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ストレス
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さて、カズくんが目覚めてから。
主治医からのお話がありました。
「肺の状態は良くなりました。透析も毎日から週3回に戻しています。このまま状態が落ち着いたら、次のことをして行きましょう」
との事でした。
つまり、本題の腸の手術をしていくという事です。
本来カズくんは大腸憩室でこの病院に入院したのです。そう、カズくんのお腹の中はまだ腸に穴が開いている状態に何ら変わりはありませんでした。
私は改めて、まだまだスタート地点にも立っていない事を思い知らされました。
そして主治医は、
「とにかく、人工呼吸器については、もうしばらくつけた状態にします」
安定したコンディションに持っていけるようにと、そう私に告げました。
とにかく、今の状態は安定している。
そう、言われた言葉に安心しながら、私はカズくんの面会に行きました。
カズくんは、私の顔を見るなり、口をパクパクして何かを訴えようとしていました。
ああ、やっとカズくんとコミュニケーションが取れる!
私は嬉しくって、ニコニコしてしまいましたが、この後
それが一変してしまいます。
何故なら、カズくんは声を出せないからでした。
私がカズくんに話しかけると、カズくんは口を動かします。しかし、声とはならず、何を言っているのか分かりません。
仕方ないので、アイウエオ表を使ってカズくんの視線を見ながらコンタクトを取って行きますが・・・これが中々難しく、カズくんが何を伝えたいかわかりません。
私が
「え?何??もう一回」
と、何度も何度もアイウエオ表を使いますが、同じようなことを数分間繰り返しても、ダメでした。
こういう時、声って本当に大切なんだと、思いました。
だんだん、2人ともイライラして、明らかに険悪な状態となり、結局私は病院を後にしました。
今日の面会は、本来なら一緒に喜ぶはずなのに・・・
私は初めて面会をストレスに感じました。
しかし、不思議なもので、看護師さんはカズくんとアイウエオ表でコミュニケーションが取れていました。
「た・ん・を・と・っ・て、ですね」
「か・ら・だ・・・体の向きを変えますか?」
と、カズくんも頷いて、ちゃんとお互いに意思疎通が図れるのです。
・・・。
正直、すごいと思いました。
私よりもカズくんの事が分かるなんて。
そして、更にそれは私へのストレスとなりました。
私もカズくんの意思をちゃんと聞いてあげなきゃ・・・
何しろ長期間、意識が無かったカズくんは、意識が戻った後、筋力が落ちてまだ自分の力で腕を上げる事が出来ない状態でした。
なので、どうしてもコミュニケーションを取るのにはアイウエオ表を使わなくてはなりませんでした。しかし、何度やっても、先ほどの看護師さんのように上手くカズくんとは意思疎通が取れませんでした。
結局、その日もストレスを抱えてまま、適当にカズくんに話しかけ、リカバリールームを後にしました。
主治医からのお話がありました。
「肺の状態は良くなりました。透析も毎日から週3回に戻しています。このまま状態が落ち着いたら、次のことをして行きましょう」
との事でした。
つまり、本題の腸の手術をしていくという事です。
本来カズくんは大腸憩室でこの病院に入院したのです。そう、カズくんのお腹の中はまだ腸に穴が開いている状態に何ら変わりはありませんでした。
私は改めて、まだまだスタート地点にも立っていない事を思い知らされました。
そして主治医は、
「とにかく、人工呼吸器については、もうしばらくつけた状態にします」
安定したコンディションに持っていけるようにと、そう私に告げました。
とにかく、今の状態は安定している。
そう、言われた言葉に安心しながら、私はカズくんの面会に行きました。
カズくんは、私の顔を見るなり、口をパクパクして何かを訴えようとしていました。
ああ、やっとカズくんとコミュニケーションが取れる!
私は嬉しくって、ニコニコしてしまいましたが、この後
それが一変してしまいます。
何故なら、カズくんは声を出せないからでした。
私がカズくんに話しかけると、カズくんは口を動かします。しかし、声とはならず、何を言っているのか分かりません。
仕方ないので、アイウエオ表を使ってカズくんの視線を見ながらコンタクトを取って行きますが・・・これが中々難しく、カズくんが何を伝えたいかわかりません。
私が
「え?何??もう一回」
と、何度も何度もアイウエオ表を使いますが、同じようなことを数分間繰り返しても、ダメでした。
こういう時、声って本当に大切なんだと、思いました。
だんだん、2人ともイライラして、明らかに険悪な状態となり、結局私は病院を後にしました。
今日の面会は、本来なら一緒に喜ぶはずなのに・・・
私は初めて面会をストレスに感じました。
しかし、不思議なもので、看護師さんはカズくんとアイウエオ表でコミュニケーションが取れていました。
「た・ん・を・と・っ・て、ですね」
「か・ら・だ・・・体の向きを変えますか?」
と、カズくんも頷いて、ちゃんとお互いに意思疎通が図れるのです。
・・・。
正直、すごいと思いました。
私よりもカズくんの事が分かるなんて。
そして、更にそれは私へのストレスとなりました。
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何しろ長期間、意識が無かったカズくんは、意識が戻った後、筋力が落ちてまだ自分の力で腕を上げる事が出来ない状態でした。
なので、どうしてもコミュニケーションを取るのにはアイウエオ表を使わなくてはなりませんでした。しかし、何度やっても、先ほどの看護師さんのように上手くカズくんとは意思疎通が取れませんでした。
結局、その日もストレスを抱えてまま、適当にカズくんに話しかけ、リカバリールームを後にしました。
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