異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

文字の大きさ
137 / 197
森の人編 ~魔渦乱舞~

136



採れてしまった花だが、とっても瑞々しい。元に戻したらまたくっ付いたりは…しませんよね、さすがに。もう何でもありかなって思ってしまった。



「あっはっは、面白い事を考えるねレディ」

「いやもう何でもありかと・・・
そういえば、アーリィさんというんですね、お名前」

「ああ、そういえば言ってなかったかね?私はアーリィ、あそこにいるのが妹達で、レナスとシルメリア」

「・・・」

「どうかしたかい?」

「いえ、ベツニ。もしかして御三方とも、剣と弓の両刀使いだったりします?」

「おや、よくわかったね。討伐の手が足りなかったら私らも参戦しようかと思っていたよ」



いました、三姉妹。戦乙女ヴァルキリーではないでしょうが、名前が似通っているのはなぜでしょうね?

郷の周りを蛇が囲んでいるせいで、前線に食事を届けるのも至難の業だ。それでも運ばないという事は無い。ある程度は蓄えがあるだろうが、やはり温かいものを食べたいだろう。

シチューやパン、それに燻製肉を用意する。
今回も選抜された女性陣がお出かけ。それと入れ替わりに、前に出発した人達が戻ってきてもいいのだが、さすがに突破するのに難儀している様子。

私?近くには寄りません。
だってアナコンダ近くで見たいと思う?結界の外側這ってるのだって嫌なのに。よくまあ皆平気な顔してるわよね、ホント。

ふと、郷の出入口近くが騒がしくなった。
さっきの女性陣が出たのかな?と思って、そちらを見ていると、見慣れた顔が戻ってきた。



「・・・ステュー?」

「ああいた、大丈夫?」

「ええ、私はね。そっちこそどうしたの?離れていいの」

「彼女達を郷に戻さないといけなかったしね」



くい、と指した方向を見れば、一昨日蛇達が押し寄せる前に出発した女性達が。なるほど、護衛してきてくれたわけか。さすがにあの蛇包囲網を突破するには厳しいわよね。

ステューは興味深そうに燻製肉を見ている。
おばちゃんエルフ達が頬を染めながら、試食を薦めていた。やっぱりときめきって大切よね、うん。



「・・・美味しいねこれ。向こうでもウケそう。戦ってる間のオヤツになるね」

「そんな余裕あるの?」

「というよりも、食べてる時間が惜しいかな。だから腹持ちのいいものとか、簡単に食べられるものが助かる。・・・もちろん、温かいシチューは休憩のご馳走だけどね?」

「そんなに、キツいのね」

「うーん、というより装甲が硬いかな。獣種なんだけど、毛皮の耐久度が高い。僕や獅子王サン、あの冒険者君はさほど問題にしてないけど、エルフがね。元々そんなに膂力ないしさ」



僕らはスキルで何とかなるけどさ、とステュー。
そうか、もしかして斬属性とか殴属性が有効?刺属性とか突属性は効かないのかな。そうなると、メインウェポンが弓や槍のエルフにはちょっと荷が重いかも。斧槍ハルバード持ってた人もいた気がするけど、少数だものね。



「それと、魔法防壁が強い」

「えっ?」

「多分、統率者ボスがいると思う、球状の蛇スネークボールの中に。獅子王サンや、賢者サンも同じ意見。
僕の瞳に見える魔力波も、禍々しい感じ。早めに潰して引きずり出したいんだけど、そこまで行くには獣種が邪魔」

「・・・エルフの魔術師の広範囲魔法でなんとかならないの?」

「多分いけると思う。これから僕が戻ってから総攻撃をかけるつもり。ただ、ひとつ心配があるんだ」

「何?」



ステューの瞳。魔力の流れ…光の粒子が見えると言っていた。
ディードさんに聞いたが、それは妖精眼グラム・サイトという森の人エルフに伝わる魔眼のひとつらしい。

これは珍しいスキルで、今はこの郷ビフレストでも、族長のディードさん、イヴァルさん、あと数名らしい。どうやらリーファラウラさんにも微弱ながらそのスキルがあるそうだ。だからあんなに自信満々なのね。わかるわかる。

そのステューが『心配』。
フラグと言わずなんて言うんですか?



「あの球状の蛇スネークボール、生半可な攻撃じゃ通らないと思うんだよね」

「・・・そのパターンですか、そうですか」

「えっ、何?」

「いえなんでもないのです」

「最悪、君の護衛に力を借りるかも」

「オリアナ?まあ本人がOKすればいいわよ」

「わかった、伝えとく。君の了解がないと話も通せないしね。もっと最悪は、君の出番だと思ってね」

「・・・エルフの魔術師が総出でできないことを私が出来ると思う?」



すると、ステューはまるで子供のように無邪気に笑う。
そんな顔にドキっとした。邪気のない笑顔、って心臓にヘビー級パンチよね。だけに。

すっと綺麗な指が私の向こうを指した。



「この精霊の森において、世界樹ユグドラシルの枝から苗木を育てちゃう君にできない事ってあると思う?」

「あ、あるわよ?」

「へえ?一体何かな?」



意地悪そうに笑う翡翠の瞳。
さっきまでは天使のようだったのに、もう悪魔が降臨。
ホントに猫みたいなんだから、この気まぐれ王子!



「あの蛇間近で見ろって言われても無理よ!」

「あ、あはははは!確かに!グロいよね、小さいのならともかくあのサイズはキツいよ僕も」



やっぱりそうなのね、普通の顔してるエルフさん達のメンタルが凄いわ、慣れなのかしら?



「だからついイラッとして切り刻んじゃうんだけど」

「そ、そう・・・」

「さて、戻らないとね。少し先に出た子達も拾ってかないと」



なるほど、回収してくのね。ステュー1人ならきっと戻りはもっと早いのだろう。でも食料持ってるしね、あの子たち。
途中でオリアナの所にも寄っていくとの事。

…オリアナって、爬虫類大丈夫なのかしら?



********************



「おう、戻ったか音楽家」

「往復もそこそこ疲れるね。はいこれ、お土産の燻製肉。結構イケるよ」

「すまねえな、ん、・・・意外と美味いな」
「ふむふむ、これがそうですか。日持ちもしそうですし、助かりますね」

「それと、彼女も」
「あまり気は進まないのですが」

「お前も来たか、碧の死蝶」

「我が主の許しがありましたので。ですがあちらが危険なようならすぐに離れます。申し訳ありませんが」

「構わねえよ、お前の本来の仕事だろ。全うしろ」

「そのつもりです」

「まあまあ。ですが貴方が来てくれたことでかなり勝率が上がります。索敵に気を遣わなくとも済みますから」

「確かにな。獣共を蹴散らすのはエルフの魔術師に任せるが、そのあとのを突破するには、イヴァルとディードの2人に集中してもらう必要があるからな」



二陣に行っていたディードも一陣へ呼んだ。
さすがに統率者ボスがいるだろう球状の蛇スネークボールは、他の者よりも威圧感を感じる。
恐らく物理攻撃だけでは無理だ。同時に魔力を纏わせて攻撃する事でダメージが通る、と思う。

魔眼持ちの音楽家も同意見だ。
共に偵察に出た碧の死蝶の見立ても、そう変わらない意見。



「やっぱりお前もか」

「他にどなたが?・・・ああ、先程のカーティス侯爵ですか」

「ん?あいつ、侯爵なのか」

「まだ正式に継いではいないようですが、次代の侯爵様ですね。魔眼持ちとはでしょう」

「さすがに『情報持ち』だな」

「・・・このような場である事と、貴方S級冒険者だから漏らしたのですよ」

「借りが増えたな」

「いずれ支払っていただきますのであしからず」



『碧の死蝶』、またの名を『黒の情報屋』。
ギルドの上層部…それも幹部数名と直属のS級冒険者のみが知る、確実な情報源だ。それが王家の暗部と繋がっている事も周知の事実。

流れてくる情報も、おそらくされていると思うのだが、正確無比な上に信頼できるのだから、無視出来ない。
それもそのはず、背後に旧王族タロットワークがいるのだから、当たり前だ。

しかし、よくもまあエンジュみたいな脳天気な女が生まれたもんだ。本当に血を引いてるのか驚くな。
…まあ、あの破天荒すぎる魔力を見れば、一目瞭然なんだが。



「・・・これは、さすがに」

「どうした」

「一撃入れて無理ならば下がるのが賢明です」

「そこまでか?数撃考えてるが」

「過度に刺激するとさらに硬化するかと」

「面倒臭えな。・・・やっぱり連れてこねえとダメか」

「気は進みませんね。セバスチャン様がどう出るか」

「『タロットワークの執事暗部の長』かよ。怖えもんだな。ま、いざとなりゃ、って話だ。俺達でなんとかしてみせるさ、戻るぞ」

「そうですね。あまり時間をかけたくありません」
感想 541

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。