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第二章【氷】
村での買い物
しおりを挟むヒナが調理場の入口でカレー鍋を受け取っている。どうやって持って帰るのかと思っていれば、ヒナが受け取った途端、鍋が消えた。…どうやら亜空間倉庫らしい。
カウンターの方へ回ってくると、猫に気づいたようで声をかけていた。
「あれ、にゃもさん、ここにいたんだ」
「ぶにゃ」
「ひな、かえるけどどうする?」
「ぶにゃーぉ」
「じゃあいっしょにかえろっか」
会話が成立している…だと…!?俺には単なる猫の鳴き声にしか聞こえないぞ?魔女だからか?この猫は魔女の使い魔なのか?デブ猫が?
俺が見ているのに気づき、ヒナは足元まで寄ってくる。見上げたまま、首を傾げて俺に質問してきた。
「シグはひなになにかききたいの?」
「・・・ああ、ちょっとな」
「しかたないなぁ、なんでしょか」
よっこいせ、と椅子によじ登る。カウンターの端にいた猫は、ぴょいと飛び降りて店の窓辺へ。どうやら日向に移動したらしい。
「シグのごようじはなーに?またハーブティーかいにきた?」
「あー、そうじゃないがあれば買って帰るぞ」
「ほいほい、りょうかい。シグどのくらいここにいるの?つくるのにいちにちはほしいんですけど」
「これから話す要件によるな」
「ん?これだけじゃなくて?」
「実はな、見てもらいたい物が」
ヒナに説明をするべく、亜空間倉庫から黒い羽根が入った保存容器を出そうとする。その瞬間、空気が弾けるような音と共に手が弾かれた。
「って、何だ!?」
「シグ、それはここでだしちゃダメ」
「は!? まさか、今のお前か?」
「ここでだしちゃダメ。はなしはきくから、ひなのおうちでね。シグはきょうはひなのおうちにおとまりけってい!」
そう言うと、ぴょいと椅子から降りる。俺のズボンをくいくいと引っ張って『いくよー』と呼ぶ。おい待て、ズボンが下がる。
「待て、行くから引っ張るな」
「だって、かえるまえにパンやさんにもよらなきゃ。シグのぶんもやいてもらわなきゃいけないし」
「パン?」
「カレーにはナンでしょ」
「・・・夜の話か?俺さっきカレー食ったが」
「それはライスだったからちがいます」
「つまりそれ以外の選択はないんだな」
「ひな、ごはんつくれないもん」
『めだまやきくらいはやけますけど』と言う。それは果たして料理と言えるのか。俺はダグとジーナに礼を言いつつ昼飯代を払い、ヒナに付いていった。
□ ■ □
村のパン屋でナンという平べったいパンを焼いてもらい、それを受け取ったら次は牛乳を貰いに行くと言う。やれやれお使いだな。
「くださいなー!」
「おやヒナちゃん待ってたよ。いつも通り2瓶でいいかい」
「あのね、きょうはよんほんほしい」
「おや珍しい」
「おきゃくさまのぶんです」
「おいいくらなんでもそんなに飲まねえぞ」
どれだけ飲むと思ってるんだ。瓶を見てもこれ2リットルはあるだろ。飲み干せるかっていうんだ。
しかしヒナは俺の言い分を無視し、4本貰っている。支払いはもちろん物々交換だ。
「あとにほんぶんはどうしよう」
「じゃあ今度来る時に、湿布を多めに貰えるかい?」
「うん、わかったー!またくるね」
どうやら俺の分として買った2本分の支払いの話らしい。ヒナに出させるのも何だ、俺は店主に金を支払う事にする。
「俺の分なんだろ?俺が出すから幾らだ?」
「だいじょうぶ、シグにはそのぶんおてつだいしてもらうから」
「体で払えってか・・・」
「ちょうどやってほしいことあるから、ちょうどいい」
ヒナがそう言うなら仕方がない。店主に出そうとしても遠慮して受け取ろうとしないからな。ヒナがお金を出すならともかくこの場では俺は『ヒナの客人』だから、勝手に金をもらう訳にもいかないらしい。
他にも卵を買ったり、ベーコンを買ったりと食料を買い込むが、全てさらっと亜空間倉庫へとしまっていた。…前に小麦粉を運ばされたのはなんだったんだ?
「亜空間倉庫あるんなら、俺に小麦粉運ばせたの何だったんだよ」
「だってあのときは、ひなじぶんのことシグにいってなかったし。いきなりつかったらおどろくでしょ?」
「・・・そりゃそうだな」
「いまはべつにいいけどねぇ」
ヒナ専用の木戸を開き、『魔女の庭』へと帰る。ふと見るとさっきのデブ猫がヒナの横をストトトト、と小走りしていた。何も言わなくてもついてくるんだな。
「・・・その猫、お前の使い魔か」
「シグ、ダグのむかしのおはなしきいた?ここにくることになったやつ」
「ああ、聞いたが」
「にゃもさんはそのときのれいじゅうさんですよ」
「っ、はあ!? これが!?」
「ぶにゃ~」
「あ、ひどいんだ~にゃもさんはつよいんだよ?シグだってペリっとやられちゃうよ」
『ねー?』と猫に話しかければ『ぶにゃにゃ』と返すデブ猫。ウソだろ、これが…ダグを戦闘不能にしたってか。仮の姿、って奴にしてもなぁ…
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