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シーズン2
13 咎人の幸せな流刑地
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――二週間ほどたった夜、クロッカスが家にやってきた。
野原に口をあけたままになってしまった新遺跡へ、近いうちに大規模な調査団が入るらしいとか、興味を持った個別の冒険者たちも増えて、街の景気がかなり良いとか。色々な話をしてくれた。
ただ、ディキシスたちは逆に、レムナの傷が回復すると、どこかへ旅立ってしまったらしい。
それを聞き、ラクシュは少し残念だった。ディキシスもレムナも、好きになっていたから。
でも、無理はないだろう。ディキシスにとって自分は、忘れ難い憎悪の根源なのだ。
「ま、そう簡単に折り合いつけられたら、最初から苦労しないさ」
クロッカスはあっさりと良い、ミルクティーを旨そうにすすった。
「ん……」
「そうですね……」
すると、二人を見渡したクロッカスが、ニンマリした。
「ただ、気がすむまで他を旅したら、また戻ってくるかもしれないと、言ってたぜ」
「へ?」
目を丸くするアーウェンを、クロッカスがニヤニヤと眺める。
「レムナからな、今度はお前に負けないと、伝言も頼まれてる。どうせあいつらも、他の国には行き辛いだろうしな」
その言葉の意味する所を知り、ラクシュは頷く。アーウェンもニヤリと笑っていた。
ここは世界で最も魔物に寛容であり、世界でもっとも多く、罪を犯した者たちが集う国。
自身の目的のために、手段を選ばずに突き進んだ者たちの、行き着く先。
別名、『犯罪者の幸せな流刑地』だ。
***
クロッカスが帰り、アーウェンが茶器を手際よく片付ける。
ラクシュはソファーの上で、膝を抱えて座りこんでいた。
口下手な自分は、言いたいことがいつも、うまく言えない。
読んだ言葉や聞いた言葉、どれもこれも覚えているのに、自分で言おうとすると、なぜかそれは、泉に浮んだ泡のように、あっさり消えてしまうのだ。
―― 彼は、なんと言ってたんだっけ? 好き、と似た感じで……でも、ずっと素敵な言葉だった。
ラクシュは考え、一生懸命に伝えようとしてみた。
茶器を片付けて、隣に座ったアーウェンを見上げる。
「アーウェン。私……」
ええと、ほら、あれだ。好きと似た感じで……。
「好き……に、して?」
「なっ!?」
アーウェンが顔を真っ赤にして、プルプルと身震いしている。
「す、好きにしてって……本気ですか!?」
「ん」
どうも、少しばかり違うような気がするが、だいたい合っているだろうと、ラクシュは頷いた。
「らくしゅさあああああんっ!!!!」
唐突にアーウェンに飛びつかれ、ソファーに倒れこんだ。
「愛してます!!! 世界一、愛してます!!」
「あ」
――言いたかったの、それだ。
しかし、気づいた時にはもう遅く、アーウェンに唇を塞がれて、その言葉はまたラクシュの喉を滑り落ち、しゅわっと消えてしまった。
野原に口をあけたままになってしまった新遺跡へ、近いうちに大規模な調査団が入るらしいとか、興味を持った個別の冒険者たちも増えて、街の景気がかなり良いとか。色々な話をしてくれた。
ただ、ディキシスたちは逆に、レムナの傷が回復すると、どこかへ旅立ってしまったらしい。
それを聞き、ラクシュは少し残念だった。ディキシスもレムナも、好きになっていたから。
でも、無理はないだろう。ディキシスにとって自分は、忘れ難い憎悪の根源なのだ。
「ま、そう簡単に折り合いつけられたら、最初から苦労しないさ」
クロッカスはあっさりと良い、ミルクティーを旨そうにすすった。
「ん……」
「そうですね……」
すると、二人を見渡したクロッカスが、ニンマリした。
「ただ、気がすむまで他を旅したら、また戻ってくるかもしれないと、言ってたぜ」
「へ?」
目を丸くするアーウェンを、クロッカスがニヤニヤと眺める。
「レムナからな、今度はお前に負けないと、伝言も頼まれてる。どうせあいつらも、他の国には行き辛いだろうしな」
その言葉の意味する所を知り、ラクシュは頷く。アーウェンもニヤリと笑っていた。
ここは世界で最も魔物に寛容であり、世界でもっとも多く、罪を犯した者たちが集う国。
自身の目的のために、手段を選ばずに突き進んだ者たちの、行き着く先。
別名、『犯罪者の幸せな流刑地』だ。
***
クロッカスが帰り、アーウェンが茶器を手際よく片付ける。
ラクシュはソファーの上で、膝を抱えて座りこんでいた。
口下手な自分は、言いたいことがいつも、うまく言えない。
読んだ言葉や聞いた言葉、どれもこれも覚えているのに、自分で言おうとすると、なぜかそれは、泉に浮んだ泡のように、あっさり消えてしまうのだ。
―― 彼は、なんと言ってたんだっけ? 好き、と似た感じで……でも、ずっと素敵な言葉だった。
ラクシュは考え、一生懸命に伝えようとしてみた。
茶器を片付けて、隣に座ったアーウェンを見上げる。
「アーウェン。私……」
ええと、ほら、あれだ。好きと似た感じで……。
「好き……に、して?」
「なっ!?」
アーウェンが顔を真っ赤にして、プルプルと身震いしている。
「す、好きにしてって……本気ですか!?」
「ん」
どうも、少しばかり違うような気がするが、だいたい合っているだろうと、ラクシュは頷いた。
「らくしゅさあああああんっ!!!!」
唐突にアーウェンに飛びつかれ、ソファーに倒れこんだ。
「愛してます!!! 世界一、愛してます!!」
「あ」
――言いたかったの、それだ。
しかし、気づいた時にはもう遅く、アーウェンに唇を塞がれて、その言葉はまたラクシュの喉を滑り落ち、しゅわっと消えてしまった。
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