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一章
プロローグ
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ロゼは呆然としていた。
ここは神殿、中庭に続く吹き抜けの廊下。季節は春も未だという頃で、天井高く響く風の音はどこか寒々しい。その廊下には、ふたつの影がおちていた。
ひとつはすこし小さめの、少女とも見て取れる程の影。
そしてもうひとつは……
――実家の玄関に置いたら防犯になりそうです。いえ、その前にかあさまととうさまが泣き叫んで家に入れないですね。まあ置物ではなく人ですけど。
ロゼは只今現実逃避中だった。現実とは、そう、目の前の男。
傾きかけた太陽を背負うその男の顔は、今は見えない。その体は大きいという表現では足りないと思うほどに大きく分厚い。腕は片腕でロゼを挟んでプチッとできそうな程に太く、長い。腰はロゼの胸元まであり、足は着ているズボンがぱっつぱつになるほどに筋肉がついている。はち切れそうなズボンが可愛そうである。
想像してみて欲しい。自分の2倍はあるのではないかという人間を辞めたような男が、太陽を背に無言で立っている。顔が見えないが、おそらく自分を見つめて。
男が一歩踏み出す。その時、夕日に雲がかかり廊下に薄暗い影を落とした。
「っ!」
その時悲鳴をあげなかった自分をロゼは褒めたい気持ちになった。大変失礼な話ではあるが、それも致し方ないのかもしれない。なにせ、暗い廊下で自分を見下ろす男の顔は。
失神してもいいくらいには恐ろしかったから。
ここは神殿、中庭に続く吹き抜けの廊下。季節は春も未だという頃で、天井高く響く風の音はどこか寒々しい。その廊下には、ふたつの影がおちていた。
ひとつはすこし小さめの、少女とも見て取れる程の影。
そしてもうひとつは……
――実家の玄関に置いたら防犯になりそうです。いえ、その前にかあさまととうさまが泣き叫んで家に入れないですね。まあ置物ではなく人ですけど。
ロゼは只今現実逃避中だった。現実とは、そう、目の前の男。
傾きかけた太陽を背負うその男の顔は、今は見えない。その体は大きいという表現では足りないと思うほどに大きく分厚い。腕は片腕でロゼを挟んでプチッとできそうな程に太く、長い。腰はロゼの胸元まであり、足は着ているズボンがぱっつぱつになるほどに筋肉がついている。はち切れそうなズボンが可愛そうである。
想像してみて欲しい。自分の2倍はあるのではないかという人間を辞めたような男が、太陽を背に無言で立っている。顔が見えないが、おそらく自分を見つめて。
男が一歩踏み出す。その時、夕日に雲がかかり廊下に薄暗い影を落とした。
「っ!」
その時悲鳴をあげなかった自分をロゼは褒めたい気持ちになった。大変失礼な話ではあるが、それも致し方ないのかもしれない。なにせ、暗い廊下で自分を見下ろす男の顔は。
失神してもいいくらいには恐ろしかったから。
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