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一章
〈地下牢と灯篭〉(6)
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「へぇ~そんな事も知らずにここまで来たの?」
(おそらく、ハッタリだと気づいているな。
しかし、情報収集、というか私の魔法に興味があって私に興味があるんだろうな。)
「そうです。だからお尋ねしているのです」
空気がピンと張り詰めて、異様な緊張感が走る。
「……」
「貴方はどうして捕まったのですか?」
「じゃあ君から先に答えてくれるかな?」
(そう来たか。)
「……」
「君はどうしてここに来たのかな?」
「……いいでしょう、答えましょう」
「……」
「私は、貴方が私の父親なのかと思い、ここまで来ました」
「!」
(無論ハッタリである。)
(だが伝わる情報(伝えたい・誤情報)が大きいし、レオンの人となりが分かる。)
「君は、セス・レナ・クリステルだね」
「そうです」
「いや……残念ながら、私は君のお父さんじゃないよ」
「そうですか」
(知ってるけどな……)
「がっかりさせてごめんね……さて、私を外に出して貰えるかな?」
「どうやって警備を突破するつもりですか……その魔力の量で」
「っっ!!」
(そう、彼の現在の魔力量はそんなに高くない。
良く考えてみれば当たり前だ、彼は魔力を使い難くする魔法に掛けられながら暖を取らなくてはいけない状況にいた。)
「……」
(傷が治っていなかった時点で保有している魔力量はギリギリだと気づくべきだった。さっき頬を触ろうとしたのは…。)
「私から、エナジードレインをしようとしましたね」
「……………ふっ、はは、ハハハハハハハハ」
叔父が乾いた笑い声で笑う。
「分かったよお嬢さん、私の負けだ、
で、私は何をすればいいのかな?」
叔父は涙を拭ってからそう言った。
「質問に答えて下さい、貴方は何故捕まったのですか?」
「ふふふふ、それはねぇ、私が人を殺したからだよ」
「嘘ですね」
(牢獄の生活が長くて、自暴自棄になってるな。)
これは、予測して言っている訳ではない。
叔父の腕を掴んでエナジードレインを開始する。
「!!」
叔父も反対にやり返す。
(今保有している魔力量は私の方が上、エナジードレインにかかるコストは二人とも同じ、つまり先に魔力が枯渇するのは叔父だ。)
「叔父様、今の貴方に嘘はつけません」
人間が嘘をつくと、交換神経が刺激されて瞳孔が開き、脈拍が上がる。
(顔が近い今なら、見間違える事はない。)
「……」
「試してみますか?」
「…………いや、いい、私の負けだよ」
そう言って叔父は、エナジードレインをやめた。
私も腕は離さずに、エナジードレインだけやめる。
「冷静だね」
「それは貴方もですよ」
「私の娘に欲しいくらいだよ」
「恐縮です」
「…………はぁ、私が捕まったのは、アラン(父)にアシュリーとの不倫を疑われたからだよ」
叔父が目をそらして言う。
(それだと瞳孔が見えにくい、がちゃんと脈は分かるからいいか。)
薄紫の瞳を覗き込みながら尋ねる。
「貴方はこの後どうしたいですか?」
「? ……逃げたい、けれど」
「私の父はどんな人ですか?」
叔父が、意外そうに尋ねる。
「知らないの?」
「会った事ありません」
「魔術は使えるけど、余り見るのは上手くない」
「性格は?」
「真面目で研究者って感じの……」
「母から狂ってきていると聞きましたが、具体的に不味そうな所は?」
「エドガーとかは、私を目の敵にしていたけど……」
「他には?」
「知らない、有るかもしれないけど、ああ私をここに閉じ込めて目を……」
「分かりました。父の事を怨んでますか?」
叔父は、少し考えてから答えた。
「そうだね、そうじゃないと言ったら嘘になるよ、でも……」
「でも?」
叔父は少し遠くを見る目で言った。
「可哀想な人だとは思ってた、彼が王位なんて面倒なものに就いてから……」
「……そうですか、ありがとうございます」
「?」
「父を心配して頂いて」
「えっ?会った事ないんでしょ」
「それでも私の唯《ただ》一人の父です」
二人目の父である。
(あんまりロクデナシだったら、山にでも放り込んでくるつもりなのだが。)
「そうか……そうだね」
「父以外にここを尋ねて来る人は?」
「いないね」
「父はいつもはいつ頃ここにきますか?」
「深夜に、愚痴を零しに」
「なるほど……」
(この後対エドガー戦を控えているから魔力を全て譲渡する事は出来ない。)
「父は、ここに来た時トラップが全て外れている事に気ずくと思いますか?」
「気づくだろうね」
「叔父様、貴方は魔法を偽造出来ますね」
「? ……それはどういう」
「トラップが張って有るように見せかける事が出来ますね」
「!! それは……出来るけれども」
私は私の方が総量が少しだけ大きくなるように魔力を叔父に譲渡した。
「!!」
「情報のお礼です。一晩もすれば魔力量は回復し王宮から無事脱出出来るでしょう」
「……恩にきる」
私は、出口に背を向けたまま後退する。
「それでは私はこれで、私の事は黙っておいて下さいね」
「分かった」
「……御武運を」
そう言って私は、魔力が切れて眠ってしまったマリンを持ってこの地下牢を脱出した。
出口には灯篭が一つ炎を揺らしていた。
(おそらく、ハッタリだと気づいているな。
しかし、情報収集、というか私の魔法に興味があって私に興味があるんだろうな。)
「そうです。だからお尋ねしているのです」
空気がピンと張り詰めて、異様な緊張感が走る。
「……」
「貴方はどうして捕まったのですか?」
「じゃあ君から先に答えてくれるかな?」
(そう来たか。)
「……」
「君はどうしてここに来たのかな?」
「……いいでしょう、答えましょう」
「……」
「私は、貴方が私の父親なのかと思い、ここまで来ました」
「!」
(無論ハッタリである。)
(だが伝わる情報(伝えたい・誤情報)が大きいし、レオンの人となりが分かる。)
「君は、セス・レナ・クリステルだね」
「そうです」
「いや……残念ながら、私は君のお父さんじゃないよ」
「そうですか」
(知ってるけどな……)
「がっかりさせてごめんね……さて、私を外に出して貰えるかな?」
「どうやって警備を突破するつもりですか……その魔力の量で」
「っっ!!」
(そう、彼の現在の魔力量はそんなに高くない。
良く考えてみれば当たり前だ、彼は魔力を使い難くする魔法に掛けられながら暖を取らなくてはいけない状況にいた。)
「……」
(傷が治っていなかった時点で保有している魔力量はギリギリだと気づくべきだった。さっき頬を触ろうとしたのは…。)
「私から、エナジードレインをしようとしましたね」
「……………ふっ、はは、ハハハハハハハハ」
叔父が乾いた笑い声で笑う。
「分かったよお嬢さん、私の負けだ、
で、私は何をすればいいのかな?」
叔父は涙を拭ってからそう言った。
「質問に答えて下さい、貴方は何故捕まったのですか?」
「ふふふふ、それはねぇ、私が人を殺したからだよ」
「嘘ですね」
(牢獄の生活が長くて、自暴自棄になってるな。)
これは、予測して言っている訳ではない。
叔父の腕を掴んでエナジードレインを開始する。
「!!」
叔父も反対にやり返す。
(今保有している魔力量は私の方が上、エナジードレインにかかるコストは二人とも同じ、つまり先に魔力が枯渇するのは叔父だ。)
「叔父様、今の貴方に嘘はつけません」
人間が嘘をつくと、交換神経が刺激されて瞳孔が開き、脈拍が上がる。
(顔が近い今なら、見間違える事はない。)
「……」
「試してみますか?」
「…………いや、いい、私の負けだよ」
そう言って叔父は、エナジードレインをやめた。
私も腕は離さずに、エナジードレインだけやめる。
「冷静だね」
「それは貴方もですよ」
「私の娘に欲しいくらいだよ」
「恐縮です」
「…………はぁ、私が捕まったのは、アラン(父)にアシュリーとの不倫を疑われたからだよ」
叔父が目をそらして言う。
(それだと瞳孔が見えにくい、がちゃんと脈は分かるからいいか。)
薄紫の瞳を覗き込みながら尋ねる。
「貴方はこの後どうしたいですか?」
「? ……逃げたい、けれど」
「私の父はどんな人ですか?」
叔父が、意外そうに尋ねる。
「知らないの?」
「会った事ありません」
「魔術は使えるけど、余り見るのは上手くない」
「性格は?」
「真面目で研究者って感じの……」
「母から狂ってきていると聞きましたが、具体的に不味そうな所は?」
「エドガーとかは、私を目の敵にしていたけど……」
「他には?」
「知らない、有るかもしれないけど、ああ私をここに閉じ込めて目を……」
「分かりました。父の事を怨んでますか?」
叔父は、少し考えてから答えた。
「そうだね、そうじゃないと言ったら嘘になるよ、でも……」
「でも?」
叔父は少し遠くを見る目で言った。
「可哀想な人だとは思ってた、彼が王位なんて面倒なものに就いてから……」
「……そうですか、ありがとうございます」
「?」
「父を心配して頂いて」
「えっ?会った事ないんでしょ」
「それでも私の唯《ただ》一人の父です」
二人目の父である。
(あんまりロクデナシだったら、山にでも放り込んでくるつもりなのだが。)
「そうか……そうだね」
「父以外にここを尋ねて来る人は?」
「いないね」
「父はいつもはいつ頃ここにきますか?」
「深夜に、愚痴を零しに」
「なるほど……」
(この後対エドガー戦を控えているから魔力を全て譲渡する事は出来ない。)
「父は、ここに来た時トラップが全て外れている事に気ずくと思いますか?」
「気づくだろうね」
「叔父様、貴方は魔法を偽造出来ますね」
「? ……それはどういう」
「トラップが張って有るように見せかける事が出来ますね」
「!! それは……出来るけれども」
私は私の方が総量が少しだけ大きくなるように魔力を叔父に譲渡した。
「!!」
「情報のお礼です。一晩もすれば魔力量は回復し王宮から無事脱出出来るでしょう」
「……恩にきる」
私は、出口に背を向けたまま後退する。
「それでは私はこれで、私の事は黙っておいて下さいね」
「分かった」
「……御武運を」
そう言って私は、魔力が切れて眠ってしまったマリンを持ってこの地下牢を脱出した。
出口には灯篭が一つ炎を揺らしていた。
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