転生したら王子だった〜元腐女子が悪役令嬢を溺愛する話〜

ケポリ星人

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〈第一話〉

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 記憶を取り戻した後のナイトハルトの行動は、早かった。

 藤堂麗は、優秀な人間だ。
 ゲームをするにしても、きっちりと下調べをし、自分が最も好みに近いゲームを選び出す。

 ナイトハルトはまず覚えている限りの「月が出る夜に恋をして」のストーリー、攻略する予定だったキャラクター、隠しキャラ、ヒロインの特徴を事細かに紙に書き出した。
 それから、ある程度下調べしておいた裏設定、 ゲームで入手することができるアイテムなどを書き出していく。

 実際にプレイしていない部分が多くて書けることが少ない……

 ナイトハルトは少し悔しそうな顔をする。
 せめてコンプリートした他の乙女ゲームだったらもっと正確な情報が掴めたのかもしれないが、精一杯今ある情報を元に、先々で起こることの対応策を打ち出した。

 そして気が付く。

 このままでは、リジーの家が没落する……











 ※

 とはいえ、それは今すぐにという訳ではない。
 対策の仕様は幾らでもあった為、一旦その話は頭の隅に置き、とりあえず出来る勉強をきっちりこなそうとして、気が付くと、6歳を迎えていた。

 付けられた家庭教師からの課題を叩きこなす容量で片ずけ、名実ともに「秀才」の名を欲しいままにしていたナイトハルトは、その日々の中の余りの癒し要素の無さに飢えていた。

 スマホを……スマホをよこせぃぃぃ!!

 天を仰いでそんな事を祈ってみるが全く届かず、かと言って大のお気に入りだったコーヒーすら無い世界。
 癒しなど無いに等しい環境で、天が示した助け手の如く与えられた福音、それはーー

「殿下、国王陛下がいらっしゃいました」

 ナイトハルトは、頭を仕事モードに切り替え、背筋を正す。

「楽にしなさい」

 優しそうな顔をした国の重鎮、つくづくそういう言葉がピタリと当てはまりそうな人だなと、ナイトハルトは思う。
 ナイトハルトは「はい」と一言返事だけして、気持ち身体の力を抜いて王と対峙する。

「今回は、お前の婚約者を紹介しようと思ってきた」

「婚約者?」

 家庭教師からの課題という名の暴風に当てられていたナイトハルトは、予想外の言葉に一瞬瞠目する。

「そんなに驚く事でもあるまい、お前ももう社交界に出たり、顔を広める年になった」

 王は、一枚の肖像画を手渡す。

「リジー・カルデラ、それがお前の婚約者だ」







 ※

 そんな訳で、王のお薦め……もとい命令の元、ナイトハルトはリジー・カルデラの居る家、カルデラ家へと向かっていた。

 目の前に座っているのは、ナイトハルトと同年代で、甘栗色のカールの掛かった髪に、淡い緑色の瞳の持ち主。
 ナイトハルト専属の従者、カイオンである。

 そういえば、カイオンも攻略対象の一人だったな……

 すっかり男性的な話し方が板についてきたナイトハルトは、カイオンや他の攻略対象達について考える。

 厄介だな。どの攻略対象も、国を支える用心の息子達ばかりじゃないか……

 カイオンは、穏やかな雰囲気とは裏腹に、ナイトハルトの専属の従者ということもあってかなり優秀な人物であり、王になるのなら絶対に抑えて置きたい人間の一人である。
 カイオン自身に婚約者が居るわけでは無いので、カイオンとヒロインが例え恋仲になったとしても、ナイトハルトが何か困る訳ではない。
 しかし、万が一にもライトノベルの様に、ヒロインが転生していて、かなり危険な性格をしいており、更に魅了の魔法が使える、などということがあったらことである。

 そして、何故だかは分からないが藤堂麗のプレイしたキャラクターでは、どのキャラクターを選んだとしても、結果的にカルデラ家は没落していた。

 その他にもまだ会った事はないが、
 宰相の息子、
 近衛騎士団団長の息子、
 大臣の息子。

 そうそうたる面子が攻略対象になっている。

 そして、今回会いにいく、リジー・カルデラ……

 ナイトハルトは、前世でやっていたゲームを思い出す。

 あれだけ、ゲーム内のナイトハルトが嫌っていたということは、何かあるのか?

 ナイトハルトが、窓枠に肘を突いて軽い溜息を吐く。

「どうかなされたのですか?」

「いや、なんでもない。それよりカイオン、ピンクの髪の女の子には気をつけろよ?」

「ピンクの髪?」

 そんなこんなしているうちに、馬車はカルデラ家へとたどり着いた。







 ※

 リジー・カルデラの父、ゲオルグ・カルデラは、それはそれは凄まじい出で立ちをしていた。
 なんというか、迫力がある。
 後ろから「ゴゴゴゴォォ」と謎の効果音でも流れて来そうな圧迫感があり、目から赤いレーザーでも出さんばかりの勢いでナイトハルトのことを睨んでいる。

「はじめまして、ゲオルグ公爵」

 ナイトハルトは、それでも、そんな圧迫感など感じていないかの様に、ゲオルグ公爵に挨拶をする。

 ゲオルグ公爵がカッ!!  っと細めていた目を見開く。

「おま……貴方が、うちの可愛い娘を奪い……とお見合いに来て下さった、ナイトハルト殿下ですか……」

 言葉の端々に、娘大好き臭と私への嫌悪感を感じる……

 ナイトハルトは、それでも笑顔で言葉を続け様とするが……

「まぁ!」

 後ろから、この空気をさらりと軟化させる、ゲオルグ公爵と比較すると月とスッポン並みの容姿の違いがある非常に可愛らしい美女が、楽しげな雰囲気で現れる。

「まぁ、まぁ!  美少年!」

「リリー、盗っ……殿下の前で失礼だぞ」

 今、盗っ人って言おうとしたな……

 ナイトハルトは笑顔のままスッと考える。

「はじめまして殿下。ゲオルグの妻、リリーです」

 ゲオルグ公爵の妻であるリリー・カルデラが、スカートの端を摘んで丁寧に挨拶をする。

「さぁ、入って!」

 そして挨拶し終わると早々にナイトハルトの腕を掴んで、グイグイと屋敷の中へと引っ張っていった。
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