13 / 158
この世界での私の立場
12
しおりを挟む「おはようございま~す」
「ご苦労様です」
魔術研究所にもすでに顔パスで出入りが可能。
一応私の魔力パターンを登録しているとはいえ、守衛さんとも顔馴染みだ。
私が向かうのはゼクスさんの研究室だけ。
たまに研究所の中にある図書館にも入らせてもらっている。さすがに絵本とか読み物類はなかった。専門書が多いかな。
ゼクスさんの研究室に入ると、いつものメンバー。
この人達も朝早くから晩まで毎日いる。家に帰っているのかな?と心配にもなるが、研究所には併設された宿舎がある。じゃないと皆帰らないそうだ。
ホントに研究好きだね、皆…
臭くないの?と思うだろう。
しかし皆適宜、自分に清潔魔法をかけています。なんか数時間おきにやれ、と決まりがあるそうだ。
その決まりを作った人、きっと女性かもね。
「来ましたよ、ゼクスさん」
「来ましたな、用意しておきましたぞ。
今渡せるものはこの辺りなのですが、気に入るものはありますかな?」
机の上には、数本のペン。
見た目は万年筆…に近いかな?私は万年筆使ったことないけれど、父親だとか、職場の上司は使っている人がいたなあ。
街に買い物に出かけた日、お屋敷に戻ってからゼクスさんに『インク要らない魔法のペン』について聞いてみると、いくつかサンプルがあるから研究所へ取りにおいで、と言ってくれた。
その言葉に甘え、今日はそのペンを貰いに来たのだ。
「思ったよりもバリエーション豊かですね?」
「そうですな、作っている職員も一人二人でほありませんから、意匠は好き嫌いがあるかもしれませんな。
作っては研究所の職員に配ってテストを重ねておる所です。コズエ殿にも使ってもらおうかの」
「これ、魔力の消費量って・・・」
「いや、そんなに多くはないですじゃ。それにコズエ殿は回復も早いから疲れる事もなかろう」
そうでした、私魔力回復が早いんでした。
初級魔法とか延々使えた時はどうしようかと思った。
休憩したいとか言い出せず…気まずかった…
セバスさんはニコニコして見ていたけど、ターニャの目が途中から泳いでいたのが印象的です。
中級、上級とレッスンを進めてもよかったのだが、学園で学んだ方が悪目立ちしなくてよさそう、との意見から勉強はストップ。
でも言葉を鳥に変えて飛ばす通信魔法は、中級~上級になるらしいけど、これを学んでおくと便利という事で教えてもらいました。鑑定魔法もね。
なので、この2つの魔法はちょこちょこ使ってるので、かなり練度は上がったと思う。
とりあえず、シンプルなものを2本。
…なんかドラゴンがグルグルと巻きついたようなものもあったけど、むしろ使いにくくないかしら?
でもこれがあればノート取るの楽になりそう。
********************
ゼクスさんの部屋を出ると、大きな研究室にバラバラに4人のスタッフが散らばる。
ゼクスさんの直属の部下という立場で、皆ここの研究員だ。
皆ゼクスさんを『師匠』と呼んで慕っている。
年齢も18歳が最年少として、1番年上が30歳だ。
魔術研究所としては、結構若いスタッフ達かなぁ、と思う。
研究所にはもっと年上の人も沢山いる。
それこそ年代は様々だ。
ある程度の年齢になると独り立ちして、別の研究室を持つらしい。
大学の研究室みたいなものかもね。
独り立ちして独自の研究を続けられる目処があれば、部屋を持たせてもらえるそうだ。
「お、コズエ様じゃないですか」
「こんにちはー」
1番近くにいたお弟子さんが寄ってきた。
私が持っているペンを見て、僕も持ってますよーと言ってきた。
「便利ですよね、それ。ホント僕が学園にいた時からこれがあれば・・・」
「これって最近の発明品なんですか?」
「そうですよ、他の研究室の奴の作品なんですけどね。今ではそいつ以外にも作っている奴もいるんですけど。
これ、黒以外の色も出せるんですよ。知ってます?」
「えっ?黒だけですよね?」
「いやそれが、魔力の流し加減で色変わるらしいんですよ」
見ててください、と彼はそこらにあったメモに線をさらさらっと書く。色は黒。
「で、ここで意識して流すと」
「えっ!?赤になった!?」
また書き始めたペンから出た色は、赤。
どうなってるのそれ。もしかして、何色でもいけるのかしら。
彼によると、イメージが大事なようで、赤の線を書きたい時は『赤色』とイメージを強く描きながら魔力を流すと赤線が引けると。
頑張れば何色でもいけるそうだが、実務で使うなら黒、赤、青くらい出ればいいと思う、と言っていた。
「あ~ホントだ。これすごいなぁ」
「・・・というかコズエ様ですよスゴいの。
やっぱりイメージの強さですかね。できない奴も多いんですよ」
「そうなの?」
「固定観念が強い奴は苦手みたいですね。
魔法も固定して一属性だけ高めると、他の属性は練度が上がりにくくなりますし」
確かにこちらの世界の人に比べたら、イメージ力はかなり違うと思う。やっぱテレビよテレビ。
遠く離れた所の景色や、特殊効果バンバンの映画見たりとか、アニメとか見てればそれは想像力は強くもなるだろう。
魔法だって大まかに『こんなの出そう』とか『こんなエフェクトかな』って思えばできちゃうんだもん。
「学園、いつからでしたっけ」
「えーと来月からだから、あと3日かな。
イストさんて学園通ってたんですよね?」
イストさんというのが目の前の彼の名前。
年齢は25歳。彼女ナシ。周りのお嬢さん方、いい物件ですよ!どうですか!
「はい、行ってましたよ。あんまりいい思い出ないですけど」
「え、青春の思い出は?」
「僕ね、これでも貴族なんですよ。
とは言っても男爵家の五男なんで、生家の爵位継げる訳でもないみそっかすなんですけど」
「味噌に失礼ですよ」
「え?」
しまった、この国には味噌ってないんだよね。探せばどこかに売っているかもしれないが、私は今のところ見ていない。
基本的に食べ物は洋風。和食が食べたいんだけど、見かけない。ゼクスさんのお屋敷でも、本邸でも出てこない。
この世界に和食ってないの?と最初はお米が食べたくて食べたくて仕方なかった。あと醤油!!!絶対探してやる。
「いえ、なんでもないです。続きをどうぞ」
「あー、で、ですよ。学園って貴族と平民の差があるんですが、貴族もピンキリでね。
生徒は平等のはずですけど、そこはやっぱり爵位の差が出るわけで」
「かなり、ひどいですか?」
「貴族と平民の建物は別れてますから、そこはあんまりないですよ。もしかしたら僕が目にしないだけだったのかもしれないですけどね。
貴族の方はやっぱり爵位を振りかざして威張る奴もちらほら。それでも教師はほとんどが実力主義なんで、できない奴には厳しいです。そこは嬉しいですよね」
「教師って、貴族と平民の担当は別なんですか?」
「各教科、数人ずつ教師はいましたね。皆、それぞれの分野で成果を上げている人達なので、そこに身分の差を持ち出す事はしません。そんな事してたら学園のモットーが崩れますからね」
「じゃあ公平なのでは・・・」
「各教科の教師、というより生活指導教員ですね。
これが貴族・平民の担当が分かれてるんです。
こいつが変な奴だと身分で差をつけたりするんですよ」
「殴ってもいいかしら」
「僕は間違えたフリして頭から水かけたことはあります」
文系爽やか青年みたいな顔してやる事やってる…
でもそれだけ嫌な奴だったんですね?
男爵家の五男ともなると、成人したら騎士団に入るか、血族の紹介で婿入りするか、商売でもするか…とほぼ自分で道を開かないとならないらしい。
もっと爵位が上なら、婿入り先も引く手あまたなんだろうけど、下級貴族ともなると大変なようだ。
イストさんは魔力の高さから、この研究所への推薦をもぎ取ったんだとか。
将来のことに必死で、学生生活をエンジョイなんて出来なかったらしい。どこも下級貴族の長子じゃなければ一緒です、とため息。
…ゼクスさん、彼に誰かいい子を紹介してあげてくださいよ?このままここで終わるの可哀想なんですけど…
573
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。
imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。
今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。
あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。
「—っ⁉︎」
私の体は、眩い光に包まれた。
次に目覚めた時、そこは、
「どこ…、ここ……。」
何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる