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第一章【黒】
力の差
しおりを挟む店の中で剣を抜く訳にいかない。壊したらダグに怒られるし、明日まで快適に過ごすには傷一つ許されない。魔法で吹っ飛ばすしかないな。
俺は詠唱を縮小して、風の弾を放つ。殺傷能力は最低レベルに落とし、ただの指向性の突風だ。3人は簡単に押されて店の外へと飛んでいった。
□ ■ □
「くっそ、痛え・・・」
「なんだあの突風は!魔法かよ!?」
「それくらいの受け身も取れないのかよ」
地面に転がる3人組。魔法使いの奴にしたら、前に踏ん張ってた奴らがまとめて転がってきたから非常に迷惑した事だろう。宿屋の前は広くなっているので、喧嘩くらいなら大丈夫そうだ。
3人組は起き上がると、さすがにフォーメーションを組んで俺に挑んで来た。まぁ見れたものじゃない…とまではいかないが、俺の敵ではない。丸腰だと思われているが、俺の装備は全て亜空間倉庫の中にあるのだから。
最初に突っ込んできた剣士の長剣を、亜空間倉庫から呼び出した愛剣で薙ぎ払う。そのままミドルレンジで待機していた弓術士の弓の弦を切る。弓はこれさえ切ってしまえばどうしようもないからな。
弓術士は一瞬で距離を詰めてきた俺に対応し切れず、何が起こったのかと慌てている。その間に後衛の魔法使いへと肉薄。剣の柄でおもいっきりぶん殴っておいた。あえなく撃沈。
「な、な、な、」
「弱っちいな、お前ら・・・クラスCか?それにしても弱すぎるだろ」
「お、俺の弓!この弦は特殊な物なのに、なんで普通の剣で切れるんだよ、おかしいだろ!」
「いやそれくらいの強度なら切れるやついっぱいいるだろ」
「・・・くっ、油断、しました」
「お前はまだ立たない方がいいぞ?脳みそ揺れて使い物にならないだろ、そういうふうに殴ったんだけどな」
あっさりと負けた3人組。嘘だろ、なんで、と言っているのが気に障る。腹が立つので剣士と弓術士の首根っこを掴んで、魔法使いの所まで投げ飛ばしてやった。
その目の前に立ち、剣を地面に突き刺して凄む。
「・・・その程度の力しかなくてよくこのクエストに来たもんだ。お前達に話を持ってきたのはギルド長か」
「そ、そうだ!俺達が強いから・・・」
「違うだろ、使い捨てるのにちょうどよかっただけだ。あそこの商業都市ギルドにはもっと格上のパーティがたくさんいるはずだ。お前達、クラスは何だ」
「お、俺達はクラスBだ!」
「クラスB?お前達が?」
絶対に嘘だ、こんな弱っちくてクラスBに上がれるはずが無い。百歩譲って採取クエスト専門のパーティで、クラスBになったのだとしても、こんなモラルもない奴らに務まるとは思えない。
睨みつけていると、村の入口の方から騎士が数人来た。村長もいる所を見ると、あれは王国軍騎士だろう。
□ ■ □
王国軍騎士が来たことに気付いたのか、アイツらはささっと立ち上がり、騎士達に駆け寄った。そして、言うに事欠いて『俺に暴行を受けた、採取クエストが達成できないからと自分達の素材を寄越せと言ってきた』と言う。
…おい、本当にそこまで腐ってんのか?
しかし、王国軍騎士達は、そう言い募る3人組こそを捕縛した。3人組は呆気に取られている。
「お、俺達が何したってんだ!」
「そうだ!俺達は被害者だぞ!」
「その男が私達を嵌めたんです!」
「うるさい!お前達が商業都市ギルドから派遣された冒険者である事は調べが付いているんだ、大人しくしろ!」
ぎゃあぎゃあ言いながらも連れて行かれる。そうか、国王経由で商業都市の長に話が言ったから捕まえに来たのか。そう思い、愛剣を抜いて亜空間倉庫へと戻す。騎士の1人がこちらへと走ってきた。俺の前で敬礼をする。…嫌な予感が。
「お疲れ様でした、スカルディオ様!」
「あ、ああ、アイツらよろしく頼む。あんたは王都から来たのか?」
「はい、王都から参りました、王国軍所属です!
いやぁ、流石は『閃光のスカルディオ』!御手並み見事ですね、感服いたしました!」
「ちょ、やめ、お前その名前」
「いやいや、王都でも有名な『閃光のスカルディオ』にお会いできるとは感激です!今度サイン下さい!」
うあああああああ!!!その二つ名呼ばれたくねぇぇぇぇぇ!!!
誰が付けたのか知らないが、いつの間にか恥ずかしい二つ名が付いていた。俺はこれを言われるのが恥ずかしくて、出来るだけ外では名前を名乗らないようにしているのに!まだもう一つの『神速』の方がマシなんだよ!
「ねえ『ひかりのスカルディオ』だって、ぷぷー」
「やめろやめろ、英雄様が困ってるだろう」
「ウケるー、ひなならはずかしくてたってらんない」
後ろから聞こえるヒナとダグの声。
ちくしょう、こいつらには知られたくなかった!ダグは薄々気付いていたかもしれないが、黙っていてくれていたんだろう。
「や・め・ろ」
「ぷぷー、ひかり、って『せんこう』ってかくんですよねぇ」
「余計な事は忘れろ!今すぐに!」
「ムリムリ、こんなたのしいことわすれられない」
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