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始まりの物語
2 稽古という名のナニカ
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この世に雲なんかないんじゃないかと思うくらい真っ青な青空の下で、俺は剣の稽古をさぼるべく逃走を図っていた。
「アルスナ様ー!アルスナ様!……あぁ、いらっしゃいましたね、稽古のお時間ですよ」
ガース王国第一王子アルスナとして生を受け、現在6歳になった俺は、騎士団長のゾルムに首根っこを掴まれる。
「全く、あなたはすぐそうやっていなくなるのだから」
俺をぶら下げたままやれやれとため息をつくゾルム。
俺は前世のオスア・アーケンとしての記憶を持って産まれた。
それにも関わらず小さい子として振る舞わなければならない俺はなんて可愛そうなんだ……。
前世では18歳だったんだよ?俺。
どういうことかと言いますと、精神年齢はもう25歳くらいに達するわけで云々。
まあ、わがまま言えるし小さい子として振る舞うのも悪くはないんだけど。
「僕も姉上のように街に行きたい!!おろしてよゾルム!!」
王子だから丁寧な言葉遣いのほうが良いのかなーとか考えちゃって、うん、幼い王子様役難しい。
まあ、とりあえず手を振り回し、大声で叫んで抵抗する。
これ、俺が毎回やるものだから、周りの使用人たちがまたか、という目でこちらを見てくる。
「……アルスナ様。何度もお話致しましたように、ティスリア様は執務として街の調査を行っているのであり、好きで街に下りられているわけではありません。ですから貴方もご自分の執務をこなしてくださいっ!」
ゾルムは城の端にある稽古場に向かって歩きながらぶつぶつと説教を続ける。
天井がガラス張りになっている稽古場に着くと周りを囲っている柵を開け、未だにむすっとしている俺を稽古場の床に放り投げて剣を握らせた。
「お、ゾルム殿!やっとアルスナ様見つかったんっすね!」
俺が錆びてんなあなんて思いながら訓練用の剣を眺めていると、稽古場の外からゾルムに声をかけたものがいる。
緑色の髪を短く切り、人当たりの良さそうな笑みを浮かべた一人の青年だ。
俺はそいつを見た瞬間、剣なんかそっちのけで目を輝かせた。
「ん?あぁ、ガルか。そう、やっと見つかったよ。全く、この方には苦労させ―」
「―ガル!今日も僕の稽古見てよ!僕堅物のゾルムよりガルの方がいい!」
ゾルムが話し終える前に、俺はゾルムを押しのけて軽く3メートルはあるであろう柵を飛び越え、ガルに飛びつく。
若いながらも副騎士団長である彼はちょくちょく野外稽古をつけてくれるのだ。
決められた予定の中で動かなければならず、常に臣下に身の回りの世話を焼かれる城の中が窮屈だと感じている俺は、ガルくらい砕けた態度の青年といると丁度良い息抜きになる。
「アルスナ様、今さり気なく私のことを貶しましたね?」
ゾルムがにっこりと笑みを向けているが気にしない。
今はガルが稽古をつけてくれるかどうかが大事なのだ。
「まあまあ、ゾルム殿……アルスナ様、俺あいにくと今任務があって手が離せないんっすよ。今日はゾルム殿に稽古をつけてもらってください」
「……はぁい」
だがガルは期待に反して苦笑してそんなことを言う。
俺はあからさまにしょんぼりして見せ、ガルに背を向けてとぼとぼと稽古場の中に戻った。
「アルスナ様のわがままにも困ったものだな」
「いいじゃないっすか。年相応の可愛らしさがあって」
「それで済ませられれば良いのだがなあ……」
「ははっ。ま、元気なのはいいことっすよ。それじゃ、俺はこれで」
ゾルムとガルの世間話を聞いていて思う。
やはり、王子というのはある程度聞き分けがあったほうが良いのだろうか。
俺はとりあえず、戻ってきたゾルムに向かって剣を構えた。
稽古の始まりだ。
先攻はゾルム。
軽く走り出し、スピードをあげながら突きの姿勢で突っ込んでくる。
いつも思うけど、それ6歳児に出すスピードじゃないし、あんた割りと本気で俺に挑んでるよな……?
とまあ、そんなことを考えながらも俺は軽く横に飛んで避け……ようとしたが、それを見逃してくれるはずもなく。
ゾルムがくるっと向きを変え、容赦なく横に剣を薙ぎ払う。
だからそれ当たったら死ぬって!
なんて思いながら剣を縦に持ち、ゾルムの剣をいなす。
腕にビリビリと衝撃が伝わってきたが、気にせずそのままゾルムに突っ込む。
狙うは心臓。
ゾルムと同じ、突きの姿勢だ。
……まあ、背が足りてないから、頭の上に横にした剣を掲げるっていうなんとも無様な格好になっている訳だけど。
そして、そんな単調な攻撃をゾルムが受けてくれるはずも無く。
体を横にすることでするりと躱された。
ほぼ大人と同じスピードで迫ってくる6歳児に素早い反応を見せたゾルムに感心する暇もなく、右斜め下方向から脇腹に剣が迫る。
それを宙返りしながら大きく後方に飛ぶことで躱し、稽古場の壁に足を付いてそこを踏切台にゾルムに向かって飛び出す。
そしてゾルムの肩に手をついてそのまま体をゾルムの方に引き寄せ、おんぶのような格好で引っ付き、剣先をゾルムの喉に突きつけた。
「僕の勝ち」
「降参です」
俺は一回戦でゾルムに勝てたことで調子に乗り、その後の稽古も全て圧勝で終わった。
「アルスナ様ー!アルスナ様!……あぁ、いらっしゃいましたね、稽古のお時間ですよ」
ガース王国第一王子アルスナとして生を受け、現在6歳になった俺は、騎士団長のゾルムに首根っこを掴まれる。
「全く、あなたはすぐそうやっていなくなるのだから」
俺をぶら下げたままやれやれとため息をつくゾルム。
俺は前世のオスア・アーケンとしての記憶を持って産まれた。
それにも関わらず小さい子として振る舞わなければならない俺はなんて可愛そうなんだ……。
前世では18歳だったんだよ?俺。
どういうことかと言いますと、精神年齢はもう25歳くらいに達するわけで云々。
まあ、わがまま言えるし小さい子として振る舞うのも悪くはないんだけど。
「僕も姉上のように街に行きたい!!おろしてよゾルム!!」
王子だから丁寧な言葉遣いのほうが良いのかなーとか考えちゃって、うん、幼い王子様役難しい。
まあ、とりあえず手を振り回し、大声で叫んで抵抗する。
これ、俺が毎回やるものだから、周りの使用人たちがまたか、という目でこちらを見てくる。
「……アルスナ様。何度もお話致しましたように、ティスリア様は執務として街の調査を行っているのであり、好きで街に下りられているわけではありません。ですから貴方もご自分の執務をこなしてくださいっ!」
ゾルムは城の端にある稽古場に向かって歩きながらぶつぶつと説教を続ける。
天井がガラス張りになっている稽古場に着くと周りを囲っている柵を開け、未だにむすっとしている俺を稽古場の床に放り投げて剣を握らせた。
「お、ゾルム殿!やっとアルスナ様見つかったんっすね!」
俺が錆びてんなあなんて思いながら訓練用の剣を眺めていると、稽古場の外からゾルムに声をかけたものがいる。
緑色の髪を短く切り、人当たりの良さそうな笑みを浮かべた一人の青年だ。
俺はそいつを見た瞬間、剣なんかそっちのけで目を輝かせた。
「ん?あぁ、ガルか。そう、やっと見つかったよ。全く、この方には苦労させ―」
「―ガル!今日も僕の稽古見てよ!僕堅物のゾルムよりガルの方がいい!」
ゾルムが話し終える前に、俺はゾルムを押しのけて軽く3メートルはあるであろう柵を飛び越え、ガルに飛びつく。
若いながらも副騎士団長である彼はちょくちょく野外稽古をつけてくれるのだ。
決められた予定の中で動かなければならず、常に臣下に身の回りの世話を焼かれる城の中が窮屈だと感じている俺は、ガルくらい砕けた態度の青年といると丁度良い息抜きになる。
「アルスナ様、今さり気なく私のことを貶しましたね?」
ゾルムがにっこりと笑みを向けているが気にしない。
今はガルが稽古をつけてくれるかどうかが大事なのだ。
「まあまあ、ゾルム殿……アルスナ様、俺あいにくと今任務があって手が離せないんっすよ。今日はゾルム殿に稽古をつけてもらってください」
「……はぁい」
だがガルは期待に反して苦笑してそんなことを言う。
俺はあからさまにしょんぼりして見せ、ガルに背を向けてとぼとぼと稽古場の中に戻った。
「アルスナ様のわがままにも困ったものだな」
「いいじゃないっすか。年相応の可愛らしさがあって」
「それで済ませられれば良いのだがなあ……」
「ははっ。ま、元気なのはいいことっすよ。それじゃ、俺はこれで」
ゾルムとガルの世間話を聞いていて思う。
やはり、王子というのはある程度聞き分けがあったほうが良いのだろうか。
俺はとりあえず、戻ってきたゾルムに向かって剣を構えた。
稽古の始まりだ。
先攻はゾルム。
軽く走り出し、スピードをあげながら突きの姿勢で突っ込んでくる。
いつも思うけど、それ6歳児に出すスピードじゃないし、あんた割りと本気で俺に挑んでるよな……?
とまあ、そんなことを考えながらも俺は軽く横に飛んで避け……ようとしたが、それを見逃してくれるはずもなく。
ゾルムがくるっと向きを変え、容赦なく横に剣を薙ぎ払う。
だからそれ当たったら死ぬって!
なんて思いながら剣を縦に持ち、ゾルムの剣をいなす。
腕にビリビリと衝撃が伝わってきたが、気にせずそのままゾルムに突っ込む。
狙うは心臓。
ゾルムと同じ、突きの姿勢だ。
……まあ、背が足りてないから、頭の上に横にした剣を掲げるっていうなんとも無様な格好になっている訳だけど。
そして、そんな単調な攻撃をゾルムが受けてくれるはずも無く。
体を横にすることでするりと躱された。
ほぼ大人と同じスピードで迫ってくる6歳児に素早い反応を見せたゾルムに感心する暇もなく、右斜め下方向から脇腹に剣が迫る。
それを宙返りしながら大きく後方に飛ぶことで躱し、稽古場の壁に足を付いてそこを踏切台にゾルムに向かって飛び出す。
そしてゾルムの肩に手をついてそのまま体をゾルムの方に引き寄せ、おんぶのような格好で引っ付き、剣先をゾルムの喉に突きつけた。
「僕の勝ち」
「降参です」
俺は一回戦でゾルムに勝てたことで調子に乗り、その後の稽古も全て圧勝で終わった。
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