異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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この世界での私の立場

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私たちの攻防を引き裂いたのは、ゼクスさんの声だった。



「何しとるんじゃ、そんな玄関先で」



声の方を見ると、2階に繋がる大きな階段の上から面白そうに私達を見るゼクスさん。
ずっと見てたのかな?そうだとするとなんか恥ずかしい。



「失礼いたしました、旦那様」

「いんや、ええよ。セバス、彼女を連れて儂の部屋に行くからの。
少し話をするから茶の用意もよろしく頼む」

「かしこまりました」



執事さんが礼をすると、ゼクスさんもうむ、と頷き私を手招いた。
えーと、行っていいのかな?私が迷うと、執事さんはニコリと微笑んで私を階段へと促してくれた。
えー、呼び方は後でなんとかしてもらおう。

私は階段を上がり、ゼクスさんの後を追った。



********************



2階へ上がり、ゼクスさんの背中を追いかける。
ひとつの部屋の前で止まり、扉を開けてこいこい、とまた手招き。
私もその部屋へ入ると、中は大きな本棚と机がある執務室の様だった。

窓辺にある応接セットのソファに案内されて腰掛ける。



「セバスと何話してたのかの」

「あー、いや、セバスチャンさんが私の事を『お嬢様』って呼ぶんですよ。やめて欲しいなぁと」

「ほぅ」

「でもって、セバスチャンさんが自分の事は呼び捨てで呼んでくれって。仮にも私ここでお世話になるのに、歳上の人を呼び捨てとかできませんよ」

「セバスは家令じゃからの。そういう召使いはコズエ殿の周りにはおりませんでしたか」

「いや私こっちでいうと普通の一般市民なんで、召使いがいるような生活してませんし」



なるほどなるほど、と何か合点がいったとばかりに頷く。
ホテルや旅館に行った時に、支配人さんとかお世話してくれる人と関わりなかったかと言われればあるけど、そういう人にまさか敬語…丁寧語なしに話したりしないでしょ?

話が途切れた時に、コンコンとノックがした。
ゼクスさんが入室の許可を出すと、ワゴンを押したセバスチャンさんが入ってきた。お茶を用意して来てくれたみたい。
私達に紅茶を出し、部屋を出ていこうとするセバスチャンさんを、ゼクスさんが呼び止める。



「話があるから、少し残ってくれんか」

「はい、何でしょうか」



セバスチャンさんはゼクスさんの近くへ寄る。
ゼクスさんはそんなセバスチャンさんを見上げながら口を開いた。



「セバス、こちらは今日からこの屋敷で預かる事になった姫」
「ゼクスさん、姫じゃないんで」

「・・・と、こういう娘じゃ。名前はコズエ・ヤマグチという」

「かしこまりました」

「世話になるのだから、お主を呼び捨てにはできんと言うておる」

「そのようなお言葉、勿体ない」

「儂もそう言うたのだがの、それがこの娘さんの美点じゃな。
『歳上の人を呼び捨てにはできん』と来た。すまんがコズエ殿の気持ちを汲んで、好きなように呼ばせてやってくれんかの」



なんか私すごいワガママ言ってます?
でも、やっぱりこんな礼儀正しい人を呼び捨てとかするの申し訳ない気持ちになっちゃうんだよね。困らせるつもりもないんだけど。

セバスチャンさんはさすがに年の功というか、経験の差というのか。苦笑して私にひとつお辞儀をした。



「私如きにそのような礼を尽くさぬともよろしいのですよ。
ですが、それがコズエ様のお望みとあらば叶えない訳にはいきませんね。
私の事はどうぞお好きなようにお呼びくださいませ」

「と言うことじゃ、これでよいかの」



フォフォフォ、と魔法使いのお爺さんみたいな笑いをするゼクスさん(いやホントに魔法使いのお爺さんなんだけど)
ワガママを受け入れてもらったことに、私は立ち上がって2人に向かって頭を下げた。



「すみません、ワガママを言いまして」

「謝ることなんてありゃせんよ、なぁセバス」
「その通りです、私に向けてそのように頭を下げませんように」

「いえ、私の世界では悪いと思ったら相手が誰だろうと謝らなきゃいけないって教わりますから」



ワガママを通したのは私だ。
こちらの世界には越えられない壁、身分の差というものがあるんだろう。王様いるくらいだし、身分制度あるだろうし。
それを無理言ってるっていう自覚はあるのだ。

それを感じ取ったのだろう、執事さんは私に向けてもうひとつ約束事をした。



「コズエ様、私の事はお好きに呼んでもらって構いません。
ですが、その他のこの邸の使用人につきましては、その限りではありませんのでよろしくお願いいたします」

「その他の人、ですか?」



私は頭を上げながら問いかける。
執事さん…セバスさんは先生のように人差し指をピッと立てて話し出した。



「この邸には、私以外にも使用人がおります。
メイド、庭師、シェフ・・・護衛を務める者もおります。
その者達にはどうぞ名前は呼び捨てでお願いいたします」

「それは、その」

「その者達は私の部下に当たります。この邸で一番上の使用人は私となっておりますので、コズエ様のお好きに・・・さん付けで呼んでいただいてもよいでしょう。
ですが、その他の者もその呼び方をされますと、少々問題がありますので」



あー、なるほど。示しがつかないってことか。
まぁ仕方ない、ワガママをこれ以上ゴリ押す訳にもいかないよね。
これはこちらのやり方に従うべきだ。私は『お客様』なんだから。



「はい、わかりました、セバスさん」

「よろしい」



先生のように私に告げた。
そんな様子に私はちょっと笑ってしまう。



「これでよろしいでしょうか、旦那様」



セバスさんはゼクスさんに深々とお辞儀をした。
ゼクスさんも満足そうに笑う。



「うむ、よいじゃろ。コズエ殿も満足そうだしの。
すまんな、コズエ殿。こちらの世界はコズエ殿の世界と比べて些か面倒なしきたりが多いかもしれん。
この邸の中においてはできる限りの便宜を払うから、どうか我慢してくれんか」

「私の方こそ、至る所に気を使ってもらってすみません。
いつまでお世話になるのかわかりませんが、何卒よろしくお願いします」

「「こちらこそ」」



ゼクスさんの部屋で話を終えると、セバスさんが私の部屋に案内してくれた。
そこで、身の回りの世話をしてくれるメイドを紹介される。

今の私と同じ歳のターニャ。
2つ歳上のライラ。

セバスさんが部屋を出ると、ターニャはマシンガンのように私に話しかけてきてくれた。
途中でライラのツッコミに合い、静かになった。ライラ強し。

私は大抵の事は教えてくれれば自分でできるから、とお願いした。
2人も私の好きなようにしていい、と受け入れてくれた。
元々そのように話をしておいてくれたのだろうか?

この先、この2人にはメイドとしても、友達としても、護衛としても世話になるのだった。



********************



それからは、このお邸の生活に慣れるのが私の目標になった。

毎日決まった時間に起きなければいけないわけでもなく、基本的には何をしててもいい。
食事の時間は決まっているけど、どこにいてもメイドさんが呼びに来る。ターニャしかり、ライラしかり。時には違う人も。

このお邸にはターニャとライラの他にもメイドさんがいた。

ルクスにキアラ。
年齢を聞くと、2人とも17歳とのこと。

その他に庭師のゴルドにシェフのマートン。
御者兼護衛が2人。ダンにボルツ。
後は通いでやってくる、ゼクスさんの部下さん。

このお邸で見るのはその10人だけだ。

私もただ毎日ダラダラしていた訳ではなく、この世界の事を知る為の勉強をした。
何も知らないとはいえ、誰かが教えてくれるまでただ待つのはつまらない。

ゼクスさんとは、お互いの世界の事を話した。

お邸には書斎があり、中にある本は好きに読んでいいと許可をくれた。
知識はあるに越したことは無い。魔法も使えるようになる…らしいので、片っ端から本を読む…のだが、まずはこの世界…今私がいる国の事だ。

日常生活に必要な事は、セバスさんやターニャ達が教えてくれるが、その他の雑学ともいえる部分については、自分から吸収しなければならない。

時折、息抜きがてらに庭にあるお花の手入れなんかも教えてもらって手伝いをさせてもらった。土いじりをしているときは、小難しい事を考えなくて済むからね。
花壇のお花もだけど、魔法薬に使うハーブなどのお手入れも教えてくれた。

どうやらお邸の主であるゼクスさんは、研究材料としてハーブを使うけど、お世話はダメらしい。
研究に没頭して枯らしたりするようだ。…私もあんまりお花育てるの向いてないんだけどね…枯らしちゃうんだけどね?

皆、私の事はゼクスさんに聞いているようで、異世界から来たと知っている。だから変な事を聞いてもちゃんと答えてくれるし、初めての事はわかるように説明してくれる。

ここに来てからも不思議だったけれど、私は日本語を話しているつもりだが通じている。
だったら言語は日本語なのかというとそうでもないようで、なんかよくわからない文字だった。私日本語以外喋れないからわからないけど。

毎日、そんな事をしていれば、1ヶ月過ぎるのはあっという間だった。
余談だが、月に一度の女の子の日は前日になるとターニャやライラがそっと準備を整えて対処を教えてくれた。
…本人にいつ来るかわからない月のものをなぜ君達が把握しているんだい?どうやって知ったの?予想が当たりすぎてなんか怖い。



********************



「さて、コズエ殿。この屋敷には慣れましたかの」



こちらの世界に来てから1ヶ月ほど経ったディナーの時間。
一緒に食事を取っていたゼクスさんがそんな質問をしてきた。

基本的に私は1人の食事が多い。
ゼクスさんには仕事があるので、時間が合う時だけ。
この屋敷には他に使用人しかいないので、私と一緒のテーブルを囲んでくれたりはしない。それも寂しいものだけれど、無理を言うのも申し訳ない。

ごくごくたまに、ランチだけはターニャとライラが一緒に食べてくれる時もある。



「おかげさまで、色々と慣れてきましたよ」

「そうかそうか、それは良かった」

「コズエ様は色んな事に興味がおありの様で、庭師やシェフなどよくお話されているようですよ」

「ほほう、この変わったメニューもその一環という訳かな」



『変わったメニュー』と言われたが、そこまで変な物が出ている訳ではない。

今日のメインメニューはお肉料理なので、付け合わせにマッシュポテトをお願いしただけだ。
こちらの世界でもじゃがいもはあって、いつもソテーとかフライだった。たまにはマッシュポテトも食べたいなぁと思って言ってみた。

しかし、この世界ではマッシュポテトに馴染みがなかった。茹でて崩して生クリームで伸ばすだけだよね?と思ってシェフに言ってみると、目を輝かせて作ってくれた。
どうやら本当にレシピは知らなかった様子。とはいっても、私これまで自分で作った事は数えるほどしかないです。

メイン料理をナイフで切ったゼクスさん。
なにやらしげしげと眺めている。



「・・・ほほう、フライの肉の中にタマゴまるごととは。これは斬新だのう」
「私どもには思いつかないメニューかと」

「そうですか?ミートローフを作るくらいなら考えついても良さそうなものですけどね?
もしかしたら平民の人なら食べたことあったりするんじゃないですか?」



本日のメイン料理。肉種の中にまるごとひとつ、茹で卵を入れてフライにしたお料理。そう、スコッチエッグです。
これ、美味しいんだけど作るのは面倒なのよね。だって肉種作らないといけないし、まるごとフライだからそれなりに油の量も必要ですし。一人暮らしだと敬遠したくなる料理だ。



「ふむ、わからんが・・・卵も貴重だからの。邸では庭先でゴルドが飼っているから比較的容易に手に入るが、平民では飼う者も少ないかもしれん。ならば手に入れるのも難儀だろう」

「そうか、卵って栄養食ですもんね。新鮮じゃないと危ないし。
そうなるとあんまり食べる頻度は少ないんですかね」



現代じゃ簡単に手に入るもんね、卵。
冷蔵庫とか、輸送手段が整っていなければ簡単にご家庭のテーブルには並ばないか…スコッチエッグ美味しいのにね。

もぐもぐ、と食べていたらゼクスさんが神妙な顔をして私に向き直った。え、何ですか?



「・・・コズエ殿、このメニューじゃが陛下に出して差し上げても構わんか?」

「え?どうぞご自由に?」

「・・・よいのか?」
「よろしいのですか?」



ゼクスさんとセバスさん両方から驚かれた。
え?何で?何かダメなの?もしかして庶民的なメニュー過ぎてダメなのかしら。
でもそんな理由でNGだとすると、そもそも『教えていいか』なんて聞いてこないわよね?

そう思った私の考えは全くといって見当違いだった。
あっさりOKした私に、ゼクスさんとセバスさんは顔を見合わせて頷く。なんだろう?



「旦那様、こういったことはきちんとしておかなければなりません」

「うむ、そうじゃな、然るべき金額を用意させてもらうとしよう」

「えっ?なんでそこでお金の話になりました?」



ついていけない話題になってる。なぜ?
スコッチエッグを王様にも食べさせたい、いいよって話がどうしてそうなったの?

完全に話についていけてない私に、お水を注いでくれたライラが教えてくれた。



「コズエ様、このお料理はこの国では見た事がありません」

「え、そうなの?」

「はい、私が知っている限りですが。おそらく平民の間でもないでしょうね。私はたまに町の食堂で食事をする事もあるのですが、見た事はありません。
お肉の中に卵がまるごとひとつ。しかも揚げ物料理。国王陛下にお出ししたら驚くのではないでしょうか?」

「まさか、そこまでは」

「このお料理のレシピはまさに金の卵だと思いますよ。
コズエ様がこれまでマートンに教えたレシピはどれもこの国では初の料理になると思います。
マートンも教えてもらってからは、本当に誰にも知られないようにしなければと言っていましたから」



えっ?気にしていなかったけど、これがまさかの『飯テロ』というやつですか?
うんまあ確かに、最初のうち出されてたお料理、味はそこまで悪くはなかったけど、美味しい!という程ではなかったかも。
なんていうか、香辛料が足りないというか、素材の味を大事にしますっていうかそんな感じ。

平民の間ではない、というのはわからなくもない。油って高級品かもしれないし、たっぷり用意して使うには、一般家庭では無理だというのもわかる。でも食堂のような場所でもない?あ、卵か。養鶏場とかないのかしら。

私はただ、ランチをいただいた後に、シェフのマートンから『今日は何が食べたいですか?』と質問して来たので、ふと食べたくなった料理を答えただけだ。
それもそこまで珍しくもなく、元々向こうで食べ慣れていた料理を伝えたにすぎない。私が伝えられるレベルのレシピなのだから、一流料理などではなく、家庭料理のレベルだ。

マートンもふんふん、と特に驚く事もなかったので、こちらにも似た料理があるもんなんだろうな、とタカを括っていたのだが。…もしかして顔に出なかっただけなのかしら?



「確かに、これまでいくつかコズエ様がマートンへオーダーされた料理は、私も長年生きていますが食べたことのないものばかりでしたからね」

「そうなのか?セバス」

「旦那様はあまりこちらでディナーを召し上がらない事も多うごさいましたから、口にしていない物も多いかと」



その後はゼクスさんとセバスさんの間で料理談議が始まってしまった。私はそれを聞きつつ、なんかえらいことしちゃったかな?と反省中。
美味しいもの食べたさになんでもねだるもんじゃないなと…

その後、ゼクスさんがディナーにお屋敷に帰ってくる日が増えたり。スコッチエッグのレシピを国王陛下に教えた事で驚くようなお小遣いを頂いたり…
マートンからも新しいレシピを教えてほしい、と急かされたり。
とはいえ私もそんなに色んな料理を自炊してたわけじゃないしなぁ。思い出せる範囲内で、少しずつ小出しにしていこう…

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