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116話

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 屋敷を出ると凍てつくような風に外装を羽織り直す。すでに待っていた師匠も冬用に厚着をしている。

「師匠、お待たせしました。いつでも大丈夫です」

「よろしくお願いします」

「ワン!」

 俺に合わせニエとアンジェロが師匠へ挨拶をした。

 これから向かう先は俺が生まれた故郷の村。まぁ村といっても今は無くなっているんだがそれでも懐かしい空気を感じることができる。

 過去に一度だけ一緒に連れて行ってもらったが、まだ未熟だったため足手まといになってしまい、それ以降行ったことはなかった。

「少し遠いから今日は途中の町で一泊するわ。休憩も挟むけど疲れたら言ってちょうだい」

「はい。アンジェロ、無理はするなよ」

「ワン!」

「それじゃ行くわよ」

 ニエがアンジェロに乗ると俺たちは街道からはずれ森を走り続ける。

 馬車では数日かかるところを最短距離を直進して進む。何度目かの街道に出くわすと師匠は脚を緩めた。

「ここからなら歩いても大丈夫そうね。まずはこの先にある町に入って宿を取りましょう」

 師匠の言葉通りしばらく進むとすぐに町が見えてきた。

 何度かきたことがあるんだろう。特に迷うことなく宿を取ると俺はアンジェロと一緒の部屋、そしてニエはまさかの師匠と同じ部屋になった。

「だ、大丈夫ですか……」

「何か心配ごとでもあるの?」

「リッツ様、寂しいと思いますが我慢なさってください」

「いや、俺はいいけどさ。アンジェロと二人っきりってなんだか懐かしいな」

「ワフッ」

 割り当てられた部屋に移動すると特に何もすることがなく、夕食の時間までアンジェロと遊ぶことにした。



◇ ミレイユサイド



「その髪飾り、リッツにもらったのね。似合ってるわ」

「ありがとうございます! 私、初めてプレゼントをもらったんですけど、こんなにも嬉しいものなんですね」

 ニエは頭についたアンジェロを撫でながらミレイユに笑顔を向ける。

「ニエちゃん、あなたがリッツに言ってくれたんでしょう? 何か渡せって」

「ミレイユさんがエリクサーを使って悲しまれていたので、元気になってもらいたくて、今までのお礼でも渡したらどうかって言ってみたんです」

「そうだったの、ありがとう」

「いえ、リッツ様の大切な人たちには笑顔でいてほしいので」

 ミレイユはニエの笑顔をみつめると椅子を出し一緒に座った。

「あなたは、リッツのことが好き?」

「はい!」

「それは使命だから?」

「ん-……初めはそう思ってました。でも、リッツ様はみんなに優しくて、勇敢で、たまにどこか抜けているけどそれも含めて素敵なんです」

「もし、リッツがあなたのことを邪魔だと言ったらどうするつもり?」

「そうなったらどこか遠くからリッツ様を見届けようかと思います。――この前、リヤンさんに言われたんです。誰かに頼って生きてきたから一人になると何もできなくなるんだと。使命はありますが、いざとなれば一人でも果たさなければいけないんだって思ったんです」

 ニエがはっきりと言い切るとミレイユは静かに何かを考え頷いた。

「最後に聞くわ。あなたは――リッツの過去を知りたい?」

「今後一緒にいるために知る必要があるのであれば。ないのであれば知ろうとは思いません」

「それじゃあ知らないといけないわね」

「わかりました。お話をお聞かせください」

 ミレイユはジッと見つめてくるニエをみてゆっくりと語り出した。
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