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お出かけ案件は唐突に
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とある日の昼休みの話だ。
「如月君。四月さんが呼んでるよ」
クラスメイトの女子が俺にそう言ってきた。
昼休みに、他クラスの生徒が来る事は何ら不思議ではなかった。
だが、まさかその目的が俺とは思わなかった。
ドアの方に目をやると、元気溌剌に手を振っている、四月の姿があった。
クラスの連中も見てるんだから、そんなにはしゃがないで欲しいんだが・・・。
「ありがとう」
俺は先ほどのクラスメイトの女子にそう言って、四月の元へ歩いて行った。
「何のようだ? わざわざクラスにまで来て」
「大変なんだよ! ビックニュースだよ、ビックニュース!」
四月は、とても興奮している様子で、鼻息も荒くなっている。
女子がみっともないぞ。
「分かったから落ち着け。とりあえず場所を変えよう」
俺は四月にそう言って、2人で教室を後にした。
向かった先は屋上だ。
ここ最近、昼休みは特に制限される事なく解放されているが、この事は生徒達はあまり知られていない。
「んで、用はなんだ?」
「五月先輩の好みが分かったの!」
「ほう、それは良かったじゃないか。ってかそれ俺に報告する意味なくなね?」
「オシャレな人が好きなんだって! オシャレ!」
「俺の質問の答えはどうしたよ・・・」
相変わらずこの子は人の話を聞かない子ですね~。
お兄さん悲しくなってくるな・・・。
「今週の土曜日って如月くん空いてるよね!? 暇でしょ!?」
「そう言われるとムカっとするな。実際そうだから何も言えないけど」
「買い物行こう! オシャレな服探しに!」
「嫌だよ。面倒くさい」
俺は別に、流行に敏感な訳でもないし、オシャレとか全く知らないし分からない。
要は、俺が付いていっても何の役にも立たないのだ。
「面倒くさいって酷くない!? でも如月くんがいないとダメなの!」
「なんでだよ? 俺、別に流行とかに敏感じゃないしオシャレとか知らねーぞ?」
「男子の目線から物事を見れるでしょ! こーゆーのが好みとかアドバイスしてよ!」
「お前が知りたいのは、俺の好みじゃなくて先輩の好みだろ?」
「もう、いいから行くの! 異論、反論、抗議、質問等は一切禁止! ダメ、絶対!」
顔の目の前で、バッテンのポーズをつくる四月。
んな自分勝手な理由があるかよ・・・。
「んじゃ、スマホ出して!」
「は? 何でだよ?」
「連絡先交換するからに決まってるじゃん! 待ち合わせの時間とか、場所とか決めないとでしょ?」
「だから何で、俺が行く前提で話が進んでるんだ?」
「来ないと酷いよ?」
「酷くていいから行かなくていいか?」
すると、頬を膨らませこちらを睨んでくる四月。
いや、その歳でそんな小学生みたいな抗議の仕方やめろよな、見てて恥ずかしいから。
「こんな可愛い天使の七ちゃんと休日デート出来るんだよ!? これは行くしかなくない!?」
「本当に可愛い天使だったら、行ったかもしれないな」
「ほんっとうに如月くんは乙女心が分かってないなー!」
「お前は男心が分かってねーだろ」
「うるさい! バカ! 変態! 強姦されそうになったって言いふらしてやる!」
「お前天使じゃなくて悪魔だろ・・・」
その後も俺と四月の言い合いは続いたが、結局の所は俺が折れるという形になり、連絡先を交換して一緒に買い物に付き合う事になってしまった。
・
時刻は10時ピッタリ。
待ち合わせ時間丁度になった。
だが、言い出しっぺの四月がまだきていない。
俺はしっかり15分前行動として現地に着いた。
なんかもう帰ろうかな?
待ち合わせ時間になっても来なかったから帰ったって後で連絡しておけばいっか。
俺は、腰掛けていたベンチから重い腰を上げた。
すると、俺の視界は真っ暗闇に包まれた。
「だ~れだっ!?」
「誰でもいいけど俺もう帰るからな」
「ちょっと待って早いよ!? まだ待ち合わせ場所で会っただけだよ!?」
「遅れてきといて謝罪もないってどーゆー事だ?」
「うぅぅ・・・それはすみません・・・」
今回は素直に謝ってきたので、良しとするか。
もし変に突っかかってきたら、間違いなく帰るところだったけどな。
「とりあえず行くぞ。時間は有限だ」
「待って、さっきのどうだった!?」
「あ? さっきのってなんだよ?」
「目隠しのやつ! どう!? ドキッとした!?」
「ドキッというよりイラッとしたな」
「なんでよぉ・・・。これをすれば男の子はイチコロって雑誌に書いてあったのに・・・」
「そんなんでコロされてたまるかよ。それにその偏差値低そうな雑誌は読むのやめろ。そんなの読んだって役に立たないからな」
「如月くんってもしかしてアブノーマル系男子なの?」
「俺は至って普通だ。むしろ四月がポンコツ系女子なだけだからな」
ここ最近では、俺と四月は会話すればする程こういった形で言い合いをしている。
基本的に、四月が馬鹿な発言してくるのが原因だ。
そんなこんなで俺と四月は、目的の場所へ向かう事にした。
電車に揺られること15分。
そして駅から歩く事10分。
俺と四月は、大型のショッピングモールへとやってきた。
「如月くんはここ来たことある?」
「いや、初めてだな」
「そうなんだ、私が初めての相手で良かった?」
「・・・一応聞くが、悪気はないんだよな?」
「へ? 何のこと?」
うむ。これは無自覚パターンだな。
さらっと何言ってんの? って思ってしまった。
いや、そう解釈した俺の心が汚れているって事だろう。
とりあえず冷静になろう。
俺は仏だ、仏。
「そういや、オシャレな人が好きって言ってたらしいが、具体的にどんな事かは聞いたのか?」
「え? それは聞いてないけど?」
はい、既に詰んでました。お疲れ様でした。
「いや、ある程度好み知らないと、オシャレのしようがないだろ・・・」
俺はおもわず頭を抱えてしまった。
どうしてこんなにも四月はポンコツなのだろうか・・・。
「ん~、何とかなるよっ!」
俺の苦悩とは真逆に、クソポジティブシンキングな四月。
なんかもうバカバカしくなり、俺はもう四月に任せる事にした。
「如月くんは、どんな女の子の服装が好みなの?」
暫く無言で歩いていたが、不意に四月が俺にそう質問してきた。
俺の好みの服装?
正直これといって特にはない。
スカートでもズボンでも構わないしな。
あ、サルエルパンツとかはすこしダサいと思ってしまうかな。
「特に好みはないな。好きになった人の服装が好きになるだろうし」
「それ言ってて恥ずかしくない?」
「うっせ。前にも言ったけどさ、俺はそもそも恋愛経験がないんだぞ? 参考にもならないし、当てもならないんだぞ」
「大丈夫だよ! 如月くんは、もっと自分に自信持って!」
別に励ましてもらいたいとかそんなつもりで言った訳じゃないのに、何故か変に同情されてしまった。
だが、俺の悪夢はまだ始まりに過ぎなかった。
・
俺は確か、四月のオシャレ探しの旅に来たはずだったが・・・。
「ねぇねぇ如月くん! このチョコレート美味しそうじゃない!?」
「あ? ああ、確かに美味しそうだな」
「食べてみたいな~。すごく美味しそうだな~」
「・・・・・・」
「買ってくれないの?」
「いや、彼女でもあるまいし買わないから」
「女心が分かってないな~、如月くんは」
「そのセリフを言えば、何でも正当化されると思うなよ?」
先程から、こんな感じのやり取りをずっとしている。
四月が立ち止まるお店は、例外なくお菓子系のお店だ。
そして美味しそうと呟き、俺に奢ろろうとする。
だが俺は、そんな四月を軽く流す。
「てかさ、さっきから食べ物ばっかじゃねーか?オシャレに関しての行動一切ないじゃねーか」
「ち、違うよ!? これは天使の誘惑なの! 悪魔の罠なの!」
「どっちだよそれ・・・」
「あ、あのアクセサリーショップ見に行こうよ!」
そのまま四月に手を引かれ、アクセサリーショップへと足を運ぶ。
店内はピンク色のベースの壁紙に包まれ、いかにも女の子らしい空間が広がっていた。
男1人なら絶対に立ち入る事は躊躇してしまうであろう。
「如月くんみてみて! どう!? 頭良く見える!?」
スタンドに置いてある、黒色の縁をしたメガネをかけ、キメポーズをしながら四月が俺に聞いてくる。
「メガネしてると頭良いって発想が、既に頭悪いんだよな」
「むぅ、如月くんのバカっ!」
「バカはお前だ」
とは言ったものの、伊達眼鏡というのはファッションにおいて特別珍しいって訳でもなく、場合によってはインパクトを与えられる代物だ。
特にメガネフェチの奴だとな。
俺はそうじゃないけど。
「このシュシュとか可愛くない!? カラフルな水玉模様だよっ!」
「いいんじゃないか? 全然四月っぽくないけどな」
「私っぽくないってどーゆー事?」
四月がジト目で睨んでくる。
特に理由はないが、なんか四月っぽくなかったのだ。
「特に理由はねーよ」
「なにそれ~? もっとちゃんと考えてよね~」
四月はふてくされて、シュシュを戻した。
いや、これお前の恋愛の為だから自分が一番考えろよ・・・。
「よし、今日の本命はここだよっ!」
「は? えっ?」
アクセサリーショップを出て、暫く歩いた所で四月が急に足を止め、そんな事を言ってきた。
だが、俺の目の狂いがなければ、そのお店は女性用下着の販売店だった。
色取り取りの下着が、一覧となって並んでいる。
そして隣にいる四月は、普通に歩いて進んでいく。
「ちょ、ちょっと待て四月!」
俺は四月の右手を掴んで、そう言った。
「ん? どうしたの?」
「いや、本当にこのお店か? ここ下着屋さんだぞ?」
「うん? 知ってるしここで間違ってないよ?」
四月は間違えているのではなく、明確な自分の意思と目的を持って、ここのお店にきた事を再認識した。
いや、普通になんで? ただの自分の買い物か?
それならそれで、納得はできるが・・・。
「俺は店の前で待ってるから」
四月が個人的に買いに来ているだろうから、俺が一緒に店に入る理由はない。
そもそも入れるかっつーの。
ただの公開処刑じゃねーか。
「え? なんで来ないの?」
「いや、お前が個人的に行きたいお店だろ?」
「違うよ! オシャレの為だよ! オシャレの為!」
いや、確かに勝負下着とかって概念はあるけど、それをヤるにしても、そもそもお前と先輩はそこまでの仲になっていないだろうが・・・。
それとも色仕掛けで強行突破するって事か?
そこら辺の男子高校生なら、割とイチコロネできるだろうが、もっと別のやり方でいいんじゃないか?
「焦る気持ちも分かるが、そういうやり方じゃない方法の方が良くないか? お前軽く見られるぞ?」
「あ、分かるー? 少し痩せたのー!」
「・・・・・・」
俺は、そのまま無言で四月の脳天にチョップをした。
ここまでポンコツな奴は、本当に初めて見たぞ俺。
「痛っ! ちょっと!? 暴力変態!」
「今変態なのはお前だ。ってか誰かの入れ知恵か? じゃないとお前、そんな身売りみたいな事しないだろ」
すると四月は、何やらスマホを操作している。
そしてすぐに、俺にその画面を見せてきた。
《見えない所での努力を惜しまない事!》
「だからだよ~っ! 女の子たるもの、見えない所にまで気を使わないと、今時モテないんだよ!」
「違うだろーが! 見えない所って身体的な部分の事じゃねーから」
「ええ!? じゃあどーゆー事なの?」
「化粧頑張ったり、手作りクッキー作ったりとか、そういう事だろうよ。普通に考えて分かるだろうが」
「なるほど。やはり如月くんは天才だね!」
「お前がバカなだけだから・・・」
相変わらずのポンコツぶりだったので、俺は盛大にため息を零した。
本当にこんな調子で、上手くいくのだろうか?
隣で楽しそうに鼻歌を歌いながら歩いている四月を横目に、そう思う俺であった。
「如月君。四月さんが呼んでるよ」
クラスメイトの女子が俺にそう言ってきた。
昼休みに、他クラスの生徒が来る事は何ら不思議ではなかった。
だが、まさかその目的が俺とは思わなかった。
ドアの方に目をやると、元気溌剌に手を振っている、四月の姿があった。
クラスの連中も見てるんだから、そんなにはしゃがないで欲しいんだが・・・。
「ありがとう」
俺は先ほどのクラスメイトの女子にそう言って、四月の元へ歩いて行った。
「何のようだ? わざわざクラスにまで来て」
「大変なんだよ! ビックニュースだよ、ビックニュース!」
四月は、とても興奮している様子で、鼻息も荒くなっている。
女子がみっともないぞ。
「分かったから落ち着け。とりあえず場所を変えよう」
俺は四月にそう言って、2人で教室を後にした。
向かった先は屋上だ。
ここ最近、昼休みは特に制限される事なく解放されているが、この事は生徒達はあまり知られていない。
「んで、用はなんだ?」
「五月先輩の好みが分かったの!」
「ほう、それは良かったじゃないか。ってかそれ俺に報告する意味なくなね?」
「オシャレな人が好きなんだって! オシャレ!」
「俺の質問の答えはどうしたよ・・・」
相変わらずこの子は人の話を聞かない子ですね~。
お兄さん悲しくなってくるな・・・。
「今週の土曜日って如月くん空いてるよね!? 暇でしょ!?」
「そう言われるとムカっとするな。実際そうだから何も言えないけど」
「買い物行こう! オシャレな服探しに!」
「嫌だよ。面倒くさい」
俺は別に、流行に敏感な訳でもないし、オシャレとか全く知らないし分からない。
要は、俺が付いていっても何の役にも立たないのだ。
「面倒くさいって酷くない!? でも如月くんがいないとダメなの!」
「なんでだよ? 俺、別に流行とかに敏感じゃないしオシャレとか知らねーぞ?」
「男子の目線から物事を見れるでしょ! こーゆーのが好みとかアドバイスしてよ!」
「お前が知りたいのは、俺の好みじゃなくて先輩の好みだろ?」
「もう、いいから行くの! 異論、反論、抗議、質問等は一切禁止! ダメ、絶対!」
顔の目の前で、バッテンのポーズをつくる四月。
んな自分勝手な理由があるかよ・・・。
「んじゃ、スマホ出して!」
「は? 何でだよ?」
「連絡先交換するからに決まってるじゃん! 待ち合わせの時間とか、場所とか決めないとでしょ?」
「だから何で、俺が行く前提で話が進んでるんだ?」
「来ないと酷いよ?」
「酷くていいから行かなくていいか?」
すると、頬を膨らませこちらを睨んでくる四月。
いや、その歳でそんな小学生みたいな抗議の仕方やめろよな、見てて恥ずかしいから。
「こんな可愛い天使の七ちゃんと休日デート出来るんだよ!? これは行くしかなくない!?」
「本当に可愛い天使だったら、行ったかもしれないな」
「ほんっとうに如月くんは乙女心が分かってないなー!」
「お前は男心が分かってねーだろ」
「うるさい! バカ! 変態! 強姦されそうになったって言いふらしてやる!」
「お前天使じゃなくて悪魔だろ・・・」
その後も俺と四月の言い合いは続いたが、結局の所は俺が折れるという形になり、連絡先を交換して一緒に買い物に付き合う事になってしまった。
・
時刻は10時ピッタリ。
待ち合わせ時間丁度になった。
だが、言い出しっぺの四月がまだきていない。
俺はしっかり15分前行動として現地に着いた。
なんかもう帰ろうかな?
待ち合わせ時間になっても来なかったから帰ったって後で連絡しておけばいっか。
俺は、腰掛けていたベンチから重い腰を上げた。
すると、俺の視界は真っ暗闇に包まれた。
「だ~れだっ!?」
「誰でもいいけど俺もう帰るからな」
「ちょっと待って早いよ!? まだ待ち合わせ場所で会っただけだよ!?」
「遅れてきといて謝罪もないってどーゆー事だ?」
「うぅぅ・・・それはすみません・・・」
今回は素直に謝ってきたので、良しとするか。
もし変に突っかかってきたら、間違いなく帰るところだったけどな。
「とりあえず行くぞ。時間は有限だ」
「待って、さっきのどうだった!?」
「あ? さっきのってなんだよ?」
「目隠しのやつ! どう!? ドキッとした!?」
「ドキッというよりイラッとしたな」
「なんでよぉ・・・。これをすれば男の子はイチコロって雑誌に書いてあったのに・・・」
「そんなんでコロされてたまるかよ。それにその偏差値低そうな雑誌は読むのやめろ。そんなの読んだって役に立たないからな」
「如月くんってもしかしてアブノーマル系男子なの?」
「俺は至って普通だ。むしろ四月がポンコツ系女子なだけだからな」
ここ最近では、俺と四月は会話すればする程こういった形で言い合いをしている。
基本的に、四月が馬鹿な発言してくるのが原因だ。
そんなこんなで俺と四月は、目的の場所へ向かう事にした。
電車に揺られること15分。
そして駅から歩く事10分。
俺と四月は、大型のショッピングモールへとやってきた。
「如月くんはここ来たことある?」
「いや、初めてだな」
「そうなんだ、私が初めての相手で良かった?」
「・・・一応聞くが、悪気はないんだよな?」
「へ? 何のこと?」
うむ。これは無自覚パターンだな。
さらっと何言ってんの? って思ってしまった。
いや、そう解釈した俺の心が汚れているって事だろう。
とりあえず冷静になろう。
俺は仏だ、仏。
「そういや、オシャレな人が好きって言ってたらしいが、具体的にどんな事かは聞いたのか?」
「え? それは聞いてないけど?」
はい、既に詰んでました。お疲れ様でした。
「いや、ある程度好み知らないと、オシャレのしようがないだろ・・・」
俺はおもわず頭を抱えてしまった。
どうしてこんなにも四月はポンコツなのだろうか・・・。
「ん~、何とかなるよっ!」
俺の苦悩とは真逆に、クソポジティブシンキングな四月。
なんかもうバカバカしくなり、俺はもう四月に任せる事にした。
「如月くんは、どんな女の子の服装が好みなの?」
暫く無言で歩いていたが、不意に四月が俺にそう質問してきた。
俺の好みの服装?
正直これといって特にはない。
スカートでもズボンでも構わないしな。
あ、サルエルパンツとかはすこしダサいと思ってしまうかな。
「特に好みはないな。好きになった人の服装が好きになるだろうし」
「それ言ってて恥ずかしくない?」
「うっせ。前にも言ったけどさ、俺はそもそも恋愛経験がないんだぞ? 参考にもならないし、当てもならないんだぞ」
「大丈夫だよ! 如月くんは、もっと自分に自信持って!」
別に励ましてもらいたいとかそんなつもりで言った訳じゃないのに、何故か変に同情されてしまった。
だが、俺の悪夢はまだ始まりに過ぎなかった。
・
俺は確か、四月のオシャレ探しの旅に来たはずだったが・・・。
「ねぇねぇ如月くん! このチョコレート美味しそうじゃない!?」
「あ? ああ、確かに美味しそうだな」
「食べてみたいな~。すごく美味しそうだな~」
「・・・・・・」
「買ってくれないの?」
「いや、彼女でもあるまいし買わないから」
「女心が分かってないな~、如月くんは」
「そのセリフを言えば、何でも正当化されると思うなよ?」
先程から、こんな感じのやり取りをずっとしている。
四月が立ち止まるお店は、例外なくお菓子系のお店だ。
そして美味しそうと呟き、俺に奢ろろうとする。
だが俺は、そんな四月を軽く流す。
「てかさ、さっきから食べ物ばっかじゃねーか?オシャレに関しての行動一切ないじゃねーか」
「ち、違うよ!? これは天使の誘惑なの! 悪魔の罠なの!」
「どっちだよそれ・・・」
「あ、あのアクセサリーショップ見に行こうよ!」
そのまま四月に手を引かれ、アクセサリーショップへと足を運ぶ。
店内はピンク色のベースの壁紙に包まれ、いかにも女の子らしい空間が広がっていた。
男1人なら絶対に立ち入る事は躊躇してしまうであろう。
「如月くんみてみて! どう!? 頭良く見える!?」
スタンドに置いてある、黒色の縁をしたメガネをかけ、キメポーズをしながら四月が俺に聞いてくる。
「メガネしてると頭良いって発想が、既に頭悪いんだよな」
「むぅ、如月くんのバカっ!」
「バカはお前だ」
とは言ったものの、伊達眼鏡というのはファッションにおいて特別珍しいって訳でもなく、場合によってはインパクトを与えられる代物だ。
特にメガネフェチの奴だとな。
俺はそうじゃないけど。
「このシュシュとか可愛くない!? カラフルな水玉模様だよっ!」
「いいんじゃないか? 全然四月っぽくないけどな」
「私っぽくないってどーゆー事?」
四月がジト目で睨んでくる。
特に理由はないが、なんか四月っぽくなかったのだ。
「特に理由はねーよ」
「なにそれ~? もっとちゃんと考えてよね~」
四月はふてくされて、シュシュを戻した。
いや、これお前の恋愛の為だから自分が一番考えろよ・・・。
「よし、今日の本命はここだよっ!」
「は? えっ?」
アクセサリーショップを出て、暫く歩いた所で四月が急に足を止め、そんな事を言ってきた。
だが、俺の目の狂いがなければ、そのお店は女性用下着の販売店だった。
色取り取りの下着が、一覧となって並んでいる。
そして隣にいる四月は、普通に歩いて進んでいく。
「ちょ、ちょっと待て四月!」
俺は四月の右手を掴んで、そう言った。
「ん? どうしたの?」
「いや、本当にこのお店か? ここ下着屋さんだぞ?」
「うん? 知ってるしここで間違ってないよ?」
四月は間違えているのではなく、明確な自分の意思と目的を持って、ここのお店にきた事を再認識した。
いや、普通になんで? ただの自分の買い物か?
それならそれで、納得はできるが・・・。
「俺は店の前で待ってるから」
四月が個人的に買いに来ているだろうから、俺が一緒に店に入る理由はない。
そもそも入れるかっつーの。
ただの公開処刑じゃねーか。
「え? なんで来ないの?」
「いや、お前が個人的に行きたいお店だろ?」
「違うよ! オシャレの為だよ! オシャレの為!」
いや、確かに勝負下着とかって概念はあるけど、それをヤるにしても、そもそもお前と先輩はそこまでの仲になっていないだろうが・・・。
それとも色仕掛けで強行突破するって事か?
そこら辺の男子高校生なら、割とイチコロネできるだろうが、もっと別のやり方でいいんじゃないか?
「焦る気持ちも分かるが、そういうやり方じゃない方法の方が良くないか? お前軽く見られるぞ?」
「あ、分かるー? 少し痩せたのー!」
「・・・・・・」
俺は、そのまま無言で四月の脳天にチョップをした。
ここまでポンコツな奴は、本当に初めて見たぞ俺。
「痛っ! ちょっと!? 暴力変態!」
「今変態なのはお前だ。ってか誰かの入れ知恵か? じゃないとお前、そんな身売りみたいな事しないだろ」
すると四月は、何やらスマホを操作している。
そしてすぐに、俺にその画面を見せてきた。
《見えない所での努力を惜しまない事!》
「だからだよ~っ! 女の子たるもの、見えない所にまで気を使わないと、今時モテないんだよ!」
「違うだろーが! 見えない所って身体的な部分の事じゃねーから」
「ええ!? じゃあどーゆー事なの?」
「化粧頑張ったり、手作りクッキー作ったりとか、そういう事だろうよ。普通に考えて分かるだろうが」
「なるほど。やはり如月くんは天才だね!」
「お前がバカなだけだから・・・」
相変わらずのポンコツぶりだったので、俺は盛大にため息を零した。
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