異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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幕間 ~それぞれの一年~

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◆アリシア・マールの場合


コズエさんが、いなくなってしまった。

その知らせは突然で。
あまりのことに、『コズエさんがまた何か始めたんだわ』なんて思ってしまった。

けれど一日一日経つ事に、それは現実の出来事で。
私はコズエさんにお別れもさせてもらえないまま、離れ離れになってしまったのだと悟った。

やっぱり、タロットワークのお姫様だったんだ。
私のような平民上がりの小娘が、仲良くしていい人じゃなかったんだ。

コズエさんから『ナイショね』と打ち明けられた秘密。
それはコズエさんが『タロットワーク一族の遠縁』だというもの。

私みたいに王国でもタダの平民にとっては、タロットワーク一族は雲の上の存在過ぎて、どれくらい偉いのかなんてもうわからないくらいはるか高みにいる人だ。
むしろ王様、の方がわかりやすい。

学園で学ぶ内に、一般知識として『タロットワーク一族』がこの国にとってどれほどの貢献をしてきたのか、どんな一族なのかを改めて思い知らされる。

学問、武術、魔法、商売、政治…ありとあらゆる場所に、タロットワーク一族の恩恵が見て取れるのだ。
エル・エレミア王国を創り、支え、そして今もなおその存在は王族に並んで国を牽引しているのだから。

そんな雲の上の存在である一族の遠縁、コズエさん。
私にとってはかけがえのない『友達』だ。

ただ日々を過ごすだけの存在ではなく、たわいない話も、真剣な話も、自分を見直し共に成長してくれる、そんな気がする友達。

私は彼女と出会うことでたくさんのものをもらったのだ。



********************



コズエさんがいなくなってひと月も経たない時、私に一通の手紙が届いた。
寮のポストに入っていた手紙は、見知らぬ検印がされたもので。
部屋に戻った私が封を開くと、そこには見慣れたコズエさんからの文字が。


「えっ・・・えっ!?」


そこには、慌ただしく留学をしてしまった経緯と挨拶が出来ずにいた謝罪、後は私を気遣う内容があった。


「えーと、コーネリアさん、かぁ・・・なんか素敵」


コズエさんは留学にあたり、今まで避けてきたタロットワークの名前を名乗る事になったこと、そして名前を便宜上『コーネリア』としたこと。
でも私には今まで通り『コズエ』で構わないことなんかが書いてあった。それと、少しだけど蓬琳国の事も。


「・・・頑張ってるんだ、コズエさんも」


文面からは大変さなんて微塵も感じさせないけれど、いきなり他国に留学したら大変に決まってる。
私だって辺鄙なところから王都に来て、大変なことはあった。同じ国の中でも大変だったのだ、他国に渡ったらどれほど大変か。

でもコズエさんは『自分が選んだことだし、知りたいこともあったから』と締め括っていた。


「ま、負けてられない!私も頑張らなきゃ!」


そうだ、たったの一年じゃないか。
コズエさんを待つには『たった』だけど、私が成長するには『一年しか』ないのだ。

帰ってきたコズエさんをうんと驚かせたい!

私、こんなに頑張ったんですよって、胸を張って言いたい。
今はどちらを向こうか悩んでいる私だけど、コズエさんがここに戻ってきてくれた時に『決めましたよ』って言える私でありたい。

昔から心にひとつ、光がある。
『この国を、よくする助けとなりたい』
今でもその光は、消えていない。

その光を見失う事もあるけれど、いつだってその時はコズエさんが助けてくれていた。彼女の言葉が助けになっていた。
でも、それじゃダメなんだ、自分の足で、意志でその光を掴むんだ。

…きっと、その時『答え』が見つかる。
カーク殿下に対する、『答え』も。



********************



三ヶ月経った。

私はあれから、エリザベスさんと過ごす時間も多く取るようになった。エリザベスさんにもコズエさんから手紙が来たんだろう。顔を見ればすぐにわかって、私達は顔を見合わせて笑っちゃったっけ。

エリザベスさんは何も聞かずに、私の『先生』になってくれた。

この国における、上流階級の貴族のマナー。
立ち居振る舞いから、礼儀作法、令嬢に必須の暗黙の了解までも。

エリザベスさんはとても…厳しい先生で、私は何度も音をあげた。
その度に『この程度で音を上げるなんて、コズエに報告しますわよ!』と言われれば頑張れた。

半年経つ頃には、それなりに礼儀作法も身に付き、学園の先生達からもお褒めの言葉を頂けるまでになった。
…勿論エリザベスさんには及ばないけれど。

カーク殿下の事については…色んな事をお話するようになった。
もちろん、今までだってたくさんのお話をしてきた。でも、いつの頃からだろう、カーク殿下がとても大人な目をするようになったのは。
時折、とてもドキッとするほど大人の男の人のように見えた。
目が、離せなくなった。

二人で過ごす時間は増えもしたけれど…心通わせる事ができたのは、エリザベスさんのおかげでもあるのかもしれない。
私は、エリザベスさんの『教育』によって、王族とは何か、貴族とは何か、平民とは何か…国とはどんなものなのかを知ったのだから。

私に覚悟がなければ、この人の手を不用意に取ることはできない。

それは『まだ』先のこと………



********************



もうすぐ、彼女が留学して一年になる。
また、春がやってきて、学園の花壇も花盛りになった。

私の髪も伸び、背中の半分くらいまでに。

もうすぐ、会える。
私は、彼女に会ったら一番に何を言おうか?

その時が、とても、楽しみだ。

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