7 / 53
四月のお菓子作り
しおりを挟む
俺と四月は、先輩にお菓子サプライズをする為に、スーパーに買い物に来ていた。
「さてと、材料はこんなもんでいいかな~」
「結構買うんだな。ホットケーキミックスでいいんじゃないねーか?」
「ノンノンノン、ホットケーキミックスでクッキーを作るのはご法度だよ!」
得意げになりながら、俺に言ってくる四月。
何かこいつを、とてつもなく殴りたい・・・。
別にいいじゃねーか、それくらい。
現に作り方載ってるし。
そんなこんなで、俺と四月は学校帰りにスーパに寄っていた。
理由は勿論、四月が『先輩の為に手作りクッキーを作ろう大作戦』を思いついたから、その材料の買い出しだ。
あ? 作戦名が違うって?
うっせ、あんなダサいの却下だ、却下。
「なんか言い方がムカつくから帰っていいか?」
「嘘だよごめんなさい謝るから!」
俺が帰ろうとすると、すぐ謝るよな、こいつ。
変に煽られるよりはいいけどな。
「ってかそもそも俺いる意味あんのか? お菓子作りは自信あるんだろ?」
「それでも一応、感想は欲しいもん。如月くんは相変わらず分かってないな~!」
「そんな四月も相変わらずムカつく野郎だな。そんなのお前の友達とかに頼めばいいんじゃねーか?」
すると四月は、急に寂しげな表情になった。
もしや、友達との関係が上手くいってなかったりするのだろうか?
「・・・みんなにはバレたくないの」
俯きながら小さくそう呟く四月。
一体、何があったと言うのだろうか?
「何かあったのか? 俺でよければ話聞くぞ?」
俺は、自分なりの精一杯の優しい声で四月にそう言った。
何だかんだ、四月とはそれなりに絡んで入るから、普段は能天気でポンコツな四月でも、落ち込んでいるなら多少なりは気になる。
本当に、多少はな。
直接的な解決には至らないにしても、吐き出すことで自分自身の気持ちが軽くなることもあるだろう。
そう言った意味を含めて、俺は四月に声をかけた。
「おかしい。如月くんが私に優しいなんて・・・。目的は何? お金? 身体? それとも私?」
「少しは心配した俺の気持ちを返してくれ・・・」
心配してやったと言えば横暴になるが、俺の予想とは反する返答に、俺はやっぱりポンコツはポンコツなんだなと再確認した。
それに、何だよそれ。
イチャコラ王道の三択のはずなのに、これは不穏な空気しか流れてねーよ。
「怪しいな・・・」
「お前、張り倒すぞ・・・?」
「お、押し倒す!? やっぱり私に絡んできたのは、身体が目的で・・・」
「お前1回耳鼻科行ってこい」
「私、耳はいい方なんだけど!」
「なら問題は頭だな。脳外科行ってこい」
「むぅ! 如月くんのバカ! アホ! 変態! 男!」
「男は別に悪口じゃねーだろ・・・」
そんなこんなで買うものは決まったらしく、俺と四月はレジへ向かう事にした。
夕方って事もあり、レジは少し混んでいた。
四月の番が来るまで、俺は隣でスマホをいじっていた。
「・・・え? うそ・・・」
隣の四月が、何やら慌てていた。
「どうかしたか?」
「いや、なんでもない・・・」
何でもないなら、別に気にすることもないな。
俺はまた、再度スマホに視線を戻した。
「・・・き、如月くんって・・・結構男前な所あるよね!?」
「は?」
いきなり、四月がそんな事を言ってきた。
つい先程、俺に罵声を浴びせてきた奴とは思えない程の手の平返しだった。
「ほら! なんかこう・・・カッコいい? みたいな感じで~、そこはかとなくイケメン? 的な感じ?」
「なんで疑問形なんだよ。なんか隠してるだろ? 吐け」
四月が急にこんな事を言ってくるのはおかしい。
何か隠しているだろうと思い、四月を問い詰める。
「・・・さ、財布を忘れました・・・」
「本当、お前ってバカだな・・・」
今回の材料費は、代わりに俺が払いました。
・
「は? 何で俺の家なんだよ?」
「私の家だと、お母さんがめんどくさいんだもん。絶対如月くんとの関係根掘り葉掘り聞いてくるし、お菓子作り所じゃなくなるもん」
「いや、俺の親だってそうなるからな? 四月だって普通に黙ってりゃ可愛い方だと思うし」
「黙ってりゃ可愛いって酷くない!?」
頬を膨らませながら抗議してくる四月を黙らせるべく、俺はある言葉を呟く事にした。
「2000円」
「うぅぅ・・・」
俺は、今回の作戦でかかる費用を四月の代わりに立て替えたのだ。
何故ならこのバカは、財布を家に忘れるという失態を犯したからだ。
本当に忘れたのかは定かではないが、こいつはそんなあざとく器用な事は出来ないだろうから、本当なんだろうな。
「本当に、俺の家でやるのか?」
「うん! お邪魔しまーっす!」
「・・・お前、一応は自分が女の子だって自覚しろよな」
「え? なんで?」
「だって男の家に上がるって事だぞ? 変な事考えてる奴だった以上、終了になりかねないぞ」
俺は四月に注意したつもりだったが、こいつは俺の事を目を細めながら見てきやがった。
「如月くんはそんな事するような人じゃないでしょ?」
「俺はそうだが、やたら野郎の家に行くとか言うなって話だ」
「大丈夫だよ! 私、こう見えてもかなりガードは固いから! それに私だってちゃんと人は選ぶもん!」
果たして本当に大丈夫なのだろうか?
だがしかし、四月も四月でちゃんと人は選ぶと言っているって事は、少しは他の人より信用はされてるって解釈してもいいのだろうか?
めちゃくちゃに嬉しいって訳でもないが、信用されてるに越した事はないし、素直に嬉しい気持ちはあった。
「如月くんはヘタレそうだし!」
前言奪回。
信用とか信頼とか、そんな事は一切なかった。
よし、このまま一人で家に帰ろう。
うん、何事も無かった、誰も何も見ていなかった。
いいね?
「悪い、どうしても外せない野暮用思い出したから帰るわ」
「ごめんなさい調子に乗りましたすみません~・・・」
そういって涙目になりながら俺に抱きついてくる四月。
一体、どこがガードが固いんだよ・・・。
「わ、分かったから離れろっての・・・」
俺は四月を無理やり引き剥がし、その足で俺の家へと向かう。
・
俺と四月は、無事に俺の家までたどり着いた。
「ここが如月くんの家なんだ。結構大きいね」
「そうか? 普通の大きさだろ」
ピンポーン
すると、俺の隣で四月がインターホンを押した。
「何してんの、お前?」
「家に来た時はインターホン鳴らすでしょ?」
「家の人を呼ぶ為にな。ここの住人横に居るんだけど?」
「あ。そっか! 早くいってよ~。如月くんのいじわる~」
毎度毎度そうだが、本当にこいつはポンコツだ。
俺は盛大なため息をつきながら、鞄から家の鍵を取り出す。
「お邪魔します!」
元気良くそう挨拶をして、俺の家に上り込む四月。
ほう、しっかり脱いだ後の靴は揃えるんだな。
少し見直したな。
そのままキッチンへと四月を案内する。
「あれ? 如月くんお母さんはいないの?」
「ん? ああ、いないよ」
「共働きとか?」
「いや、俺が産まれてすぐに死んだらしい。だから今は父親と2人暮らしだよ」
「・・・そっか、なんかごめんね」
「別に四月が謝る事じゃないだろ。それに、特に思い出とかがあった訳でもないし、特別寂しいって事でもないから気にすんな」
俺は四月にそう言いながら、頭を撫でてやった。
こいつの寂しそうな表情はあまり見たくないと思っているから、いつもの底抜けに明るい四月に戻ってもらいたいと思った。
「とりあえず、帰りが遅くならないように早めに作った方がいいんじゃないか?」
「そ、そうだね! 私、頑張っちゃうから!」
よし、無理やりではあるが、明るい四月に戻りつつあるな。
そして間も無く、四月はお菓子作りを始めた。
お菓子作りは得意と自分で言っていただけの事はあるな。
手際は、やはりとても良いと感じた。
人は見かけによらないと、始めて感じた瞬間かも知れない。
これをGAP萌えとでも言うのだろうか?
いや、萌えてはいないな。
ずっと見ているのも気が散ると思い、俺はソファーに座りスマホをいじる事にした。
「ねぇ、何見てるの?」
ソファーの後ろから、四月が身を乗り出して俺に聞いてくる。
さりげなく肩を掴むんじゃない。
思わずドキッとしただろうが・・・。
「別に大したもんじゃねーよ」
「えっちな動画とか見てたんじゃないの~? えいっ! えいっ!」
そう言いながら、俺の頬を数回突いてくる四月。
無邪気に笑いながらしてくるが、中々に破壊力はあるな。
「お前が家に居るのに、そんなの見る訳ねーだろ。それより、もうクッキーの方はいいのか?」
俺は照れてるのを悟られぬ様に、四月にクッキーの話題を振った。
「うん! 後は焼けるのを待つだけだから、それまで暇なんだよー」
「そうなのか、適当にくつろいどけ」
「分かった! うぁ~疲れたぁ~!」
俺はそのまま、スマホに視線を落とす。
それ以降、四月も俺には何もしてこなかった。
しばらく経ち、キッチンでオーブンが音を鳴らしていた。
恐らく、タイマーセットの時間が来たのだろう。
「おい四月、タイマー鳴った・・・」
俺は四月に声をかけたが、気持ち良さそうに眠っている四月を見て、それ以上言葉をかけるのをやめた。
「ったく。しゃーねーな」
俺はそのままキッチンまで行き、ミトンを付けオーブンからクッキーを取り出す事にした。
ハート型やら星型やらのクッキーが、ずらりと並べられていた。
綺麗な小麦色の焼き加減に香ばしい匂いが、俺の食欲を誘った。
俺は、1番小さめの星型のクッキーを1つ食べて見る事にした。
「あっつ・・・!」
そりゃ焼きたてだから、熱いだろうな。
少し息を吹きかけて冷ます。
再度、クッキーを口に運んだ。
食べてみた感想は、シンプルに美味しかった。
特別に美味しい訳ではないが、普通に美味しかった。
もう1個に手を伸ばそうとしたが、次に手を出せば止められなくなると思い手をつけるのをやめた。
そもそもこれは俺の為に作った訳じゃない。
四月が、あの先輩の為に作ったものだ。
味見用なら、1つで充分だろう。
俺はそのまま、四月の眠っているソファーへと戻った。
「ったく、無防備過ぎやしねーか? まあ、寝顔は悪くねぇな」
幸せな夢でも見ているのだろうか?
微笑みながら眠っている四月の頭を、優しく撫でた。
「クッキー、美味しかったぞ」
四月は未だ眠ってたままだったが、俺の言葉を聞いた後、微かに微笑んだ様な気がした。
「さてと、材料はこんなもんでいいかな~」
「結構買うんだな。ホットケーキミックスでいいんじゃないねーか?」
「ノンノンノン、ホットケーキミックスでクッキーを作るのはご法度だよ!」
得意げになりながら、俺に言ってくる四月。
何かこいつを、とてつもなく殴りたい・・・。
別にいいじゃねーか、それくらい。
現に作り方載ってるし。
そんなこんなで、俺と四月は学校帰りにスーパに寄っていた。
理由は勿論、四月が『先輩の為に手作りクッキーを作ろう大作戦』を思いついたから、その材料の買い出しだ。
あ? 作戦名が違うって?
うっせ、あんなダサいの却下だ、却下。
「なんか言い方がムカつくから帰っていいか?」
「嘘だよごめんなさい謝るから!」
俺が帰ろうとすると、すぐ謝るよな、こいつ。
変に煽られるよりはいいけどな。
「ってかそもそも俺いる意味あんのか? お菓子作りは自信あるんだろ?」
「それでも一応、感想は欲しいもん。如月くんは相変わらず分かってないな~!」
「そんな四月も相変わらずムカつく野郎だな。そんなのお前の友達とかに頼めばいいんじゃねーか?」
すると四月は、急に寂しげな表情になった。
もしや、友達との関係が上手くいってなかったりするのだろうか?
「・・・みんなにはバレたくないの」
俯きながら小さくそう呟く四月。
一体、何があったと言うのだろうか?
「何かあったのか? 俺でよければ話聞くぞ?」
俺は、自分なりの精一杯の優しい声で四月にそう言った。
何だかんだ、四月とはそれなりに絡んで入るから、普段は能天気でポンコツな四月でも、落ち込んでいるなら多少なりは気になる。
本当に、多少はな。
直接的な解決には至らないにしても、吐き出すことで自分自身の気持ちが軽くなることもあるだろう。
そう言った意味を含めて、俺は四月に声をかけた。
「おかしい。如月くんが私に優しいなんて・・・。目的は何? お金? 身体? それとも私?」
「少しは心配した俺の気持ちを返してくれ・・・」
心配してやったと言えば横暴になるが、俺の予想とは反する返答に、俺はやっぱりポンコツはポンコツなんだなと再確認した。
それに、何だよそれ。
イチャコラ王道の三択のはずなのに、これは不穏な空気しか流れてねーよ。
「怪しいな・・・」
「お前、張り倒すぞ・・・?」
「お、押し倒す!? やっぱり私に絡んできたのは、身体が目的で・・・」
「お前1回耳鼻科行ってこい」
「私、耳はいい方なんだけど!」
「なら問題は頭だな。脳外科行ってこい」
「むぅ! 如月くんのバカ! アホ! 変態! 男!」
「男は別に悪口じゃねーだろ・・・」
そんなこんなで買うものは決まったらしく、俺と四月はレジへ向かう事にした。
夕方って事もあり、レジは少し混んでいた。
四月の番が来るまで、俺は隣でスマホをいじっていた。
「・・・え? うそ・・・」
隣の四月が、何やら慌てていた。
「どうかしたか?」
「いや、なんでもない・・・」
何でもないなら、別に気にすることもないな。
俺はまた、再度スマホに視線を戻した。
「・・・き、如月くんって・・・結構男前な所あるよね!?」
「は?」
いきなり、四月がそんな事を言ってきた。
つい先程、俺に罵声を浴びせてきた奴とは思えない程の手の平返しだった。
「ほら! なんかこう・・・カッコいい? みたいな感じで~、そこはかとなくイケメン? 的な感じ?」
「なんで疑問形なんだよ。なんか隠してるだろ? 吐け」
四月が急にこんな事を言ってくるのはおかしい。
何か隠しているだろうと思い、四月を問い詰める。
「・・・さ、財布を忘れました・・・」
「本当、お前ってバカだな・・・」
今回の材料費は、代わりに俺が払いました。
・
「は? 何で俺の家なんだよ?」
「私の家だと、お母さんがめんどくさいんだもん。絶対如月くんとの関係根掘り葉掘り聞いてくるし、お菓子作り所じゃなくなるもん」
「いや、俺の親だってそうなるからな? 四月だって普通に黙ってりゃ可愛い方だと思うし」
「黙ってりゃ可愛いって酷くない!?」
頬を膨らませながら抗議してくる四月を黙らせるべく、俺はある言葉を呟く事にした。
「2000円」
「うぅぅ・・・」
俺は、今回の作戦でかかる費用を四月の代わりに立て替えたのだ。
何故ならこのバカは、財布を家に忘れるという失態を犯したからだ。
本当に忘れたのかは定かではないが、こいつはそんなあざとく器用な事は出来ないだろうから、本当なんだろうな。
「本当に、俺の家でやるのか?」
「うん! お邪魔しまーっす!」
「・・・お前、一応は自分が女の子だって自覚しろよな」
「え? なんで?」
「だって男の家に上がるって事だぞ? 変な事考えてる奴だった以上、終了になりかねないぞ」
俺は四月に注意したつもりだったが、こいつは俺の事を目を細めながら見てきやがった。
「如月くんはそんな事するような人じゃないでしょ?」
「俺はそうだが、やたら野郎の家に行くとか言うなって話だ」
「大丈夫だよ! 私、こう見えてもかなりガードは固いから! それに私だってちゃんと人は選ぶもん!」
果たして本当に大丈夫なのだろうか?
だがしかし、四月も四月でちゃんと人は選ぶと言っているって事は、少しは他の人より信用はされてるって解釈してもいいのだろうか?
めちゃくちゃに嬉しいって訳でもないが、信用されてるに越した事はないし、素直に嬉しい気持ちはあった。
「如月くんはヘタレそうだし!」
前言奪回。
信用とか信頼とか、そんな事は一切なかった。
よし、このまま一人で家に帰ろう。
うん、何事も無かった、誰も何も見ていなかった。
いいね?
「悪い、どうしても外せない野暮用思い出したから帰るわ」
「ごめんなさい調子に乗りましたすみません~・・・」
そういって涙目になりながら俺に抱きついてくる四月。
一体、どこがガードが固いんだよ・・・。
「わ、分かったから離れろっての・・・」
俺は四月を無理やり引き剥がし、その足で俺の家へと向かう。
・
俺と四月は、無事に俺の家までたどり着いた。
「ここが如月くんの家なんだ。結構大きいね」
「そうか? 普通の大きさだろ」
ピンポーン
すると、俺の隣で四月がインターホンを押した。
「何してんの、お前?」
「家に来た時はインターホン鳴らすでしょ?」
「家の人を呼ぶ為にな。ここの住人横に居るんだけど?」
「あ。そっか! 早くいってよ~。如月くんのいじわる~」
毎度毎度そうだが、本当にこいつはポンコツだ。
俺は盛大なため息をつきながら、鞄から家の鍵を取り出す。
「お邪魔します!」
元気良くそう挨拶をして、俺の家に上り込む四月。
ほう、しっかり脱いだ後の靴は揃えるんだな。
少し見直したな。
そのままキッチンへと四月を案内する。
「あれ? 如月くんお母さんはいないの?」
「ん? ああ、いないよ」
「共働きとか?」
「いや、俺が産まれてすぐに死んだらしい。だから今は父親と2人暮らしだよ」
「・・・そっか、なんかごめんね」
「別に四月が謝る事じゃないだろ。それに、特に思い出とかがあった訳でもないし、特別寂しいって事でもないから気にすんな」
俺は四月にそう言いながら、頭を撫でてやった。
こいつの寂しそうな表情はあまり見たくないと思っているから、いつもの底抜けに明るい四月に戻ってもらいたいと思った。
「とりあえず、帰りが遅くならないように早めに作った方がいいんじゃないか?」
「そ、そうだね! 私、頑張っちゃうから!」
よし、無理やりではあるが、明るい四月に戻りつつあるな。
そして間も無く、四月はお菓子作りを始めた。
お菓子作りは得意と自分で言っていただけの事はあるな。
手際は、やはりとても良いと感じた。
人は見かけによらないと、始めて感じた瞬間かも知れない。
これをGAP萌えとでも言うのだろうか?
いや、萌えてはいないな。
ずっと見ているのも気が散ると思い、俺はソファーに座りスマホをいじる事にした。
「ねぇ、何見てるの?」
ソファーの後ろから、四月が身を乗り出して俺に聞いてくる。
さりげなく肩を掴むんじゃない。
思わずドキッとしただろうが・・・。
「別に大したもんじゃねーよ」
「えっちな動画とか見てたんじゃないの~? えいっ! えいっ!」
そう言いながら、俺の頬を数回突いてくる四月。
無邪気に笑いながらしてくるが、中々に破壊力はあるな。
「お前が家に居るのに、そんなの見る訳ねーだろ。それより、もうクッキーの方はいいのか?」
俺は照れてるのを悟られぬ様に、四月にクッキーの話題を振った。
「うん! 後は焼けるのを待つだけだから、それまで暇なんだよー」
「そうなのか、適当にくつろいどけ」
「分かった! うぁ~疲れたぁ~!」
俺はそのまま、スマホに視線を落とす。
それ以降、四月も俺には何もしてこなかった。
しばらく経ち、キッチンでオーブンが音を鳴らしていた。
恐らく、タイマーセットの時間が来たのだろう。
「おい四月、タイマー鳴った・・・」
俺は四月に声をかけたが、気持ち良さそうに眠っている四月を見て、それ以上言葉をかけるのをやめた。
「ったく。しゃーねーな」
俺はそのままキッチンまで行き、ミトンを付けオーブンからクッキーを取り出す事にした。
ハート型やら星型やらのクッキーが、ずらりと並べられていた。
綺麗な小麦色の焼き加減に香ばしい匂いが、俺の食欲を誘った。
俺は、1番小さめの星型のクッキーを1つ食べて見る事にした。
「あっつ・・・!」
そりゃ焼きたてだから、熱いだろうな。
少し息を吹きかけて冷ます。
再度、クッキーを口に運んだ。
食べてみた感想は、シンプルに美味しかった。
特別に美味しい訳ではないが、普通に美味しかった。
もう1個に手を伸ばそうとしたが、次に手を出せば止められなくなると思い手をつけるのをやめた。
そもそもこれは俺の為に作った訳じゃない。
四月が、あの先輩の為に作ったものだ。
味見用なら、1つで充分だろう。
俺はそのまま、四月の眠っているソファーへと戻った。
「ったく、無防備過ぎやしねーか? まあ、寝顔は悪くねぇな」
幸せな夢でも見ているのだろうか?
微笑みながら眠っている四月の頭を、優しく撫でた。
「クッキー、美味しかったぞ」
四月は未だ眠ってたままだったが、俺の言葉を聞いた後、微かに微笑んだ様な気がした。
0
あなたにおすすめの小説
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる