8 / 53
四月なりの温かさ
しおりを挟む
「あぁ・・・だりぃ・・・」
体温計を見ると、そこには37.6℃の表示で音が鳴っていた。
そう、俺は風邪を引いて寝込んでいた。
あまり大した表示にも見えないが、平熱が低いからこれだけでもしんどいんだよ。
俺はベッドに横になった。
そういえば、四月はクッキーをちゃんと渡せたのだろうか?
昨日は、そのままラッピングを済ませ、ウキウキルンルンな感じでスキップしながら帰っていたが。
今日は、四月からは何も連絡がきていない。
成功し、上手く渡せていて話が弾んでいればいいが。
時間も既に、夕方の16時を回っていた。
「さてと、もう一眠りするか」
そう思い、布団をかけた時だった。
ピンポーン
俺の家の呼び鈴が鳴った。
一体、誰だろうか?
父親なら、この時間に帰ってくるはずがない。
もし仮に帰ってきたとしても、家の鍵は持っているはずだ。
俺は重い身体を起こし、玄関へと向かった。
「はいはい、新聞ならお断り・・・って、四月?」
そこには、今頃楽しく先輩と雑談中であろう、四月の姿があった。
だが、その姿はお世辞にも明るいとはいえないものだった。
「・・・入っていいかな?」
「俺、風邪引いてるんだけど」
「・・・お邪魔します」
俺の言葉を聞いてなかったのか、それともあえてスルーしたのかは知らないが、四月はそのまま俯いたまま、俺の横を通り抜けて家の中へと上がって行った。
「・・・人の話聞けっての」
なにが何だか訳が分からず、俺は頭をくしゃくしゃにかきながら四月の後を追った。
リビングに行くと、昨日スヤスヤと眠っていたソファーに膝を立てて、俯いている四月。
小さめだが、すすり泣く声も聞こえてきた。
これはあれだな・・・。もしかしなくても失敗したんだろうな。
「一応聞くが、どうした?」
「・・・かった」
声が小さくて聞き取れなかった。
かった? 何か買ったのか?
「わるい、聞き取れなかったから、もう一度言ってくれ」
「・・・先輩に、渡せなかった」
「ほう。それはどうしてだ?」
すると四月は、体制はそのままで左手だけを動かして自分の鞄を弄る。
そしてそれを、そのまま鞄の上に置いた。
それは、昨日四月が鼻歌を歌いながら丁寧にラッピングしていた、クッキーだった。
だが、俺が昨日見た形とはだいぶ変わっていた。
袋には泥の様な物が付いていて、クッキーも所々砕けていた。
ハートの形のクッキーなんか、悪魔のイタズラかの様に全てが真ん中で割れていた。
どうしたらこんな事になるんだ?
もしかして、先輩に渡したら目の前で踏まれたとか?
いや、あの先輩はそんな事はしないだろう。
「・・・何があったんだ?」
「・・・・・」
四月は俯いたまま、答えようとしない。
その後もしばらく待ってみたが、返答はこなかった。
俺は席を立ち、台所へ向かった。
冷蔵庫から、ペットボトルに入ったミルクティーをコップを注ぎ、再度上原の元へと戻る。
「ミルクティー置いとくから、喉乾いたら飲め」
自分の分も用意していたので、一口を口に含む。
口の中全体が、甘い味で満たされていくのが分かった。
すると、四月がテーブルの上に置いてあったコップに手を伸ばした。
そして、ミルクティーをちびちびと飲み始めた。
やはら泣いていたからか、目元は赤く腫れていて、まだ涙が溜まっていた。
「・・・先輩に渡そうとしたけど・・・タイミングとか分からなくて」
「・・・如月くん、風邪で休んだって聞いたから、他に頼れる人いなくて・・・」
「今ならいけるって思って声かけようとしたけど、途中で野球部の人とぶつかっちゃって・・・」
「クッキーね・・・踏まれちゃった・・・」
短く言葉を紡いでいき、最後の言葉をいい終わると、四月はまた膝を抱えて泣き出してしまった。
「・・・せっかぐ作ったのに、如月くんも手伝ってぐれたのに・・・ごめんなざい・・・」
俯きながら、謝罪の言葉を口に出す四月。
別にお前が悪い訳じゃないだろうに。
そんなもん、不慮の事故だろうが。
俺は、鞄の上に置かれた、粉々になったクッキーの袋を手に取った。
ラッピングを丁寧に解き、袋の中からクッキーを取り出して口に運ぶ。
「・・・やっぱりうめーわ。このクッキー」
すると四月は、俯いていた顔を上げて俺を見ると、目を見開いて驚いていた。
「そんな踏まれたクッキーなんか、汚いよ・・・」
「汚いわけあるか、袋に入ってたんだし、問題ねーよ」
そのまま一口、また一口とクッキーを口に運んでいく。
そしてあっという間に食べ終わってしまった。
「美味しかった、ごちそうさま」
「・・・なんで食べたの?」
未だに信じられないといった様子で、四月が聞いてくる。
なんで食べたのかって? そんなの理由は1つしかねーだろ。
「あ? 美味いからに決まってるだろ」
俺の記憶に残ってる中で、1番なんじゃねーかな?
これといって特別美味しい訳じゃないが、安定しているというか、安心するというか。
また食べたくなる様な、味だったのだ。
「それに、このクッキーはまた食べたいと思ってたからな。俺は、あくまで毒味係だから全然食べられなかったけど、こんな形でも食べれたから良かったわ!」
俺が明るくそう言うと、四月は、再度鞄を漁り始めた。
そして四月が俺に渡してきたものは、同じく丁寧にラッピングされたクッキーだった。
こちらは粉々に砕けてはなく、原型をとどめていた。
「あ? なんだこれ?」
「クッキー・・・」
「それは分かってる。俺にって事か?」
「うん・・・」
まさか、俺の分も取っておいてくれてるとは思わなくて、正直びっくりした。
ん?待てよ?
「だったら、こっち渡せば良かったんじゃないか?」
考えれば直ぐに分かる事だった。
普段からポンコツかましてる四月の事だから、気がつかなかったのだろう。
そのセリフを聞いてハッと驚いた表情を・・・していなかった。
四月は相変わらず、暗い表情をしていた。
「だってこれ、如月くんの為に取っておいたから・・・」
そのセリフを聞いた瞬間、俺の心の奥が温かくなっていくのを感じた。
本当、このバカときたら・・・。
お前は前だけ見てればいいんだよ。
俺なんか気にしないでな。
でも、四月の気持ちは素直にとても嬉しかった。
「緊急事態の時なら、俺に気使わなくていいからな。でも、ありがとうな!」
俺は、四月の頭をくしゃくしゃに撫でてやった。
四月はそのまま、黙ってされるがままだった。
もう、四月の目には、涙は溜まっていなかった。
「ま、クッキーくらいならまた作ればいいんじゃねーか? 調理場なら貸してやるからよ」
「・・・うん。ありがとうね、如月くん!」
そして、やっと俺の前で笑ってくれた。
そうだよ、お前はそうやって、笑顔で底抜けに明るいバカでいればいいんだよ。
「あ、そうだ。如月くん、お金・・・」
思い出したかの様に四月は言って、財布からお札を2枚出してきた。
だが、俺はそれを受け取らなかった。
「今回はクッキーの味に免じて、俺の奢りでいいぞ」
俺は決めた顔でそう言った。
だが、四月は耐えきれなくなってしまったのか、笑ってしまった。
「あはははは! 如月くんもぉ~なに~!?」
「あ? 悪いかよ?」
「カッコつかないんだから、カッコつけなくていいんだよ!」
「一言余計だ、バカ」
軽口を叩けるくらいには元気になった様で、とりあえず安心した。
さて、またこのクッキーを食べられる機会が来るのは楽しみだな。
「でも本当、それ渡せば良かったのにな」
「渡せないよ。だってあれ、失敗作の方だもん。少し焦げちゃったりしてね」
あ、そう言うことね。
失敗作だから、俺用だったって事ね・・・。
「・・・さっき感動した俺の気持ちを返せよ」
テンションが下がった俺とは真逆に、吹っ切れた様にテンションが高くなる四月。
本当、調子いい奴だよな。
「よぉ~し!! 今度こそクッキー大作戦成功させよー! えい、えい、おー!」
「・・・・・・」
「そこはノってよぉ・・・」
頬を膨らませ抗議してくる四月を、俺は優しく見守っていた。
俺と四月の関係は、まだまだ続きそうです。
体温計を見ると、そこには37.6℃の表示で音が鳴っていた。
そう、俺は風邪を引いて寝込んでいた。
あまり大した表示にも見えないが、平熱が低いからこれだけでもしんどいんだよ。
俺はベッドに横になった。
そういえば、四月はクッキーをちゃんと渡せたのだろうか?
昨日は、そのままラッピングを済ませ、ウキウキルンルンな感じでスキップしながら帰っていたが。
今日は、四月からは何も連絡がきていない。
成功し、上手く渡せていて話が弾んでいればいいが。
時間も既に、夕方の16時を回っていた。
「さてと、もう一眠りするか」
そう思い、布団をかけた時だった。
ピンポーン
俺の家の呼び鈴が鳴った。
一体、誰だろうか?
父親なら、この時間に帰ってくるはずがない。
もし仮に帰ってきたとしても、家の鍵は持っているはずだ。
俺は重い身体を起こし、玄関へと向かった。
「はいはい、新聞ならお断り・・・って、四月?」
そこには、今頃楽しく先輩と雑談中であろう、四月の姿があった。
だが、その姿はお世辞にも明るいとはいえないものだった。
「・・・入っていいかな?」
「俺、風邪引いてるんだけど」
「・・・お邪魔します」
俺の言葉を聞いてなかったのか、それともあえてスルーしたのかは知らないが、四月はそのまま俯いたまま、俺の横を通り抜けて家の中へと上がって行った。
「・・・人の話聞けっての」
なにが何だか訳が分からず、俺は頭をくしゃくしゃにかきながら四月の後を追った。
リビングに行くと、昨日スヤスヤと眠っていたソファーに膝を立てて、俯いている四月。
小さめだが、すすり泣く声も聞こえてきた。
これはあれだな・・・。もしかしなくても失敗したんだろうな。
「一応聞くが、どうした?」
「・・・かった」
声が小さくて聞き取れなかった。
かった? 何か買ったのか?
「わるい、聞き取れなかったから、もう一度言ってくれ」
「・・・先輩に、渡せなかった」
「ほう。それはどうしてだ?」
すると四月は、体制はそのままで左手だけを動かして自分の鞄を弄る。
そしてそれを、そのまま鞄の上に置いた。
それは、昨日四月が鼻歌を歌いながら丁寧にラッピングしていた、クッキーだった。
だが、俺が昨日見た形とはだいぶ変わっていた。
袋には泥の様な物が付いていて、クッキーも所々砕けていた。
ハートの形のクッキーなんか、悪魔のイタズラかの様に全てが真ん中で割れていた。
どうしたらこんな事になるんだ?
もしかして、先輩に渡したら目の前で踏まれたとか?
いや、あの先輩はそんな事はしないだろう。
「・・・何があったんだ?」
「・・・・・」
四月は俯いたまま、答えようとしない。
その後もしばらく待ってみたが、返答はこなかった。
俺は席を立ち、台所へ向かった。
冷蔵庫から、ペットボトルに入ったミルクティーをコップを注ぎ、再度上原の元へと戻る。
「ミルクティー置いとくから、喉乾いたら飲め」
自分の分も用意していたので、一口を口に含む。
口の中全体が、甘い味で満たされていくのが分かった。
すると、四月がテーブルの上に置いてあったコップに手を伸ばした。
そして、ミルクティーをちびちびと飲み始めた。
やはら泣いていたからか、目元は赤く腫れていて、まだ涙が溜まっていた。
「・・・先輩に渡そうとしたけど・・・タイミングとか分からなくて」
「・・・如月くん、風邪で休んだって聞いたから、他に頼れる人いなくて・・・」
「今ならいけるって思って声かけようとしたけど、途中で野球部の人とぶつかっちゃって・・・」
「クッキーね・・・踏まれちゃった・・・」
短く言葉を紡いでいき、最後の言葉をいい終わると、四月はまた膝を抱えて泣き出してしまった。
「・・・せっかぐ作ったのに、如月くんも手伝ってぐれたのに・・・ごめんなざい・・・」
俯きながら、謝罪の言葉を口に出す四月。
別にお前が悪い訳じゃないだろうに。
そんなもん、不慮の事故だろうが。
俺は、鞄の上に置かれた、粉々になったクッキーの袋を手に取った。
ラッピングを丁寧に解き、袋の中からクッキーを取り出して口に運ぶ。
「・・・やっぱりうめーわ。このクッキー」
すると四月は、俯いていた顔を上げて俺を見ると、目を見開いて驚いていた。
「そんな踏まれたクッキーなんか、汚いよ・・・」
「汚いわけあるか、袋に入ってたんだし、問題ねーよ」
そのまま一口、また一口とクッキーを口に運んでいく。
そしてあっという間に食べ終わってしまった。
「美味しかった、ごちそうさま」
「・・・なんで食べたの?」
未だに信じられないといった様子で、四月が聞いてくる。
なんで食べたのかって? そんなの理由は1つしかねーだろ。
「あ? 美味いからに決まってるだろ」
俺の記憶に残ってる中で、1番なんじゃねーかな?
これといって特別美味しい訳じゃないが、安定しているというか、安心するというか。
また食べたくなる様な、味だったのだ。
「それに、このクッキーはまた食べたいと思ってたからな。俺は、あくまで毒味係だから全然食べられなかったけど、こんな形でも食べれたから良かったわ!」
俺が明るくそう言うと、四月は、再度鞄を漁り始めた。
そして四月が俺に渡してきたものは、同じく丁寧にラッピングされたクッキーだった。
こちらは粉々に砕けてはなく、原型をとどめていた。
「あ? なんだこれ?」
「クッキー・・・」
「それは分かってる。俺にって事か?」
「うん・・・」
まさか、俺の分も取っておいてくれてるとは思わなくて、正直びっくりした。
ん?待てよ?
「だったら、こっち渡せば良かったんじゃないか?」
考えれば直ぐに分かる事だった。
普段からポンコツかましてる四月の事だから、気がつかなかったのだろう。
そのセリフを聞いてハッと驚いた表情を・・・していなかった。
四月は相変わらず、暗い表情をしていた。
「だってこれ、如月くんの為に取っておいたから・・・」
そのセリフを聞いた瞬間、俺の心の奥が温かくなっていくのを感じた。
本当、このバカときたら・・・。
お前は前だけ見てればいいんだよ。
俺なんか気にしないでな。
でも、四月の気持ちは素直にとても嬉しかった。
「緊急事態の時なら、俺に気使わなくていいからな。でも、ありがとうな!」
俺は、四月の頭をくしゃくしゃに撫でてやった。
四月はそのまま、黙ってされるがままだった。
もう、四月の目には、涙は溜まっていなかった。
「ま、クッキーくらいならまた作ればいいんじゃねーか? 調理場なら貸してやるからよ」
「・・・うん。ありがとうね、如月くん!」
そして、やっと俺の前で笑ってくれた。
そうだよ、お前はそうやって、笑顔で底抜けに明るいバカでいればいいんだよ。
「あ、そうだ。如月くん、お金・・・」
思い出したかの様に四月は言って、財布からお札を2枚出してきた。
だが、俺はそれを受け取らなかった。
「今回はクッキーの味に免じて、俺の奢りでいいぞ」
俺は決めた顔でそう言った。
だが、四月は耐えきれなくなってしまったのか、笑ってしまった。
「あはははは! 如月くんもぉ~なに~!?」
「あ? 悪いかよ?」
「カッコつかないんだから、カッコつけなくていいんだよ!」
「一言余計だ、バカ」
軽口を叩けるくらいには元気になった様で、とりあえず安心した。
さて、またこのクッキーを食べられる機会が来るのは楽しみだな。
「でも本当、それ渡せば良かったのにな」
「渡せないよ。だってあれ、失敗作の方だもん。少し焦げちゃったりしてね」
あ、そう言うことね。
失敗作だから、俺用だったって事ね・・・。
「・・・さっき感動した俺の気持ちを返せよ」
テンションが下がった俺とは真逆に、吹っ切れた様にテンションが高くなる四月。
本当、調子いい奴だよな。
「よぉ~し!! 今度こそクッキー大作戦成功させよー! えい、えい、おー!」
「・・・・・・」
「そこはノってよぉ・・・」
頬を膨らませ抗議してくる四月を、俺は優しく見守っていた。
俺と四月の関係は、まだまだ続きそうです。
0
あなたにおすすめの小説
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる