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学園生活、1年目 ~夏季休暇~
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しおりを挟む夏至祭二日目。
目玉イベントは、王都中央広場にある神殿での合同祝婚会。
それはとても見事なものだった。
最初は『どこぞの合同結婚式みたいなもんですか?』と思っていたのだが、いやいや規模が凄かった。こんなにいるのか平民カップル。さすがは王都よ。
一年の間に結婚をしたカップルが揃い、三人の『星姫』によって祝福を受ける。
王都在住の人だけなのかと思いきや、この夏至祭で祝福を受けるためにここまで旅して来る人達もいるのだという。
気分は新婚旅行のお伊勢さん参りですか?
祝福って言うけど、単に『おめでとうございまーす』的な言葉だけなのかな?と思ってたら光と聖の魔法を使って祝福を授けるのだという。
それはそれはそれは派手で、プロジェクションマッピングも真っ青な出来上がりだった。
「えっ、わ、すごい」
「ですよねぇ、これだから『星姫』は神殿ゆかりの人が一人は入るんですよ、コズエ様」
「あ、そうなの!?」
「その通りです。祝福には聖属性の魔力が必要になりますから。ですので三人必要なんですよ。
一人くらい神殿関係者が入っていても違和感ありませんから」
な、なるほど…とすれば今年はアリシアさんが入ったからあと二人は光の魔法を使えればOKって事だなぁ。
三人が重ねた手から光の粒が弾け、新婚のカップル達に降り注ぐ。観客として見ていただけの私も感動してしまった。
二日目はターニャとライラを連れて三人でまた街中を見物した。
昨日一日だけでは回りきれなかったので、違う通りを歩いたりして楽しかった。
********************
夏至祭最終日。
今日は夜会にこっそり参加、という事で街へのお出かけはなし。ゼクスさんも夜会に出なくてはならないので、その準備をしたりで皆が忙しくしていた。
「コズエ様、ご用意は整いましたか?」
「あっ、はい!」
今日の私のパートナーは、セバスさんだ。
単に王城の隠し小部屋に行くだけならいいのだが、私はお庭も見たい!!!見てからお城に入るのは大丈夫?と聞いたらセバスさんは『お任せ下さい』と微笑んだ。
後ろでゼクスさんが『いーのう・・・儂も・・・』と呟いていたが、セバスさんは完全シャットダウンで振り向きもしなかった。
セバスさん、その人貴方がお仕えしている旦那様なのでは…?
「仕方ないのう、では儂は先に行って用意しておくとするかの。セバス、後はよろしく頼むぞ」
「かしこまりました旦那様。ライラ、旦那様をお願いします」
「お任せくださいませ」
ゼクスさんにはライラが付いていく。
メイド服姿でお世話をするらしい。とはいえ夜会中は隠れて城内の警護に付くとの事。ターニャはお留守番。残った使用人達でちょっとしたパーティーをするらしい。
私の格好はちょっとだけおめかし。
ドレスワンピース、といった感じ。本格的なドレスとまではいかないが、ワンピースにしてはエレガント。
デザインは私がしました。胸元空いてるけどレースで隠してみたり。ワンピースの袖は五分袖でレースフリル付き。
少し大人っぽく見えるかな?
「コズエ様、そのデザイン、エロかわいいですね」
「・・・うんまぁそれを目指したのはあるけど、ターニャもよくその表現覚えたわね」
「「ターニャ、外ではその表現は慎むように」」
セバスさんとライラの二人から同時にツッコミが。
ゼクスさんは笑ってるし。
「まぁ、これくらいのオシャレはええじゃろ。
コズエ殿も夜会見たら驚くんじゃろうな。それ以上の際どいドレス来たご婦人もおるでの」
「えっ、それは倫理的に大丈夫で・・・?」
「そういった職業のご婦人もおるんじゃよ」
「・・・あー、高級な方ですか?」
「その通りじゃな。儂みたいなジジイには要らんが、奥方を亡くして寂しい者もおるからの。まぁゆっくりするとええ。帰りたくなったらセバスに言えばいいからの。
セバス、指輪の説明は頼んだぞ」
そう言うと、ゼクスさんはライラを連れて先に馬車に乗って行った。
私はセバスさんと少し後から、という事で指輪の説明を受けることに。
指輪、というのはまたも魔法具だ。
これは前から使われているもので、無線のようなもの。
指輪の石の部分をくるりと回すと、対の指輪を持つ人に声が伝わるらしい。何か困った事があったら使ってほしいと。
「対の指輪は私と旦那様が持っております。
私も途中に旦那様の所へ行く時もありますので、何かお困りの時はすぐに知らせてください」
「わかりました!」
透明の石が嵌った指輪。
中指に付けて、回してみる。
「これでいいんですか?」
『ほいほい、いいぞい』
「はい、聞こえます」
「わっ、ゼクスさんの声も聞こえた」
えっ、これ同時展開なの?
どっちかではないのね?
「もしどちらかに繋げたいと思ったら、相手を思い浮かべて使うといいですよ」
「あ、なるほど」
一括でもいいし、どちらかにもできるのか。
これは親切設計。
ひと通り説明と実験を繰り返し、日が暮れてきた頃に私とセバスさんも出発した。
馬車の中で、セバスさんが髪飾りを直してくれる。
「ありがとうございます」
「この程度、出来ずしてタロットワークの家令として務まりません。よくお似合いですよ、コズエ様」
「これ、こういう使い方して良かったんですかね?」
「問題ないと思います。かの方もお好きに使ってくださればというお気持ちで贈られたのかと思います」
そう、今日の髪飾りは、シリス殿下にもらったあのコサージュを使ってみた。
コサージュと言っても胸に飾らなければ『了承』の返事にはならないのだとか。どう使えばいいのか悩んだ私はセバスさんに相談し、苦肉の策として髪飾りにした。
「コサージュの贈り主にお会いすることもできますが、いかがいたしますか?」
「あぁいえ、滅相もない。私はこっそり夜会を見るだけですから。むしろ女性に囲まれている殿下を見るのが楽しみです」
「かしこまりました」
この前、ゼクスさんに聞いたけれど、セバスさんはタロットワークの中でも暗部の長だったそうです…
今でもどうしても王家直属の影が足りない時は出張なさっているのだとか。現役だったか…実は引退してないのでは?
「大丈夫ですよ、コズエ様。もしも何か不測の事態が起こったとしても、不快な思いをさせたならば王族とはいえ容赦しませんので」
な、何もないよ…セバスさん…
だから笑顔で圧をかけるのやめてください…
********************
王城近くで馬車を降りる。
乗ってきた馬車はそのまま王城へ入り、帰りの時まで止めておくのだという。
平民達がぞろぞろと流れていく波に乗って、私とセバスさんも解放されている庭園へ。
周りには家族連れがいたり、胸に花飾りを付けたカップルがいたり…
灯篭のような魔法の灯りに導かれて着いた庭園は、幻想的な美しさだった。
そこへ、ふわっと蛍が放される。
「わ・・・」
「・・・ここへ参るのは何年ぶりでしょうか」
「セバスさん、前にも見た事があるんですか?」
「ええ、亡き妻と。懐かしいものですね。
城から見ている時はあまり感動はなかった気がしますが、やはり下で見るのは違いますね」
光を懐かしむように見るセバスさん。
そっか、セバスさんも、ゼクスさんと同じように奥様を亡くされているんだ。
もしかしたらゼクスさんも奥様と見に来た事があるんだろうか?そんな事を思った私の気持ちを読んだかのように、セバスさんは教えてくれた。
「旦那様は奥様とは来られてないと思います。
あのお二人は上からしか見た事がないのではないでしょうか。もったいない事をしたものです」
「えっ?・・・あ、でも、そうかもしれませんね」
タロットワークの当主夫妻であるのなら、簡単に庭園に降りては来られないかもしれない。
今も上では夜会が始まるのだろうし、お支度もあるものね。
「コズエ様、よろしければ来年は旦那様をお誘いになってみてはいかがです?」
「ふふ、そうしましょうか。でもそこにはセバスさんも一緒ですよ」
「かしこまりました、お供いたしましょう」
ふふ、と秘密を共有したかのように笑う。
こんなに綺麗なら見ないともったいないわよね。
来年はなんとかゼクスさんをこっちに連れてこよう。
うん、途中から夜会に出てもらえばいいよね?
その後どんどん人が増えて来たので、私達は退散。
どこから入るんだろう?と私は不思議に思っていたけれど、セバスさんはあっさりと裏口のようなドアを開けて城へと入れてくれた。
…ここ、使っていい入口?
『しー』、と内緒ですポーズをされたので、これはもしかしたら普通に出入りしちゃいけない入口だと思います。
目的の部屋までは誰にも合わず、すんなり侵入成功。
いいんだろうか、こんなに簡単に王城に入れるなんて…
城内をあちらこちらと歩き、こちらへどうぞ、と通されたお部屋。
小部屋と聞いていたけれど、結構広め。
部屋の奥は一面の鏡張り。表面は曇ったようになっている。
もしかして、これがマジックミラー?
「セバスさん、これが全面見えるようになるんですか?」
「はい、そうです。大丈夫ですよ、向こう側からは見えないようになっていますのでご安心を」
そ、そうなの…?
と言っても向こう側へ移動して確かめてくる訳にはいかないんですけどね…?
座り心地の良さそうなソファが置いてあって、ゆっくり夜会を見物できそうな気がする。
ソファに腰掛けると、扉がノックされた。
セバスさんが軽く一度トン、とノックを返すと、ココン、と音がして『儂じゃ~』と声が。
…声出したら意味ないのでは…?
「お、来とったか」
「いやあの、声出したら意味ないですよね?」
「ほほ、大丈夫じゃい、周りには誰もおらんよ。
それくらい儂もちゃーんと考えとるよ。ここは儂のセーフエリアでもあるからのう」
ゼクスさんはパリッとしたローブ姿。
おヒゲも下でまとめて結んであって、キレイなスカーフ止めのような飾りも付いていた。…オシャレ。
ゼクスさんが『透視魔法』と唱えるとふわっと映像が切り替わって夜会の大広間が見えた。
「お、おおおおお」
「こんなもんですかな。良く見えるじゃろ」
「え、すっごい・・・ガラスの壁みたい」
この部屋は二階?三階にあたるのだろうか。
大階段も綺麗に見えるし、会場も見渡せる。
まるで、スイミングスクールのプールエリアを見下ろしているかのような造り。
中ではすでに大勢の貴族の人達が着飾って集まっているのが見えた。
これ、どれだけの人がいるんだろう。
「これって、この国の貴族は大半が出席しているんですか?」
「そうですな、地方の領主である貴族は半々ですが、王都にいる貴族は皆来ておると思いますよ」
「はぁ・・・すっごい。この数、貴族の方は皆何処の家の方か覚えているんですよね?」
「そうですな、社交界に出たての者はともかく、こういうパーティーに出ながら徐々に覚えて行くものではないですかの?」
「旦那様はお忘れですがね」
「仕方ないじゃろ?儂もうジジイだからの」
本当に忘れている、っていう事はないだろう。
ゼクスさんはわざと忘れたフリしてそう。
だって分厚い魔術書の中身全部覚えてるくらいだし、記憶力はものすごく良さそうだもの。
それでもパーティーの間、挨拶回りがある間はセバスさんが後ろに付いてサポートするらしい。
…本当に忘れている時があるんです、とはセバスさんの言い分。新しく加わっている貴族なんかはフォローが必要だろうしね。
夜会が始まるらしく、ゼクスさんはセバスさんと出ていった。すぐ戻ります、とセバスさん。
いやいや、挨拶回りしてもらわないと…
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