異世界に再び来たら、ヒロイン…かもしれない?

あろまりん

文字の大きさ
166 / 197
獣人族編 〜失われた獣の歴史〜

165

しおりを挟む

『父上…!』
『息子よ…!』

的な再会を期待したのですが、



「ウオオオオオオン!!!」
「ガルルルルルルル!!!」



今目の前では、そこそこ大きな毛玉怪獣が2匹、取っ組み合いを繰り広げております。



「・・・これいつまで待てばいいのかしら」

「間に入るのは・・・まずいわよね」

「あっキャズ、その鞭でこうバチーンと」

「・・・さすがにもう少し発散させてからの方がいいんじゃない?」

「えっでもこれ、部屋壊れたりしない?」



********************



獣人連合アル・ミラジェの冒険者ギルドで、国家元首であるフェンイルさんの父親、オルドブラン・アルミラに面会許可アポイントを取ってもらった。

無論、タロットワークの名前を全面的に出す訳にはいかず、リリンゴートのギルドマスターの名前で取ってもらった。
内容は『行方知れずの息子について』。はっきり言って怪しすぎる申し出だと思うのだが、意外とあっさり許可が降りた。

もしかして父親として捜索願いでも出していたとか?と思って指定された場所…獣人連合アル・ミラジェの首都、ガルデリアへ向かう。

用意されたのは…馬車…、いや、竜車???



「・・・」

「何どうしたのよ」

「・・・馬車?いや、なに?」

「竜馬車よ」

「・・・ごめんなにそれ」

「まあ、あんたには見慣れないわよね。獣人連合では普通よ。
馬より早くて長距離に適してるの」

「お、お仲間・・・とかでは」

「ないわよ。こういう交配種なの」



キャズは驚かないな、と思ったが、彼女は何度か乗ったことがあるそうだ。獣人連合アル・ミラジェへ来たのは初めてだが、この【竜馬車】は別の所で乗ったことがあるらしい。

この【竜馬】は本当に竜種と馬の掛け合わせ。
竜といってもドラゴンじゃなくて、蜥蜴種リザードの系統のようだ。



「レディはあまり好まれませんか?でしたらあちらでも可能ですが・・・」



あちら、と示されて見た厩舎には、で見た事のある大型の鳥。
…いや待ていいのかそれは。



「・・・チョコボ?」

「ダチョワールです」

「はい?」

「あの鳥は、ダチョワールと言って、この国では荷馬車なんかを引くんです。【鳥馬車】と言われてますね」



鳥が引いても蜥蜴が引いても『馬』車って言うのね?
しかしこれ、感動だわー。幼き頃より画面の向こうで『クエッ』と鳴く彼(彼女?)を見ていたが、本物…に近いものに会えるとは。



「まああちらが1番早いんですが」
「ごめんなさい無理です」

『なっ!?何故だレディ!?私はノープロブレムだと言うのにっ!』



瞬時に却下した私の言葉に反応した生物の声。
つーかあれ喋れるのか。喋れなくても良かったのに。鬱陶しい。聞かないように見ないようにしているが、めっちゃうるさい。

私もね?だいぶ娯楽小説ラノベで耐性付いているとは思うわけ。だからこそこんな異世界に2回も来てても頑張っていられる訳よ、そうでしょ?

ものにもお初ではないわけ。
最低限、耐性は付いていると思っていた、そう、

ちらりと目をやると、ポージングしてバチーン☆とウインクを送ってくるの生物。
はい、そうです。ケンタウロスさんです。



『私にかかれば、道中安全に!かつ!速く!』

「黙れこんちくしょう」

『あアッ!いいっ!その軽蔑する目線!堪らない!』

「もうやだもうやだもうやだ」
「あんたなんでアレと喋ってんのよ?」

「え」
「・・・さすがというかなんというか」

「待ってキャズ、もしかして聞こえ・・・てない?」
「難解すぎてわからないわよ、なんて」



読むだけならまだしも…と呆れた目を向けるキャズ。

マイガーーーー!!!
嘘でしょ、嘘だと言って!?
アイツの喋ってんの、なの!?日本語って事!?
えっ、やだやだじゃあアイツの『ハーイ、ボク〇ッチー王子だよ☆』みたいのを数十倍うっとおしくした喋り、私にしか聞こえてないの!?

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙、と頭を抱えて蹲った目線の先、いつもの笑顔を浮かべたスライムが。



「・・・」

「どうしたのー?」

「うん、アレ、キミには聞こえてるよね」

「きこえるよー」

「・・・アレ、他の人にも聞こえるようには」

「うーん?えっとね、きゃずにならできるよー」

「頼んだ」



おっけー!とぴょんぴょん跳ねてキャズの足元へ行くスライム。
足元でプルプルプル、と震え始めた。
何あれ、電波受信中?ちょっと上に伸びつつ、プルップルしているスライム。キャズは気付いてないが、突然ビクン!と震えた。

お?聞こえたのか?
ちなみに?はまだなんか喋ってます。

キャズは顔色を悪くし、キョロキョロと辺りを見回す。
その目がぴたり、とケンタウロスで止まって見つめ合う。
あ、ケンタウロスがウインクした。ロックオンしたなアレ。

ぐるん!と私の方を向くと、物凄い勢いで寄ってきた。



「あ、あ、あ、あれ!あんたでしょ!」

「同じ目に合えばいい」

「ななな、何したのよ!何よアレ!気持ち悪い!ケンタウロスってあんな事喋ってんの!?」

「それが現実よキャズちゃん」

「な、なっ、なんでよ!なんで聞こえるように・・・っ、はっ!?」



バッ!と足元を見るキャズ。
そこにはぷるぷるりん、とスライム。やっぱり笑顔。

全てを悟ったキャズ。能面のような顔で私をゆっくり見た。



「・・・知らなくてもいい事って、世の中にたくさんあるわね」

「そうね」

「アレは最たる物だと思うんだけど」

「・・・アレね」

「絶対借りないでよ」

「ヤバいすっごいこっち見てるアイツ」



ギギギギギ、と壊れた人形のようにキャズが後ろを振り向く。
ケンタウロス、ポージングを決めてキャズをロックオン。
…うん、多分、あれのせいかな?



「すごいこっち見てるじゃないアイツ」

「多分、キャズを気に入ってる」

「なっ、なっ、なんで私なのよ!」

「・・・アイツの性癖から多分、

「はァ!?」



恐らく、ヤツはMだ。
それもドMというやつだ、間違いない。

私に聞こえてる内容と、キャズに聞こえているアイツの言葉に相違が無ければ、だが。
これ同じ内容聞こえてるのよね?わからないけど。



『さあっ、頼むよハニー!その素晴らしい道具で私に喝を入れてくれたまえ!君という最高のパートナーに会えて私は運がいい!』



私はキャズの腰に吊られているを指さす。
どう考えても奴の好きな物は、これだ。

後ろにいたオリアナが、そっと私に耳打ち。



「あの半人半馬ケンタウロス族ですが、鑑定アナライズの能力があるようですね」

「魔法が使えるってことかしら?」

「いえ、ケンタウロスの中には元から特技スキルとして使用出来る個体がいます。その為、馬車を引く生物としては最高ランクです。
何しろ、人の言葉を理解し、危険を察知して避ける事ができますので」



あー、なるほど?
鑑定アナライズしつつ、危険回避してくれるのか。
あの個性溢れすぎる言語をこちらが理解しなくとも、アイツの方で理解して進んでくれると。

馬や竜馬、ダチョワールと馬車を引く生物はいくつかいるが、安全性(?)、速度からいくと半人半霊馬ケンタウロス族が最高位だそうだ。…色んな事に目をつぶれば、だが。



「ただし、半人半馬ケンタウロス族が乗り手を気に入らなければいけませんので、そこまで数は多くありません」

「あー・・・癖あるものね、アイツ」

半人半馬ケンタウロス族は走る事が好きですから、ああして馬車を引いてくれる個体も多くいます。
ですので今回キャズ様をいただけた事は好機ですね」
「どこがよ!どこがなのよ!」

「通常、半人半馬ケンタウロス族を借りようとすると、とても難しいですし、それなりに手間賃も必要です」

「高いの?」

「他の生物の数十倍はしますね。ですが魔物が出たとしても半人半馬ケンタウロス族は自分で排除しますし、道中の護衛等も必要ありません。ですので重宝されるんです」

『安心したまえ!レディ達を運ぶのに見返りはいらないさ!
時にそちらのハニー!君が私にその素晴らしい道具で愛をぶつけてくれたらさらにいい!!!』

「愛ってなんだよ」

『その素晴らしい道具で私を打ってくれたまえ!』

「やっぱり」
「嫌ァァァァァ」

『レディでもいいが、レディからはその軽蔑しきった眼差しと言葉だけで十分さ!』

「アカン真性のドM」
「こ、断ってよ!断りなさいよ!」

「いや無理だよこれ付いてくる気だもんアイツ」



だってすごいロックオンしてるもんアイツ。
馬車の貸し手も驚いたように、キラキラした目でこっち見てるし。
何?『ケンタウロスと話してる!』って事?そんなに嬉しいかこれ。

私とキャズがゴネてる間、さっさとオリアナが賃貸契約を結んでいました。
…スライムはオリアナにも言葉がわかるようにした様子。

キャズ、壊れないといいなあ。アハハ。

しおりを挟む
感想 539

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

処理中です...