魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

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第二章【氷】

呪いの果て

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 茶を飲み終わり『氷の魔女』に促される。王都に戻ってこの薬を届けないとな。まだ猶予はあるだろうが、早い事に越したことはない。まだ夕方だから王都の門もまだ閉まってないだろう。

 前回はダイニングテーブルに座ったままだったが、今回はきちんと送ってくれるつもりのようだ。霊樹の家の外に出て、広場へ。俺が振り向くと、雛は来ておらず『氷の魔女』だけがそこに立っていた。


「雛様のお見送りも欲しかったかしら?」

「いや、構わない。いずれまた礼に来るさ」

「律儀ですのね」


 クスリと笑う『氷の魔女』。こうして見ると割と背の高い女性ヒトなのだなと思う。すらっとした体だが、女性的な肉付きをした魅惑的な美女。この姿に熱を上げる男もいるだろう。


「そんなに熱心に見つめられると困りましてよ」

「あ、ああ、すまない。俺が見た事のある『魔女』はどこか精神がおかしい奴等ばっかりだったからな。雛とあった時も驚いたんだ」

「・・・貴方が出会った魔女は『緋の系譜』ですの?」

「ああ」


 冒険者ギルドに寄せられる魔女絡みのクエストは、基本的に討伐クエストだ。そしてその相手は『緋の系譜』である事が殆どだ。あの『魔女狩り』以降、各地で暴れる魔女は『緋の系譜』が多い。
 『氷の魔女』は目を伏せてひとつため息を付く。彼女も同じ魔女として思うところがあるのだろう。


「先程、人外と契約を交わす、という話をしましたわね。『緋の系譜』の魔女が契約するのは悪魔や魔神が多いのですわ。そしてその強大な力故に『力の暴走』を引き起こす事が多いのです」

「暴走、だって?」


 おい、なんだかすごく重要な事を話されてないか?俺が聞いていいものなのか。

 『氷の魔女』の話はこうだ。『緋の系譜』の魔女は、悪魔や魔神との契約をする者が多く、その大きな力に振り回されて『暴走』してしまう魔女が多いのだとか。


『緋』の魔女あの方の特性がそういうものですから、自然と似た性質の魔女が集まってしまうのは仕方の無いことなんですけれど」

「おい、その話」

「ワタクシとした事が喋りすぎましたわね。詳しく知りたければ雛様に聞いてくださいな。メルキオールにもたまには顔を出しなさいと伝えてちょうだいね」

「ちょっと、待・・・」


 俺が言い終わらないうちにまた、視界が光の乱舞に染まる。あーくそ、何だって『氷の魔女』は話を聞かないんだよ!
 次の瞬間、俺はまた王都手前の街道にいた。また…このパターン…



     □ ■ □



 王都についたのは夕方、日が暮れる手前。ギルドに到着すると、ワイズマンの部屋に直行。そこからロロナ達のいる宿へ向かった。
 部屋には症状の出ているロロナ達パーティメンバーと、ギルド職員だろう女性がいた。症状はロロナが一番進んでいて、かなりの部分が石化していた。


「アリーシャ、薬だ。ロロナ達に飲ませてやれ」

「は、はい!」


 ワイズマンは部屋に入るなり、献身的に看病していた聖女アリーシャに薬を渡した。他に数名いたギルドの人間に渡し、各自飲ませにかかる。
 薬を飲ませ終えると、石化した部分はゆっくりと元の肌色を取り戻してきた。


「・・・本当に、効くんだな」

「ああ、実際に見ていても信じられん」

「ああ、神の御加護です・・・」


 アリーシャは神に祈りを捧げるが、俺としては微妙な気持ちだった。これを治したのは『魔女』なのだから。
 彼等の世話を他の人に任せ、俺とワイズマンはギルドに戻った。ワイズマンは自室に戻るなりソファに沈みこんだ。


「やれやれ、終わったか」

「ああ、これで解決だな」

「本当にお疲れさん、シグ。お前がいなかったらあの四人は死を待つだけだったろう。ギルド長として、礼を言う」

「いや、持ちつ持たれつだろ?俺に何かあったらまたギルドが手助けしてくれるんだから、そこはあいこだ」

「しかし・・・助けてくれたのが『魔女』とはな。確かに昔は各地に『良き魔女』ってのがいたらしいな。『魔女狩り』があってからは隠棲する魔女が増えたと聞く」

「ああ、『氷の魔女』もそう言ってたよ。だから昔はこういう事があっても『良き魔女』がいたから大事にならずに済んでいたってな。この状態は俺達『人間』が作り上げたものだってな」


 『黒い羽根』の事も報告してある。ワイズマンはダンジョンコアのようなものだな、と言っていた。頻発するものではないので、これまで話題にならなかったのだろうとも。

 ロロナ達は三日後には目を覚ました。ワイズマンから色々と注意を受け、今回の薬の支払いもある程度させたそうだ。
 俺にも謝罪に来た。それでも冒険者を辞めることはないようだ。ロロナ達のような気概のある冒険者には、是非とも長く続けてもらいたいもんだ。

 『無銘の賢者』の爺さんにも報告に訪ねた。『氷の魔女』の事に言われたことも全て。


「・・・そうか、師匠はそう言っておったか」

「爺さん、まだ『魔女』になりたいか?」

「いや、儂は『魔法使い』のままでいい。『魔女』となる為に捨てる物が今はもう多すぎてな」


 『魔女となる為に捨てる物』という表現に違和感を覚えたが、その場で聞けるような雰囲気ではなかった。また今度機会があったら話してみるとしよう。…俺にはまだ時間は山のようにあるのだから。


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