チートで護る現実《この》世界 ~ 異能者捕縛劇 ~

兎野熊八

文字の大きさ
3 / 19
第一章 くたばれ無敵チート

僕の異世界ハーレム計画 その2

しおりを挟む
 

 明朝。
 彼女が昨夜からの疲労でまだ深く眠っている事を確認してから、僕は静かに寝床を出た。消えかけた焚き火に薪を足してから服を着て、自分と彼女の荷物を手早くまとめる。

 最後に二本の片手剣を左右の腰に帯剣する。
 最初は嫌だった重みに、今は妙な安心感さえ覚えてしまうのだから、僕は本当に順応性が高いのだろう。

 少し身体を動かして異常が無いことを確認、焚き火から離れるように森の奥へ足音を消しながらと進んだ。朝靄の中を50メートル程歩いて、確信する。



 …………やっぱり、



 謎の視線に気づいたのは昨夜の事、リムサと肌を重ねている最中だった。
 不躾なデバガメをその一瞬で斬り伏せに行く事が僕には可能だった。
 いや、一瞬と表するのも少しおかしな表現だが、とにかく可能だった。
 それだけ僕の授かった能力は規格外の自負がある、たとえどんな状況においても僕に勝てる人間はまずいない。

 そいつはこちらを凝視するだけで特にアクションを起こさなかった。リムサとの楽しい一時を中断するのも興ざめだし、むしろこんな美人で可愛い少女との行為を見せつけられて、またを膨らませているに違いないと思うと興奮した。

 そのまま朝までリムサとの営みを見せつけながら楽しんだが、交わった高揚感が薄れるにつれて、少しずつ視線が鬱陶しくなってきた。
 眠ったばかりの彼女を起こすほどでもない。
 焚き火からしばらく歩き、離れた所で僕は立ち止まった。


「もういいよ、ここなら彼女を巻き込まない、出てきなよ、覗き野郎」


 少し待っても、そいつは姿を現さなかった。
 鳥の囀りと、木々のざわめきの中、静寂が答えだとでも言うのだろうか。


「……そうかい、じゃぁこっちから探しに行こうか」


 僕は自分の中にある警戒のスイッチを一つ上げる。
 腰の片手剣の一本を引き抜こうと構えた。
 その時だ、


「待ってください、降参です、今姿を現しますから、殺さないでください」


 声が返ってきて、驚いた。
 女だ、覗き野郎の正体が男だと思っていた僕に返ってきた声、それはまだ年若いだろう少女のモノだった。


「女か、どこにいる?」

「近くにいます、危害を加えるつもりはありません、まずは話し合いを」

「そっちが何もしないならな、1秒待つ、すぐに出てこい」

「1秒って、まってくださいって言ってる間にもう1秒ですよ、今でます」


 ガサガサと少し離れた背後の茂みから音がした。
 次の瞬間、小さなリュックを背負った一人の少女が立ち上がって現れると、僕は思わず息を飲んだ。
 
 胸が鳴った。
 嫌な高鳴りだ。


「こちらに敵対の意思はありません、なので落ち着いてください」


 少女は膝についた汚れを払いながら茂みから出てきた。
 品の良い、お高い黒猫を思わせる少女だった。
 黒髪のショートヘア、黒目黒眉白い肌、コルセットスカートから伸びた長い脚。
 そして彼女は僕と同じぐらいの年齢だ。
 断言できる、賭けてもいい。なぜなら彼女が纏う衣服は、僕も知る“”なのだ。

 いやな予感の理由がまさにそれだ。


「一秒を越えてしまいました、お待たせしましたか?」

「……あ、あぁ、永遠に感じるほど待ったよ」

「それは失礼しました、失礼ついでに不躾ですが今からお話をさせてもらっても?」


 どこか冷ややかな視線を感じる、彼女の風貌が冷たい魅力を放っているのも相まって、何か悪いことを咎められている気分になってくる。

 どこかの令嬢、清楚なお嬢様だと言われても十分納得できる雰囲気があるのに、彼女の恰好がイメージを瓦解がかいさせる。

 武装だ、武器と防具。

 プラスチック素材だろうか、黒いエルボーガードに膝当てはサバイバルゲームで見かけるものだ。
 これは防具、問題はだ。

 フリルをあしらったブラウス姿に装着させているサスペンダー、そこに吊されたホルスターにはこの世界の技術力ではまだ数百年は作れない武器が収まっている。銃、ハンドガンだ。


「話し合いをするなら、まずはその銃を捨ててから覗いてたことを謝るべきじゃないか、というか学生が銃なんて持っていいのか? 銃刀法違反だろ」

「……そうですね、わかりました」


 そう言うと、少女は素直に左のホルスターから手慣れた手つきで銃を引き抜くと、スライドを引いて排莢はいきょうを始めた。そしてそのまま手を止めることなく、


「おいおい、それ本物なのか?」

「本物ですよ、心配ならフィールドストリップもします」

「ふぃ、すと? まぁいいよ、それで撃てないんだろ」

「撃てません、そしてごめんなさい、悪気は無かったのですが三日前から貴方達を監視させてもらっていました」

「は? み、三日前からだ?」

「ええ、片時も目を離さずに」


 僕は心の警戒スイッチをさらに一つ上げた。
 気がついたのは昨夜からだ、嫌な胸の鼓動は増すばかりだ。


「悪趣味だな、それで君は何者だ? 僕になんの用だ?」


 彼女は最後の弾を抜いてから、銃からマガジンを引き抜き、別々に左右の林へと投げ捨てた。


「そうですね、悪趣味なのは認めます。でもまず自己紹介を……初めまして、田中剛たなかつよしさん、私は綴喜芽繰つづきめくると言います、国立御影学園高等部二年、異世界問題対策特殊図書委員会に席をおくものです」




   ”国立御影学園こくりつみかげがくえん




 やはりそうだ、忘れるわけもない。

 僕にとっては忌々しい名前だ。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...