強面さまの溺愛様

こんこん

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一章

自分がよく分かりません

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「力加減は出来ていた筈だが…………余程相性が良かったのか」

焦土と化した森の一部を無表情で見つめながら、ゼルドが呟く。
少し黒く焦げた、で済むのならまだいい。だがしかし、灼熱の渦が通過した部分は木のみならず地面までもが広範囲で抉られ、それが森の奥深くまで続いているのだ。

「どっ、どうしましょう!?リデナス様に説明して、謝りに行かないと……っあぁぁ胃が、胃が痛い」
「落ち着け。別に懲罰されるほどのことでもない。厳重注意で終わるだろう」
「……そ、そうですか?そうだといいんですけど」

――――後で報告するの気が重いなあ。リデナス様の厳重注意………………いや、考えないようにしよう。

「今のは、どれくらいの力を使った」
「そう、ですね。今はそんなに消耗している感じはしないし…………中級の術を一回使ったくらいでしょうか」

それを聞いて、ゼルドはロゼを見つめながら少し考え込むような仕草をする。

「――――俺とお前の相性が良いのもあるだろうが…………お前の神力は、同調性が高い質のようだな」
「同調性ですか」
「ああ。他の者の神力と同調しやすいのだろうな。そういう者はごく稀にいる。…………得ようとしても、なかなか得られない性質だ」
「…………私の、長所」
「伸ばせばそうなるだろう」

ロゼは何度も目を瞬いた。

――――平凡な……可もなく不可もなく、の私の長所。稀な性質。

最初は自分の事に思えなかったロゼも、反芻して理解していくうちにその顔に嬉色が広がってゆく。

「そっ、それじゃっ、ロードさんの隊にも、入れるかもですか?可能性があるでしょうか」
「…………詳しくは言えないが、選抜で共闘や神力の同調性が試されるようなことは恐らく、ない」
「………………そう、ですか」

ちょっとガッカリしてしまうロゼ。まあそんなに世の中上手く事が運ぶわけないかと考えていると、ぽん、と馴染みのある感触を頭に感じた。

「……その性質を抜いて考えても、お前には十分選抜に通る力がある。それにその性質は、入隊した後にこそ力を発揮するものだ。きっとお前の自信にも繋がる」

頭を撫でながら、いつもより優しげな、語りかけるような低い声がロゼを包み込む。
顔も図体も変わらず怖いままなのに、ロゼに対する雰囲気は優しく、そして甘い。魔物のようだという噂が嘘のようである。

「――そうですね。すみません、目先のことを考えて少しでも落胆してしまうなんて。大事なのはその先………一緒に戦う隊の人の力になれるように、今からでもこの性質を上手く使えるようにしないと!」
「――――――――隊の、人?」

途端、先程の和やかな雰囲気は消え、張り詰めたものとなる。

――――な、なんかこの感じ、前にもあった気がする!私なんかやばいこと言いましたっけ?言ってないですよね!?え、何故に……?

内心冷や汗をかき、ゼルドから一歩、一歩と遠ざかりながらロゼは口を開けた。

「え、ええ。同調というのは共闘で役に立つものですよね。だから、他の方の役に立つ為にはその練習を」
「他の奴にもこうやって触れるのを許す訳か」
「っえ」
「同調はその者の身体に触れていた方が効率的だ。触れるのか?」

そう言いながら、ゼルドはロゼとの距離を一歩で詰め、至近距離でロゼを見下ろす。
ただでさえデカい男が、今ロゼには自分を喰ってかかりそうなほどの大きな何かに見えていた。

「ひ、必要性があれば」
「――これでもか」

先程共闘した時と同じように、ゼルドはロゼの両目を片手で覆う。そしてもう片方の腕でロゼの腰をぐっと引き寄せた。
その距離感と声の近さに、ロゼは真っ赤になる。

「っこんなに密着することなんてありません!!だ、第一、そんなに心配する必要も無いです!」
「…………心配、か」

そのロゼの言葉に、少し落ち着いたらしい。ロゼの腰を支える腕が緩み、地面から浮いていた足もすとんと着地する。

「何を心配しているのかは分かりませんが…………そもそも、こうやって触れられたとしても――」

――嫌な時はちゃんと突っぱねるから大丈夫です。
そう言おうとしたロゼは、その先を言うことなく口を噤んだ。
撫でられるのとは違う、これはまるで恋人や夫婦に近しい距離だ。
それなのに……ゼルドに触れられて、ロゼは嫌悪なんて感じなかった。目を塞がれても、近くに引き寄せられても嫌だとは感じない。ただ、恥ずかしいだけだった。

自分のことなのにロゼは困惑していた。
他の人にされてもそうなのか?
だが、他の人で想像しようとしても上手くいかない。べたべたと触れられると思うと背筋がゾッとするのだ。


これではまるで、ゼルドだけが特別だというようなものではないか。


その考えに至った時、ロゼの顔はぷしゅぅぅと煙が出そうな程に真っ赤になる。
そんなロゼを不思議そうに見つめる大男。

「?おい、どうし」
「あー!!いたいたー!ゼルドぉーー」

――ゼルドの声は、突然乱入した男の声によって遮られる。

「どこにいるのかと思ったら、こんな端っこに!……しっかしいつにも増して派手にやったねぇ、こりゃあ後でこってり絞られる………………ん?」

ゼルド話しかける男は、そこでやっとゼルドに半ば抱えられている状態のロゼに気がついたようだ。

「……………………………………お前、まさか襲っ」
「違います!」

大声で否定したロゼは、腕を突っぱねてゼルドから離れようとする。
自分の腕の中で顔を真っ赤にしながらわたわたと離れようとするその様を、ゼルドは若干やにさがったような顔で見下ろしながら、名残惜しげに腕を解いた。

「こんにちは、シュワルツェさん。僕はゼルドと同じ隊のシュデル=ライツィヒ。土使いだよ」
「わ、私の名前をご存知なのですか?」

ロゼは不思議に思ってその男、シュデルを見上げる。物腰の柔らかい好青年、という出で立ちに、気さくな雰囲気。笑った顔がとても愛嬌のある美青年だ。

「あぁ、ゼルドに頼まれて君の事をしらゲフッ」
「シュデル、黙れ」

話していたシュデルの鳩尾にゼルドの突きが炸裂する。
まるで漫才でも見ているようだ、とロゼは呑気に思った。

「?ロードさんが何ですか?」
「いや、なんでもないんだ。気にしないで本当に」
「…………?…………あ、土使いということは、もしかしてあの小さい傀儡の開発をされてるんですか?」
「あぁ、それね。同士で集まって研究してるんだ。費用も幾らかは上から出してもらえるから、順調に進んでいるよ。あと少しで完成というところなんだ」
「す、凄いです!先程ロードさんが持っていた物を使わせていただいたんですけど、土使いが操っていないのに自由に動き回ってて…………!あ、ごめんなさい。自己紹介が遅れていましたね。改めましてロゼ=シュワルツェといいます。新人隊の風使いです」

興奮して話していたロゼは自己紹介が遅れていたことに気づき、恥ずかしげに名前を述べた。
まあ相手は自分のことを知っているようだし、今更ではあるのだが。

「ああ、よろしく」

にこりと微笑んだシュデルがロゼに手を差し出す。
握手をしようと、ロゼも手を前に出すのだが――――。

2人の手が触れる直前、スパァァンと小気味の良い音と共にシュデルの手がはたかれる。
叩いたのはもちろん、ご機嫌斜めのゼルドである。

「っお前なぁぁ、別に握手くらい」
「良くない」

しらっと答えるゼルドに、叩かれた手の甲を擦りながら呆れた様子のシュデル。
その2人を見たロゼの頭には、また???が増えたのだった。

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