上 下
48 / 66
玉生ホームで朝食を

玉生ホームで朝食を 10

しおりを挟む


「そうだ、タバタん。上から庭のチェックするって言ってなかったか?」
「あ、屋上が想像していなかった感じで、すっかり忘れてた。っす」
「うん、びっくりだったね。でもあの、ソファーとか外に置いたままで大丈夫なのかな?」
「あれは防水の布で作ったやつだろうから、手入れは必要でも濡れるのは大丈夫だと思うぞ」

 キッチンへ行く前に食糧庫でパンケーキの材料を物色しながら、コンソメキューブがあったのでスープでも作ってパンケーキに追加しようと話しながらかける翠星すいせいがキッチンへと向かう。

「生地焼いて完全に冷めないうちにラップしたら、一ケ月とか冷凍保存できるんだぞ」
「じゃあ、多目に作って保存しておけば非常食になっていいんじゃないすか? くらタマにはちょうどいいと思うし」
「そうだなフレンチトーストとかラスクにしてもいいし、アイスと一緒に食べるのもいいぞ。マオマオ」
「わ、嬉しいけどいいの? ありがとう」

 ジャムを作るために砂糖で煮る前のサクランボの種をちまちま取って除けながら、二人の会話にこくこくと頷く玉生たまおである。 
「じゃあ、これから昼まで自由時間にしようか」と言ってさっさと和室へと行った寿尚すなおは、ちいたまのミルク用のお湯を貰いに来てまたすぐに戻って行った。
よみは昨夜の白いパッケージの異なる世界を旅する様な映像のシリーズを発掘すると言って、大量の映像記録の集められたラックを覗き込んで、ついでに分類までしている。
 しばらくするとサクランボがジャムになってついでに葡萄も洗うと後は手持ち無沙汰になった玉生が、詠の所へやって来て面白そうな作品を探しながら分類分けする作業に加わった。
一度大きなキャビネットから取り出された録画テープの山には国内の作品は見当たらず、字幕付きという文字が付いたパッケージが多いのに「外国映画はバイヤーの趣味に偏るから、こういう知らない作品は見る機会もないからな」と詠は感心しつつ、「でもやはり、今はこちらがマイブーム」と白いパッケージに文字だけの例のシリーズをいそいそと抜き出して脇にまとめている。
玉生もほかに興味を引かれるデザインのパッケージがあっても、白いパッケージを見つけた時の方が「当たり」の気分になってしまうのだった。


 そんな風に玉生宅での昼前の時間が過ぎていく中で、そろそろ食事だと翠星が声をかけに来たので、玉生と詠は作業を中断して立ち上がった。
その翠星が、大体において率直な彼にしては珍しくモヤモヤとした顔をしているのに気付いた玉生が、思わず「どうかしたの?」と尋ねると「あー、一応聞くけど、昨夜水に浸けていたカップとか夜中に洗って片付けたとか――ないよな?」という返事が返ってきた。

しおりを挟む

処理中です...