異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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学園生活、1年目 ~春季休暇~

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私も家令のアルさんに連れられて、ローザリア公爵家のダイニングに。すでにチーズフォンデュの用意はされていて、あとはフォンデュ鍋を持ってくるだけになっていた。

長いテーブルの真ん中辺りに、三人分の用意がされている。毎日ここでご飯食べてるのかな。…何人座るんだ?まさか全席埋まるほど家族いないよね?


「わあ・・・すごい・・・」

「こんなに長いテーブル必要ないと思うんですけれどね」


アリシアさんがびっくりしていると、エリーも苦笑している。でも貴族のお屋敷ってこんなんよね。
タロットワークの別邸はここまで大きなテーブルではない。全員でも10人くらい座れる大きさ。ローザリア公爵家はその倍はありそうだ。

エリーと向かい合わせでアリシアさんと私。

席に付けば、メイドさん達が飲み物を用意してくれて、いよいよフォンデュ鍋の登場。


「う、うわぁぁぁぁ」
「たまりませんわね♡」


くつくつ、と小さく気泡ができる程度の温まり方。これも保温魔法ウォーム使われているに違いない。
そうじゃないと、チーズ固まっちゃうもんね。

二人ともそわそわして私を待つ。


「待たなくてもいいのに。食べたら?」

「だ、だってやっぱりお手本を!」
「そうですわ、コズエ早く!」

「手本もなにも・・・付けて食べるだけだってば」


私は大皿に盛られている具材の中から、茹でたジャガイモを選ぶ。ポテトとチーズの組み合わせは鉄板。
とろけたチーズが糸を引いて伸びる様に、二人とも釘付け。


「おいしい」

「で、ですよね!」
「私達も食べますわよ!アリシアさん!」


始まってしまえば、チョコレートフォンデュの時と同じだ。好きに食べ始めれば、貴族も平民も関係ないわよね。
さすがにエリーはこういう食べ方でも所作が綺麗。

それに気づいたアリシアさんは、なんとか見様見真似で真似しようとしている。


「難しいわよ~?」

「は、はい、でもあんなふうに食べられたらいいですよね」

「あら、二人でいったい何のご相談なんですの?」

「エリーの食べ方が綺麗だから、真似しようって」

「まあ」


カチン、とカトラリーを置く仕草も優雅だ。
私もこちらの世界アースランドへ来てから、セバスさんにガッチリマナーを仕込まれたので、恐らく及第点程度の作法は出来ているだろう。
そもそもコース料理の食べ方は一応知っていたし、そこからさらに綺麗に食べる方法を学んだのだ。

けれどアリシアさんはそうはいかない。貴族のお屋敷でお食事、なんてこれが初になるだろう。
学園ではそういうマナー講座とかないのかな?エリーに聞いてみようか。


「ねえ、エリー?学園ではこういう貴族のマナー講座みたいな授業ってないの?」

「そうですわね、貴族院の授業にはありましたわよ。とはいっても、皆様それぞれご自宅で幼少期から学ばれてきてますし、そこまで『授業』という程のことではありませんわね」

「平民がそういうマナー講座を受けられる授業はないのかしら?」

「あら、コズエ受けたいんですの?そんな必要ありませんわよね?」


エリーは『タロットワーク家ならできますでしょ?』という意味で言っているが、アリシアさんの耳には『平民には必要ない』とでも聞こえているかもしれない。少し俯いてしまったから。


「違う違う、そうじゃなくて。これから先、平民だってそういう上級マナーを学ぶ機会はあってしかるべきでしょう?才ある者を腐らせておくような真似はしないだろうし」

「それは言えてますわね」

「なら、学生のウチに学べる環境があるのなら、あってもいいと思わない?」

「・・・確かにそうですわね」


エリーも『ああなるほど』という顔。アリシアさんも驚くように私を見た。なので私はアリシアさんに向き直って話をする。


「あのね、アリシアさん。黙ってたんだけど、私、貴族同様の人に後見を受けているのね」

「えっ?」

「この話は、あんまり広めて欲しくないから、限られた人にしか言わないようにしているの。だからアリシアさんも秘密にしてくれるかな」


内緒ね、と唇に指を立てる仕草をすれば、アリシアさんもハッとして頷いてくれた。


「私、誰にも言いません。約束します」

「ありがとう。私は今、タロットワーク家にいるの。遠縁でね、こちらに来るのにお世話になっているのよ」

「ええっ!?そうなんですか!?」


やはり『タロットワーク』っていうのは鬼門なんだな…キャズ達と同じ反応をしてる。けれどアリシアさんは聡明だから、タロットワークが『元王族』という事に気付いて、真剣な顔になり、私を促した。


「ちょっと特殊な一族だけど、今は爵位を持ってないから私は平民として入学したの。そもそも私も平民の生活してたしね。ここでいきなり貴族の生活しろって言われてもね」

「私はそうしてくださると仲間が増えて嬉しいんですけれどね」

「ムリムリ、私そんな覚悟ございません」

「あらまあ、ウフフ」

「という訳なのだけど、これまで通り普通に接してもらえると嬉しいかな、アリシアさん」

「は、はい!もちろんです!」


アリシアさんは素直でいい子だなぁ。さすがは乙女ゲーのヒロイン(候補)なだけある。

それからは食事をしながら、二年からどんなコースを選んだのかとか、将来どうするのかとか色々と質問をする。

もちろん、エリーは淑女コースで、さらに交友関係を深めていく…のが主な学園での生活になるのだろう。
一年の時よりも夜会や公式な行事なんかにも出席する機会は増えるはずだ。何しろ社交界デビューした『第二王子の婚約者』だしね。

アリシアさんは、将来国を支える官僚になりたいみたいで、士官コースを選ぶ。
これからは総合的な知識に加え、国内外の情勢や官僚になる為の実務に沿うように学んで行く。
官僚となれば、表舞台に立つこともあるだろう。彼女は平民・貴族の中でも珍しい『聖』属性の魔力の持ち主だ。神殿に入らずに官僚となるならば、それこそ引っ張りだこになる事は否めない。


「そ、そうなんでしょうかやっぱり」

「うーん、私あんまり詳しくないけど。でも『聖』属性の魔力の持ち主って、基本的に神殿に入るものなんでしょう?」

「そうですわね、貴族の方が多いのですけれど、嫡子でない場合はほとんど神殿に入りますわね。神官になる事も大事な役目ですから。神事は全て神殿が取り仕切りますし」


王族・貴族並びに平民も、結婚式はやはり神殿でするものらしい。平民に至っては、年に一度の『合同祝婚式』でになるのだけど、それも『星姫』には基本的に神殿に所属する『聖』属性の魔力の持ち主が選ばれるから、神殿絡みとなる。
ま、今年は適任者がいなかったのでアリシアさんに白羽の矢が当たった訳だけれど。

ま、私もありますけどね、『聖』属性の魔力。
私の場合はイレギュラーなので、国王の許可があって神殿とは無関係だ。お迎えも来ません。


「アリシアさんは、神殿からお迎えあったんだよね?」

「・・・はい、ありました。父母が亡くなって、私に『聖』属性の魔力が芽生えてから。けれど私はいきなり湧いた力に戸惑いましたし、将来は仕官して国を良くする手伝いをしたいと思っていましたから。神殿の方にはそう説明したらわかって下さって」

「どう思う?エリー」

「担当者がどなたか分かりませんけど、一時的に勧誘を辞めた、ということもありえますわね。国外へ行きたい、という事でないなら監視は付かないと思いますわ」

「えっ?えっ!?」


『監視』という言葉に反応したアリシアさん。そうだよね、まさか自分が神殿に監視されてるとは思うまい。
私もまさかそこまでとは思ってなかったけど、『聖』属性持ちってそんなに貴重なの?

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