暗殺姫は籠の中 (番外編)

小桜けい

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アイリーン発案の機能的な下着

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「っん、ん……」 

 薄い透け布越しに、硬く尖った乳首を摘まれ、エヴァは首筋をのけぞらせる。 
  
 今では王妃として、ヴェルナーと寝室を供にするのが当たり前になった。 
 抱かれるのにもだいぶ慣れたが、嬉しさや幸福感は磨耗したりせず、かえってその量を増していく。 
 そんなある晩だった、 
『錬金術ギルドが、また大ヒット商品を開発したそうだ』と、ヴェルナーからリボンの飾られた包みを渡されたのは。 


「……なかなかいい眺めだな。好評なわけだ」 

 よく見えるよう、エヴァを後ろから膝に抱きかかえて座らせ、ヴェルナーが肩越しに囁く。 

「よく似合っている」 

 吐息が耳朶にあたり、敏感になっていた体がビクンと震えた。 
 ちらりと薄目をあけて、自分の身体を見下ろす。 
『新商品』は、夜伽用に開発された下着だった。 
 肩紐があり、胸の下で切り返しになって裾がひろがっている、ナイトドレスのような形だったが、裾の丈は股間部までギリギリ届くかどうかの短さだ。 
 素材は濃い紫のサテンリボンと、肌の透けるヴェールのような薄い布で作られていた。 

 薄い透け布にラッピングされた肢体は、つんと上向いた乳首の形まではっきりわかり、裸のそれよりよほど卑猥にうつる。 
 身体の大事な部分を隠したり、体型を補正するという、下着本来の目的からはかけ離れた代物だった。 

 下穿きも同様の品だ。 
 腰の左右をリボンで縛り、逆三角形の透け布が、申し訳程度に陰部を覆う形だが、なにしろ布が布だ。栗色の淡い茂みや、すでに染み出した愛液に濡れる花弁まで透けて見えている。 

「と、とても……恥ずかしいのですが……」 

 あわてて目を閉じる。 
 似合っていると喜ばれるのは嬉しいが、さすがにこれは、とても直視できなかった。 

「あっ!あぅ……っ」 

 目を閉じると、余計に他の感覚が鋭敏になる。 
 コリコリと乳首を指先で嬲られるが、布越しのせいで感触がいつもと微妙に違う。 
 しかも、自分が目を閉じていても、ヴェルナーにははっきり見えているのだと思うと、羞恥に体温が急上昇し、感覚はますます鋭くなる。 
 たまらず腰がゆらめくと、すでに愛液でベトベトに濡れていた布が花弁にこすれた。 

「あ、ああっ!ふぁっ!」 

 少しざらつく透け布の感触に身もだえすれば、余計に刺激は強まっていく。 

「もう少し、よく見せてくれ」 

 背後から、大きく左右に足を開かされ、つぅと指先で下着の上から割れ目をなぞられる。 
 いやらしい濡れた音がした。 
 ざらつく濡れた布が、熱くなっている部分へ押し付けられ、こすられる。 


 薄い布の向こうにあるのは、いつもの慣れた指。 
 けれど皮膚の感触とは違う。 
 いやらしいすがたをみられてる。 

  
 羞恥と快楽がないまぜになって、エヴァはもう半泣きだった。 
 手探りのままシーツを掴み、必死に耐える。 

「ふ、あ、あ、も……」 

 ビクビクとつま先が宙を蹴り始めた時、敏感な肉芽を布越しにはじかれた。 

「やぁ、あん、あああああ!!」 

 濡れそぼった下着に、愛液がさらに大きな染みをつくった。 

「は……はぁ……はぁ……」 

 脱力した身体が、くたりと背後に倒れ掛かる。 
 両足はしどけなく開いたままで、濡れた布地越しに、ほころびかけた濃いピンクの花弁がヒクついている。 

「なるほど、さすが好評品だ。エヴァの反応も気に入った」 

 ヴェルナーがくつくつと笑う。 

「それにしても意外だな。これをアイリーンが考えたなど……」 


「……あたしは、そーいう意味で言ったんじゃないんだがね」 

 バーグレイ商会の幌馬車の中、アイリーンは憮然とした顔で、卑猥な下着を指でつまみあげる。 

 『コルセットより楽な下着をつくったらどうか』と、言ったつもりなのに、どこをどうカン違いされたか、錬金術ギルドが作ったのはこれだった。 
 しかも、当初の予想を大幅に上回る売れ行きぶりらしい。 
 錬金術ギルドは大喜びで、金一封とともに、実物商品までご丁寧にアイリーンへプレゼントしてくれたのだ。 

「え?なんか間違ってた?」 

 向かいに座るルーディが、キョトンと目を丸くした。 

「まぁいいじゃん。俺まで特別ボーナスもらっちゃったし」 
「あんたは良いかもしれないけどね……」 

 ギロリと、『世界で一番、敵に回したくない女』はルーディをにらみ付けた。 


「頼むから、これとアタシの名前を結び付けないでおくれ!!!!」 





 

 ちなみに数ヶ月前、錬金術ギルドの開発部にて、ルーディとお仕事に疲れ気味な錬金術師によってこんな会話がなされていた。
 
 錬金術師 「新商品のアイディア、早く出せって言われてもさ。そう簡単に思いつかないっての」
 ルーディ 「大変そーだな。……あ、そーいやアイリーン姐さんが、下着作れって言ってた」
 錬金術師 「下着ぃ?」
 ルーディ 「コルセットよりイイ奴を作れば、バカ売れ間違いなしだってさ」
 錬金術師 「ふーん。イイ下着ねぇ……」
 ルーディ 「コルセットって苦しそうだしな。もっと色っぽくて、見てて楽しい奴とか?」
 錬金術師 「 そ・れ・だ 」


 ルーディ 「……ところでさぁ、ここの商品って、避妊薬とか処女膜再生薬とか、エロイのが多いな」
 錬金術師 「昔は、結構お堅かったらしいんだ。そっち系の研究は嫌う錬金術師が多くてさ」
 ルーディ 「へぇー」
 錬金術師 「ところが、十五代目王の時代に入った新入り錬金術師が、バンバン開発して、それから他も真似しはじめたらしい」
 ルーディ 「十五代目王の時代の、新入り?」
 錬金術師 「ああ。『性欲は人間の三大欲求ですよ。付け込まないでどうします』って、名言が代々商品開発部に残ってる」
 ルーディ 「……顔色一つ変えずにそれを言いそうな人、知ってる」


 ーーお師さまは、別に何でもどうでもいいので、大した苦痛でもありませんが、ちょっとだけ黒歴史だとは思っているようです。

(語り継ぐならせめて、もうちょっと他のものにして欲しかったですねぇ……)




 
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