魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

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第五章【灰】

砂漠での狩り

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リグノ爺さんが荷物を預かってくれるらしいので、ティティのリュックだけ預ける。
もちろん、貴重品類は俺のマジックバッグだ。なにがあるか分からないからな。

奥地へと向かうオアシスの出口へ向かうと、さっきの冒険者パーティが待ち受けていた。



「よう、兄さん。2人だけかい?」

「ああ、そうだが。何か用か」

「いいや?そっちのお嬢ちゃんを連れ歩くなんていい趣味してるなと思ってよう」
「可愛いよなあ」
「やめなさいよ、下品じゃない」

「・・・用がなければこっちは行くが、いいな?」



チラチラとティティを見る目。奴隷と間違われているのか。それともそんな事すらどうでもいい?
俯きがちに立っている少年がなんだか可愛そうに見えた。

ティティもさすがに変だと思ったのか、俺のマントを引っ張ってきた。



「なんなのですかね、あの人達」

「・・・手荒な真似をしてこないといいが、おそらく狙いはティティだろうな」

「えっ?ティティですか?」

「幼子趣味、なんだとよ。さっきお前くらいの少年がいただろう」

「ティティ、あんな歳下のお子様は嫌ですう」



そうだった、こいつ364歳だった。
しかし、コレに合う相手は見つかるのだろうか。同じエルフになるだろうが、その前にどちらかの性を得ないとな。



   ◻︎ ◼︎ ◻︎



「ほら、そっち行ったぞティティ」

「はいっ!」



視界にオアシスを収めつつ、狩りを始めると、わらわらと出てくる、デザートイーグル。
なんだ?大量発生でもしてるのか?それとも他の奴等が素通りしているのか。

こっちにしてみれば、俺が射落とし、ティティが水魔法で仕留めるという方法でサクサクと討伐できている。
たまにサソリや蜘蛛型の魔物も出てきたが、なんなく倒せた。やはり水系統の魔法が使えるのは大きい。



「羽でスカートが作れそうなのです」

「確かにな。爪も取っておくか」

「あれ?あれって・・・さっきのあの子でしょうか」

「あ?」



ティティの指差す先。そこにはヨロヨロと歩く少年の姿。オアシスの出口付近で見かけた時は荷物を背負っていた気がするが、今は何も持っていない。
後ろからデザートイーグルが向かってくるのが見える。…さて、どうするか。



「危ないですかねえ」

「そうだなあ」

「シグムントさん、助けようと言わないのですね」

「ティティもな」

「ティティとしては、自分でどうにかできないのに砂漠に出てくる方が間違っていると思うのです」

「真っ当な意見だな」



俺もあまりこういう時に人の手助けをする事はない。
冒険者でいる以上、自分で始末を付けられない事に首を突っ込むのであれば、それは自己責任だからだ。
最初の頃は、なんだかんだと手助けしていたが、その挙句身包み剥がされる事もあったり、いい事ばかりではない。
こちらの善意が、あちらにとっても善意と映るとは限らないからだ。

見殺しにする、というのも後味が悪いが。
…それより、あいつの仲間はどうしたんだ?全滅したのか?

と考えている間にも、少年はこちらに気がついたのか、俺達の方へ逃げてくる。
…本人は一生懸命なんだろうが、下手すれば押し付けトレイン行為とみなされるんだがな。



「ティティ」

「今夜は焼き鳥パーティーですかねえ」

「・・・まあ、そうだな。鳥鍋でもいいぞ」

「それもいいですね!」



パシュン、と俺が打った矢が飛ぶ。
一撃目はワザと外した。デザートイーグルの目標をこちらに移すため。

俺がデザートイーグルを引きつけるうちに、ティティが少年を確保する作戦だ。
こちらに向かってすっ飛んできたデザートイーグルを、剣で一閃。首が落ちる。
丸ごとマジックバッグへ収納すると、ティティの悲鳴が上がった。…やっぱりか。

顔を上げると、少年の近くに蔓でグルグル巻きになっているティティ。…どうしてそうなった。



「なんでそうなったんだ?ティティ」
「ティティにもさっぱりなのですーぐるぐるっとしたのですー」

「ち、近寄らないで、ください」

「お前は何のためにティティを捕まえてんだ?」

「め、命令なんです。僕は、悪く、ないんです」

「・・・」
「驚くほどクズなのです、びっくりなのです」



呆れて言葉が出なかったが、ティティが思った事を口にした。お前、今どういう状況かわかって言ってるか?
少年も悔しそうな顔をしてティティを見ている。

と、後ろから歓声が上がった。



「お、やりゃあできんじゃん、ケネス」
「弱っちいのも作戦のうちだなあ」
「ケネスく~ん?あとでたっぷり可愛がってあげる!」

「っ、」

「お~っと、待てよ兄さん?足元に転がってるのが見えてんだろ?」



ニヤニヤ、と嫌な笑みを浮かべたリーダー格の男が、ケネスと呼ばれた少年に並んで肩を抱く。
少年は肩を抱かれると、何もかもを諦めたような顔をした。

他の2人も追いつき、もう1人の男がしゃがんでティティを眺める。



「お、ちらっとしか見えてなかったけど、やっぱかわいいじゃん」

「どうもなのです」

「今日の夜は俺がたっぷり可愛がってやるからなあ?」
「それは後で決めようぜ?」

「げー、本当にゲスね、あんた達。こんな子供にしか興味ないなんて」

「それはお前もだろうが?・・・さあて兄ちゃん、取引だ。獲物を置いてここから消えな」

「・・・」

「持ってるもの全部置いてけよ?安心しな!俺たちが有効に使ってやるさ!」
「妙な真似をしたら、この子酷い目に合うわよお?」

「・・・ティティ、好きにしていいぞ」

「あん?何を」
「わかりましたのです!」



さあどうするか、こいつらの出方次第だなと考えていたが、思っていたよりも下衆かった。
転がって成り行きを見ているティティも、徐々にイライラしているようにも見えたので、ティティに任せる事にする。
こいつも灰の魔女の弟子、だ。これまでの戦いぶりを見ていても、かなり場慣れしている。

ティティが返事した次の瞬間、周りにかまいたちが巻き起こる。



「っ、痛っ!」
「うわっ!」
「砂が!痛え!!!」
「うわああああっ!」

「やってやったのです、スッキリしたのです」



むん、とない胸を張って仁王立ちするティティ。
自分の周りに風の刃を発生させ、拘束していた蔦を切り飛ばしたのだろう。
周りに遠慮をしなかったので、近くにいたあいつらにも、もれなくダメージが起きた。

4人の服はボロボロ。髪もぐしゃぐしゃだ。…対してティティは全くダメージなし。俺もだが。



「・・・さて、戻るか。そろそろ日も落ちる」
「そうなのです!焼き鳥パーティーなのです!」

「ま、待ちやがれ・・・」
「てめえら、こんな事して許されると」

「まだやる気か?」

「うっ、」



俺は4人に殺気を向ける。これでもS級冒険者だ。ひと睨みで動きが止まった。
最初からこうすればよかったのでは?と思うが、向こうの意図がきちんと確認できなかったので、静観してたんだが。



「お前らがどんなをしていようが、俺には関係のない事だが。これ以上手を出すならこちらにも考えがある」

「く、くそが・・・」
「ふざけやがって!」

「これ以上喧嘩を売るのなら、俺が相手になるが?『閃光』の名は伊達じゃないんだが」

「っ!?」
「嘘だろ、マジかよ」
「『閃光ひかりのスカルディオ』? 
マズイわよ!S級冒険者に喧嘩を売っただなんて!」

「コクーンのギルドにはしっかり報告はさせてもらう。・・・覚悟するんだな」

「ま、待ってくれ!」
「許してくれ、つい出来心で・・・!」
「未遂で終わったんだから、いいじゃない!ね?」

「だとよ。どうするティティ?」
「何を思って『未遂』と言っているのかわからないのです」

「ああ、その通りだな。お前らがそこの子供を使って、俺たちに押し付けトレイン行為をした事もそうだし、
ティティを拘束して捉えて如何わしい事をしようとしたのもそうだ。今更『未遂だから許して』は虫が良すぎないか?」



何をしようとも逃げられない事を悟ったのか、静かになった4人。
俺とティティはそいつらを放置して、オアシスに戻った。

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