132 / 150
132話
しおりを挟む
すっかり雪も溶け、いよいよ暖かい日差しが季節の変わり目を知らせる。
「よし、それじゃあ後の事は任せたぞ」
「はい、リッツ様もお気をつけて」
ハリスとキャレットに見送られ船に乗り込む。
船に乗っているのは俺とニエにアンジェロ、ウムトとリヤンにトリスタン、そして師匠とアルフレッドさんにティーナだ。
リヤンが操縦すると船はあっという間に空高くまで浮き上がった。
「ほ、本当に浮いた……っ!」
「ティーナ、慣れないうちは恐いと思うからそのままアンジェロを抱いててくれ」
「わ、わかりました」
「ワン」
実をいうとアンジェロが走り回らないようにしたかったからちょうどいい。
やはり空を飛んでることが落ち着かないのか、ティーナは興奮しつつもアンジェロをギュッと抱いて大人しく座ったままだ。
「リッツ様、私もコワいので抱きついてよろしいでしょうか?」
「リヤンにならいいぞ」
「手元が狂ってもいいならいいわよ」
「ニエ、ストップ。今のなし」
さすがに墜落するのはダメだ。
船で移動した距離を走って帰るなんてめんどくさすぎる。
「仕方ない、腕だけな」
「やったー!」
これで当分は大人しくなってくれるだろう。
しばらく空の旅を満喫していると師匠が何かに気付いた。
「リッツ、あそこの村何か変じゃない?」
「俺にはさっぱりですけど……。ニエ、何かみえる?」
「ん-人が倒れてますね」
目を凝らしてみても全然わからん。
まぁ急ぎってわけでもないからちょっと寄ってみるか。
「リヤン、村の様子を見てくるから人目につかなそうな場所にとめてくれ」
問題は村に誰を連れていくかだな。
旅人だと思わせたほうが自然だろう。
「俺がいこう」
「アルフレッドさんが来てくれるなら、ここは師匠に任せていいでしょうか。リヤンとウムトも何かあったときのためにティーナの護衛を頼む」
「わかったわ。アル、二人を頼んだわよ」
ん? 二人?
「リッツ様、準備ができました! 出発しましょう!」
いつの間にかアンジェロに跨ったニエが手を振っている。
……こいつは危険とか関係ないんだった。
「なかなかタフな子だね」
「ニエはちょっとズレてまして……何かあれば俺が守るので気にしないでください」
しばらく進み徐々に村の入り口が近づいてくると異様な気配を感じる。
「なんだか静か過ぎますね」
「門番はいないようだが油断はするなよ」
「はいっ」
よほどの相手がでてきても問題はないがアルフレッドさんの言うように油断は禁物だ。
村の中に入ると人が倒れており、すでに事切れていた。
「何か変ですね……魔物と戦ったんでしょうか?」
「村を守るために戦ったにしてはあまり争った形跡がないな」
村の建物自体はそこまで壊れた様子はない。
生存者を探しているとニエとアンジェロが何かに反応する。
「リッツ様、あそこから物音がしました」
ニエが小さな声で俺たちに合図すると扉が半開きになっている家をみた。
俺はアルフレッドさんとドアを開ける。
「きゃっ……!」
「子供? 一人か、ここで何があった?」
部屋の片隅で震える少女は何かに怯えたように動かない。
俺が近づこうとしたそのとき、アンジェロが唸り声をあげた。
「アンジェロ、相手は子供だ。怯えさせるな」
「クゥン……」
「恐がらせてごめんね。俺たちは旅をしてるんだが、この村には君一人?」
「……」
少女はジッとしたまま動かないが視線は俺をみている。
「そうだ、これ――」
俺は鞄からおにぎりを出して少女に差し出す。
出来立ての香りに少女は反応を示した。
「お腹空いてない? とっても美味しいから一緒に食べよう」
少女は小さく頷くとおにぎりを受け取り食べ始めた。
「よし、それじゃあ後の事は任せたぞ」
「はい、リッツ様もお気をつけて」
ハリスとキャレットに見送られ船に乗り込む。
船に乗っているのは俺とニエにアンジェロ、ウムトとリヤンにトリスタン、そして師匠とアルフレッドさんにティーナだ。
リヤンが操縦すると船はあっという間に空高くまで浮き上がった。
「ほ、本当に浮いた……っ!」
「ティーナ、慣れないうちは恐いと思うからそのままアンジェロを抱いててくれ」
「わ、わかりました」
「ワン」
実をいうとアンジェロが走り回らないようにしたかったからちょうどいい。
やはり空を飛んでることが落ち着かないのか、ティーナは興奮しつつもアンジェロをギュッと抱いて大人しく座ったままだ。
「リッツ様、私もコワいので抱きついてよろしいでしょうか?」
「リヤンにならいいぞ」
「手元が狂ってもいいならいいわよ」
「ニエ、ストップ。今のなし」
さすがに墜落するのはダメだ。
船で移動した距離を走って帰るなんてめんどくさすぎる。
「仕方ない、腕だけな」
「やったー!」
これで当分は大人しくなってくれるだろう。
しばらく空の旅を満喫していると師匠が何かに気付いた。
「リッツ、あそこの村何か変じゃない?」
「俺にはさっぱりですけど……。ニエ、何かみえる?」
「ん-人が倒れてますね」
目を凝らしてみても全然わからん。
まぁ急ぎってわけでもないからちょっと寄ってみるか。
「リヤン、村の様子を見てくるから人目につかなそうな場所にとめてくれ」
問題は村に誰を連れていくかだな。
旅人だと思わせたほうが自然だろう。
「俺がいこう」
「アルフレッドさんが来てくれるなら、ここは師匠に任せていいでしょうか。リヤンとウムトも何かあったときのためにティーナの護衛を頼む」
「わかったわ。アル、二人を頼んだわよ」
ん? 二人?
「リッツ様、準備ができました! 出発しましょう!」
いつの間にかアンジェロに跨ったニエが手を振っている。
……こいつは危険とか関係ないんだった。
「なかなかタフな子だね」
「ニエはちょっとズレてまして……何かあれば俺が守るので気にしないでください」
しばらく進み徐々に村の入り口が近づいてくると異様な気配を感じる。
「なんだか静か過ぎますね」
「門番はいないようだが油断はするなよ」
「はいっ」
よほどの相手がでてきても問題はないがアルフレッドさんの言うように油断は禁物だ。
村の中に入ると人が倒れており、すでに事切れていた。
「何か変ですね……魔物と戦ったんでしょうか?」
「村を守るために戦ったにしてはあまり争った形跡がないな」
村の建物自体はそこまで壊れた様子はない。
生存者を探しているとニエとアンジェロが何かに反応する。
「リッツ様、あそこから物音がしました」
ニエが小さな声で俺たちに合図すると扉が半開きになっている家をみた。
俺はアルフレッドさんとドアを開ける。
「きゃっ……!」
「子供? 一人か、ここで何があった?」
部屋の片隅で震える少女は何かに怯えたように動かない。
俺が近づこうとしたそのとき、アンジェロが唸り声をあげた。
「アンジェロ、相手は子供だ。怯えさせるな」
「クゥン……」
「恐がらせてごめんね。俺たちは旅をしてるんだが、この村には君一人?」
「……」
少女はジッとしたまま動かないが視線は俺をみている。
「そうだ、これ――」
俺は鞄からおにぎりを出して少女に差し出す。
出来立ての香りに少女は反応を示した。
「お腹空いてない? とっても美味しいから一緒に食べよう」
少女は小さく頷くとおにぎりを受け取り食べ始めた。
53
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る
六志麻あさ
ファンタジー
とある出来事をきっかけに仲間から戦力外通告を突きつけられ、パーティを追放された冒険者カイル。
だが、以前に善行を施した神様から『万物創生』のスキルをもらい、人生が一変する。
それは、便利な家具から大規模な土木工事、果てはモンスター退治用のチート武器までなんでも作ることができるスキルだった。
世界から見捨てられた『呪われた村』にたどり着いたカイルは、スキルを使って、美味しい料理や便利な道具、インフラ整備からモンスター撃退などを次々とこなす。
快適な楽園となっていく村で、カイルのスローライフが幕を開ける──。
●表紙画像は、ツギクル様のイラストプレゼント企画で阿倍野ちゃこ先生が描いてくださったヒロインのノエルです。大きな画像は1章4「呪われた村1」の末尾に載せてあります。(c)Tugikuru Corp. ※転載等はご遠慮ください。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです
一色孝太郎
ファンタジー
前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。
これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。
※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します
※本作品は他サイト様でも同時掲載しております
※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ)
※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました
追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい
桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる