異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

文字の大きさ
150 / 197
獣人族編 ~迷子の獣とお城の茶会~

149


あれから数日、毎日獣さんに回復持続飴キャンディスを与えるものの、一向に起きない。
トーニ君曰く、『回復はしてきているが、何分獣本体の自己治癒力頼みになる為に時間がかかるでしょう』とのことだ。

躾の為の魔法…それがこの獣さんの自己治癒力も低下させるほどに痛めつけたのだろうか。そんな魔法って意味があるの?



「どうですかねえ、魔獣を意のままにしようというのですから、それなりに有効だとは思いますが」

「でも、痛めつけて弱らせてたら意味がないのではない?」

「反撃をしてくる事が予想されるような獣であるなら、ある程度弱らせる事が必要だと思いますよ?エンジュ様。
そもそも魔獣を飼う、など魔物使いテイマーでなければ危ないのですから。魔物使いテイマーであれば、思念共有するようなスキルもあると言いますし」

「そうよね・・・」

「あっさり言葉を交わせるようになったエンジュ様も大概ですけどね」

「それは私にも予想外すぎたわ」

「まあ僕達にとっては『エンジュ様だし』ということで諦めも付きますけど」

「待って、何を諦めたの?」



何を今更、というように笑われる。
こっちも好きでトンデモ行動してる訳じゃないんです!結果?そういう事に?なってしまった?ということで。

全く起きない獣さんだが、当初よりはお腹のあたりが上下してるのが目視で確認できたりする。
ついついブラシなんて買ってきてみたり。そっとブラッシングしてます。おかげでふわふわ感を味わってます。早くハグしたい、モフりたい。



「・・・モフりたいわー」

「エンジュ様の熱意がすごいですよね」

「だってモフれる対象がいないんだもの」

「馬じゃダメですからね」



馬にモフれる場所なんてある?たてがみ?尻尾?
イヤよ一歩間違えたら馬キックされそうだもの。

大きなぬいぐるみで代用できる気もするが、目の前にあるモフモフには叶わない。ひとしきり撫で撫でしてから仕事。今はこれが毎日の日課である。



********************



そうこうしているうちにドレスが仕上がり、クレメンス邸にお呼ばれしてきた。ドレスは濃紺ネイビー仕上げのワンピース風。キャロルさんお手製のご飯を味わって参りました。

スープはヴィシソワーズ。ジャガイモって比較的安値で手に入るし、下級貴族であったキャロルさんにとっては馴染みのある食材のようだ。
ソースはデミグラスソース。これもご家庭で少しアレンジがしてあるのだろう。私は一般人の為、ソースとケチャップ混ぜたやつとか好きなんですけど。家庭のハンバーグソースはこの味です。ソースはあれね、ブル○ッグです。

もちろんやりましたよ、タロットワーク別邸で。
混ぜ混ぜし始めた私にマートンドン引き。でもこれが美味しいんですう!と言い切ってハンバーグにドバー。今ではゼクスさんがこの味のトリコ。…この国きっての上級貴族のはずなのだが、こんなご家庭の味に染まっていいのだろうか。悩む。

とても和やかに食事してきました。
え?団長さんとシオン?いませんでした。



「あの方達はいなくとも」
「キャロルの手製の料理など勿体無い」



にっこりと微笑む2人の姿。
…いいのかこれで。団長さんには後からが作ったものが振舞われたとか。

貴族の家で女主人自ら、当主に料理を振舞うものではないそうだ。…でもそれをやる為の私の投げかけだったのだが?どこで方向転換したのか。知ってます、アナスタシアです。

数度しか2人が揃っているところにはいないが、それでも丸わかり。キャロルさんて、ものすごくアナスタシアのこと好き。
これまでは遠慮があった仲のようだが、今ではその垣根が綺麗サッパリ取り払われ、仲良し。ラブラブ。アナスタシアもキャロルさんが可愛いのか、とても親身になっています。
…これは夫が置いて行かれている。口出ししちゃいけないわよね、これはクレメンス家の問題だものうん。

子供たち2人も、そんな母親達を見て嬉しそうでした。

おいとまする前に、執事さんより大きな箱のお土産。
団長さんが注文オーダーした私へのドレス。
お邸に戻って確認すると、それはもう『え?これ団長さんがおーだーしたの?本当に?(失礼)』と思うくらいのエレガントなドレスが入っていた。

上半身はすっきり、胸元は大きく開いてはいるがシフォンをあしらい清楚目に抑えつつ、腰から下は品よくレース模様を模したような柄の生地のスカート。所々キラキラと何やら石が縫い付けられているのだろうか、フレアスタイルに広がっている。Aラインに近いだろうか。

驚く私を尻目に、ライラがトルソーへドレスを着せる。



「素晴らしいですね、エンジュ様」

「・・・」

「エンジュ様?」
「どうしたエンジュ?気に入らなかったか?」

「いえ、そんなことないわ、凄く素敵。ただ・・・」



言い淀んだ私に対し、アナスタシアは笑う。



「そうだろう、フリードリヒからは想像付かないだろう?」

「そんなハッキリ言っちゃうのね!?」



口に出すのを迷った私だが、アナスタシアはあっさりと看破。そうよね、アナスタシアにしてみれば、こういったドレスを何枚も何十枚も贈られてきたのだろうし。

アナスタシアは立ち上がり、ドレスの前に立つ。
じっくりと眺めながら、私に笑いかけた。



「あの男はこういったことに目が利くんだ。こちらがデザインを頼んだ訳ではないんだが、しっくり来るものを寄越してくる」

「それ、昔から?」

「まあそうだな。最初のうちは私にはあまり合わないものを寄越していたんだが、1度突き返したら2度目からは良いものを寄越すようになった」

「えっ、なにその順応性、すごい」

「腐っても侯爵家の人間だということだな。元々の素養もあったんだろうが、あれを育てた教師も良かったのだろう」



侯爵家の教育、かあ。
いつもの感じだと忘れがちなのだけど、団長さんって立派に『侯爵様』なのよね。剣を振り回してる感が似合ってるからうっかりしがちなんだけど。

シオンの方がどことなく品がある所作をしているから、団長さんの所作か霞みがちになるけれど、粗野なようであって不快じゃないのよね、上手く言えないけど。
他の騎士さんを見ているとわかる。やはり幼少期から叩き込まれているものが如実に出てくるものなのだ。

…となるとですね、一般家庭で育った私はどう足掻いても付け焼き刃な訳ですよ。どうしようもないのよね。
そりゃ、ゴロっと寝転がってポテチぱくつきなからテレビ見てたような育ちですもん。

アナスタシアは団長さんに『観劇に行くからドレスを寄越せ』というなんとも男前なオーダーをしたらしい。
…それで『よしきた』とこんなドレスを寄越す団長さんも団長さんだと思うのだが?ちなみに製作料は『シオンが地団駄踏んで悔しがる様を想像できただけでいい』そうである。踏むか…?いい年した男が地団駄…?

と、セバスがもう一つトルソーを運んできた。
後ろからターニャが箱を持って来る。…ん?もしかしてもう1枚のドレスが出来上がったの?



「マダムより茶会用のドレスが出来上がったとの事です」
「せっかくですから、並べちゃいましょう!」

「は、早いわね・・・?」

「お針子が先程届けに参りました。なんでもマダムは不眠不休で作ったのだとか」

「そこまで!?」

「物作りにかけるマダムの熱意ですね」



明らかにオーバーワークだと思いますが。
好きなものに情熱かけすぎでは?休むって必要だと思うのよね。

茶会用のドレスは、白地に金の『どうだ!タロットワークだぞ!』と強調するかのようだ。
なんとか頼み込んだので、非常にシンプルにしてもらった。放っておいたら『それどこのセレブのウエディングドレス!?』となっただろう。

デザインはまんま、ウエディングドレスだ。
ドレスの生地はバストから。肩からデコルテ、袖はレースで作ってあるプリンセスラインのドレスとなった。…そこは譲ってもらえませんでした。

これ目立つんじゃないのかなあ…
やれやれ…
感想 542

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

婚約破棄されたので、王家の死亡通知を先に出しました

くるみ
ファンタジー
婚約破棄を告げられたセレスティアは、静かに微笑んだ。 「では、王家の救命措置を終了いたします」 その一言で、王国は大混乱。役目を終えたセレスティアは、晴れやかに旅立つ。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。