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留学帰国後 〜王宮編〜
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しおりを挟む書庫の奥、『奥宮』と呼ばれる重要書籍が並ぶ室内。
大きなテーブルに数冊積み上げられた本を前に、私は少し物思いに耽っていた。
…ああ、イケメン取り逃したな…と。
いやー本当に惜しいことした?私、1番のモテ期だったんじゃない?あんないい男取り逃すとかなにやってんの私、女失格!
しかし彼の想いを受け取ると今後様々な所に差し支えるからなあ…恋人同士になりにでもしたら、うっかり一線越えるじゃない?多分私もそういう雰囲気になったら拒まないじゃない?
これまでの教訓からして『いい男とは1回くらいヤっても思い出になる』とか思ってるから拒まないわよね?(ひどい)
しかしシリス殿下の場合、遊びで一晩とか洒落にならないから。
そんな事になったら、正妃ルート一直線だから。100歩譲って側妃ルートだわ、確実に。
そうなったらもしも帰還方法が見つかった所で『はい、サヨナラ』とか許してくれそうにないもの。こっそり還ればいいじゃない?とか思うけど、この王宮でないと発動しないとかなんとかだったらまた難しくなるもんねえ。
「はー、やめやめ。それより調べ物よ」
********************
頭を切り替えて調べ物。蓬琳皇国で異世界人がいた時代のエル・エレミアの事を調べてみるものの、これといった手がかりまるでなし。えーちょっとこれ行き詰まった?
または違う角度から調べないといけないってこと?
あの古書から出てきた紙切れの紋様は、今のところゼクスさんが魔術研究所の書物をあたっている。
研究室の皆も駆り出されて片っ端から調べてくれている様子。
いくつか怪しい言葉…というか詩のようなものが出てきたのだけど、どう見ても…
『なんです、このポエム』
『さあのう…?調べていたら出てきたのだが…』
『誰が書いたんですかね、これ…』
『儂ではないことは確かだからの?』
古いタロットワークの魔法書の外表紙から出てきたという謎のポエム。見た感じ『主を讃えよ』みたいな賛美歌的内容。
誰が書いたのやら、古びた用紙に書き綴ってあった。
研究室内の誰か、とも思ったのだが…
『誰か心当たりですか?』
『というか、皆徹夜続くとおかしくなるよなあ』
『全員が全員そうですから、書いたかどうかまでは・・・』
『記憶がないですね・・・書いてないとも断言できないですし』
という有様。
納期という名のデスマーチ中は皆おかしくなるらしい。
だから『翼を授けるボトル』の出番になるんだな…
「ちょっと、外の空気吸ってこよう・・・」
私は書庫を出て、中庭へ。
ちょっとお花とか見て、癒されよう。
廊下から中庭へ出て、少し散策。
今日は天気も良くて気持ちいい。と、話し声が聞こえてきた。
「いけませんわ、ノクト様・・・」
「マリーベル、可愛い君の為なら僕は」
生垣の影、文官風の男性とメイド姿のお嬢さんがイチャイチャ。仕事しなさい貴方達。ていうかこういう隙間時間が盛り上がるんですよね、わかります。
人がいますよー、とさりげなく教えるために『くしゅん』と小さくくしゃみでもしてみる。演技ですが。
すると、その生垣の影からこそこそと文官風の男性が出ていく。その後ろをそっとメイド姿の女性も。
しかし私の姿を認めた文官風の男性が、ハッとした様に礼をした。
「失礼致しました、姫殿下。お目汚し御容赦ください」
「いえ、こちらこそ。あまり人目に付かないように気をつけてくださいな」
「し、失礼致します」
しまった、とばかりに焦って挨拶をして辞していった。
その様子に、メイドさんもポカーン。
「えっ、何よあれ。やっぱり攻略対象じゃない男はダメね」
あっ、この子あれか?異世界人疑いの子?
私はまじまじとその子を見る。彼女もこちらを確認し、『え、こんなキャラいたっけ?』と小さく呟きながらもぺこっと頭を下げて去っていった。
え、どうしよう?この子後を付けるべきかしら?
迷いはしたものの、気になってしまったので私はその子を追ってみる事にした。
離れてついて行くと、ふと彼女がタタタっと走った。
あれ?気付かれた?と思って早足で追いかけると、階段の途中に彼女を発見した。そっと柱の影に隠れて盗み聞き。
「カーク殿下、御機嫌よう」
「ん?ああ、確かマリーベル、だったか?」
「名前を覚えてくださったんですね?嬉しいです!」
「あー、いや、まあ。仕事には慣れたか?」
「はい、なんとか。気にかけてくださって嬉しいですわ」
「王宮は広いし、大変なことも多いだろう?あまり無理をしないで頑張るといい」
「はい、カーク殿下・・・(はぁと)」
あれっ?なんか違う乙女ゲー始まってない?
メイドからの脱却!イケメンを落として玉の輿!みたいな?
しかしこの感じからすると、カーク殿下…攻略対象では…?おい待て、お前にはアリシアさんという恋人がいるだろうが。
カーク殿下と異世界人疑惑の彼女は、少しそこでいい雰囲気に話し込み、カーク殿下は去っていった。なんのイベントだったのか。
「よし、カーク王子のイベント起こす為に好感度稼がなきゃ。でも私の推しはオリヴァー様なのよね・・・騎士団の練習を見に行くにはもう少し時間を潰さないと。仕事は一応終えたから、少し待って・・・」
か、確実に異世界人じゃないか!
しかもこれゲームの設定内なのね!?『ファンディスク』って言うからには、なんかのゲームの第2弾みたいなもんか!第1弾は何だったんだ?やっぱり学園編?
これ、思い切って話しかけてみるべき?
とはいえどうしよう?だからと言って何か出来ることは無いのよね…しかもこの格好だと怪しまれそう。メイド服になれないかしら?
「お、オリアナ?いる?」
「はい、ここに」
「ぎゃっ」
いつからそこにいたのか、通路の影からスっと現れたオリアナ。
あまりのことに『ぎゃっ』と言ってしまったが、私はかくかくしかじかと状況を話す。
オリアナは『かしこまりました』と一言答え、近くの部屋に私を連れていき、さっとメイド姿にしてくれた。…用意よくない?
まあいいか、ちょっとあの子にアタックしてこよう!
「ねえ、ちょっと待って」
「え?」
さっきの彼女に追いつき、声を掛ける。
振り返った彼女は不審そうな顔をしていたけど、私がメイド姿だったのを見て安堵した顔になった。
「見ない顔ね?新人?」
「お互い様でしょう?ここは広いから」
「そうね、確かに。マリーベル・クランストンよ。よろしく」
「ええ。よろしくね。コズエ・ヤマグチよ」
「えっ!?待ってよ、あなた・・・出身どこ?」
「どういう意味?」
私はサクッと元の名前を告げた。思いっきり日本人の名前を。思った通り、彼女は目を見開いて私を引き止める。
周りをきょろきょろ、と見て『こっちに来て』と近くの部屋に入った。
「ねえ、あなた、日本人・・・よね?」
「えっ?・・・そう、だけど。貴方は、違うわよね?」
今の私は女優です。頑張れ私。
私の見た目は、黒髪・黒瞳の純日本人だ。対するマリーベルと名乗った彼女は、栗色の髪に、小豆色の瞳をしている。
彼女は思いきったように、話し出した。
「ええ、見た目はね。ラノベって読む方だった?私はたまに読むくらいだったの。多分私は、異世界転生だと思う。10歳の時にね、池に落ちて。その時に記憶が蘇ったの」
「えっ!?そんな事あるの!?私は・・・転移、だと思うわ」
「そうなのね、やっぱり!だって見た目がおもいっきり日本人だもんね!あー、なんか落ち着くわ!誰にも言えなかったんだものこの事。頭がおかしくなったとしか思われないし!」
緊張の糸が切れたのか、彼女はさっきよりも砕けた様子で私に話しかける。…そうか、異世界転生か。そういう話もたくさんあったわよね。池に落ちたから記憶を戻したとかテンプレすぎる…
私はもっと彼女から情報を聞き出すことにした。
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