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第二章【氷】
呪物の処理
しおりを挟む森の小道を歩くこと10分足らず。視界が開けると、そこには霊威ある大樹の家。周りは『魔女の庭』と称されるだけの広さが開けており、そこには立派な角を持つ鹿や、一本角を持つウサギがいたりする。
ヒナの横を小走りしていた猫は、霊樹の根元で丸くなる。もしかしたら気に入りの場所なのか?
ヒナに続いて家の中へ。マントはそっちね、と入口横のフックに掛けさせられる。この間と同じように、奥のソファへと向かって座れば、お茶の用意をして出てきた。
「おまちどおさま~」
「悪いな」
「おきゃくさまだもんね!」
こぽこぽ、とお茶を注いで渡される。ハーブティーだが、前に飲んだものとは少し味が違う。
「おいしい?」
「味が変わったな」
「そうなの、ちょっとべつのくだものをかんそうさせていれてみた。たまにはあじもかえないとね」
「旨いな、これも」
「ふっふっふ、じょうしゅうせいあります」
「何てものを作ってるんだお前は」
ひと息入れた所で、さっそく用件を切り出す事にした。しかし、亜空間倉庫が開けない。まさか、ヒナが開かないようにしてるのか?そんな事も可能なのか、魔女は。
「あ、ごめんごめん、とじたまんまだっけ」
「・・・おい、魔女ってのは皆が亜空間倉庫に干渉できるのか」
「みんなはむりじゃない?ひなのほかは、ファーとエヴァだけだとおもうよ」
「誰だよそれは」
「そっか、しらないんだっけ」
ヒナはこっちが息ができなくなる様なことをあっさりと言った。つまり、あと二人の『古の魔女』の名前を。
「うんとね、ファーっていうのは『しろ』のまじょのことね。んで、エヴァってのは『ひ』のまじょだよ」
『白』の魔女、ファータ・モルガーナ。
『緋』の魔女、エルヴァリータ・クリムゾン。
そして『黒』の魔女、ラゼンシア・ローズ。
つまり、ヒナが呼んだのは二人の魔女達の愛称だ。いやだからと言って、名前を呼ぶような愚行は犯さない。
「・・・お前、本当に『古の魔女』なんだな」
「そうなんです」
「眠りについてるんじゃねえのか?」
「みんなおきてますけど?」
「・・・みんな?」
「みんな」
こっくり、と頷くヒナ。まさか『古の魔女』ってのは全員起きてんのか。…考えるのはやめよう、世界が滅ぶ。俺の前にいるのも『黒』の魔女と考えるよりも単なる魔女だと思わないとやっていけない。
ヒナはぱちり、と指を鳴らす。すると俺の亜空間倉庫が開く感覚がした。俺は皮のケースに包まれた保存容器を取り出して机に置く。
皮のケースを取り、保存容器の中身が見えると、ヒナは目つきがスっと変わった。興味津々というような子供の瞳から、理知的な魔女の瞳。
「これが、今回お前に見てもらいたい物だ」
「・・・これ、だれかにみせた?」
「ああ。と言ってもこの容器からは出してない・・・って、おい!待て!」
目の前で起こった事を信じられるだろうか。目の前の保存容器が開き、黒い羽根がヒナの掌の上へとフワリと移動する。
ヒナはそれを冷ややかに見ると、掌の上で金色の焔を出現させて燃やし尽くした。後には何も残らない。
「・・・お、おい」
「これでおしまい。ごくろうさま、シグ」
「大丈夫なのか?直に接すると呪いが発動すると」
「そんなのひなにきくわけないでしょ?シグもおなじだよ。ひなのいえでそんなあぶないことおきるわけないでしょ」
それまでの表情が嘘のようなヒナ。さっきまでは本当に『古の魔女』と呼ぶのが相応しい表情だった。しかし今は俺が接してきた子供相応の表情。
ごく、とお茶を飲みながらクッキーを摘むヒナ。俺にこれを持ってきた経緯を教えて、と言う。俺は包み隠さず話をした。
王都ギルドに専属冒険者が黒い羽根を持ち込んだ事、その結果本人達は眠りから覚めない事、知り合いの賢者に教えてもらった事など。ヒナは静かに俺の話を聞いていた。いつの間にか日は落ちて、辺りは暗くなっていた。…しかし勝手に灯りついてないか?
「うーんと、とりあえずじょうきょうはわかった」
「そうか、なら済まないが何か助言をくれないか」
「それはシグしだいかなあ」
「俺?」
「うん、えっとねあしたおてつだいしてほしいことがいろいろと」
「お前な、何言ってるんだ、時間が無いんだよ」
「あるある、あととおかはかたいから」
「何だって!? 10日!?」
今までの話がどこをどうすると『あと10日は固い』んだよ!?こいつの頭の中はどうなってるんだ!俺は苛立ちを隠さずヒナに食ってかかる。人の命がかかってるんだぞ!?
ヒナは意に返さず夜ご飯の支度~とキッチンへと歩いていく。俺はその後を追いかけた。くそ、茶を飲んだ片付けもしないでなんで夜飯の支度に行くんだよ!俺はこういうの気になるんだ!!!
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