キラキラ狼は偏食の吸血鬼に喰らわれたい

小桜けい

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番外編

第一印象から決めていました

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 レムナはベッドのふちに腰をかけ、足をパタパタさせていた。前あわせのゆったりした病衣は、翼を伸ばせるように背中の一部が開いている。
 退屈しのぎに天井を見上げるが、年季が入った宿屋の天井梁は、いつもと変わらない。


 ラクシュたちとの戦いで、地下遺跡にて九死に一生を得てから、十日間が経っていた。
 ディキシスは結局、ラクシュを殺さないことに決めたらしい。
 あれだけ硬い決意をしていた彼に、どんな心境の変化がそうさせたのだろうか。

『復讐はちゃんと果たした』

 ディキシスはそう言っただけで、詳細は教えてくれなかったが、彼がもう良いというのなら、レムナが口を挟む事ではない。
 レムナは彼の武器だけれど、アーウェンもラクシュも好きだったから、内心ではホッとしていた。
 さすがにアーウェンには、悪い事をしたと思っている。
 ただ……言い訳をさせてもらえば、彼とてレムナの立場だったら、絶対に同じ事をしたはずだ。
 あの人狼は、親切な好青年だけれど、ラクシュを好きすぎて致命的に病んでいると、地下遺跡で思い知らされた。

 レムナの身につけていた魔防具は、ほぼ全部が壊れてしまったし、翼も痛めたうえに、多数のすり傷や打撲を負い、今は療養中だ。
 正確に言えば、いつも以上に怖い顔をしたディキシスに、絶対安静との命令の元、宿へ軟禁中である。

 宿泊部屋はいつも通り一緒だが、ディキシスは外出中だった。彼はレムナには留守番を命じ、愛用の剣と外套だけを一緒に連れて行った。

 あの翌日から、ディキシスは毎朝そそくさと、行先も言わずに黙って出かけていく。そして夜に、くたびれきった様子で帰ってくるのだ。
 どこで何をしているか、とても気になったが、毎晩の求愛給仕というご褒美があったから、詮索も退屈すぎる療養も我慢できていた。
 しかし昨日の夜、帰って来たディキシスの外套の一部が、キメラの血で汚れていたのだ。きっと、そこだけ魔道具で浄化し忘れたのだろう。
 酷いショックで、せっかくの求愛給仕さえも断ってしまった。
 驚くディキシスには、おなかが痛いと言って誤魔化し、布団の中に潜り込んで震えていた。

 ―― あんまりだ。一人でこっそり、キメラを狩りに行くなんて!

 ディキシスの武器は、剣だけじゃないのに!
 所持金にはまだ余裕があるのだから、危険な遺跡に行くのは、レムナが回復するまで待ってくれたって良いはずなのに!

 ―― やっぱり……。

 ずっと密かに恐れていたことが、現実になりそうな気がして、明け方まで眠れなかった。
 目が覚めたのはついさっきで、やはりディキシスは部屋におらず、剣と外套もなかった。
 ……きっとまた一人で、キメラ狩りに行ってしまったのだろう。

***

(……早く、帰ってこないかなぁ)

 褐色の素足と一緒に、背中の翼も伸ばして軽く動かすと、もう痛みもなくスムーズに動いた。
 立ち上がって窓際に行き、レムナは天気の良い空を眺める。

 今日は気持ちの良い快晴で、市街地は賑やかそのものだった。
 野原に出た新遺跡を目当てに、大勢の冒険者達が集まってきているせいだ。人間とほぼ同等なほど魔物も多いのは、さすがこの国というところだろう。
 人狼は半獣化していないと、人間と見分けが難しいが、通りを人間と連れ立って歩く者には、九尾猫やラミアにアラクネ、気難しいケンタウロスまでも揃っていた。
 数人のハーピーが、鮮やかな翼をはためかせて広場の上を飛んでいる。

 一緒に旅をし、時に生死を共にする仲間は、種族が違えど家族も同然だ。
 当然ながら恋愛感情も多く生まれ、その恋は実ることもあれば、残念な結果になることもある。
 レムナは窓ガラスに鼻先を押し付けて、九尾猫の女性が人間の男性へしなだれかかり、仲良く窓の下を歩いていくのを、羨ましげに見下ろした。

(あーぁ。ハーピーって、恋だけは損すぎる……)

 空を飛ぶのは大好きだし、自分はハーピーに産まれて良かったと断言できる。
 ただし恋愛に関してだけはは、どうしてもハーピーは損な生物だと思う。

 魔物は種族によって個体差や特徴はあるが、泉に浮かび上がった瞬間から、その地での言語など、ある程度の知識と知能を備えているのは共通していた。
 ハーピーは、吸血鬼やラミアと同じように、ランダムな年齢の姿で産まれ、生涯をその姿で過ごす。
 そしてハーピーの大きな特徴は、やはり空を飛べることと、産まれて最初に見た相手へ恋心を刷り込まれる性質だ。
 ただし、その刷り込み本能は、よくトラブルも引き起こした。

 恋心を抱く相手は、人間か魔物なら、異種族でも等しく刷り込まれてしまう。しかも、その相手をハーピーが自分で選ぶ事はできないのだ。
 相手が同性だったりとか、すでに伴侶がいたりとか、歳を取りすぎていたりとか……数え上げたらきりが無い。

(私は、最初に見たのがディキシスで……)

 そこまで考えた時、不意に扉がノックされ、レムナはビクンと飛び上がった。
 返事をすると、ディキシスがいつもの無愛想な表情で帰って来た。
 やはり腰に剣を下げ、この暑いのに愛用の外套を着ているが、片手には見慣れない大きな荷物を抱えている。

「あ、あれ? 早かったね……」

 ついさっき、早く帰って来てくれと願ったが、本当に来るとは思わなかったから、声が変に上擦った。
 包みを抱えて戸口に立っているディキシスから、いつもより思いつめたような雰囲気を感じるせいかもしれない。
 レムナが窓辺に立っているのを見ると、ディキシスは軽く眉を潜めた。

「安静にしていろと言っただろう」

「もう完璧に治ったし、これ以上寝てたら、飛び方を忘れちゃう」

 レムナが言い返すと、ディキシスは顔をしかめたが、口元にはわずかな苦笑を浮かべていた。
 これが、レムナは大好きだ。

「おかえり!」

 ついディキシスへ駆け寄り、その長身に抱きついたが、困惑したような表情でやんわりと押し返された。
 これももう、いつものことだから、レムナもあっさり身を離す。大人しくまたベッドに腰掛けて、内心で溜め息をついた。

(やっぱり、ハーピーって損。こんなに好きなのに、信じてもらえないなんて……)

 レムナはディキシスが大好きなのに、彼はそれを刷り込みのせいだと言い、認めてくれないのだ。
 世の中には、ハーピーの刷り込み性質を利用し、自分へ懐かせてボロボロになるまで使い潰す者も多い。
 どんなに乱雑に扱われても、ハーピーは恋した相手に尽くし続けるのだから。
 ディキシスは自身を、そんな悪人と同じだと言う。
 泉の番人に貰ったレムナを、吸血鬼への復讐に利用してこき使っているからだと、彼はいつだってレムナに言い聞かせる。

『お前は刷り込みに惑わされているだけで、本当は俺を好きになるはずがない』と。

 ハーピーに本当の恋は出来ないなんて、それこそ差別だと、最初は何度も抗議したが、ディキシスは困りきった顔で黙ってしまうから、レムナも黙ることにした。

(ハーピーは、みんなが思うほどバカじゃないんだから)

 荷物を置いて外套を脱ぎはじめたディキシスから、そっと目を逸らす。
 悪人に虐げられても尽くしてしまうハーピーは、頭の悪い種族だと、からかい歌まであるほどだ。
 しかしハーピーだって、恋する相手が酷ければ、それを頭ではちゃんと解っている。それでも離れられないのだ。
 吸血鬼が血を飲まずにいられないように、人狼が満月の夜には変身せずにいられないように。
 それは本能のさせる愚かな行為だと認めよう。
 でもレムナは、ディキシスを酷い悪人だなんて、一度も思ったことはない。
 無愛想で朴念仁で、意地っ張りで頑固で、思考が常に後ろ向き……くらいは、たまに思うけれど。

 ただし彼は、いつでもレムナの身を案じて大切に扱ってくれる。
 無愛想でも、レムナのお喋りをちゃんと聞いてくれる。実はふわふわ小動物が好きで、たまに視線が九尾猫や人狼の尻尾を追いかけていたりするのも、可愛くてたまらない。
 なにより、レムナの恋を勘違いだと諌めつつも、強請られれば求愛給仕をして、満たしてくれる。
 めったにないが、レムナが熱心に望めば、時に愛撫して抱くこともある。
 触れる手は、いつだってとても優しくて、どちらかと言えば彼の方が、レムナに尽くしているような気さえする。

 そんな相手に恋をして、何が不自然なのだろうか。
 レムナがハーピーでなくとも、ディキシスの傍にいれば、絶対に夢中になっていた。

(私は、最初にディキシスを見てから、後悔したことなんか無いよ!)

 レムナは、自分がどこの泉から産まれたのか、よく解らない。
 意識を得た時には、すでに全身拘束と目隠しをされており、『泉の番人』を名乗る者に、さまざまな手術を施された。
 視力や身体能力を大幅に強化され、声だけしか知らない番人から、自分はとある青年へ、武器として渡されると聞いた。
 青年は吸血鬼と王家に復讐を誓い、そのためにはレムナの助けが必要らしい。
 そんなの怖いし利用されるなんて嫌と思ったけれど、自動人形オートマタのように淡々と紡がれる番人の言う事には、なぜかいつだって逆らえなかった。

「……レムナ?」

 ぼーっと考え事をしていたら、ディキシスに呼ばれていたらしい。

「え!? あ……ごめん、ちょっと考えごとしてて……」

 慌てて言いつくろうと、赤褐色の髪をした青年はレムナの隣へ座り、やけに神妙な声で切り出した。

「お前の怪我が治ったら、聞こうと思っていた」

「う、うん?」

 レムナは引きつった声で返事をし、膝の上で病衣を握り締めた。やけに心臓がうるさくて、息が苦しい。

「俺の目的は達成された。それで問題は、お前の今後だが……」

 ―― 限界だった。

 覚悟はしていたのだから、絶対に泣くまいと思っていたのに、ボロボロと涙が勝手に零れて、握り締めた手の上に落ちていく。

「レムナ……?」

 しかも唖然とするディキシスを見て、もしかしたら、少しくらい同情して貰えるかも……など、最低すぎることを考えてしまった。

「ディ、ディキシス……む、無理にとは、言わないけど……もし、良かったらだけど……もうちょっとだけ……一緒にいちゃ駄目……かな?」

 ずっと不安でたまらなかった。
 復讐が達成されたら、自分はディキシスにとって、辛い過去を思い出させるだけの存在になってしまう。
 彼がレムナの愛を否定し続けたのは、その時にためらいなくレムナを捨てられるようにではないか……。
 随分と前から、そんな恐ろしい考えが、何百回も頭をよぎっていた。

「……これを先に渡すべきだった」

 ぶっきらぼうな声と共に、黒い布袋が突き出された。ディキシスが帰って来た時に抱えていた荷物だ。

「早く開けてくれ」

 催促され、震える手で紐を解いた途端に、虹色の光がキラキラと零れ出た。

「こ、これ……ディキシス? なんで?」

 中に入っていたのは、薄くて軽い布の衣服で、魔道具に加工した無数の鉱石ビーズを、蜘蛛女アラクネの特殊糸で丁寧に縫いつけてある。細かいデサインこそ違うが、破れてボロ服と化してしまったレムナの魔防具服と、ほぼ同じもの……いや、以前よりもさらに良品となっていた。

「鈴猫屋で鉱石ビーズを買って、ついでに良い仕立て屋も紹介してもらった」

 レムナは魔防具服を手にしたまま、声も出せずに固まっていた。
 鉱石ビーズは一つ一つが宝石も同然の価格だ。ただし、小さく作るのは難しいために、細かいものほど高価になる。
 衣服に煌くビーズは、信じられないほどの極小サイズで、魔法文字も丁寧に刻まれていた。これだけ小さく軽ければ、多数の鉱石ビーズがついていても、飛ぶのに支障はない。
 ただしこれを作るなら、宝石をちりばめた夜会ドレスを十着作るほうが安いだろう。
 
 茫然と固まっているレムナの頬を、ディキシスが指先でつついた。

「毎日留守番させてたからって、そう不貞腐れるな。これを買うために、あの新遺跡を駆け回ってたんだ。あそこのキメラは手ごわいが、良い発掘品も多くて、なんとか稼げた」

 そして、思い出したようにぼやいた。

「これだけ大量買いしたのに、クロッカスときたら値引くどころか、ここぞとばかりに吹っ掛けてきたんだぞ。尻尾三本の腹いせだろうな」

 ニヤニヤ顔で代金を要求する九尾猫の姿が目に浮び、レムナは思わず噴出した。
 クロッカスの命を三回分奪ったのは吸血鬼たちの仕業だが、そもそもはディキシスとレムナが、黒い森を襲ったのが発端だ。
 いかにも、あの猫おじさんらしい報復だと思う。

「じゃ、じゃあ……これからも一緒にいて……良いんだよね?」

 つい、声が小さくなってしまい、ヒソヒソ声でレムナは尋ねる。
 ディキシスが頷き、照れたように少しだけ微笑んだ。
 滅多に見られないこの顔が、レムナはもっと大好きだ。
 うっとり見惚れていると、ディキシスは少し顔を赤らめて、また無愛想な顔に戻って視線をそらしてしまった。

「十日前……復讐を果たした後で……」

 ディキシスは天井の梁を睨みながら、独り言のようにポツポツと話し出した。

「……ガキの頃の夢が、いつのまにか叶っていたことに、いきなり気がついた」

「夢? 復讐じゃなくて?」

 キョトンと尋ねると、ディキシスが苦笑した。

「まだ姉さんが生きていて、ラドベルジュの貧民窟に住んでた頃は、俺だって普通のガキで、将来の夢くらいあったさ。その日を生きるのに精一杯でも、夢は無料だからな」

「へぇ……どんな夢?」

 珍しく多弁な彼の話をもっと聞きたくて、レムナは慎重に相槌を打った。
 ディキシスは、遠い子ども時代を思い起こすように、目を細める。

「あそこに住む男のガキなら、誰でも一度は見る夢だ。立派な剣や鎧で武装して、信頼できる仲間と、古代遺跡でキメラと戦ったり、珍しい発掘品を見つけて金を稼いで……」

「え? それって……」

 そこまで聞いた所で、ついレムナは声をあげてしまった。
 ディキシスと共に暮らし始めた七年前から、二人は数々の遺跡を探索した。
 キメラを狩り、発掘品を見つけては、復讐のための準備資金を熱心に稼いだ。
 もっとも、ディキシスが一番最初に買い揃えたのは、レムナの魔防具服だったから、余計に時間がかかってしまったのだけれど。
 
 話を中断されたディキシスは、怒るでもなく静かに頷く。

「だから言っただろう。俺は、とっくに夢を叶えてたんだ。だが……楽しむどころか、気づくことも出来なかった」

 彼は深い溜め息をついて、レムナへ視線を向けた。見慣れた夕陽色の瞳なのに、なぜか少しだけ、明るい色になったような気がする。

「あんまり悔しいから、やり直したくてな。この国はちょうど遺跡に不自由しないし、お前の怪我が治ったら、気の済むまで遺跡を回りたいと思った。……一緒に来てくれるか?」

 思いもしなかった言葉に、レムナは翼をバタつかせながら、力いっぱい何度も頷いた。

「う、うん!! 行く! 絶対に行く!」

 ディキシスが嬉しそうに頷き、大きな片手を差し出した。

「……じゃあ、改めてよろしくな。俺の旅仲間」

「え?」

「もう復讐の武器は必要ない。俺が欲しいのはレムナだ」

 そう言ってから彼は、途端に自分の言葉が恥ずかしくなったようだ。耳まで顔を赤くし、両手を必死でふる。

「違う! 今のは変な意味じゃない! いや、俺もこれからは、もう少し努力するが……」

「ディ、ディキシス?」

「な、なんというか、その……お前に好かれるのに、相応しい相手になれるように……」

 どうやらディキシスは、自分でもどんどん墓穴を掘っているのを、自覚はしているらしい。
 しまいに頭を抱えて、レムナへ背中を向けてしまった。

「……今さら、信じてもらえなくても仕方ないが、俺だって本当は、お前に一目惚れだ」

 消え入りそうな呻き声で言われ、レムナは自分の耳を疑った。

「だって、ずっと……」

 ディキシスが腕の隙間から、少しだけ視線を覗かせて軽く睨む。

「これも何度も言ったが、お前に相当な無茶をさせ続けたのは事実だ。だから俺には、お前を愛する資格など微塵もなかった」

「だけど、ディキシスはいつだって……」

 危険が多かったのは確かでも、ディキシスは必ずレムナの身を案じ、いつも自分がより危険な役を引き受けた。

「……資格は十分すぎるくらい、あるよ」

 レムナは呟き、そっとディキシスに身体を摺り寄せた。途端に、大きな腕に抱き締められる。

「許されないはずなのに……姉さんを犠牲にして生き残ったのに……俺は……」

 嗚咽を堪えているような、ディキシスの声が震えた。

「俺は……幸せになりたい……」

 レムナを抱き締める腕に力が篭った。
 長身の青年は、まるで後悔に泣く小さな少年のように感じた。

「お前をきちんと愛して、愛されたい。許されなくても……その願いを叶えるために、足掻きたい」

「……」

 何か声をかけたかったのに、レムナは何も言えなかった。
 ディキシスもまた、復讐のために多くの命を潰した。
 復讐の相手を、決して許さないと誓ったからこそ、その呪いは彼自身も絡めとってしまった。
 ディキシス自身も、許されなくなってしまった。

「……うん」

 レムナがようやく出来たのは、頷くことだけだった。
 いつか、何年も先かもしれないけれど、ディキシスが自分にかけてしまった呪縛が溶ける日が来るのを、レムナも心から願っている。

 それまで必死に足掻いて、なにが悪いと言うのだろうか。
 レムナは必死で笑みを作り、精一杯の明るい声を出す。

「――じゃ、ディキシス。まずは『愛してる』って、私にちゃんと言ってみようか?」

「っ!?」

 レムナを抱き締めたまま、ディキシスの身体がビクリと震えた。見えないけれど、きっとこれ以上ないほど赤面して、顔をこわばらせているに違いない。

「ね? 努力してくれるんでしょ? 私はもう何百回も言ったんだよ?」

 フフンとレムナは笑い、ここぞとばかりに畳み掛ける。
 そして真っ赤になっている耳に口元を寄せて囁いた。


「世界中の誰が許さなくても、関係ないよ。私は、ディキシスを愛してる」


 次の瞬間、ベッドへ押し倒されてディキシスに唇を塞がれていた。
 彼が狂おしいほど言いたいと望み、レムナも渇望していた言葉が、重ねた唇の隙間で微かに聞えた気がした。


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