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【SS】甘く優しいスイーツタイム
しおりを挟む※こちらは『if』の物語です。
響子×総悟のお話となります。
********************
駅前の広場。
私は目当ての人の姿を見つけて駆け寄る。
「ごめんなさい、遅れちゃった」
「・・・・・」
「総悟君? 怒ってる?」
「・・・・・大丈夫、響子さんにじゃないから」
「え?」
ぐい、と私の手を掴んで歩き出す。
久し振りのデートに遅刻してしまった私。
待ち合わせの場所にきちんといてくれた総悟君だけど、かなりおかんむりの様子。
毎日レストランで顔を会わせているけれど、久し振りの休みに恋人らしくデートがしたい、と言い出した総悟君。
一応、新発売のスイーツやらを下見に、と仕事の要素を入れているけれど、今日は二人きりでのデートの時間だ。
そんなこんなで張り切ってお洒落したのはいいけれど、肝心の電車に間に合わなかった・・・・・
総悟君は家まで迎えに行くよ、と言ってくれていたけれど。
私は待ち合わせしてデートをしたかった。
相手を待つドキドキ感、待ち合わせ場所に着くまでのソワソワ感を味わいたかったから。
・・・・・結果、遅刻してれば意味ないけど。
案の定、総悟君は黙ったまま歩いていく。
手を繋いでいるから、そんなに早歩きな訳ではないけれど、私の方を向いてはいない。
いつもの彼なら、私の方を定期的に向いて声を掛けてくれたりするけれど・・・・・
遅刻したのは私だ。 許してくれるまで謝らなきゃ。
「総悟君、ごめんなさい。 電車に乗り遅れちゃって」
「わかってる」
「で、でも、遅刻したから怒ってるんでしょ?」
「そうじゃないけど、それも原因だからなんとも言えない」
「え?」
「悪いけど、もう少し辛抱して歩いて」
ちらり、と後ろを振り返る。
歩く速度は緩めないまま、私・・・・・というよりも後方を確認したようだ。
そのまま目的のカフェまで来ると、さっさと入っていく。
店員さんは2名ですね、と確認をするとテラス席へと案内してくれた。
こんな時でも、私が座る席を引いて促してくれる総悟君。
うーん、でも、顔が怒ってる・・・・・気がする。
□ ■ □
注文をし、飲み物が来るまで黙んまり。
私を、というよりまたも今歩いてきた歩道の方を見ている。
・・・・・誰か探しているのかしら?
「・・・・・ついてきてはないみたいだね」
「? 誰が?」
そう聞くと、はぁっ、とため息をついた。
テーブルに肘をつき、くしゃり、と前髪をかきあげる。
その下から覗く、やれやれ、と言わんばかりの疲れた顔。
お待たせしました、と飲み物とケーキを運んで来た店員さん。
彼女が立ち去ってから、総悟君は珈琲を一口飲んで、話し始めた。
「響子さん、ごめんね。 別に響子さんに怒ってる訳じゃなかったんだよ」
優しく笑う翡翠の瞳。
私を安心させるように、そっと手を包み込んでくる。
気のせいでしょうか、視界の隅にいた店員さんが倒れたような・・・・・?
「じゃあ、どうしたの? 驚いたわ」
「そうだよね、ごめんね。
でもね、響子さんにもちょっとは責任あるんだよ?」
「え? 私?」
くすり、と悪戯っぽく笑う総悟君。
あれ、この笑顔はいつも万理ちゃんが『悪魔の微笑みなんですぅぅぅ!』と叫んでいたような。
そんな事を考えながら、総悟君の話を促した。
「さっき、あそこで響子さん待ってる間、ずーっとキャッチが酷くて。
興味ないって言ってるのにしつこいったら」
「キャッチ? それって、よくホストさんとかが女の子狙うやつ?」
「それもそうなんだけど。 モデルにならないかってしつこいんだよね。
僕は全く興味ないって断ってるのに、勿体ないだとかウダウダと」
総悟君は不機嫌に話すけれど、確かに彼ならモデルくらい務まると思うのよね。
だって、彼を見てパティシエ、だとは思わないでしょうし。
どう見ても、芸能界だとかにいたっておかしくないくらいのイケメンさん。
本人意識してるのかわからないけど、ファッションだってすごく自分をわかってる格好。
普通のものを普通に着こなしているだけかもしれないけど、何やら様になる。
浩一朗も、晴明もそうだけど。
でもウチのスタッフはイケメンしかいない、か・・・・・?
「響子さん? 誰の事考えたの」
「っ、そ、総悟君!」
ぼやっと考え事していた私を、ずいっと至近距離から覗く総悟君。
まるでこれからキスでもするんじゃないかってくらいの、近さ。
そんな距離に、私も驚いて体を引こうとするけれど、総悟君はそれを許さない。
「ひどいなぁ、響子さんてば。 僕と一緒にいるのに、他の男の事なんて考えちゃダメじゃない」
「え、なんで、」
「考えてる事なんてお見通しだよ。 いつも響子さんの事、見てるんだからね。
わからない訳がないでしょ?」
愛してるよ、と囁く声に顔が熱くなる。
総悟君は、こうやって好き、愛してる、と甘い言葉をくれるのをやめない。
私が恥ずかしくなってしまっても、それが自分の本当の気持ちだから、と止める事はない。
そっと、唇に優しい感触。
ここはカフェテラスなのに、と思うけれど。
甘く優しいキスの感触に、ダメ、だなんて言えるはずもない。
目を開くと、優しく笑う翡翠の瞳が私を迎えてくれた。
「お仕置き、だね?」
「もう・・・・・外なのに」
「だって、響子さんだってキスしてほしかったでしょ?」
「え・・・・・」
なんで、と返す前に、パチンとウインクを送られる。
「言ったでしょ、響子さんの事でわからないことなんてないんだから」
途端にまた顔が熱くなってしまったのは、言うまでもなく・・・・・
甘い空気を味わうだけでなく、その後きちんと新作のスイーツも味わって帰ったデートなのでした。
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