ってか?

しかし、それはこちらとしては好都合だった。

先輩は、今1人でこちらに向かってきている。

1対1なら四月も話かけやすいだろう。

「四月、そろそろ準備しろ」

(ぱぁぁぁぁぁぁ!)

なんだろう。こいつ完全にフリーズしてやがる・・・。

頭の周りを、天使達がぐるぐる回っている気がした。

んなところで見惚れてるんじゃねーよ。

俺は、四月の頭をチョップして現実へ引き戻した。

「痛っ! 何するの!? 暴力変態!」

「初めて聞いたぞ、それ。とりあえず集中しろ、こんなチャンス滅多にないぞ」

そう、例の先輩は男女共に人気が高い故に、取り巻きも多いし一人でいる時が少ないのだ。

だから、今は最高にして絶好のチャンス。

先輩が給水場に到着して、水を飲み出した。

よし、四月行け。

俺はそんな思いを込めて、四月の背中を軽く叩く。

「ちょっ・・・へ!?」

俺の感覚としては、本当に軽く叩いたつもりだったんだけどな・・・。

俺の力が強かったのか、四月がびっくりしたのか、或いは両方なのか。

数歩進んだ先で、四月は見事に転倒。

うむ、パンツは白のクマ柄か。

「・・・君、大丈夫?」

すると、例の先輩が四月に話しかけていた。

いやまあ、結果オーライじゃね?

通常よりは印象ついただろこれ。

後は、ありがとうございますから話を繋げていけば上出来。

「・・・い、いつも部活動お疲れ様でしゅ・・・!」

え? そこまず『ありがとうございます』じゃないの? それに噛んだし。

「え?・・・あ、ありがとう・・・。それより大丈夫?」

「私、四月 七って言います・・・!」

なんでそのタイミングで自己紹介始めてるの? 違くない?

てか先輩、すっごい困惑してるし。

「う、うん・・・。血が出てるし、保健室行こうか?」

「だ、大丈夫です!」

「お~い五月~。先生が呼んでるぞ~」

遠くで、先輩を呼ぶ声が聞こえた。

「ごめん、行かなきゃだから。無理しちゃダメだよ? それじゃあ」

「あっ・・・」

そう言って、先輩は四月に背を向けグラウンドの方へ走っていった。

四月の後ろ姿が、とても寂しそうに見えてしまった。

俺のアプローチがなければ、もう少し上手くやれていたかもしれない。

少し、申し訳ない事してしまった。

「四月、悪りぃ・・・」

「・・・如月くん」

「はい・・・」
 
これは2、3発ビンタでもくらうか?

そう思い、歯を食いしばり目を閉じる。

「これ、作戦大成功じゃない!?」

「は?」

思わずそんなセリフが出てしまった。

こいつ何言ってんだ?

「だってさ~、今ので絶対印象付いたと思わない!?」

思うよ。印象は付いただろうよ。

だが良い意味では付いていないだろう。

悪い意味でもないが、なんかこう・・・不思議ちゃん? みたい感じだ。

だが、目の前で嬉しそうに飛び跳ねながら喜んでいる四月に、そんな事は言えず・・・。

「ははは・・・。印象ついたと思うぞ」

「やっぱり如月くんもそう思う~!? 作戦大成功だね~!」

現実はもっと残酷だが、喜んでる所に水を差すのはやめておこう。

だが、これで俺の役目も終わりだ。

きっかけは作った。後は四月のアプローチ次第だ。

「良かったな。んじゃ、俺はもう帰るからな」

「へ? 何言ってるの? 次の作戦考えないと行けないんだよ?」

「え? まだ俺関わらなきゃいけないの・・・?」

「当たり前でしょ! ほら! 次の作戦考えるよ!」

そう言いながら、俺の手を引いて教室へと走り出す四月。

俺と四月の関係は、どうやらしばらく続きそうです。

「次も頑張ろうね! えい、えい、おー!」

「・・・・・・」

「そこはノってよぉ・・・」

「いや、さすがにえいえいおー! はないだろ・・・」
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