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留学帰国後 〜王宮編〜
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しおりを挟む「第2部順位戦、勝者オルガ・リューゼ!」
「・・・やるなオルガ、本当に勝ち抜いてくるとは」
5年も騎士団に所属すれば、それまでの訓練や本人の努力の差で確実に腕に差が出てくる。
騎士は基本的に3年から5年所属する辺りで、王国騎士団から近衛騎士団へと移籍する者も出てくる。その反対も、だ。
騎士になりたてで近衛騎士団へ入ってくる者はいない。近衛騎士団1年目でも王国騎士団で最低でも3年はしごき上げられてくる。ここへ来るのは騎士の中でもひと握りの人間だ。
だから近衛騎士団所属1年目でも、騎士になってから3年から5年、もっと時間をかけてこちらへ上がってくる。
俺も騎士になって3年目に近衛騎士団へ来た。オルガも確かそうだったはず。今ではオルガもいっぱしの騎士になり、俺の直属の部下になった。歳は今年25だったか?
「約束通り、勝ち抜きましたよカイナス様」
「やるじゃないか、オルガ。流石は俺の部下だね」
「こんな時でもないと、カイナス様と本気でやれる時なんてないですからね」
連戦を勝ち抜いてくるだけに、オルガの体力は万全とは言い難い。だがその目に宿る光は俺と戦えることを喜んでいるものだ。
と、オルガの周りに一瞬光が煌めいた。
…、これは回復魔法では?こんな事をするのは1人しかいない。やってくれたな、姫?
辺りを見れば、団長達と座って観戦しているコーネリア姫。
俺と目が合うと、ゆっくり順番に団長、アナスタシア様を見てから俺を見つめてきた。
…ああ、よくわかりました、団長とアナスタシア様ですね?
大方『ハンデくらいないとつまらない』とでも言って、姫に回復魔法をかけさせた、と。
当のオルガは何が起きたのかピンと来ていない。しかし体力が回復しているのを悟って、医療班の方をチラチラと見ている。
違うオルガ、犯人はそちらの姫だ、そっちじゃない。
「オルガ、こんな時に余所見かい?俺の前だというのに余裕があるもんだ」
「ち、違いますよ!いや、なんでもありません。
カイナス様、たっぷり胸を貸していただきますよ?」
「上等だ、全力で来るといい」
開始早々、全力で斬りかかってくるオルガ。
受け止めた衝撃に、姫の回復魔法の威力を感じる。
これもう回復魔法と呼んでいいのか…?もっと上位の魔法のような気が…
視界の端に、アントン子爵令嬢が身を乗り出すようにこちらを見ているのがわかった。
ああして、毎回応援に来てくれていた事に今更ながらに気付く。確かにやたらと真剣に見ていた令嬢がいたな。夜会で話しかけられるようになるまでは、俺でなく相手の騎士が目的なんだと思っていた。…それだけ周りの女性に目を向ける意志がなかったのだろう。
ふと、コーネリア姫が扇を開いているのが目に付いた。
この国のものではなさそうな意匠。…どこの物かと考えた瞬間に、どこの男から贈られたのかとふとした疑問がよぎった。その考えに辿り着いた瞬間、ドス黒い感情が湧く。嫉妬、だな。
「ふっ、くっ・・・!」
「その程度か?オルガ。ならば終わらせるぞ」
さて、ウォーミングアップは終わりだ。
そろそろ次に向けて終わらせるとするか。オルガも大分腕を上げてきた。今後が楽しみな部下だ。
隊長格順位戦で勝ち抜いた時には、姫に何のご褒美をもらうことにしようか。扇の事が頭を掠めた瞬間、何を願おうかが決まった。
********************
「まずまず、か」
「あいつ、シオンの部下だよな?鍛えがいがありそうだな」
「あ、そうだったんですね」
どうやらさっきの部の勝者はカイナスさんの直属の部下らしい。もしかして、以前に魔獣を退治した時にも一緒に来た人かな?
ディーナ達を助けに行った時、確かカイナスさんが一緒に2人くらい騎士さん連れてきてくれなかったっけ。
その人とカイナスさんの試合の後、少し休憩を挟んで各隊の隊長さん達と、フレンさん、アナスタシア、カイナスさんで試合をするらしい。
さてさて、普通にやったんじゃフレンさんとアナスタシアの無双状態だろうし…
「ん?どうした姫」
「アナスタシア?普通に戦ったんじゃつまらないと思わない?」
「どういう事だ?」
「えっとね、ひそひそひそ」
「・・・ふむ、なるほど。それは面白そうだ。
決まりきった内容では面白味に欠ける。採用させてもらおうか、姫。だが大丈夫なのか?」
「ほら、この間セバスさんと魔法練習してたの覚えてる?
あれ使ったら多分出来ると思うのよ」
「苦戦するのも久しぶりだな。確かにあれならば手に汗にぎる試合ができそうだ、ふむ、腕が鳴る」
「・・・何をする気なんだ?お嬢?アナスタシア」
「何、姫が私達にも楽しめるように趣向を凝らしてくれるという話だ。フリードリヒ、お前も楽しめる方がよかろう?いつものように手応えのない試合もつまらないだろう」
「そりゃそうだが・・・何するつもりなんだ?」
「まあやってみてのお楽しみです。皆さんを集めてもらえませんか?」
私がやろうとしてることは簡単。
フレンさんとアナスタシア、カイナスさんと他の隊長さんの間に埋められない戦力差があるというのなら、そんなのなくしちゃえばいいじゃない?ハンデよ、ハンデ。
集まって頂いた皆さんに、さっそく魔法を使う。
「それでは失礼します。『能力値解析』」
この魔法、文字通り対象の能力値を解析するものだ。
魔獣討伐なんかだと重宝するらしいが、探索魔法なんかや鑑定魔法でも同じような結果が出るためあまり使う人はいないらしい。
しかし、私がこれを使うと、面白いことがおきる。
そう、わかりやすく言うと、RPGのステータス画面のようなものが出てくるのだ。
つまり相手のステータスが数値化されて見えてくる。
定番のHP、MPは言わずもがな。他にもSTR、CON、POW、DEX…って待てよ?これ、どこかで見た事ある能力値…ってこれTRPGのキャラシでは…?この間見た時はそこまで気づかなかったけど。
あ、アナスタシアのAPP18って傾国レベルでは…?あっカイナスさんのAPP15…フレンさんAPP14か…恵まれてるなあ…
私?私は聞いちゃダメです、フツメンですから。
全体的に、能力値は隊長さん達とカイナスさんではアマチュアとプロくらいの差がある。
しかしフレンさんとアナスタシア。これはいかん。ゴリラよゴリラ。アナスタシアにゴリラは失礼だけど、人間と野生動物位の差はある。これじゃワンサイドゲームにもなるわ。
「おじょ・・・コーネリア姫?その魔法じゃあまりわからなくないか?」
「いえ、十分すぎるくらいです。とりあえず、そちら3人にはハンデがいりますね。やってもいいのかしら?アナスタシア」
「ああ、構わない。やってくれ」
とりあえず、カイナスさんは2割減くらい。フレンさんとアナスタシアは4割減でもいいわね。ちょっと苦戦するくらいの方が面白いでしょう。
「では遠慮なく。皆様失礼致します」
一応、一言お断りを。セバスさん仕込みの淑女の礼も披露しちゃう。
ドレスを摘み、腰を屈めてお辞儀しつつこっそり魔法唱和。
「『能力低下魔法』」(ポソッ)
「っ!?」
「あっ、くそ!やりやがったな姫ー!」
「ふむ、ここまで落ちるか。これは面白い」
「えっ?」
「なんですか?」
「・・・何ともないよな?」
「あまりにも戦力差がありましたので、ハンデを付けさせて頂きましたわ。これなら皆様同程度の能力値ですから、おもしろい試合となりますわよね?」
私の言葉に、能力低下魔法がかかっていない隊長さん達は顔を見合わせた。
そう、私が魔法をかけたのは、3人にだけだ。
うまく能力値がとんとんになるように、負荷をかけて。
これであとは本人達の経験差や実力差での戦いになる。
誰が勝つか、本当にその場の運と実力の差になる。
それでも多少、DEXはアナスタシアとカイナスさんに分があるかしら?
さすがにSTR下げないと…フレンさんがゴリラだから…
「頑張ってくださいね?皆さん♡」
「やってくれますね、姫・・・」
「あーくそ!何だこれ腕が重い!」
「ふむ、感覚に差があるな、おもしろい」
「も、もしかして団長に勝てる・・・?」
「アナスタシア様にも勝てるかもしれないぞ?」
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