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  「どういう意味だ?」
モサークが尋ねると、ゴリドは笑い出した。
「フハハハハ……これは傑作だ!」
「何がおかしいんだ?」
「いやぁ……あまりにも滑稽すぎてね……」
「一体何を言っているんだ……?」
モサークは混乱していた。
「いいだろう……」
そう言うと、ゴリドの体から黒いオーラのようなものが出てきた。「これが何かわかるか?」
「わからないな……」
モサークは警戒しながら答える。すると、ゴリドの表情が変わった。
「貴様のような奴には教えてやらん!」
「なんだと……!?」
「まあいい……。それよりも、お前は大切なものを失う事になるぞ……」
「それは一体……」
「今に分かる……」
ゴリドはそう言い残し、姿を消した。
「クソッ……どこに消えたんだ……?」
モサークは周囲を見回しているが、見つからない。
「モサークさん、上を見てください!」
「えっ……?」
モサークは言われた通りに見上げると、そこにいたのはゴリドだった。しかも、アルスレイヤルを掴んでいる。
「しまった!」
モサークは急いでアルスレイヤルを取り返そうとしたが、遅かった。ゴリドはそのまま落下してきた。
「うわぁぁぁ!」
モサークは何とか回避したが、地面に大きな穴が開いた。
「危なかった……」
「モサークさん、大丈夫ですか?」
ラズバは心配そうに声をかけた。
「はい……なんとか……」
「良かったです……」
ラズバはホッとしたような顔を浮かべる。
(しかし、どうすれば良いんだ?ゴリドはかなり強い……。今の俺では勝てる気がしない……)
「モサークさん、ここは私に任せてもらえませんか?」
「ラズバさん……?」
「私があの男を倒します。」
「でも、相手は相当な手練れですよ……?」
「それでも、私は負けられないのです……」
ラズバの瞳からは決意を感じた。
「わかりました……」
「ありがとうございます。それじゃあ、行ってくるので待っていてください。」
「はい。お気をつけて……」
「はい!」
ラズバは勢いよく飛び出していった。
「さて、まずはこいつを始末するか……」
「くっ……」
「安心しろ……すぐに楽にしてやる……」
ゴリドはアルスレイヤルを掴んだまま、拳を振り上げた。
「これで終わりだ……」
「きゃっ……」
その時、突然目の前にいたゴリドが吹き飛ばされた。
「何が起きたんだ……?」
モサークは何が起こったのか理解できなかった。
「大丈夫ですか、アルスレイヤルさん?」
「はい……なんとか……」
「良かったです……」
「あなたは……ラズバ……?」
「はい、ラズバです。」
ラズバは微笑みながら答えた。
「どうしてここに……?」
「あなたを助けに来ました。」
「そんな事より、あいつは……?」
アルスレイヤルはゴリドがいた場所を見るが、そこには誰もいなかった。
「大丈夫です。もう倒しました。」
「本当ですか……?」
「はい。」
ラズバがそう言うと、突然ゴリドが現れた。
「まさか、この私が倒されるとはな……」
「さっきまでの余裕な態度はどこへ行ったんだ?」
モサークは挑発するように言った。
「うるさい!こうなったら、力ずくで奪ってやる!」
「できるならやってみろよ……」
「言われなくてもやってやる!」
ゴリドは殴りかかってきた。だが、その攻撃を避けた。
「何だと!?」
「どうした、さっきまでと動きが違うじゃないか?」
「黙れ!」
ゴリドは再び攻撃をするが、モサークは全て避けている。
「なぜ当たらない……?」
「お前の攻撃が遅いからだ。」
「クソッ……調子に乗るな!」
ゴリドはさらにスピードを上げて、攻撃を仕掛けてくる。
「無駄だ……」
モサークは避けると、ゴリドの腹を殴った。
「グハッ……」
ゴリドは吐血しながら倒れた。
「まさか、こんな簡単に終わるとはな……」
「まだ終わっていないぞ!」
ゴリドは立ち上がると、再び黒いオーラを出した。そして、その姿を変えた。それは、先ほどよりも禍々しい姿だった。
「なんだあれは……?」
「これは暗黒の力だ……。これを使えばお前達を殺す事ができる……」
「それがどうしたというんだ?」
「これを見ても言えるか……?」
ゴリドは手を上にかざすと、空から雷が落ちてきた。しかも、かなりの威力がありそうだ。
(なんて魔力なんだ……!?)
モサークは驚いている。すると、今度は地面が揺れ始めた。
「一体何が起きてるんですか……?」
アルスレイヤルは怯えていた。
「わからないが、かなりヤバイ状況なのは確かですね……」
モサークがそう言っていると、地震がさらに激しくなってきた。
「このままではマズイぞ……」
モサークは焦り始めていた。その時だった。突然、地割れが発生したのだ。
「しまった!」
モサークは急いで逃げようとしたが、間に合わず落ちてしまった。
「モサークさん!!」
アルスレイヤルはすぐに助けに行こうとしたが、ラズバによって止められた。
「離してください!」
「今は無理です。ここは一旦退きましょう……」
ラズバは冷静に対処する。
「でも……」
「お願いします……」
「……わかりました。」
アルスレイヤルは渋々承諾した。
「それじゃあ、行きますよ……」
ラズバ達はその場を去った。
モサークが目を覚ますと、そこは洞窟のような所にいた。
(ここはどこだ?)
辺りを見渡すと、そこには巨大な怪物がいた。
「うわぁっ!?」
あまりの大きさに思わず声が出てしまう。
「おっ?ようやく起きたようだな……」
その言葉を聞いて、モサークは確信した。目の前にいるのはあのゴリドだ。
「お前の仕業なのか……?」
「あぁ、その通りだよ。」
「目的は何だ……?」
「目的だって?そんなものはないよ。ただ君を連れてきただけだよ。」
「俺を連れて行く為だけにこんな事をしたのか……?」
「そうだよ。まぁ、ついでにアルスレイヤルも連れて来ようと思ったけどね……」
「なんの為にだ……?」
「さっき言っただろう。目的はないって……」
「ふざけるな!それじゃあ、何の為に連れて来たんだ!?」
モサークは怒鳴るが、ゴリドは笑っているだけだ。
「いい加減にしろ!」
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