あなたの隣で愛を囁く

ハゼミ

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またもや気管挿管

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 カズくんはリカバリールームで、5日ほど過ぎた頃。透析を週3日に戻し、ステロイド剤も中止されていました。
 落ち着いた・・・
 誰もがそう思っていたのですが・・・

 7日目にお見舞いにいくと、酸素が再び5Lマスクに上がっていました。
どうしたのか聞くと、
「透析の後から調子が悪い」
と、言うのです。
 私は心配になり、看護師さんを呼びます。
 看護師さんは、
「大丈夫ですよ。」
 と言うだけで、どう言う状態なのかは説明をしてくれませんでした。
 1時間ほど私は病室にいましたが、その間、酸素はドンドン上がっていき、7Lまで上がっていました。
 カズくんは、オーバーテーブルに寄りかかり、ゼーゼーと喘鳴をしながら息をしています。
 私は、直感しました。今晩はと。
 そこで、私はカズくんにまた来ると伝えて、リカバリールームを後にしました。
 
 私は家に帰ると、すぐさま風呂に入り、ご飯を食べました。
 明日は、丁度仕事はお休みでしたし。
 夜の呼び出しに備えて、準備をしました。
 こうして早めに就寝をしたのです。

 そして、それは夜中の2時でした。
 スマホの着信音が、夜中に鳴り響きます。
 私は飛び起きて、電話に出ます。
 やはり看護師さんでした。
「今すぐ病院へ来てください」
 私はすぐに電話を切ると、服を着替えて病院へ向かいました。

 病院へ着くと、看護師さんが待っていて、
「今処置中なので、おかけになってお待ちください」
と、対応されました。
 私は、流行る思いをなんとか抑えて、病棟のホールの椅子にかけて待ちました。

 30分ほどして、リカバリールームから主治医が出てきました。
私が椅子から立ち上がると、
「今、再び人工呼吸器を装着しました。出来ることは全てやっています。」
そう、主治医は言ってきました。


 私は体から力が抜けそうになりましてが、なんとか踏ん張ってその場に立ち続けます。
「分かりました」
 なんとか返事をすると、主治医は会釈をしてその場を離れていきました。
 側についていた看護師は、
「大丈夫ですか?」
 と、私に声を変えてきました。
 
 しかし、私は頷いて、カズくんに会いたいと伝えました。
 看護師は了解すると、私をリカバリールームへと連れて行ってくれました。

 そこにいたのは・・・
 眠らされ、人工呼吸器に繋がれたカズくんでした。
 機械の音が再びカズくんの呼吸にシンクロして聞こえます。
 私は泣きそうになりながら、それを必死にこらえると、今は動かない手に自分の手を添わせた。
 「カズくん、頑張ったね」
 私はそう言って5分ほど無言でそこに立ち尽くした。

 そして、すでに時間は夜中の3時を回っていた。
 私は看護師さんに、
「よろしくお願いします」
 と言うと、リカバリールームを後にした。

 帰りの車の中、私は堪えていた涙がブワッと溢れた。
 恥ずかしいほど大声で泣きながら、何度も何度もカズくんの名前を呼んだ。
 
 ここから、カズくんの人工呼吸器は、中々外されることがなくなるのである。

 
 
 
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