魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

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第二章【氷】

対価の支払い

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「おい、何なんだこれは」

「ですからリストですわよ」

「いったいいつ用意したんだよ!ここに来る前からこれをリストアップしていたのかあんた!」

「まあ人聞きの悪い」
「あっ、これひなもたべたい」


 『氷の魔女』が薬の対価として示したもの。それは、王都に散らばるスイーツを一つ残らず買い上げて来る事…しかもいったいいつ調べたのか店の名前と買うものをリストアップされた物を寄越した。


「薬を調合して差し上げようっていうんですのよ?それくらいは当たり前ではありませんこと?本来なら素材の入手からやってもらう所を、雛様の手前もありますし、今回はワタクシの手持ちから出してあげようと言うのですから、これくらいはしていただかなければ」

「この量・・・これ全部本当に店あんのか?」

「ワタクシに不可能はありませんのよ!貴方、亜空間倉庫インベントリ持ちなのでしょう?そのくらいの量なら持ち運びなんて楽ではなくて?」


 確かに亜空間倉庫インベントリがあるから、品質や持ち運びに難があったとしても問題ではないだろう。ただ、この店の数!そしてメニューの数だ!一日回ったって足りないぞ!?


「それでは急いでくださいな。今回はワタクシが特別サービスで王都の入口まで転移魔法テレポートを使って差し上げましてよ?光栄に思いなさいな」
「あ、シグ、ひなのぶんわすれないでねー」

「薬の調合には・・・そうですわね、三日後かしら?また雛様の家に来なさいな。四人分の用意をしておきますわ」
「あ、むらのきど、つかえるようにしとくね?」

「おいちょっとま」


 俺が言葉を発し終わる前に、視界がキラキラと光が瞬く。おい嘘だろ、今すぐ!?瞬時に視界が暗転し、俺が立っていたのは正しく王都に繋がる街道の上だった。足元には俺のマントも落ちている。


「・・・こんな、簡単に戻れんのかよ?」


 辺りは夜。今から王都に着いても中には入れない。門は降りているからな。ただ、待合所で待つくらいはできる。そこで一眠りさせてもらうか。
 霊樹の家を出たからか、体に倦怠感を感じていた。シチューは完食したからか、歩く程度の力はある。俺は王都外の待合所に着くと、へたりこんで眠ってしまった。



     □ ■ □



 一眠りすると、体は嘘のように楽になった。夜明けと共に王都内へ。先にギルドへ顔を出した。

 ロロナ達の事もあるが、何よりスイーツを買い集めるのに手持ちの金では無理だ。ギルドに預けてある俺の貯金を降ろさないと。…どんだけ使うんだろう。受付嬢にでもリストを見せて、概算を出してもらった方が良さそうだ。


「シグムント!帰ったか!」

「ああ、とりあえず一時的にな。ワイズマン、話がある」

「ああこっちもだ、座れ」


 ギルド長の部屋に行くと、ワイズマンは既に来ていた。もしかしたらここ数日ここに詰めているのかもしれない。顔には疲れが出てきていた。

 俺は手早く、伝手を辿って『氷の魔女』に薬の入手を頼んだ事、その対価を払う為に王都に戻った事、三日後にはまた『氷の魔女』を訪ねないとならない事を話した。


「これがそのリストか・・・しかしまあ・・・」

「その店が全部この王都にあるのかも俺にはわからないんだが。本人曰くあるって言うし、全て揃えて戻らないと薬も手に入らないんだ」

「わかった、金はギルドで払う。人手も出そう、三日後には取りに行かないといけないとなると、実質王都にいられるのは二日か?」

「そうだな、明日の夜には出ないといけない。人手を貸してくれ、後これいくらかかるのかわからないんだ」

「気にするな、いくらかかってもギルドで払う。ま、目が覚めたロロナ達に少しは請求するさ。
・・・しかしまあ、お前、すごい人に渡りをつけたもんだよ」


 まさか『氷の魔女』とはな…と呟いたワイズマン。『黒の系譜』は表舞台には出てこない。既に絶えているのでは、と言われる事もあるからな。
 ロロナ達はやはり、四肢の末端から石化が始まっていた。既に手足の半分は石化しているらしい。このままじわじわと進めば、やがては体幹に届く。全て石化する前に薬を服用させられれば…


「ロロナ達には、アリーシャが付いている。気休めかもしれないが、少しでも進行が収まればと」

「そうか、なら急がないとな」


 それからは、ギルドから金と人を使ってのお使いだ。王都全てのスイーツ店を周り、菓子を買い集める。
 ちなみに雛が強請ったのは俺でも知っている有名なマドレーヌの店のものだ。多めに買って渡しておくか…かなり世話になってしまっているし。さすがにあんなにあっさりと『氷の魔女』を呼ぶとは思いもしなかった。

 ギルドのメンバー総出で買い集めただけのことはあり、なんとかリストにあった菓子を手に入れられた。それをひたすら亜空間倉庫インベントリへと入れる。
 最初のうちは気にもしなかったが、段々と辟易してくる。いったいどれだけあるんだこれ。そしてこれを全て食べるのか、『氷の魔女』は。

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