魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

文字の大きさ
71 / 85
第五章【灰】

技術都市コクーン

しおりを挟む

技術都市コクーン。

東大陸の南方。砂漠地帯と荒野の境目に位置する都市。
昔の城塞跡を利用して作られた都市で、いかにも物々しい雰囲気を持っている。
しかし、内部は『技術都市』というだけあって近代的な機械が街の至る所に溢れかえっている。

他の場所では手動汲み取り式の井戸でも、ここでは街の井戸は全て機械で汲み取りができるものだ。

ここに住まう人間は皆、何らかの技術職の人間ばかり。



「よっと、到着だ。すまないなスカルディオ、助かった」

「いや、構わないさ。いつも爺さんにゃ世話になってるしな」

「そうだよな!ったくあれほど武器を大切にしろと言っているのにお前ときたら」

「待て待て待て、説教はこの荷物を退けてからにしてくれ」



王都グロウケテルから馬車で丸7日。
世話になっている鍛治職人の爺さんに付き、技術都市コクーンへ護衛依頼をこなしてきた。

この技術都市コクーンは様々な鉱石や鍛冶素材を産出する山脈…鉱山が近くにあり、年に数度、こうして直接買い付けに来る。
その度、手が空いている時は爺さんに護衛として雇われるようになった。

途中、山賊やらに襲われないとも限らない。
移動が長い旅路は魔物よりも人間の方が厄介な場合も多い。

とはいえ、この都市に住まう技術者に至っては、冒険者よりもさらに冒険者らしい体格の持ち主が多い。…サイボーグか?というくらいに機械と一体化している奴もいる。生体科学というのだそうだが、義手や義足といった補助具を専門に扱っている者も多い。

それ故に、ここには手足を戦いや事故で失った者が救いを求めてやってくる場所でもあった。魔法で治らないものは、技術で補えといったように。



「爺さん、荷物はこれで全部か?」

「おう、おう、すまなんだな。いやー、老骨には辛い」

「何言ってやがるんだ、クソ重い槌を振り回してるくせに」

「おー、いてててて、足が痛いのお」



絶対痛くなんかないだろ、ずっと馬車も俺が運転してたし、爺さんは後ろで酒瓶片手にイビキをかいていたんだから。
丸七日、ずっと寝ていた訳じゃないが、ほとんど御者は俺だったろうが。

睨んでみたものの、堪える気配などない。
幾つになるのか知らないが、地の民ドワーフの爺さんには長い事世話になっている。この癖のある武器の手入れも、この爺さんにしかできないのだから。



「さて、俺はギルドに到着報告してくるぜ」

「すまんかったな、スカルディオ。いい鉱石手に入ったらまた装備にひと手間加えてやるからのう」

「そっちは楽しみにしてるよ。爺さん、コクーンにどれくらいいるつもりだ?」

「そうさな、ひと月はいるつもりだ。お前も好きにして構わんぞ。お前がいなければそこらの冒険者を雇ってグロウケテルへ戻るからの」

「・・・ま、ギルドに行ってから決めるさ。仕事がありゃ残ってもいいしな」



急ぐ旅ではない。この所はほとんど王都に詰めていたから、コクーンに来るのも数年ぶりだ。これまでは一定期間ごとに都市を色々と回る生活をしていた。
…そう、あの小さな『魔女』に会うまでは。



     ■ □ ■



コクーンのギルドは、他の都市に比べると小さい。
技術者だらけのこの都市は、あまり冒険者が居着かないからだ。とはいえ依頼がないということも無い。技術者では仕留めきれない魔物もいる。



「おやまあ、スカルディオじゃないのさ」

「まだ生きてたか、ゴドフリー」

「アタシの名前はだと何度言わせるのかしらぁ?」

「わかったわかった



『そう、それでいいのよ』とむふんと笑うゴドフリー。いや、。どう見てもマッチョの中年だが、心は乙女だそうだ。深く関わり合いになると痛い目を見るが、頼りになるギルド受付ではある。

酔っ払って暴れる冒険者も、ジャネットにかかれば子供同然。
…コイツは元冒険者で、拳闘士モンクだった。ギルドの人間となっても鍛錬はかかしていないだろうから、未だ現役に近いだろう。このゴリゴリな筋肉を見ればわかる。



「顔を出すのは3年ぶり?」

「ああ、そんなになるか?」

「マウントロックスを退治してもらって以来じゃないかしら?」

「そんな事もあったな。あれはいい儲けになった。・・・もう出ないのか?」

「最近またちょいちょい出てくるわね。ここらにいる冒険者には荷が重いから、アタシが出ようと思ってたところよ。
どう?一緒にブチのめさない?」

「取り分は?」

「5:5って言ってあげたいんだけどねえ。マウントロックスの魔石が入用なのよ」

「・・・なら7:3で手を売ってやる。その代わり、宿を融通してくれ。長期で泊まれる所がいい」

「OK、手を打つわ。『水飲み鳥の嘴亭』はどう?」

「あの飯の美味いところか。空いてるのか?」

「アタシが空けさせるわ、Ꮪランク冒険者を泊める栄誉と引き換えなら向こうも喜ぶでしょうよ」



バッチン、と大男のウインク。
…まあ、宿が見つかったのだから文句は言うまい。

長期で泊まることにはしたが、ギルドの仕事に寄っては短期でも構わないからな。飯が美味いのは助かる。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

処理中です...