あなたの隣で愛を囁く

リハビリ始まる

　　さて、カズくんは、人工呼吸器を装着するために薬で寝かされていたこともあり、全身の筋力が落ちていた。
　自分の腕を上げることはもちろん、頭を持ち上げることもままならない、そんな状態だった。
　それもそのはず。
　約2ヶ月半何も食べず、点滴だけをしていたし。
　痩せこけ、身体中の筋肉は落ちてしまっていた。
　私ですら、人工呼吸器が外れたとしても、もう寝たきりであろうと諦めかけていたぐらいだった。
　そのため、気管切開をした後も指すら動かせずしばらくは、アイウエオ表を使ってのコミュニケーションとなったのだが。
　これがまた上手くいかない。
　私はこの状況が永遠と続くのかと、疲弊していた。

　しかし。
　カズくんは、私と違ってとても前向きで。
　なにかと口をパクパクさせて話しかけ、少しずつではあるが、自分で動かせるところは動かしていた。
　「な・ん・と・か・な・る」
　と、アイウエオ表で訴えていた。
　
　1週間ほどして。
　カズくんが車椅子に乗ることになった。
　もちろん、1人では乗れない。
　看護師さんが、人工呼吸器に注意しながら、車椅子に乗せてくれたのだ。
　カズくんは疲れてはいただろうが、口元は笑っていた。
　
　それから、カズくんには正式にリハビリの先生が担当してくれることとなった。
　すると、私が面会に来るたびに、少しずつだが、体を動かせていった。

　リハビリは、カズくんが退院するまで継続して行われることとなる。