1 / 2
残りの人生をかけて復讐を果たした引きこもりの末路
しおりを挟む
「絶対に許さない。一人残らず消してやる!」
俺はスマホの画面を見ながら怒りに震えていた。
推しのVTuberが事務所から契約解除を告げられたという記事をネットニュースで見かけたからだ。
事務所は彼女の冤罪を並べ立て、契約解除されて当然だというプレスリリースを出している。
熱心に応援していたファンたちも、手のひらを返して彼女の悪口をネットに書き込んでいた。
「どいつもこいつも好き勝手言いやがって!!!」
去年までの俺はブラック企業で朝から晩まで働かされ、上司からは罵倒される日々を送っていた。
体と心を壊して退職してからは生きる気力もなく引きこもっていたが、暇を持て余してネットサーフィンしていたら偶然見つけたのが彼女の配信だった。
ゲーム配信での下手くそなプレイには腹を抱えて笑ったし、楽しそうに雑談する姿はとてもかわいかった。
歌手になるのが夢で、将来は武道館でソロライブがしたいという目標に向かって一生懸命ボイトレしたり歌配信をする姿は応援せずにいられなかった。
やっと人気が出てきて、その夢がもうすぐ叶いそうだったのに……。
理不尽に夢を絶たれた彼女の境遇と、ブラック企業に人生を潰された自分の人生が重なり、復讐心が燃え上がる。
「元凶を始末し終えたら、俺の人生にも価値があったと感じられるかもしれない」
問題はどうやって元凶を始末するかだ。
殺し屋? 現代日本では雇えない。
ハッキング? そんなスキルは引きこもりの俺にはない。
チートスキル? 異世界転生小説じゃあるまいし無理。
いろいろ考えてたどり着いたのが「お百度参り」だ。
昔見たオカルト系のブログに書いてあった方法で参拝を行う。
「彼女の無念を晴らしてください」
お百度参りは神様に他人の幸せを願うもの。
他人の不幸を願うのは言語道断で絶対にしてはいけない。
だから、参拝するのは夜。
行先は管理されなくなった山奥の廃れた神社で、
お願いする相手はこの世の存在ではない悪いモノだ。
-----------------------------
「次のニュースです。今日21:00ころ、東京都××区にある〇〇〇ビルが突如倒壊しました。警察の発表によりますと現時点で判明している死者は△△△名、重軽傷者は□□□名にのぼり……」
病室のベットでテレビをつけると、彼女を追放した事務所が入居しているビルが倒壊したニュースが流れる。
今日の21:00は事務所内のスタジオで公式チャンネルの3D生配信が行われており、社長や事業部長、運営スタッフ、所属VTuberの主要メンバーが出演者として勢ぞろいしていたころだ。
願いが叶った。彼女の追放に関わった奴らが丸ごと消えた。
・彼女に冤罪をかぶせて追放した社長。
・彼女にだけ頑なに企業案件を紹介しなかった事業部長。
・突然深夜に彼女を呼び出して3時間も説教したマネージャー。
・コラボで彼女を執拗にこきおろしていた古参メンバー。
・キャラが被っていると裏アカで彼女を非難していたメンバー。
・彼女の追放後「やっと邪魔者がいなくなった」と発言した後輩メンバー。
胸糞な奴らがビルに体を押しつぶされ、全員苦しみぬいて死んでいった。
彼女は自分が事務所を追放されたことを無念だと思っていたのかはわからないし、復讐したかったのかもわからない。
だからこの復讐劇は俺がスカッとするための自己満足でしかない。
彼女の境遇に自分の人生を重ね合わせ、彼女の気持ちを理解したつもりになってやったことだ。
……復讐の代償なのか、重い病気にかかった体もそろそろ限界が近づいてきたようだ。
体が動くうちにお礼参りを済ませておいてよかった。
「神様に彼女の幸せを願うべきだったのかもしれない」
最後にそう思いながら、俺は意識を手放した。
======================
本作について、
「面白かった!」
「長編も読みたい!」
と思ったら
下にある「★お気に入りに追加」のクリックをお願いいたします。
何卒よろしくお願いいたします。
俺はスマホの画面を見ながら怒りに震えていた。
推しのVTuberが事務所から契約解除を告げられたという記事をネットニュースで見かけたからだ。
事務所は彼女の冤罪を並べ立て、契約解除されて当然だというプレスリリースを出している。
熱心に応援していたファンたちも、手のひらを返して彼女の悪口をネットに書き込んでいた。
「どいつもこいつも好き勝手言いやがって!!!」
去年までの俺はブラック企業で朝から晩まで働かされ、上司からは罵倒される日々を送っていた。
体と心を壊して退職してからは生きる気力もなく引きこもっていたが、暇を持て余してネットサーフィンしていたら偶然見つけたのが彼女の配信だった。
ゲーム配信での下手くそなプレイには腹を抱えて笑ったし、楽しそうに雑談する姿はとてもかわいかった。
歌手になるのが夢で、将来は武道館でソロライブがしたいという目標に向かって一生懸命ボイトレしたり歌配信をする姿は応援せずにいられなかった。
やっと人気が出てきて、その夢がもうすぐ叶いそうだったのに……。
理不尽に夢を絶たれた彼女の境遇と、ブラック企業に人生を潰された自分の人生が重なり、復讐心が燃え上がる。
「元凶を始末し終えたら、俺の人生にも価値があったと感じられるかもしれない」
問題はどうやって元凶を始末するかだ。
殺し屋? 現代日本では雇えない。
ハッキング? そんなスキルは引きこもりの俺にはない。
チートスキル? 異世界転生小説じゃあるまいし無理。
いろいろ考えてたどり着いたのが「お百度参り」だ。
昔見たオカルト系のブログに書いてあった方法で参拝を行う。
「彼女の無念を晴らしてください」
お百度参りは神様に他人の幸せを願うもの。
他人の不幸を願うのは言語道断で絶対にしてはいけない。
だから、参拝するのは夜。
行先は管理されなくなった山奥の廃れた神社で、
お願いする相手はこの世の存在ではない悪いモノだ。
-----------------------------
「次のニュースです。今日21:00ころ、東京都××区にある〇〇〇ビルが突如倒壊しました。警察の発表によりますと現時点で判明している死者は△△△名、重軽傷者は□□□名にのぼり……」
病室のベットでテレビをつけると、彼女を追放した事務所が入居しているビルが倒壊したニュースが流れる。
今日の21:00は事務所内のスタジオで公式チャンネルの3D生配信が行われており、社長や事業部長、運営スタッフ、所属VTuberの主要メンバーが出演者として勢ぞろいしていたころだ。
願いが叶った。彼女の追放に関わった奴らが丸ごと消えた。
・彼女に冤罪をかぶせて追放した社長。
・彼女にだけ頑なに企業案件を紹介しなかった事業部長。
・突然深夜に彼女を呼び出して3時間も説教したマネージャー。
・コラボで彼女を執拗にこきおろしていた古参メンバー。
・キャラが被っていると裏アカで彼女を非難していたメンバー。
・彼女の追放後「やっと邪魔者がいなくなった」と発言した後輩メンバー。
胸糞な奴らがビルに体を押しつぶされ、全員苦しみぬいて死んでいった。
彼女は自分が事務所を追放されたことを無念だと思っていたのかはわからないし、復讐したかったのかもわからない。
だからこの復讐劇は俺がスカッとするための自己満足でしかない。
彼女の境遇に自分の人生を重ね合わせ、彼女の気持ちを理解したつもりになってやったことだ。
……復讐の代償なのか、重い病気にかかった体もそろそろ限界が近づいてきたようだ。
体が動くうちにお礼参りを済ませておいてよかった。
「神様に彼女の幸せを願うべきだったのかもしれない」
最後にそう思いながら、俺は意識を手放した。
======================
本作について、
「面白かった!」
「長編も読みたい!」
と思ったら
下にある「★お気に入りに追加」のクリックをお願いいたします。
何卒よろしくお願いいたします。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる