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一章
給餌の意味
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「っん~、やっと終わったぁ」
午前の業務終了の鐘が鳴ってから数分後、ロゼは仕事を切り上げてひとつ大きな伸びをした。きちんと整頓された机の上には、今し方書き上げた報告書がまとめられている。昼食を食堂で食べる前にこの報告書をまとめようとしたため、今日の昼食はアリアとは別だ。
それぞれの隊員達が連れ立って食堂に向かうこの時間、第一隊の執務室には疎らにしか人がおらず、廊下で響く賑やかな声も次第に聞こえなくなってくる。静かになった部屋の中で、ロゼは窓辺へと近寄り、透明な硝子越しに広がる青空を眺めた。
天気もいいし外で食べようかと、ロゼが考えた時だった。ふと、自分が手を掛けている窓枠に、大きな手がおかれたのが視界に入った。日中の強い陽射しの中でも、褐色だと分かるその大きな二つの手。
その手から腕、そして肩へと視線を移し、最後には真上から自分を見下ろす榛の瞳に辿り着く。
「ロードさん。……何か、私に御用ですか?」
自身を囲うようにして見下ろすゼルドを見ても、ロゼは別段驚きはしなかった。それは彼の放つ威圧感に慣れたからというのもあるが、今日彼が自分の元に来るのだろうという予感の為でもあった。
……ゼルドはここ四日、ロゼの前にも現れず、第一隊の訓練にも参加していなかった。見なくなる前日に、本人がロゼにしばらく神殿から離れる旨を律儀にも伝えてくれた時、ロゼは自分の事が絡んでいるのだろうと理解した。
自分に関係のある事なら連れて行ってくれないかとも考えたが、それは言わなかった。誘拐未遂の際に起きたゼルドとの衝突で、彼がどれ程自分を大切に思ってくれているかは理解したつもりだ。彼はロゼを危険な目には合わせようとはせず、安全な場所で守られることを願うだろう。
だが、彼は約束してくれた。「帰ったら必ず話す」と。
だからロゼはそれを信じ、彼の無事を祈ったのだ。
「……先程、聖殿での報告会があった。その内容について話したい。お前にも、関係のある話だ」
「――はい。フランチェスカ様から伺っています。報告会を済ませたら、ロードさんから話があるだろうからと」
くるりと身体の向きを変え、ゼルドと向かい合う。ここで話すか、それとも外に出るべきかとロゼが考えていると、ゼルドがふと思い至ったようにして呟いた。
「今から、昼を食べるつもりだったのか?」
「え?えぇ、まあ。でも話の方が大事ですから……」
そこまで言って、ロゼははっとした。
―――こ、これは、もしや、昼を一緒に食べられるチャンスでは!?
ロゼとゼルドは基本的に一緒にいることが多いが、昼食の時間はそれぞれ別の者と一緒に食べている。ロゼは大抵の場合アリアと昼食を取り、ゼルドはシュデルや他の先輩隊員達と一緒に食べている。たまに食堂で見かけるゼルドは相変わらず恐ろしい顔で寡黙に昼食をとっているが、周りの者も気にした風でもなく接しているのを見て、ロゼは勝手に微笑ましく感じていた。
しかし今、ただ遠くで見るだけではなく、近くでゼルドの貴重な食事姿を見れるチャンスが巡ってきたのだ。逃す手はあるまい。
「っあの、もしよろしければっ!その、いや別に!断ってくださってもいいんですけど全然!」
「どうした」
「あの、いっ、一緒に…………お昼を……」
不思議そうな顔をしたゼルドに見詰められ、ごにょごにょと言葉が尻すぼみになってしまう。
口篭りながら、どんな誘い文句なら断られないかと頭をぐるぐるさせているロゼを見下ろしながら、ゼルドは僅かに目を見開いた。
「……いいのか?」
「っはぇ!?」
「一緒に、食べても」
急にかけられた言葉にロゼはビクッっと肩を揺らしたが、続いて告げられた思いがけない言葉に、その焦げ茶色の瞳を輝かせる。
「も、もちろんです!!食堂はこの時間混むので、早めに行きましょう!あ、今日は晴れているので、食堂で買って外で食べるのもいいですね。どっちがいいですか?」
「どちらでも。――ロゼの、好きな方を」
無意識にだろう、ロゼはゼルドの服の袖をくいっと引っ張り、頬を薔薇色に染めながら歩き出そうとする。そんなロゼを、ゼルドは愛おしげに見詰めていた。
食堂から買ってきたお弁当を手に、二人は外のベンチに腰かけた。木立の中にあるこのベンチは、ロゼが新人隊に所属していた時、ゼルドに訓練をつけてもらっていた際に休憩でよく使っていた場所だ。その時は落ち葉がはらはらと舞い落ちていたが、今は木に瑞々しい葉が茂り、日中の照りつけるような陽射しを遮ってくれている。葉脈が透けている葉の、その間から見える空は青く澄み渡り、この世界の何処までも続いていくようだった。
ゼルドの話を一通り聞いたロゼは暫しの間陰鬱な顔で黙り込み、手に持っているカップの縁を撫でていた。
「……――キメラを作る為に、私の力が必要だということでしょうか。……――私を連れ去ろうとした黒装束の男は、一緒にいた少年……ノルド補佐官の子飼いでしたっけ……、その少年に、「出血はさせるな」と言っていました。他の言動からも察するに、私を傷つけることなく、できるだけ正常な状態で連れ去りたかったんだと思います」
「……そうなると、神力の同調性は本人が生きていなければ発揮されないと言うことになるな」
「はい。ですから、最悪の場合私が連れ去られても殺されることはありません。この事を師団長様に伝えて、今後の活動に………」
そこまで言って、口を噤んだ。ロゼの発言を聞いたゼルドが、睨め付けるようにして言葉を遮ったからだ。
「―――囮になるなどと愚鈍な事をぬかすのであれば、お前を俺の部屋に縛り付ける」
鎖で繋いでもいいな、と言葉を付け足しながら細まる瞳に、ロゼはぞくりと背を泡立たてた。反射的に逃げ腰になった身体に、大きな腕が伸びる。
「っひぇ」
一瞬の浮遊感の後、ロゼは気がつけば、ゼルドの片膝の上に横を向くかたちで座らされていた。その細い腰には太い腕が固定され、離れることも出来ない。
「昼食の、最中だったな」
そう言ってロゼの弁当箱を掴むゼルドに、ロゼははっと目を見開き、咄嗟に逃げようと暴れ回る。
―――こっ、これは、前のサンドイッチの時と同じです!!
入隊式の日に催された小さな歓迎会で、ゼルドに翻弄された記憶が蘇る。サンドイッチをロゼに食べさせようと、身体に触れ、撫でられたその感覚を思い出し、顔に熱が集まるのがわかった。
「暴れるな。一緒に昼食をと言ったのはお前だろう。…………それとも、仕置きをご所望か?」
初めて見る、にたぁという効果音が似合いそうな極悪面に、ロゼは天敵に居合わせた小動物さながらに身を竦み上がらせる。だがそれと同時に、頭で仕置きという言葉がぐわんぐわんと響き渡り、顔を更に赤く染めた。
それが羞恥によるものか、それとも期待によるものなのか、はたまた両方か。それはロゼにも分からなかった。
「こども扱いは、……っやめてと、前にも言ったはずです」
ゼルドの持つ箸によって眼前に差し出された卵のキッシュに、ロゼはいやいやと首を振る。
「……確かにお前は、幼子のように小さい。だが俺は、お前を子供扱いしたことなどない」
上から降ってきた言葉に、ぱちくりと瞬きを繰り返す。
食事を手ずから与えたり、膝に乗せるなど、親が子にするそれだ。成人男性が、女性にするものではない。
ロゼの考えが顔に出ていたのだろう。ゼルドは一度箸を弁当の容器の上に置き、ロゼの頬をすりすりと撫で始める。
その慣れた感覚に少し落ち着きを取り戻したロゼは、だがその指がぷっくりとした唇の縁をなぞり始めたことに、びくりと身体を揺らした。
「――知っているか?野生の動物の中では、雄が番の雌に給餌する。愛情を深め、そして自らの子を産んでもらう為に。あるいは上位の魔物が、獲物だと狙いを定めた物に対して時間をかけて餌を与え、信頼させ、成長したところで美味い肉にくらいつく。どちらにしろ喰うことに変わりは無いがな。…………お前は、どちらだと思う?」
何を、とは聞けなかった。聞いたら最後、目の前の男に喰い尽くされるような気がした。
―――それでも、いいかもしれない。この人に喰べられるのならば、それで。
狂気の滲む目を前にしてロゼが感じたのは、恐怖ではなく恍惚とした高揚感だった。
先程の焦りとは一転、うっとりとした表情で見上げ、そして我に返るロゼに、ゼルドは苦悶の表情を浮かべ、僅かに歯軋りをした。
―――まだ、喰らいついてはいけないのか。こんなに美味そうな匂いを漂わせて、無防備に腕の中に居座っているというのに。
それは、愛情だけではない、食欲に似た何か。
愛しいだけの者には与えない、普通ではない何かだ。
―――全身を、余すことなく全て。身体だけではない。感情も、表情も、心も、愛らしい動作も、その瞳の向ける先も全て、自分だけのものだ。
そうしなければ、きっと。自分は満たされることはないのだろう。
自らの内に潜む狂気に、ゼルドは自嘲した。
今まで特段執着するものなぞ無かった為、これが普通なのかどうかさえも分からない。
―――しかし今は、この狂気も隠さなければならない。ロゼを害する者の始末が終わってから、ゆっくりと囲い込めばいい。
既に空腹の獣は、その獲物に前足をかけている。
恍惚とした気分のロゼは、そのことには気づかないままだった。
午前の業務終了の鐘が鳴ってから数分後、ロゼは仕事を切り上げてひとつ大きな伸びをした。きちんと整頓された机の上には、今し方書き上げた報告書がまとめられている。昼食を食堂で食べる前にこの報告書をまとめようとしたため、今日の昼食はアリアとは別だ。
それぞれの隊員達が連れ立って食堂に向かうこの時間、第一隊の執務室には疎らにしか人がおらず、廊下で響く賑やかな声も次第に聞こえなくなってくる。静かになった部屋の中で、ロゼは窓辺へと近寄り、透明な硝子越しに広がる青空を眺めた。
天気もいいし外で食べようかと、ロゼが考えた時だった。ふと、自分が手を掛けている窓枠に、大きな手がおかれたのが視界に入った。日中の強い陽射しの中でも、褐色だと分かるその大きな二つの手。
その手から腕、そして肩へと視線を移し、最後には真上から自分を見下ろす榛の瞳に辿り着く。
「ロードさん。……何か、私に御用ですか?」
自身を囲うようにして見下ろすゼルドを見ても、ロゼは別段驚きはしなかった。それは彼の放つ威圧感に慣れたからというのもあるが、今日彼が自分の元に来るのだろうという予感の為でもあった。
……ゼルドはここ四日、ロゼの前にも現れず、第一隊の訓練にも参加していなかった。見なくなる前日に、本人がロゼにしばらく神殿から離れる旨を律儀にも伝えてくれた時、ロゼは自分の事が絡んでいるのだろうと理解した。
自分に関係のある事なら連れて行ってくれないかとも考えたが、それは言わなかった。誘拐未遂の際に起きたゼルドとの衝突で、彼がどれ程自分を大切に思ってくれているかは理解したつもりだ。彼はロゼを危険な目には合わせようとはせず、安全な場所で守られることを願うだろう。
だが、彼は約束してくれた。「帰ったら必ず話す」と。
だからロゼはそれを信じ、彼の無事を祈ったのだ。
「……先程、聖殿での報告会があった。その内容について話したい。お前にも、関係のある話だ」
「――はい。フランチェスカ様から伺っています。報告会を済ませたら、ロードさんから話があるだろうからと」
くるりと身体の向きを変え、ゼルドと向かい合う。ここで話すか、それとも外に出るべきかとロゼが考えていると、ゼルドがふと思い至ったようにして呟いた。
「今から、昼を食べるつもりだったのか?」
「え?えぇ、まあ。でも話の方が大事ですから……」
そこまで言って、ロゼははっとした。
―――こ、これは、もしや、昼を一緒に食べられるチャンスでは!?
ロゼとゼルドは基本的に一緒にいることが多いが、昼食の時間はそれぞれ別の者と一緒に食べている。ロゼは大抵の場合アリアと昼食を取り、ゼルドはシュデルや他の先輩隊員達と一緒に食べている。たまに食堂で見かけるゼルドは相変わらず恐ろしい顔で寡黙に昼食をとっているが、周りの者も気にした風でもなく接しているのを見て、ロゼは勝手に微笑ましく感じていた。
しかし今、ただ遠くで見るだけではなく、近くでゼルドの貴重な食事姿を見れるチャンスが巡ってきたのだ。逃す手はあるまい。
「っあの、もしよろしければっ!その、いや別に!断ってくださってもいいんですけど全然!」
「どうした」
「あの、いっ、一緒に…………お昼を……」
不思議そうな顔をしたゼルドに見詰められ、ごにょごにょと言葉が尻すぼみになってしまう。
口篭りながら、どんな誘い文句なら断られないかと頭をぐるぐるさせているロゼを見下ろしながら、ゼルドは僅かに目を見開いた。
「……いいのか?」
「っはぇ!?」
「一緒に、食べても」
急にかけられた言葉にロゼはビクッっと肩を揺らしたが、続いて告げられた思いがけない言葉に、その焦げ茶色の瞳を輝かせる。
「も、もちろんです!!食堂はこの時間混むので、早めに行きましょう!あ、今日は晴れているので、食堂で買って外で食べるのもいいですね。どっちがいいですか?」
「どちらでも。――ロゼの、好きな方を」
無意識にだろう、ロゼはゼルドの服の袖をくいっと引っ張り、頬を薔薇色に染めながら歩き出そうとする。そんなロゼを、ゼルドは愛おしげに見詰めていた。
食堂から買ってきたお弁当を手に、二人は外のベンチに腰かけた。木立の中にあるこのベンチは、ロゼが新人隊に所属していた時、ゼルドに訓練をつけてもらっていた際に休憩でよく使っていた場所だ。その時は落ち葉がはらはらと舞い落ちていたが、今は木に瑞々しい葉が茂り、日中の照りつけるような陽射しを遮ってくれている。葉脈が透けている葉の、その間から見える空は青く澄み渡り、この世界の何処までも続いていくようだった。
ゼルドの話を一通り聞いたロゼは暫しの間陰鬱な顔で黙り込み、手に持っているカップの縁を撫でていた。
「……――キメラを作る為に、私の力が必要だということでしょうか。……――私を連れ去ろうとした黒装束の男は、一緒にいた少年……ノルド補佐官の子飼いでしたっけ……、その少年に、「出血はさせるな」と言っていました。他の言動からも察するに、私を傷つけることなく、できるだけ正常な状態で連れ去りたかったんだと思います」
「……そうなると、神力の同調性は本人が生きていなければ発揮されないと言うことになるな」
「はい。ですから、最悪の場合私が連れ去られても殺されることはありません。この事を師団長様に伝えて、今後の活動に………」
そこまで言って、口を噤んだ。ロゼの発言を聞いたゼルドが、睨め付けるようにして言葉を遮ったからだ。
「―――囮になるなどと愚鈍な事をぬかすのであれば、お前を俺の部屋に縛り付ける」
鎖で繋いでもいいな、と言葉を付け足しながら細まる瞳に、ロゼはぞくりと背を泡立たてた。反射的に逃げ腰になった身体に、大きな腕が伸びる。
「っひぇ」
一瞬の浮遊感の後、ロゼは気がつけば、ゼルドの片膝の上に横を向くかたちで座らされていた。その細い腰には太い腕が固定され、離れることも出来ない。
「昼食の、最中だったな」
そう言ってロゼの弁当箱を掴むゼルドに、ロゼははっと目を見開き、咄嗟に逃げようと暴れ回る。
―――こっ、これは、前のサンドイッチの時と同じです!!
入隊式の日に催された小さな歓迎会で、ゼルドに翻弄された記憶が蘇る。サンドイッチをロゼに食べさせようと、身体に触れ、撫でられたその感覚を思い出し、顔に熱が集まるのがわかった。
「暴れるな。一緒に昼食をと言ったのはお前だろう。…………それとも、仕置きをご所望か?」
初めて見る、にたぁという効果音が似合いそうな極悪面に、ロゼは天敵に居合わせた小動物さながらに身を竦み上がらせる。だがそれと同時に、頭で仕置きという言葉がぐわんぐわんと響き渡り、顔を更に赤く染めた。
それが羞恥によるものか、それとも期待によるものなのか、はたまた両方か。それはロゼにも分からなかった。
「こども扱いは、……っやめてと、前にも言ったはずです」
ゼルドの持つ箸によって眼前に差し出された卵のキッシュに、ロゼはいやいやと首を振る。
「……確かにお前は、幼子のように小さい。だが俺は、お前を子供扱いしたことなどない」
上から降ってきた言葉に、ぱちくりと瞬きを繰り返す。
食事を手ずから与えたり、膝に乗せるなど、親が子にするそれだ。成人男性が、女性にするものではない。
ロゼの考えが顔に出ていたのだろう。ゼルドは一度箸を弁当の容器の上に置き、ロゼの頬をすりすりと撫で始める。
その慣れた感覚に少し落ち着きを取り戻したロゼは、だがその指がぷっくりとした唇の縁をなぞり始めたことに、びくりと身体を揺らした。
「――知っているか?野生の動物の中では、雄が番の雌に給餌する。愛情を深め、そして自らの子を産んでもらう為に。あるいは上位の魔物が、獲物だと狙いを定めた物に対して時間をかけて餌を与え、信頼させ、成長したところで美味い肉にくらいつく。どちらにしろ喰うことに変わりは無いがな。…………お前は、どちらだと思う?」
何を、とは聞けなかった。聞いたら最後、目の前の男に喰い尽くされるような気がした。
―――それでも、いいかもしれない。この人に喰べられるのならば、それで。
狂気の滲む目を前にしてロゼが感じたのは、恐怖ではなく恍惚とした高揚感だった。
先程の焦りとは一転、うっとりとした表情で見上げ、そして我に返るロゼに、ゼルドは苦悶の表情を浮かべ、僅かに歯軋りをした。
―――まだ、喰らいついてはいけないのか。こんなに美味そうな匂いを漂わせて、無防備に腕の中に居座っているというのに。
それは、愛情だけではない、食欲に似た何か。
愛しいだけの者には与えない、普通ではない何かだ。
―――全身を、余すことなく全て。身体だけではない。感情も、表情も、心も、愛らしい動作も、その瞳の向ける先も全て、自分だけのものだ。
そうしなければ、きっと。自分は満たされることはないのだろう。
自らの内に潜む狂気に、ゼルドは自嘲した。
今まで特段執着するものなぞ無かった為、これが普通なのかどうかさえも分からない。
―――しかし今は、この狂気も隠さなければならない。ロゼを害する者の始末が終わってから、ゆっくりと囲い込めばいい。
既に空腹の獣は、その獲物に前足をかけている。
恍惚とした気分のロゼは、そのことには気づかないままだった。
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