異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

文字の大きさ
57 / 158
学園生活、1年目 ~春季休暇~

80

しおりを挟む


エリーと話していると、コンコンと扉のノックが。顔を見せたのはアルさんだった。


「エリザベスお嬢様、旦那様と奥様がコズエ様にご挨拶したいと」

「そう、通して差し上げて」


エリーの言葉に、アルさんは扉を大きく開く。入ってきたのは壮年の男性と女性。
アルさんによれば、この人達がローザリア公爵夫妻だろう。エリーの両親。

ローザリア公爵はゲオルグさんと同年代だろうか。しかしローザリア公爵夫人はかなり…若い?20代に見えますが…?


「はじめまして、タロットワークの姫君。エリザベスの父、キール・ローザリアと申します。こちらは私の妻のナキア」
「はじめまして、姫君。エリザベス様がお世話になっております」

「ご丁寧にありがとうございます。コズエ・ヤマグチです。エリザベス様とは仲良くさせていただいております」


私も立ち上がり、彼等に向けてお辞儀を返す。
しかし娘なのに『エリザベス様』って言った?これはもしかして後妻さんですか?

顔を上げて二人を見ると、どちらもエリーの髪色とは似つかない。瞳の色はローザリア公爵と同じ濃いピンク色ではあるが。

エリーをチラリと見ると、にこ、と他人行儀な笑みを両親へと向けていた。これは…確実に後妻決定かな…?


「お父様、私、コズエとお話がまだ終わっていませんの」

「そうか、邪魔したね。では私達は行こうかナキア」
「はい、それでは失礼いたします」


ぺこり、と私に一礼して出ていくローザリア公爵夫妻。
パタン、と扉が閉まるとエリーのため息が聞こえた。


「気付きまして?コズエ」

「あれって、エリーのお母様じゃないわよね?」

「ええ、私のお母様は亡くなりましたの。ナキア様は数年前にお父様と再婚した方。元々は愛人でしたのよ」

「えっ?愛人を正妻に据えたの?」

「ええ。一応公爵夫人が必要でしたから」

「・・・怒ってる?」

「怒ってはいませんわ。認めてもいませんけど」


はい、怒ってます。しかしローザリア公爵よ、愛人随分若くないか?いったいいつから囲ってたんだろう。
公爵ともなると、やっぱり社会的にも夫人の助けが必要なんだろうなぁ。エリーが支える訳にもいかないしね。


「あの方、元々は平民の女性なんですの。蔑む訳ではありませんわ。貴族の男にとって愛人を持つというのはだとお母様も認めていましたから」

「え、エリー?嫌なら話さなくていいんだけど?」

「何を言ってますの?こんな愚痴を話せるのなんてコズエだけなのですから聞いてくださいまし」


チクショウ、宥め透かして丸めこもうとしたのに無理だった。これアリシアさん先に帰したのこれが目的だったのかも…





********************





ローザリア公爵、キール・ローザリアには幼い頃から婚約者がいた。セオドア侯爵家のメルティーナ嬢。エリザベスの母親だ。

二人は結婚し、二男一女を授かった。しかし、その結婚生活は冷えきったものだったらしい。
ローザリア公爵には愛人が三人いた。一人は男爵家の三女。一人は子爵家の次女。そして平民の女性。

男爵家と子爵家の女性は、夜会で知り合ったのだろう。年の頃もメルティーナ夫人とさほど変わりないくらい。
しかし、平民の女性は違った。彼女が公爵の愛人となったのは、15歳にも満たない少女の頃だったそうだ。


「ちょ、ちょっと待って。さっき見たご婦人、若かったわね?」

「ええとてもお若くていらしてよ?確か今20歳ではなかったかしら」

「ええええええええ」


待て待て待て、公爵。さすがにロリが過ぎないか?源氏物語を地で行ったのか?ちゃんと年齢考えて関係持ちましたよね?
しかし20歳って…思ったより若かった!もっと年齢行ってると思ったわ。化粧の差かしら?

エリーはこの話をどこから聞いたのかと思ったら、まさかの母親からだったらしい。メルティーナ夫人は、亡くなる前数年前から臥せっていたらしく、病床からエリーにこの話をしたらしい。重い!重いよお母様!

『他人から全く違う話を聞かされるよりも、当事者である自分から聞かせておきたかった』という事らしいのだが。
その時、齢10歳だったエリーは、当時からしっかりしていた子供だったようで、きちんと分別を持って話を聞いたらしい。
私だったら何言ってるかわかんなかっただろうな…

ローザリア公爵はどこでナキアさんと出会ったのかは言わなかったそうだ。けれど屋敷に連れ帰り『愛人にする』とメルティーナ夫人へと告げた。
自分の娘と5つしか変わらない年の子供を、だ。

最初は使用人として養う為に引き取ったのかと思ったそうだ。『愛人』だなんて嘘だろうと。しかし、ローザリア公爵は彼女にも別邸を与え、他の愛人同様に通った。そこで何をしていたかは知りたくもなかった、と。


「けれど、私はアルベルトに言って調べさせたのですわ。いったいいつから彼女と『愛人関係』にあったのかを」

「いやもう抉らなくてもいいかと・・・」

「さすがにお母様が亡くなってからですわよ?私も子供でしたもの。けれどお父様があの人を『妻にする』と言った時ですわ。私が調べさせたのは」

「えっもうそのあたりとか聞きたくないかな・・・」


ちょっとゲンナリした私。けれどエリーは吐き捨てる様に言った。父親は今の自分と変わらない年頃の娘に『愛人関係』を持ったのだと。


「ギリセーフ・・・」

「何言ってますの!」

「いや最悪もっと若い時点でとか思ったし!」

「・・・そう思うとまだ救いはありましたわね」

「でしょ・・・?まぁ娘としちゃ気持ち悪いわね」

「ハッキリ言ってくださるとスっとしますわ」


歳が離れたカップル、なんて珍しくもない。しかし同じ年頃の娘がいるのにいけしゃあしゃあと関係を持つのは頂けないわよね。
さすがに自分の父親がそうなら嫌だわ。とはいえもっと年齢を重ねてればそこまで嫌悪感ないけど、十代にはキツいよなぁ。


「うーん、50歳と30歳のカップルならそこまでじゃないけど、35歳と15歳はキツい。なんでかしらねこの感覚」

「わかりますわ、何なのでしょうね。それがきっかけというわけでもありませんけれど、お母様は結婚当初からお父様とは心を通わせる事はなかったと言いましたわ。初めからお父様には愛人が・・・身分違いで結ばれなかった相手がいましたのよ。ナキア様ではありませんけれどね」


そうか、だからエリーはアリシアさんに言ったのか。『その気があるのなら身を引く』と。
エリーの一番身近に、『別の相手を愛していながら結婚した夫婦』という前例があったのだ。

愛してもらえない、振り向いてもらえない。

そんな『女』の生涯を見て、聞いてきたのだ。同じ道を歩むくらいならば、婚約破棄くらい容易いものだろう。


「平民の方が、貴族社会へ溶け込むのはそう簡単ではありませんわ。あの方が今苦労しているのを見ていますし。とはいえ私はあの方を『母親』とは認められませんから、協力する気はないですわ。それはあの方がご自分で選ばれた道なのですから、ご自分の力で切り開いていただかなくてはね」

「ま、そうよね。認められなくてもやるしかないわよね、だって好きでその場所にいるんだろうし」

「ええ。ですから私の『お母様』は一人だけなのですわ。でももしもアリシアさんが頑張る、というのであれば協力したいと思いますの。だって彼女は何事にも一生懸命で、ひたむきなんですもの」


エリーもここまでたくさんの努力をしてきた。だからこそ、同じように目標に向かって努力する人への助力は惜しまないのだろう。
やっぱりいい子だよね、エリーって。幸せになって欲しいなぁ…シリス殿下の隣、ダメかしら?


「コズエ?私、簡単に王族になる気はありませんのよ?だって私はコズエこそその場に相応しいんじゃないかって思いますもの」

「えっ!?何それ無理だって!」

「そんな事ありませんわよ?だって、コズエこそ誰よりも『玉座に立つ者の覚悟』を理解しているじゃありませんの。私はそんな事まで考えが及びませんでしたわ」


そ、それは無駄に人生重ねてるからです!アラフォーともなると、色んな風景が見えるものなんですよ!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。

imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。 今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。 あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。 「—っ⁉︎」 私の体は、眩い光に包まれた。 次に目覚めた時、そこは、 「どこ…、ここ……。」 何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】 ※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。 ※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。 愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...